二週間という期間はあっという間に過ぎ、雄英体育祭が日がやって来た。
マスコミや観客と多くの人がいる中で、警備を依頼されやって来た昨年デビューした『Mt.レディ』に、パンチングヒーロー『デステゴロ』、若手実力派のヒーロー『シンリンカムイ』の三名は会場のパトロールで回っていた。
「なんか全国からプロヒーロー呼んだらしいですね今年は」
「我らもスカウトに勤しみたいとこだが」
「警備依頼がきた以上仕方ねえよ」
「おやおや?誰かと思えば『ヘドロ事件』で
「
「まあでも、未来のヒーローの卵に出会えるかもしれないから良いじゃん!」
「!お前たちは!?」
シンリンカムイたちに対して挑発する言葉を言ってきた者たちを見て、三人は驚ていた。
何故なら、その者たちはこのようなイベントにはあまり関わらず、常に担当地域や要請のあった地域で活動する同じプロヒーローであった。
デステゴロ以上の体格でセイウチの獣人の見た目をし、氷を吐き怪力で
「貴様たちこそ、今まで雄英体育祭には関わっていなかったはずだ」
「どういう風の吹き回しだ?」
「あと、少し失礼じゃないですか?」
シンリンカムイたちも言われ続かないよう喧嘩腰で聞く。両方の空気は険しくなり、周りの来場者も怯えて彼らの傍を通ろうとしなかった。そんな空気に重たい足音が近づいてきた。
「おーい!お前たち何をやっている?」
ボラホーンと同等の体格をし、ワニの獣人の見た目をした獣武人ヒーロー『クロコダイン』がやって来た。
「クロコダイン」
「既にエンデヴァー殿たちが場所を確保しているようだ。これ以上待たせるわけにはいかん」
「おっと…そりゃあいけねな」
「すぐに行く」
クロコダインによってラーハルトたちはデステゴロたちにぶつからないように避けて会場に向かった。
クロコダインは、三人がシンリンカムイたちに失礼な事を言っていたことを察し、謝罪してから会場に向かう。そして、すれ違う際にシンリンカムイとデステゴロの間を通ったラーハルトは、二人にしか聞こえない声量で言った。
「勇気ある少年に説教をしたとしても、謝罪の一つがなかった者を見ると、同業者として俺は恥ずかしくて仕方ない」
「「!!」」
二人はラーハルトを見たが、ラーハルトはそんな事に気にしていないのか、あるいは気づいていないのか、振り返らずそのまま一年生の会場に向かった。
「何ですかあの人たち!?クロコダインさん以外は全然感じ悪い!!」
「…仕方ないだろ。アイツらはあのヒーローの
「それにあの者たちの言い分もヒーローとして正論のところもあるからな」
「だからってあの状況なら仕方ないじゃないですか!それなのにあんな言い方ってバランの所でヒーロー活動していた人たちってほとんどああなんですか!?」
「うん?バラン…まさか」
Mt.レディの文句からシンリンカムイは毎年雄英体育祭を直接見に来ない彼らが来た目的にある予想が頭に浮かんだ。
一方控室では、全員準備を終え、時間になるまで待っていた。
「コスチューム着たかったな~」
「公平を期す為に着用は基本不可に決まっておるじゃろ」
「みんな準備は出来てるか?もうじき入場だ!」
飯田の言葉に緑谷は少しでも落ち着けるよう深呼吸をする。そんな緑谷を
「緑谷くん、大丈夫?」
「あ、うん!ありがとう竜魔くん!だけど、やっぱりこんな大舞台だから緊張しちゃって…」
「大丈夫だって!特訓で身につけたアレなら予選は突破出来る!自信を持って!」
「う、うん!」
「緑谷」
二人の会話に入る焦凍、その顔はどこか険しいところがあった。
「轟さん何?」
「客観的に見ても実力は私の方が上だと思う」
「え…う、うん」
「けどお前、オールマイトに目をかけられてるし、心人とも最近親しくなったよね」
「しょ、焦凍?」
「別にそこ詮索するつもりはないけど、お前には勝つ」
「ど、どうしたの焦凍?」
「おお!?クラス3位が宣戦布告!?」
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって…」
「そうだよ焦凍!」
切島が焦凍を止めようとし、心人も切島の言い分に同意する。焦凍は、そんな心人から目を逸らす。
そんな二人を見て、葉隠は何かを察し、
「虎ちゃんひょっとして…」
「めんどくさいのと後々面白くなりそうじゃからワシは関わらん!」
虎人も葉隠と同じことを察しており、耳栓とアイマスクをして時間になるまで狸寝入りを決め込んだ。
そして緑谷も轟の言い分を肯定しながらも他の科の生徒たちも本気であり、自身もその者たちに遅れないと言って轟に宣言した。
「僕も本気で獲りにいく!」
「‥‥‥うん」
焦凍からの宣戦布告を真っ向から受け止め、そのいつも気が小さい緑谷からも宣戦布告をクラス内でも緊張感が包まれる。
そして遂に入場の時間となる。
会場は既に観客たちの歓声で盛り上がっており、プレゼントマイクがその空気をさらに盛り上げる紹介をする。
『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとしのぎを削る年に一度の大バトル!どうせあれだろコイツらだろ!?
