妖精の大罪人   作:ラーメンは豚骨

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幕間③ 反転

 俺は気がついた時には、焼き焦げた地面に転がっていた。

 立ち上がり―俺は一体何を―と考えると、隣にあった空洞と目が合う。

 空洞を見て自分が起こした行為を思い出し、手を見れば何も付着していないのにも関わらず、赤黒い液体に染まりソレが滴っていると錯覚し、顔は青褪め吐き気を催しながら過呼吸になる。

 巨大な瞳孔のように見える瞳孔は、まるで殺してしまった者たちが凝視しているように思えた。

 情けなく恐怖で腰を抜かすランス。

 

俺が殺したんだ

 

 いくらゲイルたちが死んだとはいえ、憤り我を忘れた俺はアイツらが愛していた。

 生きていたであろう民たちを……殺した。

 その現状に絶望し、瞳孔は黒く染まりフラフラと空洞へ歩いていく。

 このまま落ちれば死ねるだろうか、いや死ぬことは出来ない。

 俺がそう望んでしまったから、死んで詫びることすら出来ない。

 こんな事なら力なんて欲さなければ良かった。

 生き返った世界が、こんな苦しいなら転生なんてするんじゃなかった。

 俺がゲイルと会わなければ、俺が生まれなければ結果は変わっていたんじゃ。

 誰か裁いてくれ、頼む。そう願うが誰の声も聞こえない。

 ―裁いてくれる相手も、城下町で楽しく遊ぶ姿を見た。あの幼い子供たちも、偶に食品の差し入れをくれた。あの優しかった皆を―

 

 

 

          お前が殺した

 

 

 

 

るこかのてほな!!!」

 

 その幻聴に、声にならない叫びを上げるランス。

 すると、背後から巨大な魔力を感じて振り返ると、イグニールと共に先日会ったドラゴンたちである。

 鉄竜メタリカーナ、天竜グランディーネ、白竜バイスロギア、影竜スキアドラムが空から下りてきた。

 

「自分のコトを責めるのは、もう止すんだランス」

 

 責めるのをヤメロ?何を言ってるんだ、皆を殺したのは俺だ。

 目の前が真っ黒になり、あの時の情景が浮かんでくる。

 ゲイルたちが悲惨な死を見た。ゲイルたちを殺したのはドラゴンだ。

 途端に胸の内からドス黒いヘドロのような物が発生し始める。

 ―そうだ、コイツらもドラゴンだったな、ならば滅ぼさないと、一片の塵も残さず。

 あまりの絶望に錯乱状態に陥り、必死に説得するイグニールを、国を襲ったドラゴンと同一のモノと見做し始める。

 異変に勘づいたイグニールは、真っ先にグランディーネをこの場から離れさせる。

 グランディーネが離れた瞬間、イグニールの腹部にランスは肉薄する。

 イグニールは咄嗟に防ぎ、ランスの打撃によるダメージを最小限に抑える。

 吹き飛ばされたイグニールが見たのは、通常時には無い黒い魔力を衣のように纏い、胸椎部分からは魔力で出来た羽のようなモノが存在し、額には螺旋のような紋様が浮かんでおり、ランスの瞳はハイライトが消えていた。

 

 イグニールがこの姿を見るのは初めてではなかった。

 ランスが初めて戦場に出た時ことだ。その場にはゲイルも共に立っていた。

 戦場で死にかけるのは当然だと、ランスは理解していたが、ゲイルが重傷を負うという場面に直面すると、今のように魔力を暴走させ敵対国の兵士を蹂躙した。

 高濃度の魔力を察知したイグニールが、向かった時にはランスが暴れ回り敵を翻弄していた。

 そんなランスの姿が元に戻ると戦場の真ん中で倒れ眠りについた。

 あの時のランスは悪魔、いや魔の頂点とも言える気配を漂わせていた。

 二度と、この様な目に合わせないようにしていたのに、結果はこの有様。

 そして、完全に敵対者を見る目をしている。

 ならば、仕方あるまいとイグニールは翼を広げる。

 他のドラゴンたちもイグニールに加勢しようとするが、邪魔をするなと止める。

 

