控室で麗日と少し会話し、出ていった直後控室から聞こえてくる麗日の泣き声に何も出来ない無力感と背中を押してもらった事で勝つ事を決心した緑谷だったが、曲がり角から
「エ、エンデヴァー!?」
「おーいたいた」
「エンデヴァー、何でこんな所に?」
「
「ど、どうも…」
「しかし調整を失敗すると自損…骨折するようだね…ご家族はいるかい?」
「え…は、はい」
「なら、ご家族のためにもそのような怪我はしないよう気を付けなさい。君に何かあれば悲しむのはご家族なんだ」
「は、はい」
エンデヴァーからの言葉に頷く頷く緑谷。その様子からエンデヴァーは自分の言い方に問題があると思い慌てて謝罪した。
「す、すまない!娘がいるためどうしても他人のようには感じられなくてついお節介を焼いてしまった!」
「い、いいえ!寧ろ私も早く怪我をしないようがんばります!」
「そ、そうか。じゃあ二回戦頑張って行きなさい。焦凍に遠慮はいらないからな!」
「はい!」
エンデヴァーに見送られステージに向かう緑谷だったが、ある事が脳裏を過り振り返ってエンデヴァーに聞いた。
「エンデヴァー!」
「ん?」
「さっき竜魔くんから私の事を聞いたって言ってましたけど、竜魔くんとはどういう関係で?」
「…親友から託された子であり、俺にとってもう一人の息子だ。最も俺がそう思っているだけだがな」
「…そうですか」
エンデヴァーの答えを聞いて緑谷はステージに向かって走っていく。
その姿を見た炎司は頭を掻いた。
「全く…
今は亡き親友の姿を思い出しながら、炎司は観客席に戻っていった。
『お待たせしましたなエブリバディ!二回戦第一試合はビックマッチだ!一回戦の圧勝で観客を文字通り凍りつかせた女!ヒーロー科轟焦凍!片やこっちは地味だったが楽勝勝ち!今度はどんな戦いを見せてくれるのか!ヒーロー科緑谷出久!』
「焦凍ー!頑張れー-!!」
「おいおい、一緒に特訓した緑谷じゃなくて轟応援すんのかよ…」
「え?だって
焦凍に全力で応援する心人の姿に瀬呂が茶々を入れようとするが、心人の言葉でその場にいたA組全員が静かになり、その直後凄まじい驚きの声が上がった。
『一緒に住んでる!!??』
「ちょっと待て!それホントか!?」
「うん。俺轟家に居候してる身」
修業時代、何度も心人から話を聞かされていた虎人も同居していたのは知らずに皆と同じくらい驚いて声を上げる。
そして
「なんだよその恵まれすぎた環境はよう!羨ましすぎるぞ竜魔!!」
「お前らそれで幼馴染の関係なのか?」
「?」
「ああ、もういいわかった…」
((((蒼月/虎ちゃん)、気持ち凄くわかる!!)))
何かおかしなことでもあるのかと言わんばかりの心人の表情を見て、色々と理解した虎人は疲れ切った表情をしてステージに視線を向けると、その場にいた心人以外のクラス全員が虎人に同情した。
『今回の体育祭、両者トップクラスの成績にしてこの本戦で唯一の女子対決!緑谷バーサス轟!スタート!』
開始の合図と同時に焦凍の氷が緑谷に迫るが、緑谷は個性を発動させるとなんと跳躍した。
そして出来上がった氷を足場にして焦凍との間合いをつめる。しかし、焦凍はそれを阻止するために炎を出して、緑谷を突き放す。
『なんと緑谷、轟の氷を足場にして一気に距離を詰めた!しかし轟も炎で緑谷を寄せ付けない!!』
『既に出来上がった氷は触っても凍らないからそれを利用したんだろうな』
「やっぱり緑谷さんそう行くかー-!!」
「わかってたの!?」
「特訓中、同じやり方で俺のヒャド系呪文避けてたからもしかしてと思ってた…」
「となると、緑谷は轟との距離を潰して懐に入れば有利、轟は自身の距離を保ち続ければ有利ということか」
常闇の言う通り、ステージでは緑谷と焦凍も同じことを考えていた。
(やっぱり焦凍さんは接近戦はやりたくないってことだね。だったら…)
(思ってたより緑谷の動きが速い…さっきは何とか対応できたけどやっぱり出し惜しみはしてられない)
(さっきより速く動く!)
