最強たちのヒーローアカデミア   作:通りすがりの気分屋

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騎馬戦

ミッドナイトによる騎馬戦の説明が終わり、チーム決めの時間になったが、虎人(とらひと)は完全に孤立していた。

 

(普通はそう考えるのう。持っていれば常に狙われる状態になるから組むより狙う方が現実的じゃのう)

 

器用さならクラス屈指の虎人であるが、組める相手がいなければその長所を活かすことは出来ない。

既に何名かに声をかけてはみたが、全員に断られてしまったため他に組むことが出来る者を探していた。

そこに声をかけてきた者がいた。

 

「やっぱり組む人いなかったんだ…」

 

「…笑いにでも来たのか竜魔?」

 

声をかけてきた心人(まなと)に虎人は苛立ちを籠った声で睨むが、心人はそんな事まるで気にせず提案した。

 

「まだ一人なら()()()と組まない?」

 

「俺たち?」

 

心人が既に組んでいた二人の存在に気付いた虎人は、そのメンバーを見て一位を確信した。

 

「渡りに船とはこのことじゃな。乗ったぞお前のその提案!」

 

こうして虎人もチームを組むことが出来た。

そしてチーム決めの時間が終わり、12組のチームが出来た。

 

『15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!』

 

『なかなか面白(おもしれ)え組が揃ったな』

 

『さあ!上げてけ時の声!血で血を洗う雄英の合戦が今狼煙を上げる!』

 

「ワシが足場と前方、索敵をやるから左右と後ろしっかり守れよ!竜魔!緑谷!」

 

「もちろん!」

 

「うん!」

 

「麗日!そのハチマキ死んでも守れ!」

 

「は、はい!」

 

個性で変身した虎人の上には前方に鉢巻きを頭に巻いた麗日、その後ろに緑谷と竜魔が左右に座っていた。

 

「一人の騎馬に三人乗ってるんだけど!」

 

「なんだよそれアリか!?」

 

『個性で体を大きくしているのでアリよ!』

 

『さあ行くぜ!残虐バトルロイヤルカウントダウン!』

 

プレゼントマイクがカウントダウンを数える僅かな間でも大半の騎馬の狙いは一つだった。

 

『スタート!』

 

ミッドナイトの合図と同時に多くの騎馬が麗日に巻かれている鉢巻きを狙ってきた。

 

「ひぃ!」

 

「実質1000万の争奪戦だ!」

 

「ハッハッハッお茶子ちゃん頂くよー!」

 

「麗日、勝ちてぇなら自分の限界超えろよ!」

 

「えっ?どういう事?」

 

「緑谷くん!」

 

「うん!」

 

虎人の言葉を合図に緑谷と竜魔が麗日を持ち上げ、虎人の腕に乗ると、虎人は力の限り三人を上空に放り投げた。

 

「ぶっ飛べー-----!」

 

「いやあああー----!!!」

 

悲鳴を上げながら上空に投げ飛ばされた麗日たちに注目が集まる隙に、虎人は狙ってきた騎馬で自然と出来上がっていた包囲網から脱出した。

そして、三人の落下地点まで移動して、髪の毛で三人を捕まえ、背中に乗せた。

 

「そんなのアリ!?」

 

『突破するための方法なのでアリよ!地面についてたら駄目だったけど』

 

『すげえな!上位三名がいる分突破のやり方も常識外れだぜ!!』

 

『蒼月、緑谷、竜魔、この三人は二週間一緒に特訓してたから、連携は取れやすいから組んでるんだろ?』

 

『じゃあ麗日は?』

 

『緑谷との連携がとりやすいからだろ』

 

『なるほど!さあまだ開始から二分と経ってねぇが、早くも混戦!混戦!各所で鉢巻き奪い合い!1000万狙わず、二位から四位狙いってのも悪くねえ!』

 

プレゼントマイクの実況に虎人にとってあまり聞きたくない者の高笑いが聞こえてきた。

 

「げぇ来たよクソ葡萄」

 

「奪い合い?違うぜこれは…一方的な略奪よ!」

 

「障子くん?一人ってまさか…」

 

「俺たちと同じ作戦みたいだね!」

 

「とりあえず逃げよう!」

 

「同感じゃ…ん?」

 

麗日の提案に賛同して虎人が逃げようとした時、足に何かがくっついて動けなくなり、そのくっついているものを見ると峰田のモギモギだった。

 

「なんじゃコレは!?」

 

「それは峰田くんの…」

 

「じゃあ障子の上のアレは…」

 

「その通りだぜ~竜魔」

 

障子の個性で姿を隠していた峰田が隙間から顔を覗かせていると、今度は長い舌と黒い何かかが襲い掛かってきた。

 

「おっと!」

 

「くっ…!」

 

緑谷が黒い何か、黒影(ダークシャドウ)と竜魔が長い舌を対処するとすぐに障子の腕の中に戻っていった。

 

「成程、蛙吹さんと常闇くんが鉢巻きを奪取するって役割か!」

 

『峰田チーム圧倒的体格差を利用し、まるで戦車だぜ!』

 

「竜魔やれ!」

 

「うん!緑谷くん少しの間一人でお願い!」

 

「!うん!」

 

メラミ!

