修練場、前回の
見た目は、前世のコロッセオを模した建造物だ。
本来ならば、魔力測定器や的当てなど用意したかった。
だが、調達しようにも時間が足りず、後回しにしてメンバー同士で、切磋琢磨するよう伝えていた。
というわけで、そんな殺風景な物がある場所に来たが
「エライ賑やかだな」
広間には無数の屋台が、美味しそうな匂いを漂わせ所狭しと並んでいた。
ギルドにいた皆は知っていたとしても、町民には伝えてなかったはずだがと、首を傾げていると
そんな時、近くにあった屋台から声が掛かった。
「旦那!!ナツとやんだろ?腹拵えしてってくれ」
振り返れば、無精髭を生やした男が豪快に笑いながら、満遍なくタレをつけた焼き鳥を手渡してくる。
「お、サンキュ」
有り難く受け取り、陽の光で煌めく焼き鳥に齧り付く。
すると、炭火でじっくりと焼かれた香ばしい香りに、甘辛く味付けされた焼き鳥の味が、口の中に広がる。
目を見開き思わず、『旨ッ!!』と声を上げれば、店主は嬉しそうに鼻を擦っていた。
「また、腕を上げたな坊主」
俺が腕を叩きながら言えば、『旦那ァ、俺はもう坊主って歳じゃねぇよ』複雑そうな声を出していた。
「にしし、ソイツは無理な話だな、俺からしたら、まだまだ尻の青い子供だからな」
食べ終わったクシを咥えながら、話すランス。
現在のマグノリアに在住する老若男女を、小さい頃から見てきたランスにとっては、幾ら時が流れようが近所の子供という感覚だった。
そのため焼き鳥屋から離れても、通り過ぎる人々はランスを見かけると手を振られたり、屋台の人間から品を渡される。
長年この町で暮らし、依頼でなくとも手伝いと称して、頼まれごとをしてくれる、兄貴分として頼もしいランスの人徳から来ていた。
そんなわけで、視界が塞がる量の大荷物になってしまったわけだが、流石に全てを平らげるのは無理なため、ギルドの皆に手伝ってもらおうと、修練場に辿り着くと。
ドカンという爆発音が聞こえるが、気配的にナツが準備運動をしているのだろうと察し、修練場の近くにいたマカロフに声をかける。
「よっ!マカロフ」
「遅かったですな、補佐役」
至って自然に会話をしながら、近くにいた
マカオは味の濃い飯に、酒が欲しいと言って去っていく、そんな父親に呆れながら、コッチに一礼して後を追うロメオ。
あの不良小僧から、あんな立派な子供が出来るとは、昔は考えられなかったと、思い出に浸っていると続々と
そのため分け与えていると、どうやらミラが町民に声を掛けたようで、最初は近所での会話だったらしいが、次第に騒ぎは広まっていき、最終的には町全体を巻き込んだ。
道理で、そこら中に屋台があるわけだ。
ミラを交えて談笑していれば
「こんな所で油を売る暇があるなんて、随分と余裕ね」
「ちょっと失礼だよ、シャルル」
ヒョコッと現れては、皮肉を吐くシャルルに、それを咎めるウェンディ。
その光景を見て、マカロフはニマニマとし、あらあらと面白そうにフフッと笑うミラ、そして、発端のランスは頬を上げ笑みを浮かべる。
「ま、見てな」
そうして、シャルルとウェンディのために、残しておいたリンゴ飴を譲り、修練場へと入ってゆく。
悠然とした態度で去るランスに、シャルルは気に食わなさそうにフンッと鼻で笑い、ウェンディは応援の言葉を投げ掛け手を振る。
❖ ❖ ❖
面白半分で作った実況席には、マカロフとウォーレンにミラが座っていた。
満員の観客席は、今か今かと開始の合図を待ち侘び、ソワソワしていた。
そんな観客に『いや、戦うの俺たちなんだけど』と、白い円の中に立つ俺が苦笑する一方。
対面のナツは、『燃えてきたぁ!!』と口にし、闘志をメラメラと燃やしていた。
「我がギルドが誇る魔導士、二人による手に汗握る激闘(予定)をご覧ください!!」
ウォーレンが、盛大に掛け声を上げれば、闘技場の観客席から地が割れるほどの歓声が沸く。
マカロフが立ち上がり、白と赤の旗を上げる。
「ナツVSランスロット、始めェ!!!」
