しばらくして、俺はまた目を覚ました。
(いったい誰が父さんを.....いや、もう結論は出ている。ただ俺がその事実を受け入れたくないだけだ。父さんを殺したのが黒の組織だということを。視界が途切れる直前に目に入ったのは随分若かったがジンに違いない。でも、なんで奴らは父さんを狙ったんだ?)
すると医者ともう一人誰かが病室に入ってきた。
「朝輝君、ちょっと診察させてね?.....うん、体に異常は見られないし、脈も安定している。この状態なら、話を聞くくらいならいいですけどまだPTSDを引き起こすトリガーはまだわかってないのであまり無理はさせないために面会時間は2時間です。わかってますよね?刑事さん。」
「えぇ、わかっとります。朝輝君、君にはつらい思いをしてもらうことになるかもしれんが、協力してくれるかね?」
刑事だという男は、現在の地位はわからないが服部平次の父親の服部平蔵だった。
「わ、わかりました。俺にできることがあれば何でもします。だからどうか、犯人を逮捕してください。お願いします。」
俺はそう言いながら姿勢を正して頭を下げた。
「君のその気持ちに応えたいことはやまやまだが、すまない。犯人を捕まえることはできない。」
「なっ、なんでですか!?なんで犯人を捕まえることはできないんですか!?」
(どうせ、ジンは何も証拠を残さなかったんだろうな。でも、どうして捕まえることはできないんだ?証拠がないんだったら、厳しいとか、全力を尽くすって言えばいいはずなのに。)
叫んでいることとは裏腹に俺の頭はいたって冷静だった。
「勘違いしないでくれ。犯人はもうわかっている。しかし、奴はあの世へと逃げ切ってしまったんや。わしらが見つけた時にはすでに自殺していた。『同じ音楽業界にいる被害者のことを妬ましく思って犯行に及んだが、後から後悔した』という内容の遺書も見つかり、周囲の証言とも一致し、凶器にも指紋が付着しておった。一応聞いておくが、犯人はコイツだったかね?」
見せられた写真に写っていたのはジンではなかった。
(この人が.....証言が正しいなら組織に父さんを殺すように依頼したんだろう。そして、組織の存在を知っている人物はそれだけで組織にとって厄介な存在だ。邪魔者にならないうち始末されたんだな。)
「あの時は犯人どころではなかったのでわかりません。だけど、父さんがそんなことだけで殺されたと思うとやるせない気持ちがこみ上げてきます。」
それから、質問されては答えることを繰り返すうちに面会時間が過ぎてしまった。
「何か思い出したことや不安なことがあったらここに電話かメールをするように。できるだけ君の心のケアをしよう。」
「私にもPTSDのトリガーだと思うことがあったら話してね。それじゃ、リラックスはできないだろうけどゆっくりしててね。」
二人はそう言って出ていった。
(PTSDのトリガーか、もしかしたら死体を見ることか、血のような赤い液体をみることかもしれない。後で先生にも話してみるか。)
ピロンッ
あれこれ考えているとメールが送られてきた。送り主は師匠だった。
『どうした、朝輝。まだ今週の分の動画が送られてこないぞ。体調不良か?それとも、もう止めるのか?いずれにしろ連絡を返してくれ。待っているぞ。』
俺は、かいつまんで説明することにした。
『すいません、実は、とある事情で入院中です。なので、いつになるかわかりませんが退院してからまたよろしくお願いします。』
『了解。体調には気をつけろよ。』
(今、ありのままのことを言うのは余計に心配させるだけだ。)
そう思いながらも俺は罪悪感を抱き、心の中で謝罪した。
翌日、診察しに来た先生に昨日考えた原因を話してみた。死体は無理だが血液なら見せることができると言われ、試してみた。すると、血液では少し気持ち悪くなった。量を増やし続けるうちに少しづつだが、症状に近づいた気がしたが、先生が言うにはトリガーならもっと激しく反応するらしく血液ではないらしい。その時、ミスをしてしまい、俺は血液を体の上にこぼしてしまった。すると、少量なのにあの、父さんが刺された光景がフラッシュバックしてきた。そのせいで、呼吸困難になり、動悸や吐き気を催したため、鎮静剤をうたれ、徐々に安定してきた。どうやら俺は、死体や血液単体を見ただけでは、症状は軽いが、血を流している死体を見たと錯覚すると発症してしまうらしい。
(俺が腑抜けていたせいだ。父さんはもっと楽になったかもしれないのに。俺が能力を持っていることだけで満足し、応用を利かせようとはしてこなかった。もしかしたらジンの接近にも気づけたかもしれないのに。俺のせいで父さんが死んだことで俺は
その直後、母さんたちがやってきた。
「朝輝、調子はどう?」
「大丈夫やよ。」
「....そう、......ねぇ朝輝、あんたお父さんの葬式に参加する?実は色々あってまだできてないんよ。きつそうなら無理せんでいい。」
「わかった参加するよ。」
「そう、なら明後日だから風邪ひかんようにね。行くわよ二人とも。」
「わかった。じゃあな朝輝。無理すんなよ。」
「朝輝、私じゃ頼りないかもしれんけど何か隠してることあるでしょ。全部聞かせてよ。」
