ポケットモンスター 新たなる旅路   作:よっしい

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どーも、よっしいです!
そろそろ時期的には秋ですね~…。ただ、暑さはとどまることを知らない。
毎年思いますが、9月にもなってこの暑さだと、冬なんてやってくるのかと思ってしまいます。

さて、そんな雑談はおいておきまして、今回のお話は少し長尺ですので、覚悟してみることを勧めます。字数にしておよそ2万字、大ボリュームな主人公対決を、とくとご覧あれ……。


第二話 門出の祝いにガラルチャンピオンを倒そうと思います

《ホムラ視点》

 

あのバトルの翌朝、僕らはホテルの一階で朝食であるバイキングを食べていた。

 

「ところで、マジでガラルチャンピオンさんなんだな……。」

 

「あたしのことはさん付けじゃなくていいよ!あたしもそう呼ばないようにするし!」

 

「ああ、そう…?」

 

にしてもユウリさん……いや、ユウリってこんなに人懐っこいんだな?

試合中の映像とか見る限りもっと威厳というか覇気のある人なんじゃないかとか思ってたけど、そんなことはなかったわ…。

 

「んん?あたしがこんなしゃきっとしてるとは思わなかったって?よく言われる~!前もよっしいに言われたんだ~。」

 

「たしかに言ってたな、そんなこと。」

 

すると、皿を空にしたよっしいが立ち上がろうとして……いったん座り、僕らの方を改めてジッと見つめてきた。

そして、おもむろにこんなことを言い出したのだ。

 

「そうだ、お前ら一緒に旅とかしたらどうだ?」

 

「えっ?」

 

一緒に旅したらどうだ、という内容。

確かに魅力的ではあるのだが、果たしてユウリがどう反応するか……

 

ふとユウリの方を見てみると、さっきまで以上に目を輝かせていた。

どうやらナイス提案だった模様。

 

「あっ、確かにいいかも!ホムラはいろいろ知識持ってそうだもんね~。」

 

「いやぁ、まぁ……そんなことあったりなかったり……ってそんなのどうでもよくて。

一緒に旅するかって?別にいいよ。僕は構わない。旅って人が多いほうがおもしろいからね。」

 

「なら、決まりだね!よろしく、ホムラ!」

 

スッと差し出された手に対し、僕はしっかりと握手する。

 

「こちらこそ。共に有意義な旅にしよう!」

 

かくして、僕の旅はユウリとの二人旅になることが確定したのであった。

 

 

 

 

朝食を食べ終わり、ホテルのチェックアウトも済ませていざ次の目的地へ行こうとなった今、僕らはホテル前でよっしいと別れの挨拶を行おうとしていた。

 

「いろいろあったけど、ありがとうな、よっしい。おかげで一人旅仲間もできて、より楽しい旅になりそうだよ。」

 

「そりゃあよかった。あ、そうそう、お前らが旅に出る前に、いろいろ説明しなきゃならないことがあるんだ。」

 

「「説明しなきゃならないもの?」」

 

「ああ、そうさ。まず一つ。ジムの制度について。

デルタ地方でのポケモンリーグは、従来通り8つのジムバッジを入手してポケモンリーグに挑む形式なんだが、今回君たちが挑む8つのジムすべてにジムチャレンジがあるんだ。」

 

「ジムチャレンジってなに?」

 

ジムチャレンジ。聞き覚えのないその言葉に僕が「(はてな)」を浮かべていると、ユウリが補足説明をしてくれた。

 

「ガラル地方と同じやつだよね、多分。ジムチャレンジっていうのは、ジムに挑む前に行われるチャレンジみたいなものだよ。だから、パルデア地方で言う……」

 

「ジムテストだ。ジムに挑む前にやるアレ、な。」

 

ジムテスト……ああ、あれか!

ジムテストといわれると、合点がいった。

 

「なるほど、わかった。ありがとう。」

 

「ならよし。まぁ、四天王戦前とかチャンピオン戦前はそういうのはないんだが、代わりにチャンピオンロードがあるんだ。」

 

「「チャンピオンロード……」」

 

チャンピオンロード、聞いたことがある。

アローラやガラル、パルデアにはないが、その他のメジャー地方なら存在するといわれている、ポケモンリーグの前の登竜門。

すべてのバッジを手にしたものに課される、最後の一次審査。

ここを抜けられるか抜けられないかでリーグに挑めるか挑めないかが左右されるのだ。

 

「ああ。強敵難敵……いろいろいるだろうが、まぁお前らならいけるだろ。心配はしてない。ちなみに、殿堂入り経験0の人はバッジ8個集めててもロープウェイで来ないと駄目なぐらいポケモンが化け物だから……ってこの説明は後ででいいか。」

 

ちょっと?いま聞き捨てならないことが聞こえたんですけど?

 

「二つ目、ゼンブイリングについて。」

 

「「ゼンブイリング?」」

 

ゼンブイリング……またもや聞いたことのない単語だった。

全部入りってことかな?

