それからというものの、フォックステイルの活躍は誰もが目を見張るものだった。
フォックステイルは、ロドスのオペレーターでは「補助」として配属された。補助といえばプラマニクスのような不思議な力や、歌や言葉で他のオペレーターを補佐するイメージの多い職業だが、フォックステイルは他には見ないような力を使いこなすのだ。
アーツで本物そっくりの「幻影」の火を繰り出すのである。
敵はその火の幻影に翻弄され、そこを先鋒や前衛オペレーターたちが斬り込む。その活躍っぷりにオペレーターたちの多くがフォックステイルを取り囲み、あの新人くん上手くやってるんだなぁと、エリジウムは遠巻きに眺めていた。
だけどもエリジウムというこの明るいだけの彼は、ソーンズの言う「バカ」ではなかった。直感的にフォックステイルのことが妙だと気になっていたのである。悪人ならさすがにエリジウムも気づいたのだが、もっと別の深い何かがある……そう睨んだエリジウムは、お得意のお喋りと情報収集能力で、フォックステイルは、任務のない時は療養庭園にいるという話を聞き出した。即断即決のエリジウムは、早速療養庭園へと向かった。
「あら、こんにちは、イケメンさん。あなたには療養が必要には見えなかったけれど、何か用事でも?」
療養庭園には、管理人でもあるパフューマーがオシャレな丸椅子に腰を掛け、背の高いエリジウムを見上げた。
「いやいや、今日は僕の療養じゃなくて……」
とエリジウムは言いかけて、パフューマーが静かにするように、と口元に指を当てる仕草を見せる。おっと、今は誰かが療養中なのかな、とエリジウムが自分の口を覆いながらパフューマーの目線の先を辿ると……。
そこにはお探しのフォックステイルがいた。かなり体を丸めて窮屈そうな体勢で眠りながら。
(へぇ……あの子もこんな顔するんだ)
それとも、過酷な生活をしていた彼がようやく得られた安堵の時間なのかな、とエリジウムは考えたが。
(待てよ……人間ってあんな体勢でぐっすり眠れるのか……?)
エリジウムは考えたが、今日は連れ回しているソーンズもいないので、この疑問をぶつけられずモヤモヤした。
そんな時、パフューマーがいるところより奥の方で、それぞれ1つずつの植木鉢を抱えて何か話しながら歩いているヴァルポの彼女たちを見かけた。ボデンコとスズランだ。
あの子たちの平和で穏やかそうな表情を見ているとエリジウムも心が和むものだが、彼女たちが背中を向けて植木鉢を置いた時、あることに気がついた。
ヴァルポ特有のふわふわな尻尾だ。
確かにヴァルポには尻尾があるし、それはフォックステイルにも同じなのだが……エリジウムは彼女たちと彼の尻尾の違いを見比べて、何かが違うような? と思い始めていた。
(なんというか、フォックステイルの尻尾はゴワゴワしてる……?)
硬質の毛並みなのだろうかとエリジウムはフォックステイルの尻尾に触ってみようと近づいた、その瞬間。
「うわぁっ?!」
フォックステイルは驚いて飛び跳ね、まるで本当に「キツネ」そのものみたいに四本の手足で警戒した。
「ごめんごめん、君の尻尾があまりにも綺麗で……」
エリジウムは何も危ないものはないよ、とアピールするように両手を上げ、フォックステイルも安心したのか警戒体勢を緩めた。
「あ、エリジウムでしたか! おはようございます!」
フォックステイルはすぐに背筋を伸ばして礼儀正しく挨拶をしたが、エリジウムの不審感は拭い切れていなかった。
(なんかものすごく、野性的な動きをしたよね……?)
エリジウムは内心、少しだけフォックステイルを怪しんでいた。