8000年過ぎた頃からもっと恋しくなった……?   作:グラナデンロップイヤー

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第17話

 一五回目。

 「いえいえ、赤ん坊の泣き声が聴こえたんで……むしろ、俺の方から、良ければお渡ししたいものがありまして……実家から早く相手を見つけて結婚しろってうるさくて、昨日荷物が届いたんですが、ベビー用品とかが沢山来ちゃいまして困ってたんです」

 

 そう言ってベビー用品とスマコンを渡す。

 

「申し訳ないですが、ここにあるのは本当にいらなくて……返品不可でお願いします! では!」

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

「欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!」

 

「いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの」

 

「いーからいーから~」

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も、深呼吸した。

 

 

 二十回目。

 「いえいえ、赤ん坊の泣き声が聴こえたんで……むしろ、俺の方から、良ければお渡ししたいものがありまして……実家から早く相手を見つけて結婚しろってうるさくて、昨日荷物が届いたんですが、ベビー用品とかが沢山来ちゃいまして困ってたんです」

 

 そう言ってベビー用品とスマコンを渡す。

 

「申し訳ないですが、ここにあるのは本当にいらなくて……返品不可でお願いします! では!」

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

「欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!」

 

「いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの」

 

「いーからいーから~」

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も、深呼吸した。

 

 

 三十回目。

 「いえいえ、赤ん坊の泣き声が聴こえたんで……むしろ、俺の方から、良ければお渡ししたいものがありまして……実家から早く相手を見つけて結婚しろってうるさくて、昨日荷物が届いたんですが、ベビー用品とかが沢山来ちゃいまして困ってたんです」

 

 そう言ってベビー用品とスマコンを渡す。

 

「申し訳ないですが、ここにあるのは本当にいらなくて……返品不可でお願いします! では!」

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

「欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!」

 

「いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの」

 

「いーからいーから~」

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も……深呼吸した。

 

 

 五十回目。

 「いえいえ、赤ん坊の泣き声が聴こえたんで……むしろ、俺の方から、良ければお渡ししたいものがありまして……実家から早く相手を見つけて結婚しろってうるさくて、昨日荷物が届いたんですが、ベビー用品とかが沢山来ちゃいまして困ってたんです」

 

 そう言ってベビー用品とスマコンを渡す。

 

「申し訳ないですが、ここにあるのは本当にいらなくて……返品不可でお願いします! では!」

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

「欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!」

 

「いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの」

 

「いーからいーから~」

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も……深呼吸した。

 心臓が微かに痛んだのは絶対に、気のせいだ。

 

 

 百回目。

 

「申し訳ないですが、ここにあるのは本当にいらなくて……返品不可でお願いします! では!」

 

「えっ……あ、ちょっ」

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

「欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!」

 

「いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの」

 

「いーからいーから~」

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も……深呼吸した。

 心臓が微かに痛んだのは絶対に、気のせいだ。

 

 

 百五十回目。

 

「申し訳ないですが、ここにあるのは本当にいらなくて……返品不可でお願いします! では!」

 

「えっ……あ、ちょっ」

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

「欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!」

 

「いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの」

 

「いーからいーから~」

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も……深呼吸した。

 心臓が痛んだのは絶対に、気のせいだ。

 

 

 二百回目。

 

「え?」

 

「申し訳ないですが、ここにあるのは本当にいらなくて……返品不可でお願いします! では!」

 

「えっ……あ、ちょっ」

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

「あ、ちょ、ちょっと引っ張らないでってば」

 

「欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!」

 

「いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの」

 

「いーからいーから~」

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も、何度も……深呼吸した。

 心臓が痛いのは絶対に、気のせいだ。

 

 

 二二五回目。

 

 ――え?