 

「これまでメジャーな地方で発見された切り札システムが全てこれ一つで使用可能になる優れものだ。これに耐えうる素材である、デルタ地方でしか採れないメタルコアを使って作ったリングで、メガシンカ、Zワザ、ダイマックス、テラスタルの全てを一挙使用可能だ。」

 

「「へぇ~。」」

 

どうやら、全部入りであっていたようだ。

メガシンカ、Zワザ、ダイマックス、テラスタルの全てが使用可能……。

まったく、便利だが恐ろしいアイテムだよ……。

 

「さ、これをやるよ。」

 

すると、よっしいが差し出してきたのは、2枚のチケットだった。

受け取ると、そのチケットには『専用VIPバトルチケット 15:00の部』と書いてあった。

 

「これはなぁに?」

 

「これで、お互いの実力を試すといい。開催は午後3時だが、全然時間はあるはず。ルールは3対3のシングルバトルでかつ4種類の必殺ムーブのうち2つが使えるから、器用に使うんだぞ。俺も見に行くが、開始前ごろまではいない。そこだけよろしくだ。ちなみに、ダイマックスキョダイマックスやテラスタイプの切り替え、メガストーンの購入は、全てポケモンセンターでできるぜ。」

 

「わかった。色々ありがとうな。」

 

「ありがとう!」

 

「礼には及ばんよ。」

 

そう言うと、よっしいはリザードンを出し、乗って飛行して南の方へ去っていった。

 

よっしいが去ったあと、僕らはバトルコートにて練習やゼンブイリングの性能を確かめたり、昼食を摂ってからは個人で特訓したりなど、各々でできることをやり、過ごした。

 

そして、バトルの時間は訪れる。

 

 

『さぁさぁ始まって参りました、本日の最終バトル兼最大級の大勝負!司会は私、エイデンが、そして解説はポケモンリーグ委員のカール氏がお送りいたします!』

 

『よろしくお願いします。』

 

『ところでカールさん、本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。』

 

『いえいえ、本日は少しスケジュールに余裕があったから来れただけですよ。まぁ、明日は少し忙しいですがね。』

 

『そうなんですね!では、何はともあれ、このバトルは我々の司会&解説で回していきますので、よろしくお願いします!さぁ、それでは皆さんお待ちかねの、このバトルを彩るトレーナーたちの紹介&登場です!』

 

テンション高めな前置きが終了し、登場選手の紹介に移る。

ここでもやはり、エイデンなる人はテンション高めな紹介を行った。

 

『まずは赤コーナー!

燃ゆるは一つの強き炎、そして強き闘志!

パルデアを照らした最強の炎が今、デルタの地をより熱く、そして強く、青く燃やす‼

赤コーナー、『パルデアの豪炎』ことホムラ選手!』

 

紹介が終了し、僕が前に出たとたんに観客が沸き立ち、歓声までもが聞こえてくる。

 

パルデアの豪炎、ね。まぁ、悪くない二つ名だと思う。

そして、相手サイドからも選手が登場する。

 

『続いて青コーナー!

立ちふさぐ爆炎をも打破し、ガラルを沸かした最強の若手!

伝説ですら何匹も従える、歴代ガラル最強の少女、ここに降臨‼

青コーナー、『ガラルの超新星』ことユウリ選手!』

 

ユウリの説明でさらに沸き立つ人々。

スタジアムに立つ僕にとって、その熱気はなかなか耐え難いものであった。

 

そうこうしているうちに、ユニフォームを着用したユウリが、堂々と前進してくる。

 

その姿には威厳と幾分かの恐怖を覚えたが───

 

「……気合いは十分みたいだね!」

 

「それはもちろん!…さぁ、お手並み拝見といきましょうか、パルデアチャンピオンさん!」

 

僕には通用しない。

恐怖心がないわけではないが、ここまでの圧は何度も感じてきた!

 

『……さぁ、それでは両者出揃い、さらに意気込みまでしたところで、バトル本番に移ってまいりましょう!ではでは、両者出し惜しみせずにポケモンを‼』

 

「先鋒は君だ!ひらひらッ!」

「翻弄しちゃおう!りむむ!」

 

「クエアアッ!」

「りむむぅっ!」

 

僕の先鋒は、エスパータイプのポケモンであるクエスパトラ、ニックネームはひらひら。

耐久はあまりないが、特攻と素早さが非常に高く、搦手もある程度使用可能。僕のパーティーの、いわゆる翻弄担当だ。

 

一方、ユウリの先鋒はエスパー・フェアリータイプのポケモンであるブリムオン、ニックネームはりむむ……。公式戦で何度か使用している形跡こそあったものの、そのどれもが厄介な搦手をつかってくることもあり、正直言ってあまり戦いたい相手ではない。しかも、毎度やることやワザ構成が変わっているという、相手に型を読ませない徹底ぶり。その性能は、まさにユウリのパーティーの翻弄担当といったところだろう。

 

『ほほう、初手から搦手対決、といったところでしょうか。』

 

『おっ、カールさん、このお二方のポケモンと戦ったことが?』

 

『ああ、あるね。ポケチューブに公開した動画で、ユウリさんがホムラ君をおびき寄せるために少し芝居を打ってもらったのは、私とバトルしてテストに合格したからだ。』

 

「そうなの⁉」

 

ああ、あれおびき寄せられてたんだ、僕……。

なんか…やだな……。

 

『ユウリさんのあのブリムオンと戦ったけど……やはりガラルでの戦闘の通り、本当にトリッキーな試合を展開されて、度肝を抜かしたものだよ。おかげで無事こっちは敗北したさ。』

 

あのブリムオンに度肝を抜かされた、か……。やっぱ只者ではなさそうだな。

 

『では、もう一方のクエスパトラは……』

 

『ああ、あの子はポケチューブ情報だね。果たして今回も搦手かはわからないが……これまでのジム戦の傾向を見れば、搦手である可能性が非常に高いだろうね。』

 

『なるほど、解説ありがとうございました!ではでは、早速スタートコールをしていきましょう!』

 

カールさんによる鋭い考察&解説が終了し、会場が少しの沈黙に包まれる。

そして、数秒の沈黙は、僕らの精神統一をより助長してくれた。

 

『……それでは行きます!3、2、1!バトルスタート!』

 

「ひらひら、ルミナコリジョン!」

「りむむ、躱してサイコフィールド!」

 

「クエエエエエエッ!」

 

ひらひらがりむむに急接近し、至近距離からルミナコリジョンを放とうとする。

 

ピカピカピカァァァッ!