勢いよく旗を振り下ろし、試合のゴングが鳴り響く。
銅鑼が鳴った瞬間、踏み込み跳んでくるナツ。
対するランスは、右手をポケットに突っ込んだまま。
「火竜の鉄拳!」
飛び込んできたナツは、拳に火を纏わせ殴りかかる。
迫りくるナツの拳を左手で掴みながら、勢いそのままに後方へ放り投げる。
スタッと着地し、肘から炎を噴射させスピードを上げながら突っ込んでくる。
火竜の炎肘、拳による攻撃を読めたため躱そうとしたとき、肘を地面に向けて一回転するナツ。
そのまま、脚に火を宿らせる。
「火竜の鉤爪!」
前腕を使って、攻撃によって発生した衝撃を受け流せば、地面はズシンと鈍い音を立てて、蜂の巣状にひび割れる。
腕を振り押し返そうとすれば、再び肘に火を灯し、その推進力で距離を空ける。
流石に吹き飛ばそうとしたことは、予測してたか。
こっちの心を読んだかのように、ニィと好戦的な笑みを浮かべるナツ。
❖ ❖ ❖
一方その頃、観客席ではエルザとルーシィにグレイやハッピー、ウェンディにシャルルが、この攻防を見守っていた。
「そのまま行けー!」
「ナツさん、勝っちゃうんじゃ」
「あのオスも、少しはやるようね」
「また防がれたぁ」
幾つもの依頼を、共にした仲間としてルーシィはナツを応援しており、このままならナツが押し切れるんじゃと、考えていた。
一方的に攻撃を続けるナツを見て、燥ぐウェンディ。
毒づきながらも、優位に立つ姿を褒めるシャルル。
ハッピーは、渾身の一撃とも取れる技が防がれたため、耳を垂らす。
「あーらら、遊ばれてやんの」
「だが、今の蹴りは中々なモノだ」
端から見れば優勢のナツに対して、グレイとエルザは違った。
グレイは、すっかり遊ばれていることに気付き、手を上げ首を振る。
エルザは、炎肘から繋げた鉤爪に着目し、その威力を称えていた。
「でもでも、反撃出来てないし」
「確かに、魔法を跳ね返してない」
「つまり武器が無いんじゃ、太刀打ち出来ないのよ」
俄然として、攻撃を仕掛け続けるナツに対して、防戦一方のランスに遊ばれてるという言葉に、思い思いの言葉を出す三人。
「おっさんの足元、見てみろよ」
理解していない三人に、ランスの足元を見るように指を差せば、目を丸くする。
それもそのハズ、目に映ったランスは試合開始時点と変わらず、白い円の中から殆ど動いていなかった。
ナツの攻撃を受け流すために、多少ズレるがその程度。
つまり、あの猛攻を微動だにしていない証拠。
活躍したナツの姿を見たことのある三人は、口に手を当て瞠目するのだが、あの悪魔を討った際に利用した武器を、ランスは未だ扱わないどころか、魔法すらも使用しない姿に戦慄していた。
そんな三人を見たグレイたちは、自分たちも昔はこうだったと、懐かしんでいた。
❖ ❖ ❖
舞台は戻り、闘技場内。
色々な種族の特徴を持つため、ウェンディがナツの勝利に期待していることが耳に入り、内にいるミニランス*1がムスッとしていた。
過去のあれこれから、妹分として慕ってくれていた彼女の応援相手が自分でないと知り、表には出さないが妬いていた。
だが、攻撃を防いでいると次第に、耳に入る話題が自身の方へと向いていったため、内心ほくそ笑む。
そんな、ランスを見たナツは、得体の知らないモノを見たかのように気味悪がっていた。
まぁ良いかと、直ぐに気を取り直して握り拳を重ねる。
「スーッ、火竜の咆哮!!!!!」
大きく息を吸い込み吐けば、巨大な炎のブレスがランス目掛け発射される。
当たれば一溜りもない威力の技に、全く動じず回避しようともしないランスだったが
「
手に持った木の棒を横薙ぎに振るい、魔法を跳ね返す。
まさか、弾き返されるとは微塵も思っていなかったナツは、慌ててギリギリ回避する。
ナツが慌てるものも無理はない、何故なら、これまでの対決でランスは魔法を使ってこなかった。
そして、仲間に対して使用する際は、S級の腕試しのときだけであった。