(アレを使うしかない!)
緑谷が先程より速く動き、焦凍に攻撃を繰り出そうとするとその場から焦凍の姿が
「えっ?」
『おいおいこりゃあ目の錯覚か?』
何が起きたか分からない緑谷であったが、観客席などで離れて見ていた者たちにはすぐに何が起こったのか分かった。その光景に気付いた者は言葉を失っており、心人にいたっては驚きのあまり口が大きく開いていた。
『轟が空に浮いてるぞ!!』
『アイツ…まさか呪文を使えるようになったのか!?』
「いつの間に呪文なんて覚えたの!?しかも飛翔呪文のトベルーラのを!」
心人も知らなかったことに驚いていた。さらに驚く展開を見る事になった。
「本当は蒼月との再戦の時まで隠しておこうと思ってたんだけど、お前相手に個性の戦法は通じないってさっきわかったから別の戦法で全力で行く!!」
焦凍の両手に光の球体が現れ、それを放った。
イオ!
連続で放つイオに緑谷は避ける事に専念する。
呪文を使用する際は集中力が必要であり、体力の消費もあるため焦凍が降りてきたタイミングまで持ち堪えることに切り替えた。
観客席で焦凍に呪文を教えたであろうその者に冬美は心当たりがあり、その者を睨んだ。
「燈矢兄でしょう…焦凍に呪文教えたの」
「個性訓練を軽くしつつ焦凍を強くするには
「アレまで教えてたら心人くんに嫌われるよ」
「言わないで夏くん!」
燈矢の言う通り、最近の焦凍の個性訓練は心人の訓練より厳しい所があり、あまりにも無茶をし過ぎていたが、言っても聞くとは限らないと考え、呪文を教える事を条件に個性訓練を軽くさせた。
そして使える手段を増やしたことで、焦凍は自身が有利の状況に持ちこむことが出来ていた。
「くっ…」
(爆発のせいで視界がだんだん狭まってきた。これ以上は…)
緑谷が賭けに出ようとした時、焦凍が地面から降りると凄まじい氷を発生させていき緑谷はそれを避けて焦凍との距離を一気に詰める。
(なるべく近くで、ありったけを…!)
(心人…見てて!)
「行けー--!!焦凍!!」
二人の攻撃がぶつかろうとした時、セメントスの壁が出現したが、一瞬で消し飛び凄まじいい風が起こった。
その風に多くの者が身を守っている中、心人は結果を誰よりも結果を見届けたい一心でステージの爆煙が消えるのを待っていた。
『何?今の…お前のクラス何なの?』
『さっき一気に空気が冷やされ、瞬間的に熱され膨張したんだ』
『それでこの爆風ってどんだけ高熱だよ!』
「焦凍…」
結果を早く知りたい心人は気が気でなく、煙が晴れるとその表情は変わっていった。
緑谷が壁まで吹き飛ばされており、ステージに立っていたのは焦凍であった。
『み、緑谷さん場外!轟さん三回戦進出!』
「やったーー!!」
焦凍の勝利に本人以上に喜んでいると思われるほどの喜びの声を上げる心人。その様子に虎人は呆れてため息をつき、次は自分の番であるため観客席から離れていった。
ステージの修復が終え、二回戦第二試合は虎人対飯田の勝負となった。
『さて!ステージの修復が完了したので次の試合行くぜ!個性を使わずに一回戦圧勝!ここで個性を出してほしいね!ヒーロー科蒼月虎人!バーサス!一回戦はほぼ戦わずに勝利!お前も目立つ活躍見せろよ!ヒーロー科飯田天哉!』
「竜魔はこの勝負どう見る?」
「蒼月は飯田くんのスピードの対応を間違えないこと、飯田くんは蒼月の僅かなスキも見逃さないこと。このどちらかで勝負は決まる」
「飯田にも勝機はあるってことか?」
「うん」
『レディースタート!』
プレゼントマイクの合図と同時に飯田は走って距離を詰めようとするが、虎人は変身し雷で飯田を攻撃する。その攻撃を飯田は危なげなく回避するが、距離を詰めるのが難しい状況であった。
『おおっと蒼月!雷で飯田を牽制する接近戦をする気は無いと見える!』
『飯田の武器を予測し、その危険性を理解しての牽制だろ』
(やはり俺の狙いは読まれているか)
(加速のある蹴りなんて凶悪な鈍器以外の何物でもない。このまま距離を保ちつつじわじわとやって体力切れまでいきたいのう)
(持久戦じゃ蒼月の方が分がある。ならば!)
