最強たちのヒーローアカデミア   作:通りすがりの気分屋

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障害物競争

雄英体育祭が始まり、第一種目である障害物競争で先頭に出た心人(まなと)虎人(とらひと)、緑谷の三名に続く者が出始めた。

後ろから何やら混乱している者の声が聞こえ、三人は僅かに視線を後ろに向ける。そこで入り口の通路を凍らせて、集団から抜けてきた焦凍の姿があり、その後ろからも焦凍の妨害を防いで集団から脱出してきている者たちが続く。

 

「甘いわ轟さん!」

 

「待ちやがれテメェら!!」

 

「また凍らされるなんてゴメンだよ!」

 

「使い慣れてんな個性」

 

「思ったより避けられてる…なら!」

 

先頭との差を少しでも縮めるために、最小限の足場を凍らせながら、右の炎を後ろに向けて放つ。

 

「パクんな!半分女!!」

 

爆破の推進力で空を飛び、移動している爆豪は文句を言うが、焦凍はそのまま進み先頭の三人に近づいていく。

先頭を走る三人も視線を正面に戻し、走り続ける。

 

「流石は焦凍!」

 

「轟さんの氷と炎の精密なコントロールの両立がここまですごいなんて!!」

 

「屋外だったら、負けてたかもな…!!」

 

匂いで最初の障害物に気づいた虎人が急ブレーキをかけ、心人と緑谷も遅れて気づて足を止める。

後ろにいた者たちも先頭につられて足を止めた。

 

『ターゲット…大量!』

 

「入試の仮想(ヴィラン)!」

 

『さあいきなり障害物だ!まずは手始め第一関門!ロボ・インフェルノ!』

 

「入試ん時の(ゼロ)ポイント(ヴィラン)じゃねえか!」

 

「マジか!」

 

「ヒーロー科あんなんと戦ったの!?」

 

「障害物ってこれ!?」

 

「多すぎて通れねえ!」

 

「これが心人が言ってた一般入試用の仮想(ヴィラン)か」

 

「どこからお金出てくるのかしら?」

 

多くの生徒たちが怯えている時、心人と虎人は個性を発動させて、再び走り出していた。

 

「しまった!?」

 

緑谷も遅れて個性を発動させて、ある物を拾って二人の後を追う。

そして二人はスピードを上げ、(ゼロ)ポイント(ヴィラン)の足元を通り抜け、通り抜けきる前に足元を心人は呪文で、虎人は雷で攻撃した。

 

「それ!」

 

イオ!

 

「邪魔じゃ!」

 

『おおっと!先頭の蒼月と竜魔は攻略と同時に妨害を終えて通過だ!やっぱり破壊経験者のやり方は違うね!そんな二人にくらい付いてる緑谷もスゲェよ!!』

 

障害物の破壊と後方への妨害を同時に行った二人は、個性をある程度解除して走り出す。緑谷も(ゼロ)ポイント(ヴィラン)の足元を通り抜けて駆けていく。

倒れてくる(ゼロ)ポイント(ヴィラン)に焦凍は冷静に対処する。

 

「こんなものじゃ足止めにもならない!」

 

右の個性で倒れてくる(ゼロ)ポイント(ヴィラン)を凍結させ、その隙に足元を走り通っていく。

 

「アイツが止めたぞ!」

 

「足元の隙間だ通れる!」

 

「やめておいた方が良いよ」

 

他の者が焦凍の後ろに続こうとするのを焦凍は止めるように言う。その理由は凍らせた(ゼロ)ポイント(ヴィラン)から聞こえてくる音であった。

 

「倒れてくる不安定な体勢の時に凍らせたから、そのまま倒れるよ」

 

(ゼロ)ポイント(ヴィラン)の氷が落ち、大きな音をたてて倒れる。

これにより、後ろの者たちは足止めを受ける事になった。

 

『1-A轟!蒼月と竜魔の妨害を難なく攻略し、その妨害を後方の奴らに押し付けた!こいつはシヴィー!』

 

(この程度で手こずるなら、心人の隣になんて立てない!)