「燃えてきたぁー!!!」
そのため、ナツは認めてくれたという嬉しさ半分、そんなランスと戦える楽しさで、凶暴な笑みを浮かべる。
そんなナツを見て、仕方ないと微笑む。
「
木の棒にドス黒い炎を点火させると、空に掲げたと思えば、勢いよく振り翳す。
「神千斬り(打撃ver.)」
纏わせた獄炎は伸びていき、ナツを押し潰そうとするが、寸前で横に跳ばれて避けられる。
ズドンという重圧感のある音が鳴れば、あまりの威力に亀裂が走り砂埃が舞う。
追撃をしようとするが、白い円から出てはならないというルール*2があるため、面倒だなと頭を掻く。
ましてや、神千斬り(打撃ver.)は、飛ぶ斬撃ではない上に、重たく速度が出ないため、連発が出来ない。
そして、マカロフから許されている魔法は、全反撃とこの技のみだけ、とてもやりづらい。
「火竜の煌炎!」
悩んでいると、そんなことお構いなしと言った感じで、巨大な炎を生み出したナツが、ソレを放ってきた。
まぁ、当然の如く
「マジか」
跳ね返した炎が、戻ってくるとは思わず、急いで獄炎の棍棒を作り叩き割る。
流石に炎による爆圧は、防げずケホケホと舞う煤に咳き込み、体を見れば衣服が煤だらけとなってしまった。
結構気に入っていた戦闘衣装だったんだが、よくもやってくれたなと見れば、悪戯に成功した子供のように無邪気に笑っていた。
後から聞いた話では、
もう少し、ナツの成長も見てみたい気持ちもあるが、夕暮れ時も近くなってきたし、頃合いだな。
殆ど炭と化した棍棒に、着火し神千斬り(打撃ver.)をすると、ナツは避ける素振りすら見せなかった。
回避しなければ、軽く小突いて終わりだと考えていると、ナツは燃え盛る棍棒に向かって飛び込んだ。
何をするつもりだ?と、目を細めるが次の瞬間、頬を引き攣らせてしまった。
今日何度目かの驚愕の光景が出現する。
「ハムハム」
なんと、食べたのだ。何をって?それは勿論。
確かに、ナツの体質的に俺の
あまりの光景に、若干放心してしまったが、これ以上食べたら魔力過多で体を壊してしまう可能性があるため、
だが、既に満足行く量の炎を食べれたようで
「モード
目の前には、額に竜の鱗を顕現させ、漆黒の炎と紅蓮の炎を外套のように纏い、ドラゴンフォースを発現させたナツがいた。
これがあるから、若者の成長は価値があると、喜びながら不敵な笑みを浮かべ、来いと手で挑発するランス。
地面を踏み抜き、クモの巣状に割り、接敵するナツ。
これ迄にない速さに、懐に入ることを許してしまう。
「炎獄竜の
焔を覆うような黒炎を宿らせた拳を、腹めがけ叩き込もうとしてきたため、咄嗟に右腕と左腕を十字にし防御したが、防御した瞬間、黒炎が消え赤い焔が噴き出したかと思えば、予想以上の威力に白い円から弾き出される。
俺が負けるとは思わなかったマカロフは茫然とするが、一瞬で気持ちを整理して旗を上げようとした時。
「待ってくれ、じっちゃん」
ナツが、マカロフを止めた。
ハンデがあったとはいえ、勝負は勝負、勝敗は決まった筈なのに、ナツの闘志は収まっていなかった。
どうやら、この力を試したいことに加え、コッチに自由に魔法を使わせた戦いを願っていた。
突然の提案に、マカロフは困ったようにコチラを見やり、俺が頷くと、直ぐ様再開の合図が成される。
合図と共に、ナツは脚を点火させ、炎を推進力に迫ってくるが、二度も食らう程の優しさはないため、ギリギリまで接近させカウンターを狙う。
だが、寸前の所で体を回転させるナツ。
「炎獄竜の
「ッ
炎を使った遠心力で、強烈な一撃を叩きこんでくるが、寸前のところで体を金属化させ、ダメージを最小限に抑えたが、金属化させた部分はヒビ割れていた。
「身体能力の跳ね上がり方が半端ねぇな」
こりゃ、
ここまで、俺が押されるとは思っていなかった、観客席は沸き上がり、ナツコールが響き渡る。
そんな観客たちに機嫌を良くしたナツは、果敢に突撃し拳を叩き込むが、先程殴り飛ばした時とは違い、微動だにしない俺。