 

「マジかよ!!」

 

『なんと麗日チーム、蒼月の足ごと焼いて危機を脱した!!』

 

『防御が手薄になるが、走りながら回復させているから選択としては間違いではないな』

 

峰田の拘束から逃れるために心人の呪文で足ごと焼いた虎人は、左足を使わないように走り回り、その間に心人がホイミで傷を治していた。

しかし、そんな状況でも狙ってくるものは後を絶たない今度は爆豪が爆破を利用して空中から仕掛けてきた。

 

「かっちゃん!」

 

「調子乗ってんじゃねえぞ!」

 

「ひっ…!」

 

「させない!」

 

爆豪の表情に怯える麗日だったが、緑谷が爆豪を蹴りで吹き飛ばした。

 

「くっ…」

(なんつう威力だよ)

 

『おおっと爆豪、麗日チームと同じ方法で一人で仕掛けるも緑谷に阻まれた!』

 

爆豪を退けると虎人の治療がある程度終え心人は防御に戻り、虎人も左足が使えるようになったことで機動力が戻り、俊敏な動きで他の騎馬と距離をおき続ける。この状況に緑谷は希望を持ち始めていた。

 

(蒼月の能力と僕と竜魔くんの攻撃力で対応、麗日さんは鉢巻きを守る事だけに専念してもらう事で、こんなにも対応できるなんて…これならいけるかもしれない!)

 

『さあ各チームのポイントはどうなっているのか?七分経過した現在のランクをスクリーンに表示するぜ!』

 

「あれ?何か…」

 

『あら?ちょっと待てよこれ…』

 

(山田さんの様子がおかしい)

「麗日さん、ランクどうなってるの?」

 

「え?えーっと…え…」

 

ランクのスクリーンが表示されると観客からざわめきが聞こえて、さらにはプレゼントマイクの様子がおかしいことに気付いた心人は麗日にランクのスクリーンを見てもらうと表示されたランクを疑うような表示がされていた。

 

「爆豪くん鉢巻き取られとる!」

 

「えっ!?」

 

「なんじゃと!」

 

「まさか…」

 

緑谷が爆豪の所を見ると、B組の物間に鉢巻きを奪われ、何か言われたのであろう激しい怒りが表れていた。

 

「B組はどうやら確実に上位に残る作戦だったみたい!」

 

「なるほど対抗心を感じる割にはやけに下の順位で固まったなって思っておったが、ワシらの観察が目的じゃったのか!」

 

「けど、少なくとも2組は敵は減ったね」

 

「そうだね!少しは楽になったんじゃない!」

 

少しは負担が減ったと思った矢先に虎人が急ブレーキをかけて後ろに下がると目の前に現れたのは既にいくつか鉢巻きを奪っていた焦凍のチームであった。

 

『さあ残り時間半分を切ったぞ!』

 

「そう上手くはいかないか」

 

「焦凍…」

 

『いよいよ騎馬戦は後半戦に突入!予想だにしないB組優勢の中、果たして1000万ポイントは誰に頭を垂れるのか!?』

 

「本気で取らせてもうよ」

 

二組の騎馬がにらみ合う中、虎人は全員の意見を求めた。

 

「ワシとしては、逃げると同時に他のポイントを奪うって考えなんじゃが、お前ら三人はどうじゃ?」

 

「ウチは逃げるに専念!」

 

「私も麗日さんと同じ意見!」

 

「呪文で牽制するから逃げるだけでお願い!」

 

「三対一で逃げる専念か…わかった!竜魔、緑谷、ワシは逃げるに専念するから前後左右頼むぞ!麗日爆豪はおそらく来ねえからもうビビるなよ!」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

「は、はい!」

 

多数決に大人しく従う虎人は残り時間を確実に逃げ切るために上空に飛んだ。

しかし、それを読んでいた焦凍は氷の足場を使ってある程度の高さまで追いかける。焦凍は個性の発動中その熱や冷気の影響を受けるため、僅かな炎で足場の氷を溶かさないよう体温を維持していた。

 

『轟チーム!氷の足場を作って麗日チームを逃がさない!しかし空中に行ける分麗日チームが有利だ!』

 

「どっちを応援したらいいのかしら?」

 

「悩むな…」

 

「親父と母さんは真面目すぎ両方応援すればいいんだよ!」

 

「そうだよ!二人とも今のところ確実に予選突破出来るんだから!」

 

「がんばれー二人とも!!」

 

轟家の声援が送られる中、上位二組の騎馬の激しい攻防が繰り広げていた。

炎が来れば緑谷吹き飛ばし、上鳴の放電が来れば虎人の髪の毛で防ぎ、八百万の個性で創造した遠距離武器の攻撃は心人が呪文で応戦する中、残り時間は一分を切っていた。

そんな激しい攻防に麗日は自身の不甲斐なさを心中で嘆いていた。

 

(ウチ完全にお荷物だ…デクちゃんたちが頑張ってるのにウチだけ何もしないなんて良いの?)