「何も隠しとらんし。彩葉の勘違いやよ。」
「ぜっ、絶対辛そうな顔してたやん。なんで嘘つくの?もう知らない。朝輝のバカ。」
そう言って彩葉は泣き出し走って出ていった。
(ごめんな彩葉。でも巻き込みたくないんや。これから俺が進もうとしている道はいつ死んでもおかしくない修羅の道だ。だから話すことはできない。これは俺自身で解決するべき問題だ。)
「ちょっと、あんた彩葉になに言うたん。泣いてたで。泣かせたあんたも悪いし、すぐに逃げだす甘ちゃんで泣き虫な彩葉も悪い。だけど、二人にはずっと仲良くしてほしいから、言いたいことは素直に言って言いたくないことは言わない。そして、ちゃんと仲直りするんやよ。」
そう言うと母さんは出ていった。
「そんくらいわかってるよ。」
俺は今、父さんの葬式に出ている。あれから彩葉との仲は少しギクシャクし、まともな会話もあまりできてない。事情を知らない兄貴が
「彩葉とお前、なんかあったのか?」
と聞いてきたため、一昨日の出来事を話した。すると、
「言い方は悪いかもしれないが、たしかに母さんの言うとおりだ。言いたくないことを聞き出そうとした彩葉も悪いし、何の説明をせずに拒絶したお前も悪い。早く仲直りしろよ。」
「わかってるし。」
葬式は何もハプニングがなく進んだが、遂に原作での重要なシーンになった。
「お母さんは悲しくないの?」
「あんたには、まだわからん。」
このままだったら彩葉はずっとこの言葉にずっと縛り付けられた人生を送ってしまう。
「大体、朝輝と違ってあんたみたいなすぐに泣きだす甘ちゃんには「それは違うんやない?母さん。」何ね朝輝?」
「母さんの言う通りなら、父さんが死んだ時に泣いた上に気絶した俺はダメな奴になるけど?それに、彩葉は母さんのこと心配してるんやよ。そのことくらい母さんもわかってるはずだよね?なのにどうして、そんな突き放したようにするの?母さんも素直になって父さんが生きてた時みたいになってよ。」
「二人とも落ち着いて。次の焼香は朝輝だけど、大丈夫か?無理するなよ。」
「わかってるよ。じゃあ行ってくる。」
棺の中の父さんは穏やかな顔で寝ているみたいだった。
(父さん、これから俺は父さんや母さんが望んでいないような道に進むつもりだよ。不出来な息子だけど許してください。今までありがとう。)
それから家の中が重苦しい空気になっていた。1週間後、俺は父さんが刺される前に話していたところからの夢を見た。しかし、夢の中の父さんは刺された後、俺を恨んでいるようで血を流しながら父さんはこう言った。
「お前のせいだ、お前のせいで。」
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、父さんごめん俺のせいで、俺がしっかりしていれば。」
ガバッ
飛び起きて自分を責めていた俺を何かが包んできた。
「それは違う。違うよ朝輝。あんたは悪くない。あの時、朝輝の言葉はうれしかったよ。だから、そんなこと言わんで。」
「彩葉⁉どうしてここに?」
「隣の部屋で寝てるんだからあんたの声は聞こえるんやよ。あんな、朝輝。あの時はごめん。」
「彩葉が謝ることないよ。俺こそ、何も話さなくてごめん。でも、これだけは言える。家族は俺の中で一番大切や。だから信じてくれ。」
「えへへ、これでおあいこやね。わかった。朝輝のこと信じる。だから、約束してくれん、危ないことや悩み事があったら話して。」
翌朝
「彩葉、朝輝いつまで寝てるん?もう起きないと学校に間に合わんよ。彩葉?朝輝、彩葉がどこいるかしらん?」
母さんが俺の部屋で見たのは仲良く寝る俺と彩葉の姿だった。
「やっぱりあんたたちは仲良くしていた方がいいわ。」
(あの人が死んで私がしっかりせなあかんと考えて、子供たちには厳しくしていこうと思っとったけど、どうやらその必要はないみたいやね。これからはしっかりと子供たちと向き合っていかなあかん。)
「二人とも、起きて。学校に間に合わんよ。」
秀一side
朝輝とメールのやり取りをした数週間後に動画が送られてきた。入院していたらしいためどこまで動けるかわからなかった。しかし、動画を見てからその考えが変わった。
(今までは動きからためらいが感じられた。しかし、この動画からはそのためらいが消え、今までよりも洗練された動きになっている。だが、この動きは護身のためというよりもむしろ相手を傷つけるために見える。いったい入院中に何があったんだ?)
朝輝side
「えっ、師匠今何て言いましたか?」
『お前に教えることはもうないと言っている。これからも体を鍛えながら続けろ。しかし、お前に教えたのはあくまで護身になるものだけだ。そして、これから送るデータはお前に合った攻撃の型についてだ。別に強制はしない。力の使い方を誤るな。そのことを忘れるなよ。』
「はい、わかりました。今までありがとうございました。」
(奴らを壊滅させるためには護身だけではだめだ。しかし、師匠はたぶん俺の心境の変化に気付いたから最後にあんなことを言ったんだろうな。)
その後、俺はひたすらに訓練をし、1年後には体格で勝る大人とも善戦できるようになった。
次話はなるべく早く投稿できるように頑張ります。