東京にあるヒーロー事務所に到着し、中に入った
「心人君!!」
「ようこそ!!」
「竜騎士ヒーロー事務所へ!!」
「体育祭ぶりだね三人とも」
事務所の最も広い自由室で『ようこそ&おかえり心人君!!ここからヒーローとして第一歩を!!』という垂れ幕を背景にボラホーン、ガルダンディ、ラーハルトの三人に歓迎された心人は笑ってその歓迎を受けた。
「クロコダインは?」
「ここだ」
もう一人のヒーローの居場所を尋ねると心人が入ってきた自由室の扉からクロコダインが入ってきた。
「今日は今までの話を聞かせてほしい」
「その後夕方からヒーロー活動を行います」
「メインは俺ですが、場合によってはボラホーン達と同行する事になる可能性があるのでそれは覚えておいてください」
「うまい料理食べながら教えてくれ!」
「わかった」
(焦凍が炎司さんの所に着くのは夕方ごろだからもしかしたら会えるかも。緑谷さんは空彦じいちゃんの所に行ったみたいだけど大丈夫かな…)
自由室の中心にある様々な料理が盛られた皿が並ぶ机と人数分の椅子に向かいながら心人は、焦凍の会える事に期待し、緑谷の安全の心配をしていた。
その頃グラントリノの調子について来られていなかった緑谷だったが、ようやくグラントリノがオールマイトの先生であることを認識し、コスチュームに着替え終えると事務所の扉からノックの音が聞こえてきた。
「おーい
「もっと丁寧にノックしなよ」
「この声は…」
「私出ます」
若い男女の声をグラントリノが来訪者に反応し、緑谷が扉を開けると白髪の男とダークブルーとピンクの長髪の女性でプロヒーローのレディ・ナガンがそこにいた。
「レ、レディ・ナガン!?」
「ほら見ろ
「ハイハイそうですね」
「久しぶりだな。いつ日本に?」
「おお、久しぶりだな酉野!戻ったのはさっきだ!跳んできた!」
「はあ…」
白髪の男と面識があるのかグラントリノはまるで旧知の知り合いと話すように会話を始め、白髪の男もグラントリノを本名で呼んでいた。
(グラントリノの知り合い?だけど見た目はホークスと同じくらいだし、もしかしてあの人が子供の時から知り合いなのかな?)
「所でそこの緑色の髪してるのは、緑谷出久で間違いないか?」
「え…あ、はい!」
「成程…オールマイト、バカトシが選んだ
「っ!?」
白髪の男の言葉に緑谷は強い警戒心を持つ。ただでさえ理解が苦しい状況下で白髪の男の口からオールマイトとOFAの秘密が出てくれば警戒心は余計に強くなる。
そんな緑谷の様子を見て、グラントリノが弁護する。
「落ち着け小娘。コイツはオールマイトに戦いの基礎を教えた師だ」
「え…」
「付け加えると、トシよりもOFAと関りが深い。交友関係があったのは四代目からだから…だいだい70年以上だな」
「70年…」
(とてもそんな人とは見えない。少なくともグラントリノ以上の年齢って事だけど本当に何者?)
「ま、俺の事は良い。お前の実力を見せてもらおうか」
「…っ!」
白髪の男がそう言って構えると、緑谷も反射的に構えた。緑谷が構えると白髪の男は左の拳を繰り出し、緑谷は個性を使ってそれを流した。
「ほう…」
(早いし重い!今のはどう見ても小手調べくらいの力で攻撃した。つまり、この人は全然本気を出してない…なら!)
緑谷は、体育祭に向けて個性制御の特訓のために心人と
「いい緑谷さん?緑谷さんの力はパワー増強型の個性に比べるとまだ弱い。だけど自分より強い相手と逆転する事は出来る」
「そうなの?」
「しかし気を付けろ。一度でも失敗すると勝機はさらに薄くなる」
「…どんな方法?」
「簡単じゃ…最も強い部位で最も強い攻撃をする」
「最も強い部位で…最も強い攻撃…」
蒼月の言葉の意味を知り、実戦でも使えるようになったのは体育祭が終えた頃であり、今の緑谷は個性の扱い方がさらに器用になっていた。
(胴体はがら空き…そこしかない)
緑谷は僅かにOFAの出力を上げる。
(OFA6%・フルカウル・シュートスタイル!)