 ――えっ……あ、ちょっ。

 

 そう言って部屋に戻った。

 そして八月に入り。

 

 ――あ、あの、隣に住んでいる者です。この度引っ越すこととなったので……以前子供用品をいただいた分を、お返しさせていただきます。

 ――あ、ちょ、ちょっと引っ張らないでってば。

 ――欲しいっていう人にはあげてもいいけど、いらないっていう人にはあげる方が迷惑だも~ん。だったら望み通りかぐや達のために使うのが一番だよね!

 ――いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの。

 ――いーからいーから~。

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も、何度も……深呼吸した。

 心臓が痛いのは、気のせいだ。

 

 

 二五〇回目。

 

 ――す、すみませんっ、うるさかったですよね? 今、静かになりましたんで……えっ?

 ――え?

 ――えっ……あ、ちょっ。

 

 八月。

 

 ――あ、あの、隣に住んでいる者です。この度引っ越すこととなったので……以前子供用品をいただいた分を、お返しさせていただきます。

 ――あ、ちょ、ちょっと引っ張らないでってば。

 ――いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの。

 ――いーからいーから~。

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 落ち着くまで何度も、何度も……深呼吸した。

 心臓が痛いのは……気のせいだ。

 頭が痛いのは、気のせいだ。

 

 

 二七五回目。

 

 ――す、すみませんっ、うるさかったですよね? 今、静かになりましたんで……えっ?

 ――え?

 ――えっ……あ、ちょっ。

 

 八月。

 

 ――あ、あの、隣に住んでいる者です。この度引っ越すこととなったので……以前子供用品をいただいた分を、お返しさせていただきます。

 ――でも、いただいた分はせめてお支払いさせてください。

 ――ダメ! これは返すお金だって言ったでしょ?

 ――あ、ちょ、ちょっと引っ張らないでってば。

 ――いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの。

 

 その声を最後に扉を閉めた。

 一人となった空間で深呼吸する。

 心臓が……痛い。

 頭が……痛い。

 

 

 三百回目。

 

 ――ッ、やばっ、やっぱうるさかったか。

 ――す、すみませんっ、うるさかったですよね? 今、静かになりましたんで……えっ?

 ――え?

 ――えっ……あ、ちょっ。

 

 ――あ、あの、隣に住んでいる者です。この度引っ越すこととなったので……以前子供用品をいただいた分を、お返しさせていただきます。

 ――でも、いただいた分はせめてお支払いさせてください。

 ――で、でも……。

 ――いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの。

 

 心臓が、痛い。

 頭が、痛い。

 思考が、まとまらない。

 余計な感情が、溢れてくる。

 まるで心にできた大きな棘が壁に罅を入れた様に、壁を突き破った様に。

 余計な思考が、入り乱れる。

 まるでオレの行動が正しくないみたいに、間違ってるみたいに。

 まるで解答みたいに、感情と思考が入り乱れる。

 ノイズのように、脳内に映像が浮かび上がる。

 

 ――ッ、やばっ、やっぱうるさかったか。

 ドアの向こうから聴こえる……いろはの疲れ切った声。

 

 ――す、すみませんっ、うるさかったですよね? 今、静かになりましたんで……えっ?

 オレに恐縮しきった謝罪をする……いろはの姿。

 

 ――あ、あの、隣に住んでいる者です。この度引っ越すこととなったので……以前子供用品をいただいた分を、お返しさせていただきます。

 赤の他人であるオレにそう言って恐縮しきった……いろはの顔。

 

 ――いや、ま、待って、これは常識としてやらなきゃいけないことなの。

 赤の他人であるオレのせいでかぐやに反対する……いろはの表情。

 

 ノイズとして走るその映像を見る度に、割れる様に頭が痛くなった。

 ノイズとして走るその映像を見る度に、握りつぶされる様に心臓が痛くなった。

 ノイズとして走るその映像を見る度に、俺を責める様に思考が入り乱れた。

 ノイズとして走るその映像を見る度に、俺を責める感情が溢れ出した。

 

 そうか。

 

 

 いろはが笑わないのは――俺のせいだったんだ。

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