ードクターの三人称視点ー
「フォックステイルと呼んでください。それで……あなたがドクターですか?」
ここはロドス製薬会社。たった今、ロドスにオペレーターとして配属された若々しい男性がドクターの執務室にやって来ていた。
「そうだよ、ようこそ」
とドクターが答えると、フォックステイルと名乗る彼はピンッとヴァルポ特有の耳を立てた。
「初めまして、ドクター! シツムシツなんて初めて見ましたが、とても綺麗な場所ですね!」
「ハハ……書類が散らかっていてごめんよ。とりあえず、握手でもしようか」
とドクターが席を立って握手のために手を差し出すと、フォックステイルと名乗った彼は不思議そうに首を傾げた。
「その手はなんですか? 僕は今、リンゴも何も持っていませんが」
聞いていた通り、フォックステイルは辺境の地で一人生きてきた人物のようだ。人との関わり方が全く理解出来ないらしい。
「これは握手だよ。こうして、手と手を繋いで、親睦を深めるんだ」
とドクターがフォックステイルの手を取って握手の仕方を教えると、細めの目が見開いて、黒檀色の瞳がよく見えた。
「なるほど、アクシュとはこういうものでしたか! 覚えておきますね!」
と言いながらドクターの手をぶんぶんと振るフォックステイルには、全く悪意が見て取れない。彼の琥珀色をしたヴァルポの尾がぶんぶんと激しく揺れる。同時に、ドクターの肩が脱臼しかけたが。
「しかし、シンボクとはなんでしょうか? ここに来る前に本を読み漁りましたが、そのような木があるとは知らず……」
フォックステイルは激しい握手をやめるや否や、またドクターに質問をした。なるほど、一人で日々を過ごしていてもこんなに丁寧な口調だったのは読書家だからかと納得しながら、ドクターはこう答えた。
「仲良くなるってことだよ。友達になる……とかだと伝わりやすいかな?」
正直、ドクターとフォックステイルの関係は上司と部下であったが、彼に伝わるならなんでもいいと説明したことだった。すると、フォックステイルはまた目を見開いた。
「友達! それなら分かります! 友達、嬉しいです、ドクター!」
それから再び激しい握手をかわそうとするフォックステイルからなんとかかわしながら、ドクターは話題が変わるように質問を投げかけた。
「君は人を探してロドスに来たって言ってたよね? その人はロドスの中にはいたのかい?」
すると、フォックステイルは嬉しそうに尾と耳を揺らして大きく頷いた。
「はい! 出会えただけでとても嬉しいです!」