過去最速で最大の蹴りを白髪の男のがら空きの胴体を狙って蹴りを放つ。腕は一切対応に動かさない様子から緑谷は一撃当たる確信を得る。
(まずは一撃!)
しかし、緑谷の蹴りは寸前で
(なんだ!?今何かに弾かれた!いやそれよりも今の警戒を強めてしまった!)
「成程…そういうことか…」
(取り合ず、守りに移らないと…っ!?)
白髪の男が片手を鉄砲のような形をさせ緑谷に向けると、緑谷は次にくる攻撃を対応するために動こうとしたが、自身に起きた異変に混乱していた。
(動けない!?さっきまでは普通に動けてたのに…この人の個性か?)
「緑谷…休憩だ。個性を解くからお前も解け」
「…は、はい」
白髪の男が手を下すと緑谷の体も動けるようになり、緑谷は個性を解除した。
そして白髪の男は床に向かって、
「え…」
「お前のその動き、心人と虎人から教わったのか?」
「え?二人をご存知なんですか?」
「ご存知もなにも、アイツらの師匠だよ俺は」
「え…ええ!!」
「ったくトシの奴、何にも話してないんだな」
「あ、あの先ほどから聞きたいことがいっぱいあるのですが…それより指は?」
「指?治ってるぞ」
緑谷に指の心配をされた男は平然と指を見せる。そこには確かに飛ばしたはずの指がちゃんと繋がっていた。
「え?でも…」
「それより、お前の質問に答える前に俺の質問答えろ緑谷」
「は、はい!」
「お前は
(っ!?急に何を?いやでもその質問だと…)
「はい、え!?なんで口が勝手に…」
「良かった…最後の最後で言う事聞いてたよあの傲慢バカトシ」
「あ、あのそろそろ聞いても良いですか?」
「ん?」
「あなたの一体?」
「えっ…ああしまった!まだちゃんと自己紹介してなかったな!」
白髪の男は自分がまだちゃんと自己紹介をしていなかったことを思い出し、緑谷に自己紹介をした。
「俺は名前は
「ヴィクトル…あ、あのもしかして超常黎明期から誕生した都市伝説である『戦勝神ヴィクトール』と何か関係が?」
「その伝説の張本人だし、内容はほとんど合ってるぞ…」
「え…ええええええ!!??」
白髪の男、零の言葉にオールマイトと出会った時と同じくらいのリアクションで驚く。
戦勝神ヴィクトール伝説…超常黎明期から存在し、その内容ははっきり言ってフィクションと言われている。
曰く超常黎明期から生きており今も生きているや、曰く超常黎明期から今日まで世界で内乱などが起きていないのはヴィクトールが存在するからや、曰く世界中の最高峰の刑務所を全て脱獄しているなど、誰もが信じられない事ばかりであり、現代では当時の環境から生まれた架空の超人と言われていた。
しかし、零の先ほどの強さにまるで誇るわけでもなくただの事実として言う態度から偽る者のそれとは正反対の態度から緑谷の中で信憑性が増す。
「なあ零、ここの冷蔵庫まともな食べ物入ってないぞ」
「何がある?」
「甘い物が多数」
「筒美、緑谷、酉野を連れて買い物行ってこい」
「え…」
「おい!」
「了解」
「何勝手に仕切ってんだ!ここは俺の家でもあるんだぞ!」
「年長者兼体術の師であらゆる面で知識が豊富な俺の言葉に逆らう気か酉野?」
「関係ねえだろ!」
「血糖値上げまくるモン食わせると思うか!筒美連れてけ!」
「グラントリノさん諦めな、これ以上いくと実力行使されるよ」
「…ちっ!」
「君を行くよ」
「え!?あ、はい!」
レディ・ナガンは緑谷とグラントリノを連れて買い物に出かけると、零も何やら用事があるようだった。
「さて、アイツらに結果を聞きに行くか」
零の目の前の空間にヒビが入り、やがてガラスのように割れると穴が出来ると、その先に広がっていたのは大きなビルであった。零は軽い足取りで穴の先に入り、向こう側に着くと穴がきれいに塞がり、ヒビも無くなっていた。
「さてと…お!あった」
ビルに設置されている防犯カメラを見つけると、そこに近づくためにまるで
「おーい!今すぐ開けろ~さもないと入り口を俺特性のロケットランチャーで吹き飛ばすぞ~」
