準決勝第一試合の組み合わせである焦凍と
『準決勝第一試合!個人的にはこの準決勝の二試合はスゲェ注目してるぜ!ヒーロー科蒼月虎人!バーサス!ヒーロー科轟焦凍!』
(呪文が使えるようになったのはおそらく二週間の間…しかし使えるかの有無によっては大きく変わる。何より二回戦で見せたあの氷はおそらく…)
『スタート!』
ヒャド!
プレゼントマイクの合図と同時に焦凍は
『蒼月、轟の氷の拘束を上空で飛ぶことで逃れた!』
「そうするしかないよね!」
メラ!
今度は
(やっぱりそうじゃ…コイツのメラとヒャドは竜魔のより強い!)
出来上がった氷の上に降り、虎人は焦凍の動きを警戒しながら次に手を考えていた。
(個性故に適性があったか、左右で出された時の威力は竜魔の使うワンランク上の呪文に匹敵するぞ!)
ヒャド!
(クソッ!めんどくさい!)
焦凍は先程より大きな氷を展開させると、虎人は再び空に逃げる。焦凍の手札が他にもあるのではないかと考え雷で攻撃する。
「無駄だ!」
ギラ!
雷とギラがぶつかり爆発が起きると、虎人は爆煙にのまれないよう更に上空に飛ぶ。お互いの姿を確認出来ていていない間に虎人は焦凍の手札を推測した。
(あの様子じゃと、他の呪文も使えるが初級クラスと考えるのが妥当じゃなの…仕方ない接近戦に持ち込むか!)
爆煙が完全に晴れる前にステージに降りると同時に駆け出した虎人、焦凍は迷わず氷を仕掛ける。
迫りくる氷を拳で打ち砕いていき、焦凍との距離を縮めていく虎人は勝負を決めるため姿勢を低くしてツッコむと、焦凍は笑みを浮かべた。
「ありがとう」
「?」
「接近戦を選んでくれて!」
ヒャダルコ!
「何!?」
完全に虎人の予想を超えた氷の規模の攻撃は外の者たちでも感じる程の揺れを引き起こし、一回戦で放った氷壁以上の高さの氷壁を展開させた。
実況のプレゼントマイクはその衝撃でサングラスが落ち、相澤も一回戦の時以上に目を見開いていた。
「クソ!油断した!」
(時期の短さと何発も初級クラスの呪文ばかり使っておったから、それ以上の呪文が使えないと完全に思い込んでおった)
咄嗟の判断に上空に逃れようとした虎人も四肢を完全に氷に拘束され身動きが出来なくなっていたが、焦凍も負担が大きかったようだった。
「ハァ…ハァ…」
両手が所々凍っており、肩で呼吸し吐く息は白くなっていた。
個性と呪文を同時発動させての超大氷壁は、凄まじい威力であったが、個性から来る反動と呪文を連発したことによる消耗が焦凍に大きな負担となっていた。
『い、一回戦を遥かに超える超大氷壁で蒼月の動きを封じた轟!しかし、どうやら轟の負担も大きいようだ!』
『蒼月の油断を誘うためとは言え、消耗し過ぎたな』
「早くトドメを刺すんだ焦凍!」
「!
「四肢を拘束した程度じゃ蒼月の動きは止められない!ギラ系かイオ系でトドメを刺すか氷で全身凍らせて氷像にするくらいの事をしないと勝てないよ!」
(そこまでしなくても…)
「あーはっはっはっ!!」
心人の言葉に流石の焦凍もやりすぎと考え攻撃の手を止める。その様子を見ていた蒼月は大笑いし始める。
「今回ばかりは竜魔の馬鹿が正しかったわ!」
虎人は凄まじく力み始め、四肢から聞きたくない音が聞こえだしていた。
『お…おい…嘘だろ…』
『アイツまさか…』
相澤たちの顔色も悪くなり、主審のミッドナイトも顔色が悪くなり出していた。
「竜魔の言う通りにしてたら勝ててたのに…な!!」
氷で拘束された自身の四肢を
「くっ…!」
間一髪回避するが、無数の足が出来たともいえる虎人の機動力は先ほどよりも優れており、焦凍の作った氷さえも足場としていた。
『あ、蒼月!まさかのイカれたやり方で拘束から逃れた!』
『失血死する気か!?』
「そうなる前に勝てば良いだけじゃ!」
「ちっ!…!?」
再び焦凍に仕掛ける虎人を迎撃しようとしたが、動けなくなるほどの体温が低下した焦凍は腕を上げる事もできなった。
「お前は強かった!しかし、ワシがそれ以上のモノを持ってただけの事よ!」
