妖精の大罪人   作:ラーメンは豚骨

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3話

 ナツ達が乗り込む少し前に遡る。

 ココは人里離れた森の中にある。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の顧問薬剤師ポーリュシカが住まう一軒家。

 風によって樹木の葉が揺れ動く中、怒号が鳴り響く。

 原因はマカロフが復活し、弱った体で戦場に向かったため、雑貨品や果実が入った木箱を箒で薙ぎ倒し、八つ当たりをしていたためだ。

 そんな中、倒れた木箱に入っていた林檎が、近くの大樹に転がっていった時、不自然に大樹の根を登っていったのを不審に思い、転がる林檎に視線を向けると、黒い衣服で全身を包み、身の丈以上の長さはある杖を抱えた男が座っていた。

 

「ミストガン」

 

「いただいても?」

 

 ミストガンは拾った林檎を見つめ確認を取るが、ポーリュシカは無視しミストガンを問いただす。

 

「こんなに早く回復するのは可笑しいと思っていたんだ。マカロフの魔力をかき集めたのはアンタだね」

 

 マカロフが、何故あんなにも早く復活したのか疑問に思っていた。ポーリュシカは、行った人物がミストガンだと問えば、手に取った林檎を無言で食べ、ソレを叱るポーリュシカ。

 

「戦争は間もなく終結する」

 

 齧った林檎を見つめ、そんな事を言うミストガンに

 

「人間同士の争いを助長するような発言はしたくないけどね。アンタも、一応マカロフの仲間だろ。とっとと出ていきな、勝手に争いでもしてるんだね」

 

 人間嫌いのポーリュシカからすれば、戦争を起こす要因となったとでも言うべき、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に所属するミストガンに強く当たってしまうのは仕方のないことだった。

 そして、戦争を終わらせろという遠回しの言葉でもあった。

 その言葉に反応するように、何処に隠し持っていたのか分からぬ程、大量のファントムの旗を放り投げる。

 

「まさか、ファントムの支部を全て一人で」

 

「ある方の命令で」

 

 ある方という単語に疑問を持ち、訝しげに眉を上げるポーリュシカ。

 そんなポーリュシカを無視し、話を続けるミストガン。

 

「それと、マスターを回復させたのは私ではない」

 

「まさか!」

 

 回復させたのがミストガンではないと知ると、該当する人物に心当たりがあるポーリュシカにとっては、先程のミストガンの終結するという言葉にも納得が出来る。

 

「林檎をもう一つ、いただきたい」

 

「こんなゴミを、置いて行く気かい」

 

 ミストガンは大樹の根から飛び降り、ポーリュシカに林檎を貰おうとする。

 

閑話休題

 

 グレイ、エルフマン、ミラ、エルザ、ランスの前にジョゼが現れた時刻まで戻る。

 

「さて、楽しませて頂いた御礼をしませんとなぁ、たっぷりとね」

 

「アイスメイク」

 

「ビーストアーム!」

 

「待て!早まるな!」

 

 敵の大将であるジョゼが現れた事により、頭に血が昇っていたのかエルザの制止も届かず、攻撃するグレイとエルフマンだったが、ジョゼの魔法によってカウンターを食らう寸前。

 

獲物狩り(フォックスハント)

 

 ナニカに体を後方へ引っ張られる感覚と共に、ギリギリの所で魔法を回避する。

 予想外の動きに、上手く受け身を取れず地面に転がって来る二人を、エルザとミラが受け止める。

 受け止めてくれた二人に礼を言い、正面を向くとランスがいた。

 引っ張られた原因がランスロットだと分かると、自分達にもヤラせてくれと訴えるが。

 

「悪いな二人共、これ以上子供の血を流させるワケにはいかねぇ」

 

 そう呟き、ジョゼと向かい合う。

 

「ほう、貴方が相手とはね」

 

 向かい合ったジョゼは、ランスの隅々を観察し不満気に言う。

 

「俺じゃ不服か?」

 

「当たり前でしょう。聖十大魔道候補だったとはいえ、実力が足りず私に候補を奪われ、ましてや今となっては全盛期以下と聞く。アリアさんを倒したのは賞賛に値しますが、たった其れだけのこと」

 

 昔、聖十大魔道の候補であったランスから、その権利を奪った事を思い出し嘲笑う。

 大空のアリアを倒したとはいえ、自分には程遠く及ばないと宣う。

 そうして、ランスに向かって魔法を連射する。

 避ければ背後の四人に当たり、避けなければ致命傷となる威力の魔法を受けることになる。

 

「さぁ!仲間の命と自分の命を天秤に掛けなさい!」

 

 逃げてとグレイとエルフマンは叫ぶが、心配するなと直立不動で魔法を受けようとする。

 

「仲間が大事か!ならば消えろ、旧時代の凡人!」

 

 ジョゼが叫ぶと、直撃した魔法がランスを中心に爆発する。

 そんな威力から出来た突風によってエルザ達は、壁際へと吹き飛ばされる。

 

「ははっ!仲間を守るために死ぬとは愚か、最後に一瞥くらいしてあげましょ......ッ!?」

 

 爆発によって出来た大量の砂塵を見て、ランスが亡くなったと思ったジョゼは高らかに笑い、塵となった姿を拝もうと近づいてみれば、上半身の服が破けた以外の負傷と言える箇所もなく腕を回しながら立っていた。