 

「りむっ!」

 

しかし、遅い素早さに対して反応速度が想定以上に早く、サッと目を隠されてしまった。

これにより、ワザは失敗。目をつぶる程度では光が強いのに加えて至近距離なので攻撃は通るのだが……残念だ。

 

「そのままシャドーボール───」

 

「りむううううっ!」

 

僕が追撃のシャドーボールを指示しようとした瞬間、りむむから強力なエスパーエネルギーが発散されていくのを感じる。

 

『ユウリ選手のブリムオン、サイコフィールドを初動で展開!この盤面を見れば、相手方の方まで強化してしまうことになってしまいますが、その意図は一体なんなのでしょうか?』

 

……ところで、なぜサイコフィールドをこのタイミングで使ったのだろうか?僕のパーティーにパオジアンことパオパオというあく・こおりタイプのポケモンがいるのは知っているはずだが……

 

(なるほど、それなら僕は先鋒として出すからね。)

 

パオパオは、僕のパーティーにおける切り込み隊長。

圧倒的な素早さと身軽さ、そして破壊力で相手の先発のポケモンを一気に破壊していくポケモンだ。

こいつが採用されていれば、間違いなく僕は初動に出すだろう。

 

そして、今回のルールの都合上、もてるボールは3つまで。ジムバトルは最大6匹の中から機転を利かせて3匹までバトル中に考えながら選出できるが、ここは違うようで、最初から手持ちを3匹にして戦う必要性がある。

 

つまり、僕はあくタイプのポケモンを出すことはできないのだ。

 

ちなみに僕の選出ポケモンは、ほげた、ららるん、ひらひら。

ほげたはホゲータで、ららるんは……いや、こいつは後で説明しよう。

 

いまはバトルに集中だ。

 

「……だったら、フィールドを十分に利用させてもらうぜ!ひらひら、ルミナコリジョンを走り回りながら連射だ!」

 

「クエエエッ!」

 

『ホムラ選手、ここで果敢に攻めることを選択!この状況下では悪くない選択かと見られます!さらに、先ほどまでとは違い走り回りながらのルミナコリジョン!これにより、相手の目をふさぐ行為によるブロックは効果がなくなりました!さぁ、ブリムオンはどう動くのか⁉』

 

ダカダカダカダカと大地を強く蹴り、ぐんぐん加速しながら目が回らない程度に円周状に回転しながらルミナコリジョンを使用する。

こうすることで、正面からはダメージが入らずとも、ほかの方位から攻めることができるのだ。

 

と、思っていたのだが。

 

「……かかったね?りむむ、トリックルームを徐々に広げていって!」

 

「りむおおおん!」

 

途端、りむむは素早さが逆転する自分の領域(トリックルーム)を展開しながら、徐々に領域を広げることで部屋の壁によって光を防いできた。

 

「そうきたか……。」

 

『ここでトリックルーム!サイコフィールドで油断させたところに、素早さ逆転によって形勢も一気に逆転しました!』

 

正直これは想定外。まさか自慢の攻撃がトリックルームの遅めの拡張によって防がれるなんて、思いもしなかったものだ。

まさか、ひらひらから交代されることによる負け筋を潰すために先にサイコフィールドを展開したのか?だとすれば、相当頭の切れる相手だな。

 

そして、トリックルームが展開されたということは、ひらひらにとって最重要である要素、素早さが封殺されてしまうのだ。

なので、ここは交代するしかないだろう。

 

「戻ってくれ、ひらひら!」

 

僕が遠距離からひらひらをボールに戻す。

 

『ホムラ選手はやはり引くしかなかったか!』

 

『走り回ったことにより、少し体力を消耗させられたのが痛い。さらにユウリ選手にとって有利なフィールドを実質デメリットなしで展開させてしまったのは非常に痛いですね。次のポケモンに戦況がかかっているでしょう。』

 

正直これは想定外。

だが、そんな想定外もこいつとなら乗り越えられるはずだ!

 

「頼んだ、ららるん!」

 

「セグワアアン!」

 

『ホムラ選手、続いてはセグレイブを選出!素早さは確かにクエスパトラよりかは遅いですが、その真の狙いは……?』

 

フィールド上に雄叫びを轟かせながら降臨したのは、ドラゴン・こおりタイプのセグレイブで、ニックネームはららるん。

僕のメインアタッカーで、僕の手持ちの中で最も火力の出るポケモンといっても過言ではない。

 

「ららるん、遅めに動いていくぞ!つららおとし!」

 

「セグワアアン!」

 

僕の指示とほぼ同時に、つららおとしの準備を行うららるん。

セグレイブというポケモンは、物理攻撃が得意なポケモン。

防御よりも特防の方が高いブリムオンというポケモンの特徴を踏まえれば、相手にとってはおいしくないはずだ。

 

「落ち着いて回避!」

 

「りむう!」

 

だが、相手はトリックルーム下なこともありスイスイ躱されてしまった。

 

(きょけんとつげきはこの場合自爆スイッチなんだよなぁ……。)

 

きょけんとつげきは、緊急回避には使えるだろうが、正直厳しいだろう。

であらば、トリックルームが終了するまで耐えて、最後に一気に削りに行くしかない!