 

自分に何か出来ないのか考えている中、序盤の虎人の言葉が脳裏に過った。

 

「(勝ちてぇなら自分の限界を超えろよ!)」

 

(っ!?ある、この状況でウチに出来る事!)

「デクちゃん、蒼月くん、竜魔くんウチに考えがある!」

 

「「「ん?」」」

 

麗日が自分の考えを緑谷たちに言うと、緑谷は麗日の事を心配した。

 

「それじゃあ麗日さんに負担が!」

 

「皆の負担に比べれば全然平気!」

 

「…良いの?」

 

「うん少しくらいなら根性で耐える!」

 

「…吐くのは終わってからにしてくれよ」

 

「もちろん!」

 

「…わかったよ麗日さん!」

 

「「じゃあ(やって/やれ)!!」」

 

「はい!」

 

麗日が自分を含めた全員に触れると、虎人は飛ぶ力を解き、無重力状態のためその場に留まった。

そして心人が下に向かって呪文を、虎人は炎を放った。

 

ベギラマ!

 

ベギラマが焦凍の作った氷の足場を破壊すると同時に四人はさらに高い所まで飛んでいく。

 

『麗日チーム無重力状態になり、呪文と炎でさらに上に飛んだだけでなく、轟チームの足場を破壊した!』

 

『人が乗っている分その重さに蒼月の飛行能力が落ちるが、全員を無重力状態に呪文と炎でさらに高い場所まで飛ぶことで他のチームの距離をさらに広げたんだ。この終盤でされたらもう追い付けねえぞ』

 

『解説サンキューミイラマン!そしてタイムアップ!第二種目騎馬戦終了!』

 

プレゼントマイクの終了の声で全員の動きが止まり、空にいた緑谷たちは麗日の個性が解除されると、重力に従って落下し、麗日に衝撃が来ないように着地をした。

 

「麗日さん大丈夫?」

 

「ゴメン…ちょっと無理…」

 

「だー-!ここで吐くな馬鹿!!」

 

「八百万さん洗面器とビニール袋今すぐ頂戴!!」

 

個性による限界が来た事と先ほどの落下によって今にも嘔吐してしまいそうな麗日に虎人は慌て、心人は虎人から降りて急いで八百万に今必要な道具を求めた。

 

『んじゃあ早速上位四チーム見てみようか!』

 

プレゼントマイクがノリノリで上位四チームの発表を始めた。

 

『一位麗日チーム!』

 

「麗日さん気分どう?」

 

「吐けるもんは全部吐いとけ」

 

「うん気分もその分楽になるから吐いた方が良いよ!」

 

「三人とも…本当にゴメン…」

 

八百万に作ってもらった洗面器で吐く麗日に緑谷たちが対応する様子は、麗日の個性を知っている者たちから見たらどれ程麗日に負担が掛かっていたのかすぐに理解した。

 

『二位轟チーム!』

 

「ゴメン皆あの時足場を維持してれば…」

 

「轟さん一人のせいではありませんわ!」

 

「うむ!俺たちももっとスムーズに動けていれば良かった所もあったかな。君一人のせいじゃない!」

 

「そうだぜ!」

 

焦凍の謝罪に三人は自分達にも非があると言ってその場の反省会が行われた。

 

『三位爆豪チーム!』

 

「ああ、最後の緑谷たちに圧倒された…」

 

「まあ、三位でも上々だろ」

 

「そんな事思うかよ。あいつが…」

 

切島の視線の先に座っていた爆豪の雄叫びが響く。

 

『四位鉄哲…あれ?おい!心操チーム!?いつの間に逆転してたんだよ!』

 

「ご苦労さま」

 

「私のベイビー凄かったでしょう!」

 

『以上の四組が最終種目へ進出だー-!!』

 

最終種目への進出する者たちの発表が終え、昼の休憩が挟まれた。その後の午後の部より、最終種目がいよいよ開始される。

昼休憩になり、虎人は近くの木の上で休んでいると上鳴と峰田の姿を見かけ、二人の表情を見て何か企んでいる事に気付いた。

 

「‥‥‥何をする気じゃ?」

 

場合によっては、峰田はその場で制裁を加える事にし、上鳴は最終種目があるためそれが終わった後に行うと決め、再び仮眠を取り始めた。

その頃心人は焦凍を探していたが姿が見当たらずにいた。

そして、同じチームであった八百万に声をかける。

 

「八百万さん、焦凍どこに行ったか知らない?」

 

「先ほど緑谷さんと二人でどこかに行くところは見かけました」

 

「えっ!?どこ!?」

 

「あちらの方に…」

 

「ありがとう!」

 

八百万の言った方向に向かった心人。一方緑谷と焦凍は学校関係者専用入り口のところにいた。

 

「話って何?」

 

緑谷は爆豪とはまた違う緊張感を感じながら焦凍の要件を聞いた。

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