抵抗も出来ないほど動けなくなった焦凍に体当たりをかまし、焦凍はそのままステージに落ちた。
『と、轟さん場外!蒼月君の勝利!』
『あ、蒼月!誰も予想していなかった方法で危機を脱し、決勝戦進出決定!』
引きちぎった手足を髪で氷壁から削り出しくっつけると、手足は虎人の意思の通りに動いていた。
(もしあの体当たりで轟の動ける体力が残っていたら…結果は逆じゃったかもしれんの)
救護ロボットに運ばれていく焦凍を見届けた虎人はそのままステージを降りていった。
一方、氷の片付けなどで次の番が先になった事と焦凍を心配した心人は急いで焦凍のいるところに向かって行った。
先程リカバリーガールのところに向かったがリカバリーガールからいないと知らされ、控室の扉を力いっぱい開ける。
そこで椅子に座っている焦凍を見つけた。
「焦凍!」
「!心人…」
汗を流している心人の様子を見て走って来てくれた事に気付いた焦凍は何とか自分の気持ちを悟られないよう誤魔化そうとした。
「ゴメン心人…せっかくアドバイスしてくれたのに、無視しちゃって…負けて当然だよね」
「焦凍…」
「次の試合応援して…」
聞きたくない言葉を遮りるために心人は焦凍を抱きしめる。
「心人…」
「焦凍…幼馴染なんだから遠慮しなくて良いよ俺は焦凍の本音が聞きたい」
心人の優しい言葉に焦凍は甘えてはいけないと自分を律しようとするが、悔しさや自身の判断の甘さからの後悔によって、それは叶わなかった。
「スン…悔しい…」
「うん」
「せっかく燈矢兄が呪文教えてくれたのに…」
「うん」
「勝てると思ったのに…」
「うん」
焦凍の呟きにただ頷く心人。しかしその瞳は怒りで満ちていた。そして焦凍がある程度落ち着くとそろそろ時間になる事に気付いた心人はステージに向かって行った。
「行ってくる」
「ありがとう心人。気をつけて」
ステージではプレゼントマイクが先程の光景を忘れようとしているのか先ほどより声を大きくして実況を行っていた。
『さあ!!ステージも元通りになったので準決勝第二試合を始めるぜ!!ヒーロー科竜魔心人!!バーサスヒーロー科爆豪勝己!!』
「なあなんか竜魔のヤツ…」
「うん、なんか怖え…」
いつもと違う雰囲気で現れた心人に不安な声が上がる中、爆豪は心人に声をかけた。
「おい紋章野郎!一、二回戦みたいにぬるい手使うんじゃねえぞ」
「君相手にそんなことするつもりはないけど、これだけは言わせて」
「ああ?」
「今の君じゃ俺には勝てない」
『スタート!』
「言うじゃねえか!!」
プレゼントマイクの合図と同時に爆豪は心人の懐に入り渾身の一撃を放った。
「死ね!!」
爆発の威力は切島の時以上のものであり、その爆煙がその凄まじさを物語っていた。
『爆豪の渾身の一撃がさく裂した!!』
『竜魔の実力を把握した上で今出せる最大出力をぶつける。間違ってない判断だ』
(なんだ今の?何かに弾かれた)
『しかし、反射速度ならそこいらプロ以上はある竜魔相手じゃ余裕で対応されてるだろうな』
爆煙が消えると、心人は水色のオーラのようなものを纏っており、爆豪の攻撃がまるでなかったかのように無傷でその場に立っていた。
「あ?なんだそりゃ?」
「やっぱり情報収集を怠ったみたいだね。緑谷さんから君の個性の情報は全て知ってるからハンデとして教えるよ」
心人の体からオーラのようなものが消えると、心人は自身の右手を爆豪に向けて説明を始めた。
「俺がこの紋章の力を全開にすれば、俺の体は
「もしかしてあの時対人訓練の時無傷だったのって…」
「青山のレーザーが当たる直前に防御してただけじゃ」
「俺のアイデンティティが…!」
心人の解説で芦戸はようやく対人訓練の時に無傷だったことの謎が解けスッキリしたような表情になっていたが、切島は被っただけじゃなく自分より強い事を思い知らされ打ちひしがれていた。
「はっ!わざわざ能力説明とか自分で弱点教えてるなんて、なめてんのか!!」
「まあ確かにね、既にどう攻略すれば良いのか分かっているんだろ?」
「当たり前だ!」
(さっき以上に威力で殺す!!)