耐えるならば……メガシンカだろう。

 

結局メガシンカするという思考に至った僕は、ゼンブイリングを取り出して、メガシンカにカーソルを合わせる。

 

「ららるん、いくぞ!」

 

「セゴオオオン!」

 

『これは、もしや⁉』

 

 

「竜の力を今、滾らせろ!メガシンカ‼」

 

 

キラリ光ったメガストーンと、ゼンブイリングに内蔵されたキーストーン。

両者が共鳴し、凄まじいパワーアップを生み出す。

 

「セグオオオオオオッ!」

 

「あっはは……!すごい迫力だね、メガセグレイブ!」

 

「まぁな。初めて見たときは僕もビビったものだよ。

……さぁ、そろそろ攻撃に転じようか!つららおとし!」

 

「セゴオオオ!」

 

再度つららを作り出し、連続で敵を標的にして落下させる。

パワーアップこそしたものの、依然としてりむむには回避されまくる状況が続く。

 

だが、()()それでいいのだ。

 

「パワーアップした攻撃をくらえ!全方位に同時につららおとし!」

 

「セッゴオオオオッ!」

 

ズシャシャシャシャッ!

 

『メガシンカによる火力の上昇!ホムラ選手の狙いはこれだったようですね!』

 

『……。』

 

全方位への同時攻撃を行い、力量差を見せつけるららるん。

……だが、その本質は別にある。

 

「何がしたいかよくわからないけど……りむむ、ワイドフォース!」

 

「りぃぃぃぃぃぃ…むぅぅぅぅぅ……ッ?」

 

 

シュゴオオオオオオ…ッ……。

 

 

「……あれ?」

 

突如としたエネルギーの消失。

その違和感にはさすがにユウリも気づいたようで。

 

「まさか……。」

 

足元の不思議な感じが消滅した!

 

『さ、サイコフィールドが消滅しました!』

 

『ホムラ選手の真の狙いは、おそらく時間稼ぎだろう。サイコフィールドが切れたということは……』

 

『トリックルームも終了する、ですね!』

 

そう、カールさんたちが言ったように、僕の狙いは時間の延長。

サイコフィールドが解除されれば、ワイドフォースは威力が低下する。

 

そして、そこに合わせてトリックルームが解除されれば……

 

 

シュルルルルル……

 

 

「くう……ッ!」

 

「いまだ、地面に氷を吐いて逃走だ!」

 

「ゴオオオオッ!」

「りむうううっ!」

 

ドッシャァァァァァッ!

 

ワイドフォースを不完全な状態で使用してきたりむむに対して、口から冷気を発射することで緊急回避を行い、ワイドフォースは不発に終わる。

 

「ららるん、つららおとし!」

 

「セゴオオオン!」

 

 

ズシャシャシャシャ!

 

 

「りむううっ!」

 

回避行動に出ようとするも、素早さが通常に戻った状態では、成す術がなかったようで、つららおとしが命中。

攻撃を受けた反動で、後方へ倒れて目を回してしまった。

 

「りむぅ……」

 

目を回して倒れたが、果たして戦闘不能かわからないため、最新技術を使用して判定を行う。

そしてその結果は……

 

『ブリムオン、戦闘不能です!』

 

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

戦闘不能、今回のチャンピオン同士のドリームマッチのバトルにおける、初の先頭不能の宣言。

それは、会場にいる誰もを沸き立たせた。

 

『最初に一本取ったのはホムラ選手ですね。さすが、メガセグレイブ、そしてホムラ選手の頭の回転の速さです。』

 

『ですね!ただ、まだまだバトルはこれから!ユウリ選手も、逆転のチャンスがぜんぜんありますし、ホムラ選手も油断できない状況が続きます!ここからどう動くか、やはりこれが戦況を左右することでしょう!』

 

そう、一本取ったとはいえ、僕はまだ油断できない状況が続く。

油断すれば、巻き返されるどころか2タテ、下手をすれば3タテされる可能性だって十二分にあることは、百も承知だ。

 

「……お疲れ様。ゆっくり休んでね。

……フフッ。さすがだね、ホムラ!まさか先手を取られちゃうなんてね……。あたしも落ちぶれたかなぁ?」

 

「いやいやそんなはず。油断していたら僕も負けていたさ。」

 

「そうかなぁ?」

 

「そうさ。」

 

ららるんを前に、2つのボールを握り、どちらか決めかねているような様子を見せるユウリ。

おそらくセグレイブと対面したのはこれが初めてのはず。よって、おそらくタイプを知らない。

だから、だれで来るのか───

 

「お願いッ、フレア!」

 

ズシャァッ!

 

地面をスライディングする音がスタジアム中に響き渡る。

そして、そのスライディングした地点は、少しだけ焦げていた。

 

そこから伝わってくる熱に、僕含め多くの人々は驚愕し、戦慄した。

ガラルのエースストライカーに、そしてなにより、ガラルの本気に。

 

『このポケモンは……!ユウリ選手の絶対的エース……!』

 

 

「……これはこれは。エースポケモンじゃないか……!」

 

 

さすがの僕でも、この迫力には背筋が凍りかける。

なんとか強がりで言葉を出すが、そんな僕をみて、ユウリはフッと笑う。

 

 

「違うね。ストライカーポケモン、だよ。」

 

 

こんな返しをして。

 

僕の緊張感は、いや、僕たちの緊張感は、極限まで高まる。

 

 

「エバァァァァァァァス‼」

 

 

とてつもない、覇気。

とてつもない、熱気。

とてつもない、脅威。

 

僕らにとっちゃ恐ろしい要素ばかりだ。

 

だが───

 

「まだまだこれからだぁ!いくぞ、ららるん!」

 

「セゴオオオン!」

 

このバトルは。

この最初のバトルだけは。

 

絶対に勝ちたい!

 

「ららるん、きょけんとつげき!」

 

「フレア、とびひざげり!」

 

 

「セゴオオオオオオオ……」

「エバァァァァ……」

 

 

両者、パワーを溜めて───

 

「いけぇぇぇっ!」

 

「バァァァァァス!」

 

 

ドッシャァァァァ!