 

プレゼントマイクの賞賛の言葉は焦凍にとってはどうでも良かった。対人訓練やUSJ襲撃事件で心人と自身の距離の差を実感させれらた焦凍は、家族に頼んで練習の質と量を増やし励んでいた。しかし、現在の順位でも差が出ている事で焦凍の心境は荒れていた。

その様子をモニターで見ていた轟家は、そんな娘が心配でならなかった。

 

「焦凍大丈夫かしら…」

 

「最近、稽古も厳しくしたって聞いてるけど、アレはまずいんじゃないの?」

 

「俺たちだって休むように言ってるんだけど聞かなんだ」

 

「…あなた」

 

「…ああ」

 

姉と兄たちが心配している中、炎司と冷は娘の心境を察していた。

一方、ロボたちで立ち往生していた者は一部パニックとなりかけていた。それは、先ほど焦凍が凍らせて、巨大な氷の足場と化した(ゼロ)ポイント(ヴィラン)の残骸が原因である。

 

「お、おい!誰か下敷きになったぞ!」

 

「死んだんじゃねえか?」

 

「死ぬのか?この体育祭!?」

 

動揺などが周囲に伝播しかけたとき、残骸にひび割れが起き、そこから潰された者が出てきた。

 

「死ぬかー!」

 

『あー!1-A切島潰されてた!ウケる!』

 

「轟め、あぶねぇじゃねか!俺じゃなきゃ死んでたぞ!」

 

文句を言いながら先に進もうとした時、切島のすぐ隣で他にも潰されていた者がおり、同じようなひび割れがおきるとそこから出てきた。

 

「A組の奴らは、ホントにやなヤツばっかりだよな!」

 

『あー!B組の鉄哲も潰されてた!ウケる!』

 

「俺じゃなかったら死んでたぞ!」

 

「個性駄々被りかよ!ただでさえ地味なのに!」

 

「待てこら!」

 

自身の個性に対してあまり良い感情が持てない切島にとって、同じタイプの個性の者がいたことに涙を流しながら走る。鉄哲はそんなことお構いなしに切島を追いかける。

その後も続々とロボたちを攻略していき、先に進む参加者たち、その頃先頭を走る心人、虎人第二関門に到着して立ち止まっていた。

 

『おおっとここで先頭の二人が第二関門に到着した!落ちればアウト!それが嫌ならはいずりな!ザ・フォール!』

 

「これ絶対埋島(まいじま)さんと根津さんがやったよね?」

 

「あの二人以外おるか…こんな足場を作るヤツが!」

 

不安定な足場とそれを繋いでいるロープ、設計と構築でここまでのステージを作れるであろう二人(一名は人間ではないが)に文句を言う二人だが、すぐに切り替えて個性を発動させる。

 

「まあでも…」

 

「あのクソ師匠の悪意しか感じない足場に比べれば…」

 

「「楽勝!!」」

 

二人は飛ぶのではなく、跳躍して先に進んでいく。

 

『おいおい!アイツら二人とも飛べるだろ?なんで飛ばないの?』

 

『飛行中は個性を発動させ続けないといけないが、跳躍なら消耗を抑えることが出来る。先を見据えての合理的判断だ』

 

『解説サンキュー!ミイラマン!他の奴らも進む中、蒼月と竜魔は難なく抜けた!』

 

二人が第二関門の出口に到着して、後ろを振り向くと緑谷は心人と虎人と同じ方法で進み、焦凍はロープを凍らせながら進み、爆豪は爆破で飛んで進んできていた。

 

「もう少し距離を離した気はしてたんじゃが、急ぐか」

 

「あ!待て蒼月!」

(緑谷くんが持ってたのってロボットのプレートだよね?なんであんな物を?)

 

緑谷が持っていた物に違和感を感じた心人だったが、それよりも先に進むために走りだした。

その頃、飯田も到着し、第二関門を進み始めた。

 

「おそらく兄も見ているんだ。カッコ悪い姿は見せられん!」

 

『かっこ悪いーっ!』

 

一方、会場でモニターを見ていた観客の注目はトップを走る心人と虎人に集まっていた。

 

「トップの二人圧倒的じゃんか」

 

「個性の強さもあるが、それ以上に素の身体能力と判断力がずば抜けてる」

 

「そうだよう思い出した!あの紋章、竜騎士ヒーローバランと同じ紋章だった!」

 

「バランだって!?」

 

「じゃあ、あの子はバランの息子?」

 

「成程、普段こんなイベントに関わらないあの三人がいる事も頷ける」

 

「こりゃあ相棒(サイドキック)争奪戦は激しくなるな!」

 

殉職したトップ3であったバランに子供がいたことは世間では知られているが、それが心人だという事まで()()()()から伏せられていた。しかし鋭い者は心人がバランの息子だとという事実に気付き、それはやがてこの会場が情報の発信源となるのであった。

