落ちこぼれ魔法少女と魔力ゼロの俺~世界屈指の魔力を持つ少女を制御できるのは俺だけだった~ 作:青井風太
「レクシオン!!」
上空に掌を向けたエルミナの言葉と共に、三本の光が夜空を駆ける。
「どこを狙って――」
その光を目で追い、理解できない行動をあざ笑ったハインは、次にエルミナが取った行動に、言葉が止まった。
【――その輝きは世を照らす幻想の灯】
【――その火は魔を滅する炎】
【――我が魔力を器とし、その姿に翼を与え】
「え、詠唱!?このガキまさかそのレベルまで――」
エルミナの詠唱が進む度に、突き出した両手の前に赤い法陣が展開されていく。
「コイツっ!」
それを認識したハインの行動は素早かった。
爪を振い、魔物をエルミナ目掛けて突撃させた。
詠唱を中断させれば、魔法は破綻する。
移動と同時に詠唱を行わない様子を見るに、並行詠唱は不可能と言う結論に辿り着いたからである。
つまりエルミナが詠唱を完結させる前に、一歩でもあの場から動かす、又は攻撃を当てさえすれば魔法は崩れる。
「ガキが、お前を守る者がいないこの状況で詠唱なんて始めるから、こうなん――」
一気に距離を詰めてくる魔物よりも先に、ハインは気付いた。
上空から、自分へ向けて降下してくる二本の光の本流を
「なっ!アレはさっき放った魔法――
まさかこれを計算して!?」
だが、魔物達にエルミナを攻撃させればハインの勝ちである事に変わりはない――筈なのだが。
「ば、馬鹿っ!こっちじゃねぇ!あの女を狙え!!」
全速力でハインを守るべく踵を返す魔物達。
そう。ハインを守る事を最優先に命じられていたが故の行動だった。
そして――
ドゴォォン!!
衝撃と共に着弾した二本の光。
それらは、弾痕から煙を上げた魔物に防がれた。
だが、本命はここからだ。
【――敵を討つ一翼と成れ!】
「しまっ――」
「リビュオ・アルバーナ!!」
その言葉と共に両手の法陣は大きく広がる。
そこから現れた、炎を纏った大型の鳥が一直線に駆け抜ける。
キィィィィィッ!!と夜空を裂くような鋭い鳴き声を上げながら、翔るその鳥の軌跡は炎で燃えていた。
「クソォォォォォ!!!」
迫る炎を前に,、叫ぶことしかできないハインを守る様に、二体の魔物が炎の鳥へ飛び掛かる。
紫色の体毛を逆立て、炎の鳥を噛み砕かんとする様に。
だが――
その羽ばたきは止まらない。
焼け焦げた魔物は塵と化し、地面には青い魔石が二つ転がった。
そして――
ドゴォォンッ!!!
轟音と共に爆炎が巻き上がる。
地面を揺らすその衝撃に、エルミナは思わず腕で顔を庇った。
炎と砂埃は夜風で揺らぎ、次第に弱くなる。
「はぁ……はぁ……」
流石の消耗故、エルミナは肩で息をしながらその光景を目に据えていた。
体内に残る魔力も体力も、決して多くは無い。
「二人の元へ急ぎませんと……」
遥達のいる方向へ、そう呟きながら振り向いた。
その瞬間だった――
「ガキがぁぁぁぁぁっ!!!」
煙の中から、勢いよく飛び出してきた影に、エルミナの目が見開かれる。
「――っ!?」
それはハインだった。
衣服は所々焼け焦げ、全身に火傷を負いながらも、その狂気じみた瞳は一点――エルミナに向いていた。
必死に握るその右手には一振りのナイフ。
「油断したなっ!!」
その言葉と共に突き出された刃とエルミナの距離は近く、避けられない。
迎撃する魔力も、もはや残ってはいなかった。
そしてそのまま。
銀色の刃が、一直線にエルミナの喉元へ突き付けられた――
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