 

 

音速と錯覚するような猛スピードで地面を蹴り、一瞬にしてららるんの前まで到着、その後自慢のとびひざげりをお見舞い───

 

 

「叩き落とせ、ドラゴンテール!」

 

 

「なにッ⁉」

 

 

させなかった。

 

 

「セェェゴッ!」

 

 

ゴシャァァァッ!

 

 

直前まで引き寄せ、叩き潰す。

 

『これは!』

「エバス⁉」

「これはやられた……!」

 

全員が驚愕する。

だが、これは僕の計画の通りだ。

 

『やはり、ステイしたのはこれが狙いだった、と。本来、エースバーンに対してメガセグレイブは、あまりオススメできない対面です。理由としては、とびひざげりが一番大きいでしょう。効果は抜群、食らえば撃滅。ここでメガシンカを失うのは、ホムラ選手としてはなんとしてでも抑さえたいはず。ですが、ドラゴンテールなどがあれば話は別です。エースバーンと別のポケモンに交代させ、試行錯誤する時間を稼ぐことができる。そして、今回は───』

 

バシュウウッ!

 

「インテッ⁉」

 

『インテレオンです!』

 

フレアと交代で、インテレオンことレオンが登場。

こいつは恐らく僕のほげた警戒だろう。だとしたら、余計に好都合だ。

突然の出撃に困惑しているうちに……

 

「速攻だ!きょけんとつげき!」

 

「レオン、れいとうビームで防いで───」

 

「セゴオオオ!」

 

 

ズドッシャア!

 

 

「レオ……ッ!」

 

『直撃!直撃しました‼そのまま───』

 

攻撃を直撃させる。

そして……

 

 

ガッシャァン!

 

 

壁に固定する。

 

『壁にダイブだ~~~ッ!ホムラ選手、一気に決めに掛かっています!並大抵のインテレオンならばここでやられるところですが……さすがチャンピオンのインテレオン、苦しそうな顔をしながらもこらえています!』

 

壁に固定したならば、最後に……

 

 

「フリーズドライ!」

 

 

「ヤバい、避け───」

 

 

ビュゴオオオオオオオッ!

 

 

「レオオオオオオオオッ!」

 

メガシンカしたことで上昇した特攻を活かし、僕のパーティーでは苦手よりなみずタイプの処理をしようとする。

 

「レオン!」

 

ドタッ……

 

『直撃ィーッ!効果は抜群!ホムラ選手、まさかワンターンキルが成立してしまったか⁉』

 

『……いや、まだですね。』

 

超火力の氷の餌食となったレオンだったが……

 

「レオオ……!」

 

「耐えられた……⁉」

 

『立ったーッ!立った、立ちました!ユウリ選手のインテレオン、まさかの生存!あの猛攻を受けてなお、平然と立って見せたーーッ!』

 

当然のように立ち、継戦の意志をみせるレオン。

特攻が大幅に上昇しているららるんの攻撃2連続ですら耐えられるとは……!

 

「ふぅ……。ともかくワンターンキルは免れたみたいだね。」

 

「おいおい噓だろ……?」

 

さすがに信じられない。

だが、その信じられないことがいま現実に起こっている。

 

『ホムラ選手、少し焦りの表情が見えますね。』

 

『そうですか?』

 

『はい。耐えられるという状況そのものが想定外だったのでしょう。私がやられてもびっくりしますよ。』

 

いいや、落ち着け。焦っちゃダメだ。

 

こういう時こそ冷静に状況の把握をするんだ。

 

恐らく……というかほぼ間違いなく、相手のレオンは体力ミリの状態だ。

ここまで攻撃を畳みかけられて耐えているのは正直想定外だが、まだ巻き返せなくもない。

 

「……さぁ、ホムラ。そろそろ再開しよっか。お客さん待ってるし。」

 

ユウリからそう声をかけられる。

観客も、固唾を飲んで待っている。見守っている。

速攻もいいが、それで勝っても彼らに申し訳が立たない。

 

「そうだな。……よし!ららるん、ギア上げていこうぜ!」

 

「セゴオオオ!」

 

「フフッ……。卑怯な手になんか頼っちゃだめだからね~?」

 

「あれは戦略だよ、あくまでね。ただ、余興はここまでだ。そろそろ終わらせに行こうじゃないか、ガラルチャンピオン!」

 

「その言葉を待ってたよ、パルデアチャンピオン!」

 

両者向き合い、最大火力の用意を行う。

……ここで、二枚目を落とせればデカいが……どうだろうか。

 

一方で相手は、ゼンブイリングを取り出す。

 

「フフフ……。最大火力といえば、やっぱりこれだよね!」

 

そしてカーソルを合わせた先は……

 

 

「借りるよ、アローラの全力‼」

 

 

Zワザ。アローラの伝統的な必殺技だ。

Zポーズをし、ポケモンと一体化することで強力なワザを放つことができるという代物(しろもの)

 

ガラルチャンピオンだろうとその例にもれず、ZポーズをしてZワザを使用した。

 

まるで波を想起させるかのようなポーズを行ったそのワザは……

 

 

「スーパーアクアトルネード!」

 

 

みずのZワザ、スーパーアクアトルネードだった。

 

 

「レオオオオオン!」

 

 

指や地面から水を噴き出させ、その大量の水を操って水の渦を創り出し、相手を巻き取る。

その圧倒的な破壊力を誇る波と渦は、ららるんを巻き取ろうと襲ってきた。

 

「セゴオオオ……!」

 

少しずつ流され、地面を踏ん張れなくなっていくららるん。

 

「落ち着いて対処だ、ららるん!」

 

「ゴオッ!」

 

僕がららるんを鼓舞すれば落ち着きを取り戻したものの、相変わらずピンチだ。

ならばここは……

 

「ららるん、()()をやるんだ!」

 

水の轟音にかき消され、ららるんからの返事は聞こえなかった。

だが、あいつならきっと抗ってくれると信じている!

