最強たちのヒーローアカデミア   作:通りすがりの気分屋

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体育祭に向けて

USJ襲撃事件の翌日、雄英高校は臨時休校となった。

そして、USJ襲撃事件から二日後、焦凍と心人(まなと)以外A組は既に教室にいた。

 

「竜魔のヤツ大丈夫かな?」

 

「相澤先生や13号先生以上の重傷だったんだろ?流石に今日は休むだろ」

 

「虎ちゃん何か聞いてない?」

 

「そんな心配せんでも大丈夫じゃよ」

 

来ていたクラスメイトのほとんどが脳無との戦いで重傷を負った心人を心配している中、扉が開いた。

 

「みんなおはよう」

 

「ほらな」

 

『『『普通に来たー--!!!』』』

 

全身骨折で意識不明の重体だった心人が、全快の姿で爽やかな笑顔で挨拶した様子に虎人(とらひと)以外は驚きを隠せずにいた。

 

「竜魔くん、もう大丈夫なのかい!?」

 

「てか、復活早すぎるだろ!!」

 

「アレからまだ二日しか経ってないぞ!!」

 

「心配かけてごめん。もう大丈夫」

 

委員長である飯田を始まりに、クラスメイトから驚愕、疑問、様々な質問が心人に投げかけられたが、虎人はそれ以外の事が気になっていた。

 

「竜魔、背中のソレどうした?」

 

虎人は、心人の体をしっかりと背中から抱きついている焦凍について質問すると、心人は苦笑いしながら答えた。

 

「あははは…えっと…昨日目覚めてからずっとこの調子で、トイレとかお風呂の時は離してくれるんだけど、それ以外はずっと抱きついてるんだ…」

 

「もしかして、登校中も?」

 

「うん…視線がきつかった…」

 

「はぁ…透、説得頼む」

 

「えー…」

 

「帰りになんか奢ってやるから」

 

「わかった!」

 

虎人に頼まれた葉隠は焦凍に近づき、顔を背中につけている焦凍に話しかけた。

 

「焦凍ちゃん」

 

「‥‥‥」

 

「心配だったの凄くわかるよ!私も焦凍ちゃんと同じ立場なら同じ事をするよ」

 

(((するんかい!)))

 

「だけどあの時、焦凍ちゃんは竜魔くんを助けることが出来たんだし、今回はここまでしよう」

 

「…うん」

 

葉隠が少し話すと焦凍は心人から手を放し、自分たちの席に着いた。

 

「ところで梅雨ちゃん、今日のホームルーム誰がやるんだろ?」

 

「普通に考えたら相澤先生は怪我で入院だから別の先生が来るって考えちゃうけど…」

 

蛙吹は、相澤以上に重体だったのに全快した心人に視線を向け、ある予感が頭に浮かぶと扉が開き、顔と右腕がミイラ男と思われる程包帯で巻かれた相澤が入ってきた。

 

「おはよう」

 

(((相澤先生も復帰早えー!!)))

 

「何のこの二人、ホントに同じ人間?」

 

「俺たちは例外かな…」

 

「確かにのう…まだ自然災害が優しいって思われるほどの理不尽と横暴の権化であるクソ師匠に比べればかわいいもんじゃ」

 

(((ホントにどんな師匠なの!?)))

 

「しかし相澤先生が無事で何よりじゃ」

 

「無事言うかなアレ…」

 

「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

「戦い?」

 

「まさか…」

 

「また(ヴィラン)が…」

 

教壇に立った相澤の言葉にクラス全員に緊張が走る。

 

「雄英体育祭が迫ってる」

 

『くそ学校っぽいの来たー-!!』

 

「待て待て」

 

(ヴィラン)に侵入されたばっかなのに、体育祭なんかやって大丈夫なんですか?」

 

(ヴィラン)に襲撃されたが故に、クラスメイトの中には開催する事に不安を感じている者は当然いた。その空気を変えるためかのタイミングで虎人と心人が口を開いた。

 

「逆にやることで雄英の危機管理能力が盤石っていうのを示すんじゃろう?」

 

「例えば警備を例年より強化させるとかして、そうですよね相澤先生」

 

「その通り、警備は例年の5倍にするようだ。何よりうちの体育祭は最大のチャンス、(ヴィラン)ごとき中止していい催しじゃねえ」

 

「いや、そこは中止しよう…体育の祭りだよ?」

 

虎人と心人の予想通り、相澤は雄英体育祭を開催する理由などを説明すると、峰田は不安そうに言った。

そんな峰田を緑谷は信じられないような顔で見た。

相澤は、話を続けた。

 

「うちの体育祭は日本ビックイベントの一つ。かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り、規模も人口も縮小し形骸化した。そして日本において今、かつてのオリンピックに代わるのが雄英体育祭だ!」

 

「そして全国のトップヒーローもスカウト目的で見るという、ワシらにおいては貴重な機会」

 

(…炎司さんや燈矢さんたちが来る!)

