黄金の焔旗   作:青瑠璃

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君が忘れた陽だまり

 

 そうして、フォックステイルが焔尾獣だった時、どこへ行くにもテンニンカの後について回った。

 時には自分たちよりも大きな野生化した駄獣を追い払ったり、テンニンカの黄金のリンゴを狙う羽獣の群れから逃げ回ったり、一緒に日当たりのいい場所で昼寝をしたり。

 しかし、ある日テンニンカの姿が消えた。

 いつものように自分の狩りを終えて食事をし終えたあと、テンニンカがいるだろう場所に向かっても……彼女はいなくなっていたのだ。

 匂いを辿っても、まるでどこかへ飛び去ったみたいにその気配すら途切れている。

 フォックステイルは悩んだ。やがて、気づけば無鉄砲に走り続け、そしてある古びた、放置された人間の書庫に辿り着いたのである。

 フォックステイルは、テンニンカを探すがてら、雨を凌ぐためにその書庫によく来ていた。今思えば、なぜこの書庫を拠点にしていたのだろうと思う。しかしそれが、フォックステイルが「人間に化けよう」と思い立つ、きっかけにもなった。

(ここ、沢山の紙ってヤツだらけだ……人間はこれを、本って読んでいるんだっけ……)

 いつかどこかで群れの誰かから聞いた人間の話を思い出しながらフォックステイルは書庫を見回す。そこに、ページが開きっぱなしのまま床に落ちている本に目が止まる。

(人間はこの小さな文字ってヤツでお話をするんだよな……)

 テンニンカの顔を思い出すフォックステイル。テンニンカはいつも、人間の言葉でフォックステイルに話しかけていた。その彼女の顔が今でも鮮やかに脳裏に浮かぶ。彼女のあの温かい言葉をもっと理解出来ないだろうか、とフォックステイルは考えた。

(僕も、人間の文字が読めたら……)

 テンニンカの話す言葉を知りたくて、フォックステイルは本棚を押し倒し、中身を読み漁った。独学で文字を読むのは大変だったけど、テンニンカのことを思えば全然苦じゃなかった。

 そうしてだんだんと文字が読めるようになり、フォックステイルは、自分が「焔尾獣」と呼ばれていることを知った。別名、欺瞞獣……その名前の由来が、人に化ける噂があるから、ということも。

(僕も人間に化けることが出来たら……?)

 テンニンカの横に並ぶことが出来るかもしれない。

 フォックステイルは人間の骨格図鑑を開き、ファッション雑誌も読み漁った。最初は古いファッションばかりだったけど、フォックステイルがほとんど人の姿に化けることが出来るようになった頃には、親切な人間から服を貰ったりして過ごすことが出来た。

 だけど、世の中、人間も親切な人ばかりではないみたいで……。

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