 

「さぁ、どうする⁉ホムラ‼」

 

「レオオッ!」

 

凶悪な渦はぐんぐん成長し、僕の足場をも奪う。

途端、レオンが渦の中に───!

 

 

 

パキイイイイイイン!

 

 

 

「インテッ⁉」

 

「ええっ⁉」

 

その瞬間、渦は凍りついた。渦に入りかけていたレオンは、腕と足を封じられた状態で、そのほかの部位は残った状態で、氷漬けにされていた。

 

「まさか…フリーズドライ……!」

 

「ああ、そのまさかさ!ららるん、きょけんとつげき!」

 

刹那、氷の一部にピシピシとひびが入り、奥からレオン目掛けて巨剣が突撃する。

 

「レオン、れいとうビーム!」

 

「レェェェェ……」

 

急いで口に冷気を溜めるレオンだったが……

 

「もう遅い!」

 

無情にも巨剣は止まらなかった。

 

 

 

ドッカァァァァァァン!

 

 

 

巨剣はレオンを貫き、れいとうビームによる抵抗もむなしく、地面に倒れた。

 

「レオオオ……ッ」

 

判定するまでもないが、念のためにAIによる判定を行い……

 

『インテレオン、戦闘不能!戦闘不能です‼』

 

再びスタジアムが湧き上がる。

ドラゴンテールからのこの完璧なつなぎには、ユウリももはや感心してしまっている様子だった。

 

「ご苦労様、レオン。ゆっくり休んで……。」

 

苦い顔をしながら、レオンをボールに戻すユウリ。

現在は1対3。僕のほうが圧倒的に有利な状況だ。ここから勝つには、僕のパーティーを3タテするしか方法はない。

 

普通の人なら、降参するだろう。

 

「……ううん…。やっぱり、やるねぇ?」

 

「いやいや、僕なんてまだまだ。」

 

「噓つき?」

 

「噓じゃないさ。」

 

僕の一言で、言葉のラリーは終わる。球が落ちる。

 

少女に掛かるプレッシャーは、どんどん大きく。

少女に掛かる期待も、どんどん大きく。

 

だが、その膨れ上がったプレッシャーも期待も、その少女の満面の笑みには勝てない。

 

手は震えていた。

 

それは弱さじゃない。

それは強がりじゃない。

 

強者への挑戦の意志だ。

そして、武者震いだ。

 

「……それじゃあ、取りにいこっか。」

 

数秒後。ボールは宙を舞い、重い沈黙に閉ざされているスタジアムの空気を搔き分け、まっすぐ進んだ。

 

進んで、進んで、進んで……

 

まるでスローモーションかのようにみえ、過去最も長い数秒に感じたこの瞬間。

この瞬間は、僕らの覚悟と、相手の覚悟……双方の覚悟を決めるに相応な時間だった。

 

 

そして時は、動き出す。

 

 

「エバァァァァァァァス!」

 

 

響き渡る咆哮、

崩壊する沈黙、

揺れる大会場。

 

 

強い炎の煌めきが、

天性のサッカーの才が。

 

全てがこのスタジアムを強く沸き立たせた。

 

『さぁ、最後の戦い!1対3の状況から、ユウリ選手はどこまで巻き返せるのでしょうか⁉』

 

「面白くなってきたよねぇ~、ホムラ……!」

 

「そうだな。だが、このバトル、このまま勝たせてもらうよ!いくぞららるん、きょけんとつげき!」

 

ららるんに再度きょけんとつげきを指示し、大地を踏みしめ力を蓄えはじめる。

 

『セグレイブが再度きょけんとつげき、と……。ホムラ選手、少しあのエースバーンを舐めすぎですね。』

 

『そうなんですか?至って普通の判断かと……』

 

ユウリはニヤリと笑う。

まるで、この場面を待っていましたとでも言わんばかりに。

 

「フレア、とびひざげり!」

 

「エバァァァァァァ……!」

 

相手もエネルギーのチャージを始め、徐々にフレアの頭部の赤い部分がオレンジに発光していく。

恐らく、これはリベロだろう。

そして、相手の方がチャージの終了は早かった。

 

「いっけぇぇっ!」

 

 

ドゴォォォ……ッ!

 

 

電光石火の如く突っ込んだフレアに、僕のららるんはおろか、僕ですら対応できず、ららるんは体勢を崩し、倒れてしまった。

 

 

ズッシイイイイイン!

 

 

やがてメガシンカが解除され、戦闘不能の判断がされる。

 

『セグレイブ、戦闘不能です!ついに!ついにホムラ選手のポケモンの一匹が陥落!』

 

『あのタイミングできょけんとつげき……体力が少なかったからという捨て身の判断ですが、結果功を奏すことはなかった、と……。』

 

やはり、きょけんとつげきは悪手だったか……。

 

「ご苦労様、ららるん……。ゆっくり休んでくれ。

……さぁ、いくぞひらひら!」

 

続いて僕が出撃させたのは、ひらひら。

ひらひらは素早さが高い代わりに耐久が低いのが弱点。

なるべく当たらないようにして立ち回りたいけど……

 

(そんな隙、ありそうにないよなぁ……。)

 

威厳ある眼でこちらを見つめているフレア。

その様子を見れば、まずひらひらがノーダメージで倒し切るのは困難だろう。

 

ならば……!