プレゼントマイクの紹介で入場するA組。
その姿を観客席で轟家とラーハルトたちは確認していた。
「うむ。エンデヴァー殿の言う通り立派に成長しましたな」
「そうだろう」
「顔つきもバランさんに似てきておるわい!」
「焦凍ちゃんも綺麗になったもんだ。本当にこんな場所を確保してくれてありがとうございます」
「いえいえ、そんな…」
「ホントに運が良かっただけです」
「冬美さん、日差しは大丈夫ですか?」
「はい。ちゃんと対策はしています」
「おい
「恋人の心配をして何が悪い!?」
「ふざけんな!いつも言ってるがテメェが未来の
「こっちこそ貴様を
「二人とも喧嘩しないで!恥ずかしいから!!」
一部ひと悶着が起きているが、心人と焦凍の成長した姿を喜んでいたり、応援用に作った団扇などの準備をしていた。
そんな彼らの反対側の観客席では、ギャングオルカとその
「先に言っておくがシシド、彼は職場体験ではウチを選ぶに決まっている」
「何を言っている俺の所に決まっているだろう」
「「‥‥‥」」
一瞬の静寂の後、二人のゴングが鳴り、取っ組み合いを始める。
「あの子は、あの人譲りの目を持っている!卒業後は独立しても文句はない!そのために引っ張っていくことの経験をさせる方が良いに決まっている!!」
「ぬかせ!まずは一人でやっていき、安定してから
(無視じゃ無視)
二人の取っ組み合いを偶然視線を正面から逸らして目撃した虎人は、今日一日関わらないことを決めすぐに目線を正面に戻した。
その後他のクラスの者たちも会場に入場し、全員が揃う。
『選手宣誓!』
今年の1年の主審は、際どいコスチュームを着た18禁ヒーロー『ミッドナイト』であった。
(香山さんか…)
(教師としては良い方なんじゃが、それを打ち消してしまう程の言動があるが、このイベントで暴走せずに済むか?)
修業時代、何度も会った事があるため見慣れていた二人は平然としているが、他の者はそうでもなかった。
「ミッドナイト先生何ちゅう格好だ」
「流石18禁ヒーロー」
「18禁なのに高校にいてもいいのか?」
「いい!」
『静かにしなさい!選手代表、1-A、竜魔心人!』
「俺!?」
「はよ行け」
心人は自分が選手代表であった事を知らず、周りの者たちも彼が知らされていない事はすぐにわかった。
しかし、虎人はそんなこと気にせずむしろ早くやるように急かし、心人も急いでマイクの前に向かった。
「竜魔くんが代表だったの?」
「アイツ入試1位だぞ、知らなかったのか?」
「“ヒーロー科の”入試な」
他のクラスの者から厳しい視線と言葉が向けられる中、心人はある程度近づくと歩いてマイクに近づいた。
緊張の色が見られる顔した心人を見て、轟家とラーハルトたちも緊張しだしていた。
「大丈夫かな心人くん?」
「大丈夫だとは思いますが…」
「緊張がこっちにまで伝わるよ」
「本当だな」
「はっはっは…ん?どうしたエンデヴァー殿、顔色が優れていないようですが?」
「いや…どうにも嫌な予感がしてな」
炎司だけは、顔色が悪くなり、片手で腹部を押さえていた。
そして、心人がマイクの前に立ち、口を開いた。
『宣誓!私達はこの大会で自分たちに出来る事を全力で行い、校訓でもあるPLUS ULTRAの精神で乗り越えていくことを誓います。しかし…』
「うっ…」
心人がさらに続きの言葉を言おうとした時、炎司はもう片方の腕で頭を押さえた。
『それを行わない者がいると判断した場合は、メダルを手にいれても、そのメダルを叩き斬ります』
((((うおおおー-----いいいい!!!))))