 

心人は自身の修業の成果を遺憾なく発揮できる舞台で見せたい人達に見せることが出来ると考えると拳を作り、強く握った。

 

「時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が開けるわけだ。年に一回、計三回だけのチャンス、ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るな!」

 

『『『『はい!』』』』

 

相澤の雄英体育祭に関する話が終わり、ホームルームも終了した。

そして昼休み、心人と虎人はある人に呼ばれ、校舎にある一室に向かっていた。

 

「ったく…事態が事態とはいえ、また面倒事に巻き込みおって」

 

「ごめんごめんっと、ここだね」

 

二人は、目的の一室である仮眠室に到着して、ノックをする。

 

『…入りなさい』

 

扉を開けると、椅子に座っていたナンバー1ヒーローのオールマイトと緑谷が座っており、心人と虎人は向かいのソファに座った。

 

「…アンタがそんな小さな椅子に座っておると椅子が壊れないか心配じゃな」

 

「すまないが蒼月少年、今日はふざけるために君たちを呼んだのではない」

 

「わかっとるわかっとる」

 

「蒼月から話は聞いています。確認ですよね?」

 

「その通り、二人はどこまで知っているんだい?」

 

オールマイトの真剣な質問に心人と虎人は顔を見合わせるが、先に答えたのは心人だった。

 

「あなたのその姿がかりそめのもので、本当の姿はガイコツと思われるほど痩せている」

 

「そして、緑谷はアンタから個性を与えられた。この二つだけじゃ」

 

「十分すぎる答えだ…」

 

二人の答えにオールマイトの体から煙が出ると、心人が保健室で見たガイコツと思われるほど痩せた姿に変わった。

 

「二人はいつから気付いてたの?」

 

「俺は、保健室でリカバリーガールとオールマイトが話していた時に…」

 

「ワシは対人訓練の後、お前が爆豪に話した後、オールマイトとの話も聞いておってな。コイツからその話も聞いた」

 

「あの時か…」

 

「すいません!先生がオールマイトの個性の事を知っていると聞いて、俺一人で判断するのは危ないと思い、蒼月を巻き込んでしまいました!!」

 

「君が謝る事じゃない。注意を怠った私の落ち度だ。むしろ気を使わせてしまい申し訳ない!」

 

心人の謝罪に、オールマイトは自身に非があると言って謝罪する。自分のせいで大けがを負った少年に気を遣わせ、さらには炎司からの厳しい言葉もあるが、自身がもっと周囲に気を配っていれば起きなかった事態である。

寧ろオールマイトは自身の情けなさに怒りを覚えていた。

 

「で、ワシらを呼んだのはなんじゃ?」

 

「…君たちにも知らせるべきだと思ってね。私と緑谷少年の個性、『OFA(ワン・フォー・オール)』について」

 

オールマイトの口から語られた秘密は、心人と虎人が思っていた以上のモノだった。

OFAは代々力を受け継がれてきた個性である事、自身が過去の怪我で活動時間が限られている事、緑谷を自身の後継として選び個性を譲渡した事、そしてこれの秘密を知っているのはリカバリーガールと心人と虎人の師匠の他にも、オールマイトの友人、校長である根津である事。

あまりの内容に流石の二人も言葉がすぐには出なかった。

 

「何度も言うが、君たちがこの事を秘密にしていたことを感謝している」

 

「いえ、そんな…」

 

「しかし、話はわかったが緑谷が後継なのはさっき言った全員知っておるのか?」

 

虎人が何気に言った一言でオールマイトの動きが完全に止まり、小刻みに震え始めた。

 

「い…いや…それは…」

 

「わかった。さっきの言葉は忘れてくれ」

 

深く詮索するものではないと瞬時に把握した虎人は発言を撤回し、オールマイトの震えも落ち着いていった。

 

「しかしこの際だから言うが、八木さん、アンタ教えるのヘタすぎる」

 

「ぐっ…!」

 

「確かに譲渡した時に時間がなかったとしても、何も言わずに緑谷くんに体験させるって、あの先生でも絶対にそんな事しませんし、絶対に伝える事として伝えますよ」

 

「ふぐぅ…!」

 

「しかも緑谷の間違っていたことを指摘しないあたり…クソ師匠でも間違いの有無くらいは言うぞ」

 

「ごはぁ…!」

 

「寧ろ、緑谷がアナタの熱狂的な大ファンじゃなければ、他の人なら手放していたかもしれませんね」

 

「がはぁ…!」

 

「オールマイト!?」

 

心人からの純粋さから来る正論と虎人の悪意を感じるが事実なので否定ができない正論という質の違う二人の言葉の刃にオールマイトは吐血しながら、椅子から倒れ、緑谷は倒れたオールマイトの心配をする。

 

「…君たちの言う通りだ。私は戦闘力でも指導の実力でもあの人の足元にも及ばない…」

 

倒れたまま二人の言い分を素直に認めるオールマイト、二人の師匠を知る者として自身の能力不足なのは自覚していた。

 

「だけど、あなたが緑谷を選んだことは間違いないと思います」

 

「!竜魔少年…」

 

「俺たちも力になれることがあれば言ってください。協力しますので」

 

