数分後か、数時間後か。フォックステイルは、薄暗い檻の中で目が覚めた。
「ここは……?」
フォックステイルは動こうとして、ハッと気づいた。今自分は人の姿ではなく、焔尾獣になっていたのだ!
(も、もう一度化けなきゃ!)
フォックステイルは化けようとしてみたが、自分のアーツが足りないからか、全く変化が起きない。ますます焦るフォックステイルだったが、何をどうやっても自分の姿形に変化は起きない。
(どうしよう……早く人に化けなきゃ……)
こんな姿のまま、テンニンカに見つかってしまったらどうしよう、とフォックステイルはそればかり考えていた。
そんなことをしている間に、檻の外から声が聞こえてくる……。
「なんだって? 人間を捕まえてきたって?」
人間の女の声だった。
その甲高い声はテンニンカではないとすぐに分かり、げんなりとするフォックステイルだったが、次に聞こえてきた男の声でハッとすることになる。
「すいません、姐さん……てっきり、捕まえるのは人間も含むのかと思いまして……」
忘れもしない。フォックステイルを捕まえたあの薄気味悪く笑うあの男だ。
「グルルル……!」
フォックステイルは人間に化け直すことも忘れて威嚇の声をあげたが、それが却って悪い方向に転じてしまった。
「捕まえた人間が起きたんじゃないかい? 人間の処理はあんたが最後までやりな!」
と女は言い捨て、男はヘイ……とやる気なさそうに返事をする。
そして足音が近づき、とうとうその男が檻の前に掛かっている布を開けたのだ。
「おい、人間! 今ここで処分してやるからそこを動くなよ……って、動物になってる?!」
男は、人の姿のままのフォックステイルを捕まえたので混乱したのだろう。だが、今自分が焔尾獣の姿だろうと、フォックステイルは気にしていなかった。
「ガウッ!」
フォックステイルは飛びつき、檻の鉄格子に噛みついた。この鉄格子を噛みちぎれば目の前にいる男に復讐出来る……フォックステイルはそう考えていたのだ。
今のフォックステイルは、あの書庫で必死に覚えた人間の理性より、野生動物としての本能を優先していた。
「あー、うるさいな……けどこれはいい報告だ!」しかし男は、フォックステイルに怯えることなく喜んだ。「きっとあの人間は、他の野生動物と入れ替わりの術でも使って逃げ出したんだ! これで野生動物を捕まえたことになる! 俺の手柄だ!」
フォックステイルは男が何を言っているのか分からなかったが、今はゆっくり考えている暇はなかった。早くこの檻から出なくては……そんなことを考えていて、男が構えた改造型麻酔銃に気づかなかったのだ。
パァン……!
「ギャウッ……!」
フォックステイルの体に衝撃が走り、同時に背後の鉄格子まで吹き飛ぶ。
フォックステイルはなんとか立ち上がるものの、フラフラして視界も不明瞭だった。男が立ち去っていくのが見える……。
「ふんっ、しばらく大人しくしてろよ!」
(待て……!)
それは言葉にならないまま、フォックステイルは倒れた──。