虎人もかつてのナンバー1ヒーローの血を引く者であるが、世代や個性の違いがあるおかげでこの時気付いている者はいなかった。

その様子を反対側から見ていたラーハルトたちの気分は良くないものであった。

 

「ふん!相棒(サイドキック)争奪戦など、所詮は実力がないヒーローたちが注目欲しさに勝手に盛り上がっている事」

 

「確かに…俺たちならともかく、エンデヴァーさんや燈矢くん、ミルコくらいでしょ相応しいの」

 

「リューキュウも忘れてるぞ」

 

「おいおい、他にも良いヒーローならいるだろう?」

 

「「「スタイルの事も考慮して言った!」」」

 

「全く…おっ!どうやら最後の関門に到着したようだ!」

 

ラーハルトたちの言葉に呆れるクロコダインだったが、モニターで確認すると二人が三度立ち止まっている姿が映っていた。

 

『さあ、早くも最終関門!かくしてその実態は…一面地雷原!地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってぞ!目と脚酷使しろ!』

 

「ほう」

 

「どれくらいの威力なんだろう?」

 

『因みに地雷は競技用で威力は大したことねえが、音と見た目は派手だから失禁必死だぜー!』

 

『人によるだろ』

 

((同感…))

 

「しかし、注意するところを注意すれば良いのか」

 

「音と見た目だけっていうのがあの先生の基準がいかれてた証拠だね」

 

二人は隙間を通って先に進んでいた時、後ろから()()()()()を感じて後ろを振り向くと焦凍と爆豪が迫って来ていた。

 

「おっと…余裕こきすぎた!」

 

「爆豪くんってスロースターターだったんだ!」

 

「逃がさない!」

 

「俺は関係ねえ!」

 

『おおっと!二人にくらい付いていた轟と爆豪が追い付いた!緑谷は途中で抜かれたのか!?』

 

爆豪は心人に、焦凍は虎人に攻撃をしかけていく。

 

「警戒するやつの人数足りてねえぞ!」

 

「これ以上差を出させない!」

 

「おっと!」

 

「あぶねえ!」

 

『喜べマスメディアお前ら好みの展開だ!さあ、さあ、さあ、後続もスパートかけてきた!だが、引っ張り合いながらも先頭四人がリードか?!』

 

焦凍と爆豪の攻撃を対処しながらも、もう一人自分たちについてきていた緑谷の存在を気にしていた。

 

(緑谷のヤツ何をやっておるんじゃ?)

 

(彼が諦めるとは思えないけど…)

 

((っ!?))

 

攻撃を対処しながら後ろを見ると、最後尾で緑谷が回収していたロボットのプレートで地雷を掘り、一か所に集めている様子を見た瞬間、二人は今の状況が危険であることに気付いた。

 

「くっ…爆豪くんゴメン!」

 

「ああ!?」

 

爆豪に謝罪しながら心人は拳を爆豪の前に突き出し、呪文を放つ。

 

イオラ!

 

流石の爆豪も反応が出来ず、まともに攻撃を受け、吹き飛ばされる。

 

「ちぃ…!アイツ正気か!?」

 

虎人は個性で凄まじい突風を発生させ、焦凍の動きを止める。

 

「くっ…」

 

地雷の事もあり、突然の風で動きを止めてしまう焦凍。

二人の足止めをすると、心人と虎人は走り出した。

 

『おっとここで、爆豪と轟を退けた二人!一気に駆け抜けてそのまま最終関門を突破するぞ!』

 

プレゼントマイクのこの実況と同時に最後尾から凄まじい爆発が起き、そこから爆風を利用してロボットのプレートに乗った緑谷が飛んできた。

 

『A組緑谷爆風で猛進!つうか抜いたー!』

 

「凄いよ緑谷くん!」

 

「あんなやり方普通は思いつかんぞ…大した度胸じゃ!」

 

緑谷に抜かれた事で、体力の温存を考えていた二人は個性を使って緑谷を抜こうとする。この状況下では、二人を抜けただけでも奇跡と考え、一度抜かれれば同じ奇跡は起きないと誰もが考える状況である。

しかし、緑谷はその奇跡を終わらせる気は毛頭になかった。

 

(追い越し無理なら抜かれちゃ駄目だ!)