 

 

「ひらひら、ダッシュしながらルミナコリジョン!」

 

「クエッ!」

 

大地を蹴り、猛ダッシュするひらひら。

その背中からは、特殊な光が発生していた。

 

『出ました、ホムラ選手の確定ルミナコリジョン戦法!』

 

『……ただ、ホムラ選手の相手は、同じ手が二度も通用するような相手じゃないです。』

 

カールさんの言った通り、そんな暴挙をユウリが許すはずもなく。

 

「フレア、ふいうち!」

 

「エバァス!」

 

 

ゴシャッ

 

 

「グエ゛ッ……!」

 

「大丈夫か⁉」

 

ふいうちが直撃。

しかも、リベロの効果でタイプ一致に変化したふいうちだった。

 

「クソッ…!」

 

そう、そしてあくタイプになったということは、エスパーワザが無効……つまりルミナコリジョンが効かないのだ。

 

「さぁホムラ、これでどう⁉」

 

「……いや、まだいける!マジカルシャイン!」

 

「クエエエエエ!」

 

今度は光を変え、フェアリータイプの煌びやかな光に変化。

だが、やはりユウリはこれにも対応してきた。

 

「かえんボール!」

 

「バァス!」

 

 

ドガァッ!

 

 

「グエ゛エ゛ッ……!」

 

「うぐっ⁉」

 

フェアリーワザを半減しつつのかえんボール。

低耐久のひらひらでは到底受けきれるようなものではなかった。

 

「ひらひら、最後に渾身のルミナコリジョン!」

「ふいうちでトドメ!」

 

「クエエエエエ……」

「バス!」

 

 

ズドッ!

 

 

不意の膝蹴りが直撃し、ひらひらは壁にたたきつけられる。

 

「ガ……ッ。」

 

強烈な打撃音と、まるで首を絞められたかのような声を出すひらひら。

どうなったか、なんてもはや考えるまでもないだろう。

煙が引いた後のひらひらに、意識はなかった。

 

『クエスパトラ、戦闘不能!これにてイーブンです‼』

 

「ひらひら、戻ってくれ。」

 

ボールにひらひらを戻し、労いの言葉をかける。

 

「……よくやった、ゆっくり休んでくれよな。」

 

そして、ゆっくりとユウリたちに向き直る。

正面に居座るは、フレア。

 

相手の絶対的エースを前に、僕はどう戦おうか……。

 

「大丈夫、僕らなら超えられる!いくぞ、ほげた!」

 

「ほっげぇ!」

 

モンスターボールからほげたことホゲータを出す。

僕の相棒。パルデアでの相棒……。こいつは、そんな存在だ。

大丈夫、こいつとなら、いや、こいつがいるからこそ、勝てるんだ!

 

「必ず勝つさ、このバトル‼」

 

『ホムラ選手も、ここでエースポケモン投入!各地方でも異例の、進化していない御三家が相棒という、今超話題のホゲータ!ここに来て同タイプ対決です!』

 

『この状況、HP的にはホゲータが有利ですが……まだ勝敗の行方はわからないですね。』

 

またまた沸き立つ会場。

その一方で、僕は冷静に現状を把握していた。

 

(相手のフレアのワザ構成は、ここまでのバトルで、かえんボール、ふいうち、とびひざげりの3つが判明した。最後はわからないけど……なんとかするしかない!)

 

「ほげた、くさわけで接近戦に持ち込め!」

 

「ほっげぇっ!」

 

ジャンプからのダッシュで最速で加速し、素早さを上昇させつつフレアに近づく。

 

「フレア、とびひざげりで迎え撃って!」

 

「バァス!」

 

こちらは神速とも言えそうな勢いでとびひざげりを繰り出してくる。

だが、僕らには秘策がある!

 

「ジャンプ!」

 

「げっ!」

 

勢いを利用して大ジャンプし、とびひざげりを回避する。

 

「即席かえんボールで勢いを相殺して!」

 

「バス!」

 

ドシュォッ!

 

「相殺してきたか……!」

 

とびひざげりは、失敗したら自分がダメージを受けてしまうワザ。

だがユウリは、当たらないと分かったタイミングでかえんボールによるワザの自己相殺を行った。

 

……これは手慣れているなぁ?

 

『さすがはガラルチャンピオン!自爆特攻ワザを自分で相殺!ものすごい技量です!』

 

「よくある状況なのかな?」

 

「うん、まぁね。」

 

実質ノーリスク特攻とは、全く恐ろしいものだ…。

っつかそれ、かなり無法なやつなのでは……まぁいいや。

 

そして、そのタイミングで……

 

「フレア、そろそろ決めるよ!」

 

「バァス!」

 

ボールに吸収され、ゼンブイリングから放出されるダイマックスエネルギーで巨大化する。

そして、これは恐らく……

 

 

(キョダイマックス、だな。)

 

 

キョダイマックス……それは、一部のポケモンのなかでもさらに限られたポケモンが使用可能な、スペシャルなダイマックスである。

基本的にはダイマックスと同一だが、姿が通常のダイマックスと違うほか、キョダイマックスワザという特別な攻撃ができる……らしい。

人から聞いた話なので、真偽は定かではないが、今からそれがわかるだろう。

 

 

「最後の一押し、頼んだよ!キョダイマックス‼」

 

 

ボールを上空に放り投げ、キョダイマックスしたフレアを召喚する。

 

 

『キョダイマックス発動!巨大なパワーがホゲータを、ホムラ選手を襲います‼』

 

 

その迫力は、やはり過去に映像で見たものとは段違いで。

 

「……想像の5倍はでけぇな……。」

 

「ほげぇ……。」

 

ほげたですら啞然としてしまうほどの迫力。

だが、それに臆している場合ではない。僕らは勝ちに来ているのだ。

 

 

「エバァァァァァァァス!」

 

 

「!」

 

咆哮だけで、バリアが揺れるほどのものすごい覇気……!

