マスコミの騒動から翌日。午後からのヒーロー基礎学に相澤が教室に入って来た。
「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう一人の三人態勢で見ることになった」
(なったって…)
(おそらく昨日のあのマスコミ騒動の時何かあったみたいじゃな…)
「はい!何をするんですか?」
瀬呂の質問に相澤は授業の題名のカードを掲げて答えた。
「災害、水難何でもござれ、レスキュー訓練だ」
「レスキュー…今回も大変そうだな」
「そんなの当たり前じゃろ」
(修業時代は冬の南極を泳がさられたが、アレよりひどくないじゃろ…)
「そうだぜ!これこそヒーローの本分だぜ。鳴るぜ腕が!」
「水難なら私の独壇場ケロ」
「皆そろそろ静かに「おいまだ途中」遅かった…」
内容に皆が心境を言っていくことでクラスが騒がしくなっていくなか、流石にまずいと思った
そして他の説明で今回はコスチュームの着用は各自の判断に任せるとのこと。理由はコスチュームによっては今回の授業での活動を限定してしまうものがあるだろうとのこと。
主な説明が終わり、ほとんどの者がコスチュームに着替え外に出ていた。
そしてバスが到着すると飯田がホイッスルを吹いた。
「1-A集合!バスの席順でスムーズにいくよう番号順に2列で並ぼう!」
「飯田くんフルスロットル…」
「持ち歩いてるのかな。あのホイッスル?」
「剣と槍を常備してるワシらよりかは平和じゃろ」
全員がバスに乗り込み、目的地に向かう中飯田は分かりやすく落ち込んでいた。
「こういうタイプだったか…くそ!」
「意味なかったな」
「迅速に動けたんじゃからそんな落ち込まな」
芦戸が落ち込む飯田に追い打ちをかけるが、
「私、思った事を何でも口に行っちゃうの。緑谷ちゃん、あなたの個性オールマイトに似てる」
「えっ!?そ、そうかな?」
「待ってよ蛙吹さん!緑谷くんはオールマイトと違って怪我ばっかりしてるよ。よくある似て非なる個性なんだよ!そうでしょう緑谷くん!」
「う、うん!」
(よくアレでバレんな…)
蛙吹の質問に激しく動揺する緑谷を心人は慌てて助け船を出してその場をやり過ごした。そのやり取りを見ていた虎人は緑谷の分かりやすすぎる動揺に呆れ、さらには今までバレない事に感心しながらあの時の戦闘訓練後の緑谷の会話を聞いてしまった時の事を思い出していた。
「クソ師匠はオールマイトの個性の事を知ってるだと!?」
「うん。オールマイト本人がそう言ってた」
「しかし、個性の受け渡しが出来る個性を持ってる人間が他にもいたとはな…」
「…先生にあったら聞くつもりだからそれまでは気づいていないフリをしよう」
「…確かに、オールマイトも可能な限り秘密にしたがっておったしのう。ワシらで色々とフォローするか」
「ありがとう蒼月」
あの時は、心人の提案に賛同した虎人だったが、緑谷の分かりやすすぎる態度を見て共有すべきではと考え始めていた。
そして、心人のフォローから個性についての話題になっていた。
「派手で
「ケッ」
「爆豪ちゃんはキレてばっかりで人気出なさう」
「んだとコラ出すわ!!」
「ホラ」
「あはは…そ、それより蒼月くん!」
「あん?」
「蒼月くんの持ってるその槍ってまさか…」
「ああ、武僧ヒーロー『
「やっぱりそうだよね!!」
「長飛丸ってなんだ?」
虎人の口から出たヒーローの名前に緑谷は大興奮すると切島は分からず尋ねると、緑谷は興奮しながらも一言も噛まずに説明を始めた。
「武僧ヒーロー長飛丸!多種多様な武器と『結界』という個性で、大人数の制圧と拘束を得意とし、『
「父から聞いたことがある。俺の祖父が長飛丸を良きライバルと認め、ある時期から多くの動物系個性のサイドキックをスカウトし、『ギャングオルカ』や『シシド』と言った有名ヒーローを育てた事でも有名なんだ。4年前に老衰でお亡くなりになったと聞いているが…」
「マジでか!?スゲェ!」
「なんでお前がそんなスゲェヒーローが使ってた
「なんでって…ワシその長飛丸の孫なんだが」
「孫だって!?」
「ああ」
虎人の発言に飯田は驚きを隠せなかった。父経由から聞いた情報の実績は本物。そんな人物の身内がこんな近くにいたとは思っていなかったのである。
「でもそういう事ならこのクラスはスゲェな!有名ヒーローの身内が4人もいるなんてそうそうないだろう!」
上鳴が焦凍、飯田、心人、虎人を見ながら言うとみんなも心の中でそう思っていた。
現ナンバー2ヒーローである『エンデヴァー』の娘にして、ナンバー4ヒーロー『ブルーライト』の妹である焦凍、65人のサイドキックがいる人気ヒーローインゲニウムの弟飯田、かつてのナンバー3ヒーロー『バラン』の息子心人、そして、オールマイトよりも前の時代で活躍していたヒーロー長飛丸の孫虎人。ここまで名のあるヒーローの親族がいるクラスはそうそうにない。
「もう着くぞ。いい加減にしとけよ…」
『はい!』
しかし、賑やかな会話は相澤の指示でおわり、目的地に到着した。
「すっげぇ!USJかよ!?」
到着した施設はまるでアトラクションと思われるような所がいくつもあり、みんな興奮していた。
「水難事故、土砂災害、火事
(((ホントにUSJだった…)))
(絶対あの人だ…)
(なんか見たことあるようなエリアがあるからな。情報源は間違いなくあのクソ師匠じゃな)
相澤が言っていたもう一人である宇宙服を思わせるコスチュームを着たヒーロー、スペースヒーロー『13号』が施設の名前を宣言した時、心人と虎人以外は同じ感想であった。
心人と虎人はエリアのデザインが修業時代、彼らの師と共に訪れた場所に酷似しているところがあり、そこから彼らの師匠がこの施設に関係している事を察した。
そして救助訓練を始まる前に13号が全員に対して言う事があるようだ。
「えー、始める前にお小言を一つ、二つ、三つ…四つ…」
((((増える…))))