軽いノリで強迫する零、しかしそれからすぐに入り口が開く。
零はそのままビル内に入っていき、エレベーターで目的の階に登り、目的の部屋に到着する。
目的の部屋に入るとスーツを着た中年の女性、現公安委員会会長がそこにいた。
「よう久しぶりだな現会長サマ」
「何度も言うけど、ああいう強迫はやめて。ちょっとした騒ぎになったわよ」
「堅い事言うなよ~それとも『タルタロスを吹き飛ばす』の方が良いか?」
「もっとやめて」
「へっそれより頼んでたのは?」
「ここに」
会長が差し出したパソコンを受け取ると、零はコードを受け取ったパソコンと自分の額に差し込みパソコンの中の情報が頭に流れ込む。零の目はまるで文章を読むかのように動き十秒ほどで情報を全て記憶した。必要な情報を得た零はパソコンを会長に返却した。
「アイツの手掛かりはなしか…」
「文句は言わないでね。これでも可能な限りで尽力しているのだから」
「分かってるよ。前会長と違ってお前は物分かりが良いからな。それと
「ホークスを使ってあの子に近づこうとしたって考えているようだけど、それは誤解よ。あの子への指名はホークスの個人的な興味だから」
「あっそ…ならいいが、じゃあアイツの手掛かり掴んだらすぐ教えろよ」
「ええ」
「ああそうそう、各国と協力するのは良いが、俺の監視に回すな不愉快だ」
零は最後に文句を言って部屋から出ると会長は大きく息を吐き、自分の椅子に座り込む。
(なんとかなりましたが、やはり疲れるわね…)
会長はパソコンを開き、零に関する資料を情報を何度目かわからない閲覧を始める。
そこに記載されていたのは、あまりのも世間で公表される内容ではなかった。
『零に関する情報
前公安委員会会長殺害の最重要関係者、タルタロス連続脱獄及び侵入、国連本部単体制圧等
個性…世のあらゆるものを否定する個性、現在判明している否定能力『不死』、『不減』、『不変』、『不可触』、『不公平』、『不忘』、『不燃』、『不治』、『不壊』、『不停止』、『不燃』、『不信』、『不可避』、その他多数の個性を所有している可能性は大いにある。
また、呪文等個性以外の力も所持している。』
「はあ…まさに世の理不尽を体現したかのような存在ね」
会長は、零に関する情報をある程度読み終えると、ただただ零がこちらに矛を向けない事を祈る事しか出来なかった。
その頃、零はグラントリノの所に戻り、同じ時間に帰ってきた緑谷たちが購入した食材を調理し、早い昼食の準備をしていた。調理の手伝いで傍に立っている緑谷は零の存在に気が気ではなかったが…
しかし、零はそんな緑谷にお構いないしで継承して経緯や、心人と虎人に知られた理由を根掘り葉掘り聞きだしていた。
「つまり、総合的な結論で言うとトシの不注意だったって事だな」
「えっと…その…」
「しかし、アイツらから戦い方を教わっていたって気づいた時は納得したぜ。トシの教える技術はゴミだからずっと気になってたんだよ」
「そう言えば、零さんは二人にどんな修業させてたんですか?」
「ん?普通に実戦形式の訓練で個性の限界突破と色んな場所に行ってサバイバルさせた」
「例えばどんなことを?」
「ナイアガラの滝で個性アリの滝登りさせて…」
「ん?」
「グランドキャニオンの谷底から個性無しで登らせ…」
「はい?」
「夏のアマゾンと夜のアフリカに放り込んだり…」
「え?」
「北極海泳がしたり」
「あの?」
「エベレスト登頂に置き去りにして下山させたりしたな」
「‥‥‥」
あまりの内容に言葉を失う緑谷。しかし、その内容を聞いた事で二人の強さの秘密の一つを知る事になるのだが、今の緑谷はその事実に気付くことはなかった。
そして、二人が師匠に関してかなり厳しい言葉で表現して事を思い出し、決して間違いではないかったということしか緑谷は気づけなかった。
その後、昼食を食べた後、夕食になるまでずっと実戦形式の特訓をさせられることになることをこの時の緑谷は知る由もなかった。