落ちこぼれ魔法少女と魔力ゼロの俺~世界屈指の魔力を持つ少女を制御できるのは俺だけだった~   作:青井風太

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開戦の一撃

「ダロンのじぃちゃん!」

 

「は、はい!」

 

背後へ呼びかけた遥はダロンの返事を聞いた後、周囲を見渡し始めた。

 

「えーっと、あのデカい建物……あそこに村のみんなと居てくれ!」

 

指さした先にあったのは、蔵の様に大きな扉を構えた建物だった。

 

「し、しかし……」

 

魔法少女とは言え、まだ幼い者へ任せなければいかない事への罪悪感なのか。

この絶望的な状況故か、戸惑いを見せたダロンだった。

 

だが――

 

遥はズボンのポケットからババ様の腕輪を取り出し、腕に装着し。

 

特段ポーズを取る事なく、遥の体は瞬く間に縮小し、タヌキへ変化を遂げた。

 

そして樋川の肩までよじ登った遥は、ダロン達に向け、親指を立てる。

 

「任せとけ!」

 

「は、はいお願いします」

 

突然タヌキへ変化した遥に目を丸くしながらも、ダロンは直ぐに村人達を建物へ誘導した。

 

「まぁまぁ、目の前で色々話しちゃってさぁ」

 

一連のやり取りを目の前で見ていたハインは、自身の左指二本に装着してある爪を構える。

 

そして――

 

「あんな所に隠れても意味ねぇって、分からねぇのか!!」

 

その爪を横薙ぎに振ると同時に、二体の四足歩行型の魔物が、背後から現れる。

 

そして勢いのまま、建物へ向かった。

 

だが――

 

「レクシア!!」

 

側方から放たれた、二本の光線が、正確に魔物を打ち抜き、魔石へと変えた。

 

「ちっ――」

 

「あなたこそ分かっていませんわね」

 

魔法を撃った本人、エルミナはハインへ視線を逸らす事無く続けた。

 

「私があなたを見てますのよ……村の人達には、手は出させませんわ」

 

そしてエルミナは遥と樋川の方へ振り向いた。

 

「二人共、可能な限り建物から離れた場所で戦ってください!」

「この男は私に任せてください!」

 

「了解!赤城君、行くよ!」

 

樋川は箒を浮かび上がらせる。

 

肩の上の遥は、バランスを取る様に樋川の首に手を置いた。

 

「落とすなよ」

 

「赤城君が暴れなければね!」

 

次の瞬間、二人は夜空へ飛び出した。

 

そして村の入口付近まで一気に距離を取る。

 

森の奥。

 

そこから響いてくる無数の足音は、徐々に大きくなっていた。

 

ズシン、ズシンと。

 

まるで地鳴りのような音が、確実にこちらまで近づいて来ていた。

 

遥は樋川の肩へしがみつきながら、小さく呟く。

 

「……なんか悪かったな」

 

「え?」

 

「いや、俺が魔香なんか被ったせいでさ、樋川まで危険な目に遭わせちまったなって」

 

その言葉に、樋川は少しだけ「フッ」と吹き出した。

 

「全く……」

 

呆れたような声だが、その表情はどこか柔らかい。

 

「自覚あるなら、いいよ……今さら謝らなくてもさ」

 

「いやでも、他に方法思いつかなかったし……」

 

苦笑する遥。

 

すると樋川は前を向いたまま、小さく口を開く。

 

「君が言ったんだよ?」

 

「ん?」

 

「二人なら何とかなるって……」

 

その言葉に、遥は少しだけ目を見開いた。

 

「だから――」

 

樋川は肩へ乗る遥へ、視線だけ向ける。

 

「いつも通りに指示してよね」

 

そして小さく笑った。

 

「補佐官」

 

「……おう!」

 

遥の口元も自然と上がる。

 

その時だった。

 

森の奥から、轟音のような咆哮が響く。

 

次の瞬間。

 

木々をなぎ倒しながら、無数の魔物が村の正面に姿を現した。

 

赤い瞳が、一斉に遥を捉える。

 

「うわっ、マジで全部こっち来た!?」

 

「赤城君!」

 

「おっしゃ!」

 

二人は地面へ降り立ち、敵を見据えた。

 

次第に、その大量の魔物が目視できるようになった。

 

犬や猿、蛇に鳥――様々な獣を思わせる黒い魔物達が、土煙を上げながら、一直線に迫ってくる。

 

それを完全に視認した遥は告げた。

 

「九分割で数を減らすぞ!」

 

「了解!!」

 

その小さな両手が、樋川の肩へ触れた瞬間。

 

ゴゥッ――!!

 

樋川の内側で渦巻いていた膨大な魔力が、一度遥へ流れ込む。

 

そして遥は、それを九つへ分割し送り返した。

 

樋川の背後へ、九つの光球が展開される。

 

夜の闇を、村を照らす青白い光が待機し、樋川も杖を魔物達へ向け。

 

二人は放つ。

 

「ヒュドラ・――」

 

九つの光球が震える。

 

そして。

 

「「バースト!!」」

 

九つの光弾が、迫り来る魔物の群れへ一斉に降り注ぐ――

 

その轟音と共に夜の村が、白い閃光で染まった。




読んでいただきありがとうございました。
また見てもらえると嬉しいです。
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