「ランスよ、久方ぶりの親子喧嘩といくか」

 

 イグニールが開戦の合図のように、ブレスを吐くと上空へ逃げるランス。

 それを読んでいたイグニールは、腕を振りかぶりランスを地面に叩きつける。

 ランスが落ちた焦土は、強烈な一撃に蜘蛛の巣状に亀裂が入り、砂煙が舞う。

 スッと砂埃の中を睨むイグニール、この程度で終わるような生半可に鍛えてないため、一切反撃してこようとしないランスを不審に思う。

 粉塵が消えると、そこにランスの姿は無く背後から気配を感じ、反射的に避けようとするも一歩間に合わず、背中を縦一文字に斬られる。

 避けれなかったモノの、幸いなことに傷は浅い。

 咄嗟に回避出来たから良かったが、次は確実に当ててくると予感する。

 

「まさか、ここ迄成長しているとはな、燃えてきたわい」

 

 弟子兼我が子の成長に嬉しさが込み上げ、笑みを浮かべるのと同時に、そんなランスと戦える事にワクワクし始める。

 ランスは小剣に黒い炎を纏わせていた。

 オレにはあの炎すら効かないのは知っているはず、それ程までに先日の一件が心に響き、冷静さを欠いているのが分かる。

 ならば、アヤツが落ち着くまで親として

 

「…対峙するのみ」

 

 ランスが周囲を無数の氷柱を展開させて、コチラを氷漬けにしようとしてくる。

 それを無意味と言わんばかりに、ブレスを撒き散らし無効化する。

 だが、それによって周囲は水蒸気によって視界が塞がる。

 すると、頭上から一筋の白い光線が振り注ぐ。

 いくら炎竜王といえど、炎以外による攻撃はかすり傷くらいは負う。

 ましてや、殲滅の光(エクスターミネイトレイ)という高威力のビーム砲。

 通常ならば装置などを用いて発動させるような代物、そんな物を食らってしまえば、かすり傷程度では済まない。

 本気で滅ぼそうとしている事に気づき、舌打ちをしながら避ける。

 このままでは、喧嘩を通り越して殺し合いになってしまう。

 それはオレとしては望む所ではない。

 そして、殺し合いという事に一瞬だけ戸惑ってしまった。

 その隙を好機と見て、イグニールの懐に潜り込む。

 懐に入った瞬間ランスが既に持っていた溢れんばかりの魔力は、爆発的に膨れ上がり始める。

 それは、エスカノールが持つ能力の太陽の恩寵による効果だ。

 日の出とともに力が増していく、今は午前11時で正午に近しい、よって通常時の魔力濃度よりも倍近くとなっていた。

 濃度が濃い、即ち肉体に剣へ与える魔力も高まり、ランスが強化されているということ。

 それを知っていたイグニールは、絶体絶命の窮地に陥る。

 体中を斬り刻まれ、何とか皮一枚と言った感じで生き延びるも、瀕死の重傷の状態だ。

 このまま戦えば、死ぬのは漠然とした事実。

 そのため、ランスはイグニールの首に小剣を叩きつけ、トドメを刺そうとしたその時。

 

「おぎゃーおぎゃー」

「ッ!」

 

 グランディーネの側から、赤ん坊の泣き声が焦土一帯に響き渡る。

 その泣き声が耳に入ったのか、ランスはイグニールの首を切断する寸前で動きをピタッと止める。

 完全に動きを止めたランスを、無傷のメタリカーナたちが取り押さえる。

 取り押さえられたランスからは、黒の衣に額の紋様が消えて気絶する。

 完全に解決とはならないが、一先ずは話し合いに持ち込める可能性までは持っていけるようになった。

 そうして、イグニールはグランディーネに回復してもらいながら、ある事を考える。

 今のランスを任せられ、話し合いが出来そうな奴を

 

 

「仕方がない、託してみるとするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼレフに」

 

 

 

 




2、3話では足りませんでした。
書き出したら止まらなくなってしまい、申し訳ない。
ここから先は当分原作開始前の話になります。
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