ヒトリアソビ   作:眠り狐のK

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四話

「お邪魔します」

 

 親しき仲にも礼儀あり。

 いくら家族のように過ごしてきた親友であっても、誰かの家に入るときにはこの言葉を口にするのは常識だ。

 だが、静かな家の中に友也の声が響くのみで、返事は返ってこない。

 隼人でも、隼人の両親でも、何かしら返事が返ってくれれば安心できるのに⋯⋯なんて頭の片隅で考えていた友也だったが、結局それは友也の中にある願望でしかない。

 

 家の中へと足を踏み入れた瞬間、友也はある違和感を感じた。

 隼人の家はよく訪れていることもあり第二の我が家とも言える場所であるはず。

 だが、家の中に入った瞬間友也が感じたのは我が家へと帰ってきたときの感覚ではなく、赤の他人の家にお邪魔したときの感覚だった。

 まだ感覚的な部分の話なので、具体的に何を違和感として感じているのかは分からない。

 だが、友也はこの違和感に何とも言えないもやもやを感じていたのだ。

 

 靴を脱ぎ、家の中へと上がっていく。

 ぬいぐるみが何処にあるのか分からないので、とりあえず近くの部屋から探索することにした。

 友也は、玄関からすぐ左側の扉のドアノブに手をかけ開けようとしたが、ガチャガチャと幾らドアノブを捻っても開かなかった。

 よく見れば、ドアノブには鍵穴らしきものがあった。

 

「鍵が、かかってる⋯⋯?」

 

 開かない扉を見た瞬間、友也の思考はフリーズした。

 その理由は、『友也の知る限り隼人の家の中で鍵がかかるような場所は玄関とトイレだけ』だったからだ。

 もしかして、間違えて違う人の家に入ってしまったかと一瞬考えてしまったが、何度も行っている親友の家を間違えるはずもない。

 なにより、友也の持つ合鍵で玄関の鍵が開いたということがここが隼人の家であるというなによりの証明だ。

 なら、どうしてここに鍵がかかっている?

 自分の知らない間に改築でもしたのだろうか?

 そんなことを考えながらも、友也は探索を続けることにした。

 そのまま、ゆっくりと長い廊下を進んでいく。

 突き当たりまでそこそこの距離がある、平凡な一家が住むには長い廊下、大きな家。

 

(そもそも、この廊下ってこんなに長かったっけ⋯⋯)

 

 ここが間違いなく隼人の家だと認識してるからこそ、友也の記憶の中の隼人の家と、今目の前に見えてるものの相違点が違和感としてはっきりと浮かび上がってくる。

 これが知らない人の家だとか、友人だとしてもあまり家に行ったことがないような相手の家であればここまで違和感に感じることはないだろう。

 そんなことを考えながら、左に見える次の扉に手をかける。

 友也の記憶ではこの通路で左側に見える扉は一つだけの筈だが、鍵がない部屋に何故か鍵がかかっていたことだったり、不自然に廊下が長かったりと既にいくつか違和感は出てるので、これからも出てくるであろう違和感にいちいち考え込んでいては何も進まない。

 新たな違和感は数ある違和感の一つと認識する程度に留め、ドアノブを捻る。

 しかし、この部屋も鍵がかかってるのか開かなかった。

 

「なんで鍵がかかってるのかはともかく、これじゃあ調べようが⋯⋯いや、何処かしらはきっと開いてるはず⋯⋯」

 

 2連続で開けようとした部屋に鍵が掛かっている事実に他の部屋もそうではないのか、と一瞬考えてしまった友也だったが、まだまだこの家には部屋がある。

 何故かは理解出来ないが、友也が存在を知らない部屋もここ以外にもあるかもしれない。

 家中を探し回ってでもぬいぐるみを見つけ、隼人を取り戻す、それが友也の目的だ。

 簡単に諦めるわけにはいかない。

 

 友也は再び廊下を進んだ。

 間もなく、廊下の突き当たりにたどり着いた。

 左側には2階へと続く階段がある。

 ここは友也の記憶の中の隼人の家と同じだ。

 玄関から真っ直ぐに伸びる廊下であったり、この階段の配置や廊下が突き当たりから右側に続いていたりと一部記憶と一致する部分があると、例え廊下が友也の思っているより長かったり、知らない部屋があったりと違和感のあるところが存在していても、ここは間違いなく隼人の家なのだと再認識させてくる。

 自分の記憶が正しければ右の通路には⋯⋯と考えながら右に続く廊下に目を向ける。

 

「⋯⋯え?」

 

 その目線が右の廊下に向いた瞬間、友也は目を見張った。

 確かに、右側には記憶通り奥まで廊下が続いていた。

 記憶よりも大きく長い廊下なのはここまでの廊下がそうであるので寧ろそのほうが違和感はない。

 だが、問題はそこではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下には、何かに引き摺られた跡のように赤い液体が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは⋯⋯血⋯⋯?」