(心人らしい)
これには流石の虎人も想定外で、焦凍以外のA組が心の中で全力で突っ込むと会場から激しいブーイングが飛んできた。
「なんだと!?」
「ふざけんな!」
「調子乗んな!」
「強いからってなめてんのか!?」
「何故品位を貶めるようなことをするんだ竜魔くん!」
「そう判断されないよう全力で来いって意味で言ったんだけど?」
「どんだけ自信過剰だよ!この俺が潰したるわ!」
ブーイングの嵐に何故自分が責められているのかわからないといった表情でクラスの元に戻る。
観客席でそれを見ていた炎司は崩れ落ちていた。
「どうしたの親父?」
「
「えっ!?剣人さんもあんな事言っちゃったの!?」
「ああ…そのせいでその年の体育祭はかなり荒れた」
「血は争えんということか」
「けど全力でやりたいならアレくらいでちょうど良いんじゃね?」
クラスの集団に戻った心人は、虎人に胸ぐらを掴まれ体が宙に浮いていた。
「なんでお前は面倒ごとしか起こさんのじゃ」
「だ、だから…全力でやって勝たないと意味がないじゃん…」
「そのせいで空気最悪になったんだけど!?」
「あんな言い方じゃ誰だってキレるわ!!」
「爆豪じゃないんだからもう少し言い方考えてから言えよ!!」
「んだとコラ!!」
クラスからも何故責められているのかわかっておらず戸惑っているが、ミッドナイトはそんな事を気にしていなかった。
『さーて、それじゃあ早速始めましょう』
「雄英って何でも早速だね」
『第一種目はいわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が
ミッドナイトの後ろのモニターに表示された第一種目は『障害物競走』と表示された。
参加内容は計11クラス全員参加のレースであり、コースはスタジアムの外周約4キロ、コースを守っていれば個性による妨害等は行ってよいという、まさに雄英体育祭の予選に相応しいレースである。
スタート地点であるゲートに全員が移動する中、心人、虎人、緑谷は集団の後ろにおり、ゲートの上にある三つの緑の電灯が光った。
「ほう?緑谷、こんなところで良いのか?」
電灯の一つ目が消える。
「うん!特訓の成果を発揮するにはここが一番だから!」
二つ目が消える。
「手加減はしないよ?」
「わかってる!」
最後の一つが消える。
『スタート!』
ミッドナイトの合図と同時に全員が走り出す。
『さーて実況していくぜ!解説アーユーレディー?ミイラマン』
『無理やり呼んだんだろうが』
『早速だがミイラマン序盤の見どころは?』
『今だよ』
プレゼントマイクの問いに相澤は即答する。そしてその答えはゲート内で誰もが理解した。
「おいおい!」
「狭いな!」
「スタートゲート狭すぎだろ!?」
11クラス全員参加でもあり、既にすし詰め状態となっており、スタート時点でこの状況をどのように攻略するのかというふるいであった。
それに気づいた者の中で焦凍が個性を発動させようとした時、プレゼントマイクの声が響く。
『おおっと!既に先頭に出た者たちがいるようだ!!』
『少し予想外だがな』
『先頭に出たのは竜魔、蒼月、そして
「デク君も!?」
「つうか緑谷、骨折克服したのか!?」
個性で飛んで抜けた心人と虎人はA組全員は予想していたが、緑谷は壁を蹴りながら集団を抜けていたのを目撃していたクラスメイトは、緑谷の急成長に驚いていた。
(二人と一緒に特訓したコレがこんなにも活躍するなんて!けど、まだ最後まで油断は出来ない)
《big》
(流石緑谷くんだ)
(警戒すべき奴じゃ、アイツが一番厄介じゃな)
僅かな差で緑谷の前を走る心人と虎人は、すぐ後ろの緑谷に気を付けながら走っていく。
雄英体育祭、第一種目から既に先頭三名による競走になっていった。