落ちこぼれ魔法少女と魔力ゼロの俺~世界屈指の魔力を持つ少女を制御できるのは俺だけだった~   作:青井風太

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いつも読んでくださっている方、ありがとうございます。
投稿時間がズレましたが、また読んでもらえると嬉しいです。


違和感

村の外周を囲う森の中。

 

湿った土を踏みしめながら、エルミナ達は周辺調査を進めていた。

 

「……確かに妙ですわね」

 

しゃがみ込み、地面へ残された痕跡や魔力の残穢を見つめながらエルミナが呟く。

 

そこには複数の足跡。

 

それも、一体や二体ではない。

 

「森の中ってこんなに居るもんなのか?」

 

遥が木々の間を見回しながら尋ねると、樋川が首を横に振った。

 

「ううん……群れで行動する魔物もいるには居るけど、この足跡に魔力。種別の違う魔物が一度に動く事はない……はず」

 

その言葉にエルミナが続いた。

 

「縄張り意識とはまた違いますが、徒党を組んで動く魔物は、私も聞いた事がありませんわ」

 

「その証拠に――」

 

そう続けたエルミナは、少し表情を曇らせる。

 

「争った跡がありませんわ」

 

魔物同士が集団で行動すれば、争いが起きてもおかしくない。

 

だが、この周辺にはその形跡がほとんど見当たらなかった。

 

にもかかわらず――

 

「また居たぞ、ちっこいの!!」

 

遥が指差した先。

木々の隙間から、小型の魔物が素早く走り抜けていく。

 

その言葉に、即座に反応したエルミナは走る魔物へ手のひらを向けた。

 

「クーウェル・スティングス!」

 

掌から現れた一本の光の槍が魔物を貫き、黒いモヤと魔石へと変えた。

 

「本当に多いですわね……」

 

一瞬の内に片をつけたエルミナは眉を寄せる。

 

「魔除けの効果が弱まっているだけで、ここまで活性化するとは考えにくいですわ」

 

まるで何かに導かれるように。

 

「……魔香の可能性も視野に入れるべきですわね」

 

エルミナが静かに口にする。

 

その瞬間、後方から村人の声が飛んできた。

 

「おーい!何か分かったかー!」

 

振り返った遥達の前に現れたのは、右目の眉から頬にかけて、斜めに大きな傷跡が走っている一人の村人だった。

 

年は三十代ほどだろうか。

 

どこか軽薄そうな笑みを浮かべながら、こちらへ歩いてくる。

 

「森の中まで調査って大変だなぁ、魔法少女様も」

 

「ここには魔物の痕跡が多く見受けられますわ。危険ですので、村の中に居てください」

 

エルミナが淡々と返す。

 

だが男は気にした様子もなく、地面の足跡を見下ろした。

 

「うわ、ほんとにいんのなぁ。こんなのに襲われたら、村の連中どうなっちまうかなぁ」

 

「……え?」

 

樋川が思わず顔を上げる。

 

だが男は、すぐに「あぁいや」と軽く手を振った。

 

「もしもの話だよ。まぁあんたらが居るならその”もしも”も起こらねぇだろうけどさ」

 

ははっと笑う男に、遥は少しだけ眉をひそめた。

 

それは、上手くは言えないが――どこか、違和感を覚える声。

 

そんな時だった――

 

「ハイン、お前また、森に来たな!」

 

「うげっ」

 

呆れたようにそう言いながら近づいて来たのは、同じ三十代ほどの男だった。

 

見つかってしまった、と言いたげな声を漏らした傷の男――ハインに一歩近づくと。

 

「危ないから森に入るなって何度も言ったろ?」

 

「すまんすまん。魔法少女の仕事を間近で見れる機会なんてそうないだろ?」

 

ハインは軽く流すようにそう言いながら笑う。

 

「ったく……去年あんな目に遭ったの。もう忘れたのかよ」

 

「わーった、わーった。戻るから怒んなよ」

 

そう言って、肩を竦めながら森を後にした。

 

その背中を見届けた村人も、申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「お仕事中、邪魔してすみません。私もこれで失礼します」

 

唾を返そうとした、その時だった。

 

「なぁ、おっちゃん」

 

声を掛けたのは遥だった。

 

「ん?」

 

「さっきの……ハインさん?のケガって……」

 

その問いに、村人は「あぁ」と小さく頷き、続けた。

 

「アイツ、一年前に森で魔物に襲われて倒れてたんだよ」

 

「魔物に?」

 

「そうそう。と言っても実際に襲われている所を見た訳じゃなくて、本人がそう言ってただけなんだけど」

 

その日を思い出すかの様に、顎に手を当てながら空を眺め始めた村人。

 

「死にかけだった所を、村長達がみつけてな。行き場も無かったらしくて、そのまま村で畑仕事をする様になったんだよ」

 

「へぇ……あのおっちゃんも大変だったんだな」

 

遥は小さく相槌を打つ。

 

「あの傷も、その時につけられたみたいで。まぁ生きてただけ奇跡ってもんだよ」

 

そう語った村人は、軽く頭を下げる。

 

「それじゃ、私もこれで」

 

そのまま村の方へ戻って行く村人の背中を見送る三人の居る森には、風の音だけが残った。

 

「……」

 

樋川は、村人の二人が去って行った方向を静かに見つめていた。

 

「どうかしたか?」

 

遥の問いに、樋川は首を横に振る。

 

「ううん……なんでも」

 

違和感の正体は分からないまま、三人は魔石を回収し、村へと戻った。

 

その三人を見送る様に、森の影から覗く複数の赤い瞳に彼らはまだ、気付かない。

 




読んでいただきありがとうございました。
また次回も見ていただけると嬉しいです。
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