 

 確かめるように友也は赤い液体に近寄っていく。

 引き摺られた跡のような赤い液体は、左の部屋から廊下の奥に、右の部屋に続いている。

 右の部屋は友也の記憶通りであれば和室だ。

 そこへ続く襖は不自然に開けられている。

 それは、この引き摺り跡を作り上げたナニカが出入りしたことを表しているようにも見える。

 友也は再び赤い液体に目を向ける。

 見た目は完全に血液のように見える。

 だが、血液特有の鉄のような匂いはしない。

 絵の具や、それに似た何かだと言われれば信じてしまえるくらいには嗅覚では血液だと判断ができない。

 だが、それは寧ろ友也にとってはありがたいことだった。

 これが血であると判断できないのであれば、これが隼人やその家族のものであると考えなくて済むからだ。

 友也はこと引き摺り跡の先を調べることにした。

 だが、どちらを調べるか悩む。

 友也の記憶では左側にはダイニングキッチン、右側には和室。

 そのどちらかに、この引き摺り跡を作ったナニカがいるかもしれない。

 そう考えると僅かに足がすくんでしまう。

 だが、じっとしているだけでは何も変わらない。  

 隼人を見つけるには動くしかない。

 

「まずは⋯⋯近いところから⋯⋯」

 

 友也は左側の扉のドアノブを捻り、押し込んだ。

 ギィィと扉の軋む音を立てながら扉は開いていく。

 開いた先は友也の記憶通りダイニングキッチンだった。

 だが、その中身は記憶通りじゃない部分もある。

 記憶より広いのはもう気にしないことにしたが、キッチンの場所や机椅子、テレビの配置は記憶通りであるが、テレビが置かれている棚が記憶より明らかに大きい物に変わっていたり、記憶にない観葉植物が所々に置かれてあったり、記憶通りなところと記憶にないところが混在し、友也の脳内を混乱させてくる。

 友也は何が起こっているのかは理解できないものの、一つだけ理解したことがある。

 それは、この場所は自分の記憶の中の隼人の家と思わないほうがいいということだ。

 ここは、隼人の家であって隼人の家ではない。

 いや、隼人の家を元に作られた全く別の建物と表現する方がいいだろうか。

 どうしてそんなものがあるのか、隼人の家に入ったはずなのになぜこんな場所にいるのか。

 そんな疑問は全て後回しだ。

 第一に考えないといけないのは本来の目的だ。

 『隼人を見つけること』と『ぬいぐるみをあの墓場に返すこと』。

 この二つが主であることを忘れてはいけない。

 

 

 

 友也は考えを切り替えて歩を進めていく。

 

 

 

 その行く先は、赤く彩られた道の先。

 

 

 

 キッチンの裏側。

 

 

 

 近づいていくと、ふとある匂いが友也の鼻を刺激した。

 

 

 

 鉄のような匂い。

 

 

 

 それは、先ほど友也が想像していた匂い。

 

 

 

 この匂いがなかったからこそ、友也は安心感を得ていた。

 

 

 

 それがなかったからこそ、これまで見てきた赤をそれ/血/だと認識しなかった。

 

 

 

 それが嗅覚として感じられ始めてきたということは⋯⋯。

 

 

 

 

 そんな思考を巡らせながら友也はその匂いを発しているであろう場所へと近づいていく。

 

 

 

 ただただ自分の勘違いか、嗅覚がおかしくなっただけなのだと信じながら。

 

 

 

 近づいていくと、やがて人の足らしきものが見えてきた。

 

 

 

 そしてキッチンの裏を覗き込むと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ⋯⋯っ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そこには、胸部を赤く染め仰向けに倒れている隼人の母親の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞳は硬直したように見開かれたまま、ぴくりとも動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どう見たって、既に生きていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 友也は感情的に悲鳴を上げそうになったその口を右手で無理やり塞ぐ。

 大きな音を立ててはいけない。

 もし隼人の母親を殺した犯人が近くにいるならば、気づかれてしまう。

 そんな理性が自らの感情を押し留める。

 友也はその場から離れて深呼吸をし、次に何をすべきか考える。




中途半端なところで終わっています
が、理由があります
この作品はマルチエンディング、つまりエンディングがたくさんあります。
どのエンディングに辿り着くかは読者である貴方に委ねられます。
ここに、友也が次に選ぶ2つの選択肢を提示します。
どちらを選ぶかは、貴方次第です。
その選択次第で、先に進むか、それとも物語が終わりを迎えるか変わってきます。
貴方の手で友也を正解の道へと導いてあげてください。
(更新次第、矢印の先に選択肢に対応したURLを貼り付けますので暫くお待ちください)

A.「警察を呼ぶ」



B.「探索を続ける」

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