エリドの日常、あるいは非日常   作:yama娘

8 / 12
映画版準拠です。
本編中の時間軸なのでネタバレを含みます。
二次創作です。全てにおいて妄想の産物です。おかしな点は見逃して頂けると幸いです。


プライバシー

 ああ。ぼくは確かに、『プライバシーが欲しい』と願った。地球に向けてのメッセージも含めた全てを、ロッキーに『聴かれ』ていたとき、ぼくは確かにそう願った。

 だがこんな形ではなかった、筈だ。

「今日も寝てるのか、相棒」

 キセノサイトの壁の向こう。『猛毒かつ超低温の酸素』に晒された身体を治すために眠るロッキーに話しかけた。返事は、ない。……オーケー、わかっていることだろうライランド。

「ヒーターを置いたんだけど、どう?あったかい?」

 どうすればいいのか見当もつかなかった。それでもなにかをしたくて、すぐ近くにヒーターを置いた。……こうしてロッキーに『触れて』いても熱くない以上、無意味なことなのかもしれないが。それでも、なにかをしたかった。

「さて、そろそろタウメーバを見に行く時間だ」

 誰にともなく話しかける。歌うような彼の本来の声も、ぼくがラップトップで設定した声も聞こえない。メアリーやアルマンドの機械的な声とぼくの大きな独り言。声らしい声は、それだけだ。

「……やった!やったぞロック!ついに窒素に耐性のあるタウメーバだ!」

 眠るきみの身体に、そっとフィストバンプをした。ささやき声未満みたいなぼくの声にも「誰と会話している?」なんて言っていた彼は、こんな大声を上げたってぴくりとも起きやしない。

「……ちゃんと起きてくれよ、相棒。」

 きみはぼくに『地球を救え、エリドを救え』なんて言ってくれたが、エリドはきみが救ってくれ。そしてちゃんと、家に……大事なメイトがいる家に、帰るんだ。

 

 

 

 目を覚ましたときに、目に入ったのは、壁にもたれて眠るグレース。

 全身を、集中させる。大丈夫、ちゃんと動いている。ちゃんと、呼吸をしている。ぼくは……ぼくは、どれぐらい眠っていただろう。

 壁の近くに、熱源があった。ヘイル・メアリー号で見た事のある部品の集まり。残念ながらこの壁に阻まれてぼくには全く届いていないが……気持ちは、嬉しい。ぼくが『すっかり冷え切った』ことを、わかってくれたということだから。

 グレース。光を聴くエイリアン。心臓は1つ。腕は4つあるがうち2つは『足』と呼ばれるもので作業には適さない。そして片方はとても不器用。実質彼は、1つの腕をもう1つの腕で手伝うようにしか作業ができない。

 壁を叩いた。……起きない。

 あちこちが痛い。当然だ、猛毒かつ超低温の、グレースの大気に触れた。だからこれ以上の力で壁を叩くのは難しい。ああ、キセノサイトボールがあれば……

「……グレース」

 きみというやつはどうしたって気が利く。

 壁際に置かれていた、ぼくのキセノサイトボール。目を覚ましたぼくが、すぐに入れるようにしてくれていた。そんなよい友人であるきみを起こすのも忍びないが、きっと彼は起こされたがっている。ぼくらよりマルチタスクが苦手なのに、『ぼくを見守る』と自分の睡眠を同時にやろうとしているところからも確かだ。

 ぼくは起きた。

 きみも起きろ。

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