ーエリジウム目線ー
その後、あの2人がどうなったかって?
ここからは、僕が語らなくてももう分かるよね。
テンニンカとフォックステイルは、ロドスのどこにいてもいつも一緒にいるようになった。詳しいことは僕にもよく分からないけど、テンニンカはフォックステイルの本当の姿を受け入れたみたいだね。時々療養庭園に向かうと、焔尾獣の姿のフォックステイルと昼寝をしているテンニンカの姿を見かけるよ。
ああ、ロドスのオペレーターが人外であることに問題はないかって? 正直に言って、問題はないよ。だってここはロドスだよ? 鉱石病に関することやそれらに立ち向かう優秀な人材を集めている製薬会社……そんなこの場所が、フォックステイルの存在を否定する理由はないんだ。
「でも、エリジウム……嘘つきは悪いことだよね?」
ロドスの小児科入院病棟にいる患者の子どもが、僕にそう聞いてきた。僕はたった今、この子どもたちに「テンニンカとフォックステイルのお話」を聞かせてあげたところだったんだ。
「そうなんだよね。フォックステイルは、嘘をつくという悪いことをした」僕は本当のことをそのまま子どもに伝えた。「だからみんなは、嘘をついて嫌な気持ちになる前に、正直に『ごめんなさい』って言える大人になろうね。イケメンの僕との約束だよ!」
と僕が言うと、多くの子どもたちは「はーい」と返事をしてくれたが、一番近くにいる子どもだけは違うことを言い出した。
「でも、エリジウムはイケメンじゃないって、ソーンズが言ってたよ」
「えぇ、そうなの? きっと、僕のイケメンさに嫉妬してそんなことを言ったんだろうね。僕は間違いなく、イケメンだよ」
と僕は言いながら、ソーンズもこの入院病棟に来るんだなぁと思っていた。それもそうか。ソーンズは毎回ロドスの研究室を爆発させてるけど、アレでも薬学研究者なんだもんね。
「あたし、ソーンズの方がイケメンだと思う!」
そんな中、ちょっとおませな女の子がそう言い始める。それをきっかけに他の子どもたちも声をあげ、やがて「ソーンズとエリジウムはどっちがイケメンか」と言い争いにまで発展した。
「ちょっとちょっと、ものすごく平和なことで言い合いになるのはいいけど、そんなことでケンカしないでよ?」
僕がイケメンなのは間違いないけどね、なんて言うと、子どもたちの言い合いはヒートアップだ。子どもってのは元気だよね。ほら、今そこで服を掴みかかって……ってやっぱりケンカになってる?!
「ちょっと、ケンカはダメだって──」
僕は割り込んで子どもたちのケンカを止めたけど、そうすることでまた別のところで別の子どもたちがケンカを始める。僕の手はそんなにないんだけど!
「おーい、みんな〜!」
そんな時、まるで救世主かのように誰かの声が飛び込んできた。それは、フォックステイルの声だった。
「僕の幻炎でフィールドを作ったんです。どれくらい効果的か、皆さんで隠れんぼをしてみませんか?」
とフォックステイルは子どもたちに提案するのだ。
「隠れんぼ!」
「やるやる!」
「ホムラ兄も一緒にやろー!」
すると子どもたちは、ケンカをしていたことなんてすぐに忘れてフォックステイル……否、ホムラのところに駆け寄っていく。
そう。フォックステイルは、あの件以降、ホムラという名前でロドスオペレーターとして活躍することとなった。なので子どもたちには、彼がフォックステイルだったことは知らない。ホムラとして、生まれ変わったってことだろうね。
「エリジウムさんも、一緒にどうですか? テンニンカさんも待ってますよ」
ホムラが僕に聞いてきた。僕は大きく頷いた。
「そんな楽しいこと、僕が参加しない訳ないじゃん!」
僕は子どもたちを追い越してホムラの元へ走り寄る。子どもたちは負けじと僕と追いかけっこをしたりして、ますます賑やかになった。そんな僕たちの様子をホムラは楽しそうに眺めていて、ああ、彼は本当にいい顔をするようになったなと思った。
「あれ、ホムラ兄、手がキツネさんになってるよ!」
……たまに変身がちょっと解けるみたいだけどね。
おしまい