 

ロボットのプレートを地雷の真上に叩きつけ、地雷を爆発させ、二人の進行を妨害すると同時に自分は再び爆風を利用して最終関門を突破する。

 

『緑谷!間髪入れずに後続妨害!なんと地雷原即クリア!』

 

爆煙の中から二人は地雷原を抜けると、残りの距離は体力の温存を考えず、個性を最大出力で発動させる。緑谷も個性を発動させ、三人が完全に並んでいた。

 

『先頭の三人が並んだ!イレイザーヘッドお前のクラスすげえな!どういう教育してんだ!』

 

『俺は何もしてねえよ。奴らが勝手に火付け合ってんだろ』

 

『雄英体育祭1年ステージ序盤の展開から『無視か!』この結末を誰が予想できた!?』

 

既にスタジアムの空気は高まっている中、プレゼントマイクがさらに場を盛り上げる。

 

『今一番にスタジアムへ帰ってきた、勝利の女神に微笑まれたその男は…』

 

蒼月虎人だ!!!

 

「しゃああああ!!!」

 

一位となった蒼月は両拳を高く上げ、勝利の雄叫びを上げる。そしてその直後、心人、緑谷の順で到着する。

あの三人の中で誰が一位になるのか不思議ではない状況で、()()()()()でゴールしたことで観客席から凄まじい歓声が送られる。

 

「やられたね!」

 

「うん…まさかあの状況で足を一瞬止める威力の雷を放つなんて…」

 

「緑谷くんに警戒しすぎて頭からぬけてたよ!」

 

スタジアムにあるゴールまでの僅かな間、虎人は、二人の足が一瞬だけ止まる威力の雷を放ち、その隙にゴールするという最後の最後で石に躓くような失敗を引き起こしさせた。

知らなかった緑谷は当然として、緑谷という新たな脅威に警戒を偏り過ぎていた心人は自身の油断を悔いていた。

その後、焦凍、爆豪の順でゴールすると、他の者たちもゴールしていった。

そして、通過人数に達するとミッドナイトが台に登って、話し始めた。

 

『1年ステージ、第一種目もようやく終わりね。それじゃあ結果をご覧なさい!』

 

ミッドナイトが後ろのモニターに視線を移させると、そこで順位が発表された。

そしてミッドナイトが再び話を始めた。

 

『予選通過は上位42名。残念ながら落ちちゃった人も安心なさい。まだ見せ場は用意されているわ』

 

(舌なめずりしたぞ…)

 

(香山さん…)

 

『そして次からいよいよ本選よ。ここからは取材陣も白熱してくるよ気張りなさい!』

 

モニターでルーレットが回る中、ミッドナイトがわざとらしく口を開く。

 

『さーて第二種目よ。私はもう知ってるけど何かしら?何かしら?言ってるそばからこれよ!』

 

モニターで表示されたのは『騎馬戦』であった。

 

「ほう」

 

「騎馬戦か…」

 

「俺駄目なやつだ」

 

「騎馬戦」

 

「個人競技じゃないけど、どうなるのかしら?」

 

『説明するわ』

 

皆が各々で反応する中、ミッドナイトが説明を始める。

 

『参加者は2人から4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが…先ほどの結果に従い各自にポイントが振り当てられること』

 

「なるほど、チーム全員分の合計ポイントをかけて戦うというわけか」

 

「組み合わせによって騎馬のポイントが違うから相性も考えに入れないと」

 

『あんたら私が喋ってるのにすぐに先を言うね!』

 

内容をいち早く把握した二人にミッドナイトは厳しく注意をし、説明を再開させた。

 

『ええ、そうよ。そして与えられるポイントは下から5ずつ。42位が5ポイント、41位が10ポイントといった具合よ』

 

(つまり一位は210ポイントくらいか?)

 

『そして一位に与えられるポイントは1000万!!』

 

「なんじゃその小学生が考えたようなポイントは!?」

 

(1000万ね…)

 

(つまり一位の騎馬を落とせば…)

 

(((((どんな順位からでもトップに立てる!)))))

 

『そう、上位のやつほど狙われちゃう下剋上のサバイバルよ』

 

全員の目が虎人を捉える中、虎人の顔は笑っていた。

 

(この緊張感…良いぞ!)

「来るなら来い!全力で相手をしてやる!!」

 

自分が望んだ緊張感を感じ、喜びに浸りながら宣言した。

第二種目、それはミッドナイトが言ったように既にサバイバルと呼べる空気へと変貌していた。

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