通常のスピードでは勝ち目がないと悟った飯田は姿勢を低くすると足のマフラーから火が出る。
(こいつは…!)
「レシプロ…バースト!」
今まで隠していた飯田の奥の手に、虎人が警戒した瞬間。飯田は既に虎人を自身の間合いに入れていた。
(もらった!)
自身の勝利を確信し必殺の蹴りが虎人の頭部を狙うが、虎人は体を僅かに仰け反らせ飯田の蹴りを躱した。
(なに!?)
『マジかよ!あのスピード避けれるの!?』
そして飯田の足を掴み、後ろに放り投げると、飯田の体はステージの外に落ちた。
「飯田君場外!蒼月君の勝利!」
「くっ…兄さん…」
「死んだ爺さんの言う通りじゃった」
「え?」
敗北に悔しがる飯田に虎人は語り出した。
「お前の祖父と父はそのスピードで人々を救い、悪を倒す。そのためならどんな苦痛にも耐えられる不屈の一家と小さい時からお前の一家に関する事を聞かされた」
「あ…」
「今回はその情報と、クソ師匠の速い動きに慣れてたから取れた勝ちじゃ。早よ追い付てこい!」
「…ああ!もちろんだ!」
「青い!青いわ!」
堅い握手をする二人の姿にミッドナイトが悶える。
そして二回戦第三試合は、芦戸対心人であった。
『一回戦は見事な身のこなしで勝利!ヒーロー科芦戸三奈!バースト!圧倒的戦闘能力で推薦入学者に勝利!ヒーロー科竜魔心人!スタート!』
プレゼントマイクの合図と同時に心人は呪文で先手を取る。
イオ
「うわあ!」
イオを連続で放ち続ける心人に対して、芦戸は一回戦同様酸で動きをスムーズにして回避していく。
『竜魔!連続して呪文を使うが一発も当たらない!』
「そんな攻撃じゃ当たらないよ!」
「‥‥‥」
芦戸は心人を挑発するが、心人は反応せずイオを放ち続ける。
その様子を戻ってきた虎人が見て、呆れていた。
「あの馬鹿…完全に竜魔の策に嵌っておる」
「虎ちゃんどういうこと?」
「見てろ」
葉隠の質問に答えず、試合を見るように促すとその答えがすぐにわかった。
連続で放ったイオの一発が芦戸の進行ルートの先に直撃した。
「ちょっ!」
芦戸は咄嗟にジャンプすると、心人は個性を発動させて身体能力向上を向上させれると空中にいる芦戸目掛けて体当たりをし、空中で体格差を活かした体当たりに耐えられるはずもなく、芦戸の体は、ステージの外に落とされていた。
『芦戸さん場外!竜魔君の勝利!』
「竜魔ずっと芦戸の上半身を狙って打ち続けたのは、足元には狙わないと思わせるためでさっきの一発を避けるために一瞬意識全てが跳躍で集中しちまう。竜魔はその一瞬を狙ったんじゃ」
「すごーい!」
(流石心人!)
こうして心人も準決勝へと進出した。
そして二回戦第四試合は切島対爆豪の試合で、最初は切島の猛攻を爆豪は回避に徹していたが、切島は長時間個性を発動させ続けた事で硬化が間に合わなくなり、それに気づいた爆豪の猛攻に耐えられなくなり戦闘不能となった。
『これでベスト4が出揃ったー!』
「さて、ワシも行ってくるかの」
「虎ちゃん頑張って!」
「焦凍!」
「なに?」
「頑張って!」
「うん!」
準決勝第一試合は焦凍対虎人、A組の皆の記憶には対人訓練の出来事を思い浮かべる。
焦凍にとって、この試合は心人の目標達成に近づくことが出来る試合であり、その最初の大きな障害として虎人に勝つことだと考えていた。
一方虎人はこの試合からおそらく個性をより強く開放しなければならないと考えており、既に不利な事態になった際の対処方法を頭に思い浮かべながら、ステージに向かった。