「皆さんご存じかとは思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものもでも吸い込んで塵にしてします」
「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」
「じゃが、簡単に人を殺せる力でもある」
虎人の指摘で場の空気が僅かに変化する。
「そう、みんなの中にもそういう個性がいるでしょう。超人社会は、個性の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで自身の力を秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転、人命のために個性をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰って下さいな」
(最後は先生の請け負いだけど、いつ聞いても黒瀬さんの言う事は響くな)
(クソ師匠の言葉と黒瀬さんの言葉じゃ、黒瀬さんの方が決まっとるのう)
「以上、ご静聴ありがとうございました」
13号の言う事が終わりお辞儀をすると拍手と歓声が上がっていった。心人と虎人も拍手で13号を称賛した。
「よし、そんじゃまずは…」
相澤が指示を出そうとしたその時、中心の噴水から黒いモヤのようなものが現れた。
それに最初に気付いたのはそれを視認した相澤と気配で察知した心人と虎人であった。
「一塊になって動くな!13号生徒を守れ!それとすまないが蒼月と竜魔は…」
「後ろはワシが受け持つ!」
「前は俺が!」
「本当にすまない!あとであの人たちには俺が怒られようにする!」
「なんだ?」
「「全員動くな!!」」
相澤の指示と心人と虎人が短く伝えた僅かな間に他の者も黒いモヤに気付き、切島が体を僅かに前に出そうとした瞬間、心人と虎人の一喝で全員が動きを止める。
一方黒いモヤが広がっていき、そこから全身人の手が付いているような衣装をした男が現れ、そこから続々と人が現れてきた。
そして相澤が常備しているゴーグルを着け、心人は剣を鞘から抜き、虎人も個性で変身し槍を構える。
「「「アレは、
相澤、心人、虎人が黒いモヤから現れた集団の正体を口にすると空気が今までとはガラリと変わる。
そして、黒いモヤから最後に出てきたのは脳みそがむき出しで黒い肌の大男であった。
その大男の姿を見た時、虎人は反射的に鼻と口を片手で覆った。それは恐怖などではなく、その大男から感じた匂いがあまりにも異質だったからである。
(なんじゃアイツは…アイツのあの匂いは…死体の匂い!)
「13号にイレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが」
「やはり先日のはクソどもの仕業だったか」
「どこだよ?せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさあ。オールマイト平和の象徴、いないなんて…子供を殺せば来るのか?」
手だらけの男の言葉、それは常にプロヒーローたちが向き合っているもの、途方もない悪意がA組に向けれられた。
「は?
「アホはお前じゃ!こんな事態なのに侵入者用センサーが反応しとらんことに気付け!!」
「現れた場所が
「加えて
「全員!一塊になったら俺の前に出ず、虎人の後ろに行かないように!」
心人と虎人の説明でその答えにまで導けていなかった者達は息をのむ。そして心人と虎人は相澤に言ったように心人がA組全員の前で13号の後ろの位置に移動し、虎人はA組全員の後ろに移動する。
「13号、避難開始。学校に電話試せ。センサーの対策も頭にある
「うっす」
「先生は?一人で戦うんですか?あの数じゃいくら個性を消すといっても、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は…」
「バーカ!相澤先生がそう簡単にやられるかよ!」
「ああ、一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん」
心配する緑谷を虎人は鼻で笑いながら否定し、相澤は13号に後のこと任せ、
そこで遠距離攻撃の個性を持つ
次に異形系個性の
さらに、ゴーグルによって誰を見ているのかは相手には分からないため、多対一こそ相澤が得意とする分野である。
そしてA組全員は13号と共に避難しようとしたが、
「させませんよ」
(相澤さんの一瞬の瞬きの隙に来るなんて…コイツの個性は先生が
「初めまして、我々は
(狙いは…)
(オールマイトの命じゃと!)
「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはず。ですが何か変更があったのでしょうか?まあそれとは関係なく私の役目は」
心人が呪文を発動させようとすると13号のグローブの指の蓋が開いたのを目で確認し、呪文ではなく物理攻撃を仕掛けられるように切り替えた。
しかし、13号が仕掛ける前に爆豪と切島が
「その前に俺達にやられることは考えなかったか?」
「危ない危ない」
(危ない?)
「そう、生徒といえど優秀な金の卵」
「駄目だ。どきなさい二人とも!」
「早く!」
「私の役目は、あなたたちを散らしてなぶり殺す!」
13号の射線上にいる爆豪と切島に退くように指示をするが、黒いモヤの
そして、残っていた心人は消えている人物の名前を呟いた。
「しょ、焦凍?」
一方、虎人は黒いモヤから放り出され、周囲の景色を見て、自分がどこにいるのかすぐに理解しだけでなく、状況も理解した
「なんだよガキ一人かよ…」
「てか、なんだアレ?ヒーローっていうより
「ワシ一人だけで火災ゾーンかよ!楽すぎるわ!」
これが今日の夕方からニュース等のマスメディアで報じられる『USJ襲撃事件』の始まりであり、この事件で重傷を負ってしまった生徒は二人。うち一名は五体に最低数か所の骨折と