低姿勢からの突進する爆豪の手のひらが心人に触れようとした時、心人は爆豪の手を払う。そして、爆破が払われた方に向かって放たれた。
「は…」
「今の君の動きに対応するのに
『竜魔、なんと個性を使わずに爆豪の攻撃を逸らした!』
『個性による消耗を最低限にまで抑えての対応だろう』
「次はどうするの爆豪くん?」
「なめんな!!」
今度は距離をおいての爆破を仕掛けようとするが、心人は常に一定の距離を保つために爆豪の傍に離れず同じ方法で爆破の軌道を変える。
『爆豪距離をおいて戦いたいが竜魔がそれを許さない!』
「きめぇんだよ!!」
心人の顔面に手を翳すが、やはり心人は冷静に爆豪の攻撃を捌く。
いつまでも攻撃して来ず、ただ守る事に専念している心人の様子に爆豪は我慢の限界だった。
「テメェなめてんのか!!さっきから自分の身を守ってばっかでよ…やる気あんのか!?」
「‥‥‥ならお願い」
「あ?」
「ちゃんと対応してね」
「!?」
静かに言う心人の姿に爆豪はかつてない程の汗を流す。
そのまま心人は両腕を静かに上げ爆豪に向けると、爆豪は自身にとって最もベストな体勢を構えた。
そして、
マヒャデドス
次の瞬間、大きく会場が揺れステージでは一回戦で焦凍が出した氷と同等の氷壁がステージの半分を凍結させていた。
『ま、マジかよ…』
『今日はよく凍るな』
プレゼントマイクですら言葉を失う光景に、観客席から見ていた虎人も表情を引きつらせていた。
「虎ちゃん、竜魔くんがあんな凄い呪文使えてたって知ってた?」
「知るわけないじゃろ」
(一ヶ月でこれほどとは、クソ師匠の予想を超えておるかもしれんな)
葉隠の問いに知らないと否定する虎人だが、昼の休憩時に心人の言っていた本気が自身の予想を遥かに超えているものであると理解させられ、決勝戦で戦う際は覚悟しなければならないと腹を括った。
しかし、この試合の決着は今だに決していなかった。氷の中から凄まじい爆発音が響いてきたからである。
「なんだこの音?」
「爆豪ちゃんの仕業ね」
爆発音が大きくなっていき遂には氷壁の表面にヒビが入っていき、そこから氷壁を破って爆豪が現れた。
「爆発で氷結を防いでモグラみてえに掘り進んだのか!?」
「んなけったいな」
「いやそれが正解じゃ」
(しかし…)
爆豪の選択を評価する虎人であったが、爆豪の様子をみてこれ以上の勝負は決したと判断した。
「今のうちに言っておくよ爆豪くん、ギブアップして」
「…んだと?」
「俺の氷結は焦凍の氷結とは違う。自身についた氷を爆破で剥がすと同時に爆破で進んだようだけど、その間にも氷壁の冷気で体温は低下しているでしょう」
「‥‥‥」
「君は動き続ける程調子を上げるスロースタータータイプだけど、俺なら君のギアが入りきる前に仕留める事は容易なのは君だって気付いているはずだよ」
「‥‥‥テメェ」
「だから「調子乗ってんじゃねえぞ紋章野郎!!」っ!」
「さっきから聞いてみりゃあ「勝てねえ」だあ?「降参しろ」だあ?んな選択ねえんだよ!!」
「‥‥‥」
「テメェの宣誓に最も反してるのはテメェ自身なんだよ!!本気で来い!!じゃあねえとどんな結果だろうと俺は納得出来ねぇんだよ!!!」
「‥‥‥わかった」
爆豪の訴えで自身がいかに相手を貶しているのか気付いた心人は、左手を正面に構え右手を引き正拳突きを放つ構えをする。
その構えからどのような攻撃を繰り出すのか悟った虎人は椅子から立ち上がった。
「やべぇ!避けろ爆豪!!」
「行くぞコラ!!!」
(マヒャデドスの氷と紋章の力を合わせた必殺技…)
榴弾砲着弾!!
USJとは違い氷の竜が放たれ、爆豪も回転しつつ最大出力のエネルギーを掌に溜めて突進する。
氷の竜と爆豪の爆破がぶつかり合い、大爆発を引き起こし凄まじい爆風が観客席にまで吹いた。
観客席にいた虎人も全力で風を起こし、爆風を上に逸らていた。
「あの馬鹿どもこっちの事も考えろ!」
「虎ちゃんありがとう!」
『何今の?あの二人どんだけだよ…』
『爆豪は全力の攻撃を竜魔は爆豪を無力化するレベルの全力でのぶつかり合いの結果だろう』
『アレだけの威力をコントロールできる竜魔もすげえが、アレだけの威力を出せる爆豪もすげえな…しかし、これで勝者が決したか?』
爆煙によって状況がわからなかったが、次第に爆煙が晴れていき、ステージの状況が確認出来た。その状況を確認すると主審のミッドナイトが結果を口にした。
『爆豪君場外!竜魔君の勝利!』
爆豪は両腕が凍って場外で倒れ、心人は上着の半分が焼き切れていたがステージに立っていた。
『これで決勝は蒼月対竜魔に決定だ!』
ステージから虎人を睨む心人と、観客席から竜魔を見下ろす虎人。
決勝戦はまさに竜と虎の激突のなるのをA組の誰もがそう考えていた。