「ま、客観的な視線は多い方が良いからのう」

 

「竜魔少年…蒼月少年…何から何までありがとう」

 

「しかし、そうと分かれば緑谷、今日の放課後、訓練場に来い」

 

「えっ?」

 

「早くコントロール出来るようになりたいでしょ?」

 

「二人とも…ありがとう!!」

 

こうして、OFAに関する話は新たに秘密の共有者が出来たということ緑谷の練習に可能な限り付き合うこととなった。

 

「それはそうとう二人とも…」

 

「「(はい?/なんじゃ?)」」

 

「この件はあの人には内密でお願い!!」

 

「「…(わかりました/わーったよ)」」

 

「本っっっ当にありがとう!!」

 

そして、放課後緑谷を連れて訓練場に向かおうとして、扉をあけると、

 

「な、何事だあ~!」

 

多くの生徒が通路を塞いでいた。

 

「んだよ出れねえじゃん!何しに来たんだよ!」

 

「敵情視察だろ雑魚。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてえんだろ」

 

爆豪が集まってきた生徒たちの目的を推理しながら進み、塞いでいる生徒たちの前で止まる。

 

「そんなことしたって意味ねえから、どけモブども」

 

「知らない人のこと、とりあえずモブって言うのやめなよ」

 

「いや爆豪の言い分は正しいぞ」

 

「「「え?」」」

 

意外にも虎人が爆豪の言葉に賛同したと言うと、全員の視線が集まり、その理由を話した。

 

「今ここで分かるのは、ここにいる奴らの顔や性格くらいじゃからの。そんな暇があるなら体育祭に備えるべきじゃろうって」

 

「噂のA組…どんなもんかと見に来たが、随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍するやつはみんなこんななのかい?」

 

「ああ?」

 

「誤解を与えて悪いが、ワシは敵情視察が目的ならここに来るなという意味で言っただけじゃ」

 

爆豪と虎人の言動に思う事があったのか。人混みから出てきた生徒、心操は挑発的な言葉に、爆豪は威圧するが、虎人は敵情視察への文句だと説明した。

 

「なるほど、そっちの不良はともかく、アンタは色々知ってる人なんだ」

 

「まあな、ワシだけじゃなくアイツも色々知っておる、雄英体育祭の別の目的をな…」

 

「へぇー」

 

虎人は視線を心人に向けると、心操も心人に視線を向ける。

そして、再び二人とも向き合うと虎人が雄英体育祭の別の目的を話し始めた。

 

「普通科や他の科はヒーロー科の試験から落ちた者が多く入るが、学校側はそんな者たちのための機会を在学中に設けてる。今回の体育祭も結果次第ではヒーロー科への編入も検討してもらうことが出来、また逆もある」

 

虎人の言う事に知らなかった者全員が息をのむ。

 

「そう、少なくとも俺は、いくらヒーロー科とはいえ調子に乗ってっと足元ごっそりすくっちゃうぞつう宣戦布告しに来たつもり」

 

(((この人も大胆不敵だな)))

 

「ほう」

(コイツ本気の目をしておる…)

 

(ああいう意味で向上意識が強い人好きだな)

 

心操の言葉に心人と虎人は高評価し、いつでも相手にしても良いと思える相手に出会えたと感じた。

しかし、別の生徒の言葉でその気持ちは冷めてしまった。

 

「おうおう!隣のB組のもんだけどよ!(ヴィラン)と戦ったっつうから話聞こうと思ったんだがよ!えらく調子づいちゃってな、おい!!」

 

(((また不敵な人来た)))

 

(切島とは違う意味でマジの馬鹿じゃなコイツ…)

 

(ああいう熱気というか暑苦しい雰囲気で色々聞いてくる人ってなんか苦手だな…切島くんはそういうの感じないのは少し不思議だな?)

 

「あんまりほえすぎッてっと本番で恥ずかしいことになっぞ!」

 

「そういうお前も無様な結果出してヒーロー科から転落するなよ」

 

「んだとテメェ!!」

 

B組の生徒、鉄哲の登場で二人の気持ちがすっかり冷め、爆豪はそのまま黙って教室を出ようとし、虎人は鉄哲を煽った。

 

「待てこら爆豪、蒼月!どうしてくれんだ!おめえらのせいでヘイト集まりまくってんじゃねえか」

 

「関係ねえよ」

 

「確かにのう」

 

「はあ?」

 

「上にあがりゃ関係ねえ」

 

「言い方を変えるが、ワシらも無様な結果を残さないように努力しろって話じゃ」

 

「くっ…シンプルで男らしいじゃねえか」

 

「虎ちゃんらしい」

 

「確かにな…一理ある」

 

「いやいや、騙されるな!」

 

「あははは…そろそろ行こう蒼月、緑谷くん」

 

「「(うん!/おう)」」

 

心人、虎人、緑谷の三人は体育祭に向けて訓練場に向かった。

雄英体育祭まで残り二週間という期間の中で、彼らがどこまで強くなっていくのかは、本番になるまでわからない。

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