 

「何故、生きている!?」

 

「さぁ?何でだろうな」

 

「質問に答えろぉ!」

 

 惚けながら返答するランスに、キレ気味に言葉を発し再び魔法を発動させる。

 だが、そんな魔法もランスが空に手を翳すと、魔力となって霧散する。

 摩訶不思議な現象に呆然とするジョゼに、ランスは問う。

 

「なんでルーシィを攫おうとした?」

 

「は?」

 

 攫おうとした理由を聞くランスに、ポカンとした表情をするジョゼだが、次第に怒りがこみ上げ腕を震わせる。

 

「攫った理由?まさか何も知らないだと?我々幽鬼の支配者(ファントムロード)は、フィオーレ1のギルドだった。それにも関わらずエルザやラクサスにミストガン、ギルダーツの噂が我々の本部がある町にまで届く始末。それなのに、ルーシィ・ハートフィリア、この国でも有名な資産家であるハートフィリア家の一人娘、そんな女まで妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ったなど許せるはずがない!貴様らのような木っ端集団が、莫大な富を得るなど、調子に乗るな!」

 

「......」

 

 要するに、元々気に食わなかった俺たちのギルドに令嬢が加盟して、ハートフィリア家から援助してもらっていると考えてた訳か。

 

「呆れる」

 

「何だと?」

 

「聞こえなかったのか?呆れたって言ったんだよ、何でルーシィがギルドに入ったか知ってるか?」

 

 道中にエルザたちから、何故ルーシィがギルドに入ったかを聞いた。

 人によっては無謀や無茶とも言われるだろうが、家にあった金品は何も持ち出さずに、自分の身一つで飛び出して人々の手助けをして路銀を稼いでいたある日、ナツとハッピーに出会ってギルドに入り、毎日楽しく過ごせるはずだった。

 

「それがどうした!飼い慣らせばいい。そうすれば、あの家から幾らでも金は手に入る!貴様ら程度じゃ、上手く利用出来ないから、そんな言い訳がッ?!」

 

「もう良い、黙れ」

 

 ジョゼの下劣な発言に嫌気が差し、距離を詰め顔面を鷲掴みにした瞬間飛び上がり、空で一回転しながら勢いを乗せ床へと叩きつける。

 床はミシミシと音を立て亀裂が入り、隆起を起こす。

 頭を叩きつけられたジョゼは地面に手を当て、空で逃げ場の無いランスに魔法を発動させる。

 

「デッドウェイブ!」

 

 怨念のような形をしたオーラが、ランスに向けて集中砲火される。

 鞘から小剣を取り出し、オーラが自身に触れる前に横に薙ぐ。

 

全反撃(フルカウンター)

 

 デッドウェイブはランスに当たらず、ジョゼへ倍以上となった威力で跳ね返される。

 跳ね返されるのを見越していたのか、先程出したデッドウェイブよりも威力を上げたモノで相殺する。

 

氷柱の城(アイシクルキャッスル)

 

 相殺したのも束の間、ジョゼを囲むように氷柱が、魔法陣から無数に展開される。

 その光景に生唾を飲み込むジョゼ、ランスが腕を振り下ろすと一斉に射出される。

 デッドウェイブによって相殺を試みるものの、無際限に射出される氷柱に間に合わず。

 顔面以外を凍結させられ、身動きが取れなくなっていた。

 それを見ていたグレイたちは

 

「す、すげぇ」

 

「流石は漢!」

 

「一方的だったわね」

 

「まさか、これほどとは」

 

 氷漬けになったジョゼを睨むランス。

 

「まだやるか?」

 

 もう抵抗の余地さえ残っていない、拘束状態のジョゼに問いかける。

 

「まだだ、まだ終わっていない」

 

「そうか、なら後は上の者同士で話し合ってくれ」

 

 背後から歩いてくる見知った気配を感じ取り、ジョゼの氷漬け状態を解除し振り返る。

 すると、照明の光によって影に覆われた人物が照らされ、姿が露となる。

 四人がマスター!と呼び、マカロフは頷きジョゼの下へ向かう。

 マカロフの奴、しっかり回復出来たようで良かった。

 とはいえ、寝起きでいきなり大丈夫か?

 

「全員、この場を離れよ」

 

 言葉を発すると、魔力を解放する。

 マカロフの家族を想う温かい魔力が、妖精の尻尾(フェアリーテイル)全員を奮起させる。

 莫大な魔力を解放してみせたマカロフを見た俺は、これなら大丈夫だと感じ取り、四人と共に要塞を後にする。

 俺たちが去った後、マカロフは妖精の法律(フェアリーロウ)を発動させてジョゼに勝利した。

 ジョゼは、最後の最後まで一切悪びれることは無かったと、後にマカロフから聞いた。

 そうして、幽鬼の支配者(ファントムロード)との戦争が終わったかのように思えたが、評議院(めんどうごと)が勢いよく駆け込んで来る事が確定しているため、俺はマカロフと共に溜息を零すことになるのだった。

 

 




一応、ラクサスが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に帰ってきた場面を書いて、幽鬼の支配者(ファントムロード)編は終わりたいと思います。
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