黄金の焔旗   作:青瑠璃

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君が忘れた陽だまり

 

ーテンニンカ三人称視点ー

 

「それでね、ロドスに来る前までは、尻尾がふわっふわっで夕日色みたいな生き物と一緒にお昼寝していたの!」

 テンニンカはエリジウムに、ドゥリンの故郷……地下から出てきた後どうやって地上で過ごしていたのかを話していた。エリジウムは、へぇと興味深そうに顎に手を当て、半ば強引にロドスのラボから引きずり出されたソーンズは自分の研究結果報告の書類をずっと睨みつけていた。

「でもロドスに来てからは、全然来なくなっちゃったなぁ。あの子のおかげで寒い夜もよく眠れたのに」

 テンニンカはかつての旅を思い出して少し悲しい気持ちになった。一方、エリジウムは何か心当たりがあるのか、テンニンカに質問を投げてきた。

「その夕日色をした生き物って、丁度ソーンズの目みたいな色?」

 エリジウムは遠慮なく、隣にいるソーンズに肩を置いて軽く引き寄せる。ソーンズは不機嫌そうに眉を顰めたが、特に何か言うより書類を凝視することに集中していた。

「あ、そうそう! ちょーど、ソーンズの目みたいな色してた!」

 テンニンカもソーンズの機嫌なんて気にもせず話を続ける。エリジウムがうんうんと頷いた。

「だったらその生き物は、焔尾(エンビ)獣かもね。要するにキツネってことだけど、尻尾がフワフワだったなら間違いないね」

 エリジウムは各地を放浪としていたからか、テラの生き物にもかなり詳しかった。テンニンカはますます興味を惹かれたが、焔尾という聞きなれない単語に首を傾げた。

「エンビ……? なんかちょっと呼びづらい名前だね」

 あの可愛い生き物に「エンビ」という硬そうな名前が似合わないと、テンニンカはそう思っていたのだ。

「炎って意味だよ。尻尾がユラユラする火みたいだからそう呼ぶんだろうね」とエリジウムが言う。「黄金のリンゴを使うテンニンカに炎のキツネか……名前とかつけて呼んでた? 僕ならホムラって名付けるね」

 ハハッといつもの軽い口調で笑うエリジウムだったが、テンニンカは真剣だった。テンニンカは、長い長い旅路で一緒にお昼寝をした友達のことが、とても大切だったのだ。

「ホムラ……いいかも」

 と小声で呟いたテンニンカの思惑に気づいたのかどうなのか、今まで書類ばかり見ていたソーンズが唐突に声を発した。

「焔尾獣か。あの生き物には、興味深い逸話があるな」とソーンズがゆっくり話し出す。「別名は欺瞞(ぎまん)獣。生活圏を広げた俺たち人間や強力な鱗獣などによって生息地を追われているらしいが、実は焔尾獣が減っているのは「人」に化けているから、とどこかの誰かが語っていたな」

 人に化ける……? テンニンカはソーンズの言葉がよく分からなかったが、エリジウムはちょっとちょっとと割り込んだ。

「今まで蚊帳の外にいたっていうのに、急に割り込むなら最初から会話に入ってよね。そもそもその逸話って誰から聞いたの? 根拠がない話をテンニンカに流さないで……」

「お前の言うデカイ魚が空を飛ぶ話が、嘘だったと今から証明してもいいが?」

「そーれーは! 本当なんだって! あれは僕がシラクーザ方面の荒野にいた時に……」

 と主にエリジウムが騒ぐだけの二人のケンカを横に、テンニンカはすでに別のことで頭がいっぱいだった。

「ホムラくん、元気かなぁ……」

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