不思議に思ったのか目をパチクリさせるナツ。
「悪ぃな身体能力、少し貰ったわ」
「んなッ!?」
ナツも、ランスの使う幾つかの魔法*3を知っているため、何が起こったのか直ぐに理解したため、急いで距離を取うとするが、それを許すはずもなく。
腕を掴まれる感覚とともに、その場に滞在してしまう。
「さっさと離せよ!!ランス!!」
「おいおい、俺はな~んにも触ってないぜ?」
必死に足から噴射される炎で、逃げようとするも腕を引っ張られる感触に文句を言うが、当の本人は左手をグーパーさせ、戯けた様子だ。
「巫山戯んなッ!!!こうなりゃブレスで」
「たく仕方ねぇ、離してやるよ」
「エッ?」
咆哮を発動させるときと同じように、息を溜め始めたため、仕方なく
「何やってんだー、ナツ」
「さっきまでの調子はどうしたーッ!?」
古典体な様式美に、観客席は笑っていた。
どうにか抜け出したナツは、そんな人々に、笑ってんじゃねぇー!と、プンスカ怒っていた。
こんな楽しい祭りも、もう直ぐ夕暮れ時のため、終わりにしないといけない。
「ナツ」
「なんだー?」
俺が、名を呼べば首を傾げる。
「折角の楽しい時間も、頃合いだ。次で終わらすぞ」
この戦いに終止符を打つという事を伝えると、ニィと頬を上げ承諾してくれる。
「全魔力解放」
残った魔力を全て使い切るようで、外套の形を成していた漆黒と紅蓮の炎が、それぞれ腕に収束されていく。
コチラも、指先に魔力を溜め始めていく。
皆が、唾を飲みこみ戦いの行く末を見守る。
「滅竜奥義…改!!!!!!」
どうやら、魔力を先に溜め終えたのはナツのようで
「
腕を旋回させ、黒と赤の螺旋を描きながら、莫大な魔力を帯びた炎が放出される。
「
指先から、魔力で出来た太陽を産み出し、迫りくる螺旋の炎にぶつけると、炸裂音が鳴り爆風によって砂煙が吹き荒れる。
魔力の塊同士の衝突によって、大地は激しく振動し、地面は裂けて隆起する。発生した暴風により、木々が大きく揺れた。
天変地異とも取れる異常事態に、町民は阿鼻叫喚の嵐だが、
そうして、異常事態が収まり、段々と砂煙が霧散していくと、闘技場内にいたナツとランスは
「ヘヘッ、やっぱ強ェわ」
そう言って、すっきりとした表情を浮かべ倒れるナツ。
「たく、成長しすぎだっての」
魔力切れによって、眠りにつきイビキを掻くナツを見やり、爽やかな笑顔を作る。
結局、勝負に負けて試合に勝ったという、何とも言えない結果になってしまった。
後日、勝者の特権として何か要望があるかと聞けば、特に無いと言われ、代わりにハッピーの願いを聞くことになり、魚一年分という欲が低い希望に沿って、しっかりと渡してあげた。
因みに、鮮度の問題で俺のインベントリに預かっているため、毎日引き取りに来るよう頼むこととなった。
こうして、俺とナツによって行われた祭事は平和に幕を閉じ、また平穏で賑やかな毎日が戻ってくると信じていた。
_____あの日までは
というわけで、原作キャラ強化でナツに獄炎を食べてもらいました。
ナツの出生+火の滅竜魔導士→火を食べれる→なら獄炎食えるくね?となり、この発想に至りました。
そして、神千斬りの打撃ver.の技名が思い付かず、雑になってしまい申し訳ない。
もしも、そのまま神千斬りを発動させたら、ナツの何処かが切断されることは確定していたので、本文のような対策をさせていただきました。
今後も打撃ver.が必要になる場面の時は、このままか、作者が技名を考えついたモノか、読者の皆様が思いついたモノを本文に出そうかと思っています。
ですので、是非感想お待ちしております。
他力本願寺住職より
オリ主編6月末に締め切り
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没作として残留
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