これは強敵だなぁ……!

 

「まずはくさわけだ!」

 

「ほんげっ!」

 

スピードを上げてフレアに接近するほげた。

だが……

 

「ほげたを吹き飛ばして!ダイジェット!」

 

「バァァァァァス!」

 

「ほげぇっ⁉」

 

『ダイジェット直撃ッ!ホゲータに大ダメージです!』

 

『……ただ、さすがチャンピオンのポケモン、この程度じゃ倒れる様子もないですね。』

 

強風に吹き飛ばされ、僕の近くまで戻ってくるほげた。

飛んできた砂塵のダメージもあったが、カールさんのとおりあまり食らっていない。

 

「ほげた、あきらめちゃダメだ、くさわけで再接近!」

 

「ほげっ!」

 

ダッと走り出し、またもスピードを上げて突撃していくほげた。

それに対し、ユウリは今度は別の判断を下す。

 

「フレア、ダイナックル!」

 

「エバァァァァァァァス!」

 

赤黒い拳を自身の右手に作り出し、相手に対して放つ。

その拳は、ほげたの進行先に、置かれるように投げられた。

 

 

ズドッガァァァァッ!

 

 

「ほげぇっ!」

 

『ダイマックスワザ再び!』

 

『どうやら今回は避けたみたいですね。』

 

ただ、ほげたはなんとか回避。

相手の攻撃こそ上がったものの、ダメージは受けずに済んだ。

 

「ほげた、くさわけ!」

 

「ほげっ!」

 

ついに辿り着いた末に、フレアのつま先に攻撃……しようとしたが攻撃できないことに気づく。

よくよく考えれば、サッカーボールに阻まれているので、物理攻撃を当てるのは困難だ。

 

「かえんほうしゃ!」

 

「ほげええええっ!」

 

遠距離で当てようと奮闘するほげた。

だが、やはり体格差というのは恐ろしいもので、つま先に当たっているかどうかの次元だった。

 

「くそっ…!攻撃が当たらない……!」

 

おそらく当たっていないであろうかえんほうしゃを見て、僕はそうつぶやく。

 

「フフン!あたしたちにはそんなんじゃ勝てないよ!……そろそろ決めちゃおう、キョダイカキュウ!」

 

大技、キョダイカキュウ。

相手の特性をも無視するその攻撃は、まさにエースストライカー最強の決め手。

 

 

「エエエエエッ……バァァァァァス!」

 

 

「さぁホムラ、これを破ってみせてよ!」

 

構えられた火球、完璧な角度。

前に見たことがあるが、オーロンゲがこのワザを避けようとしたとき、サッカーボールが自動追尾してきて、結果的に倒されてしまったという。

 

よって、このワザを受けきるか破壊するかしないと、僕らの勝ち目はない。

 

受けきるのはまず不可能だろう。

規模が違いすぎる。

 

相殺するにも厳しいか……?

 

『キョダイカキュウついに発動!いまひとつといえど、攻撃が1段階上昇した攻撃は強力です!ホムラ選手、万事休すか⁉』

 

「……いや、まだだ!まだ舞える、舞ってやるッ!ほげた、くさわけ!」

 

「『くさわけ⁉この場面で⁉』」

 

まだ舞える……その言葉は、とあるバトルからきた言葉。

ちょうのまいをしていたウルガモスが、攻撃を受けてピンチになるが、まだちょうのまいを舞えるぞ、という意味。

その言葉のごとく、僕はほげたにくさわけを指示。

自分の場をドコスカ叩き、素早さを極限まで上昇させていく。

 

「今だっ、じだんだでジャンプ!」

 

「ほんげぇぇぇっ!」

 

 

ドガァンッ!

 

 

『飛んだ!飛んだ!飛びました~ッ!』

 

『じだんだの追加効果を利用しましたね。怒りのエネルギーを利用して攻撃に転じたのでしょう。』

 

くさわけを外した反動で、じだんだの火力はどんどん上昇し、2倍にまで跳ね上がっている。

上空に跳ね上がり、僕の作戦を実行しようと奮闘してくれるほげた。

 

それに対して、的確に対象をマークし、攻撃を仕掛けるフレア。

 

そして、僕はここで一か八かの賭けに出る。

 

「ほげた!いくぞっ!」

 

「ほげぇ!」

 

『おおっと、これはテラスタルでしょうか⁉』

 

ゼンブイリングを構え、テラスタルのマークにカーソルを合わせる。

その後、マークをプッシュし、上空に向かって拳を突き上げることで、エネルギーをほげたに送る。

 

 

「最高級の魂の輝きを、今!テラスタル‼」

 

 

上空に滞空していたほげたをテラスタルの結晶が覆う。

白く輝く結晶はやがて崩壊し、中からはほのおテラスタルしたほげたが出てくる。

 

「ほげぇっ!」

 

「いくぞっ!テラバースト・紅玉(こうぎょく)ッ‼」

 

口の中にエネルギーを溜め込み、数秒後に放出。

ルビーに似た紅い宝石を大量に放出し、キョダイカキュウにぶつける。

 

宝石は火球を襲い、火球の勢いはみるみるうちに弱まっていく。

 

「頑張れッ、ほげた‼」

 

「ほげぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

ドシャァァァァァッ!

 

 

嵐のように勢いを強めていく宝石に、火球はさらに弱体化。

さらに、一部がフレアに飛んでいき、フレアにダメージを与えていく。

 

「バァス……!」

 

「ダイマックスワザは……使用時間切れで使えないか……。」

 

状況打破に最適なのはダイマックスワザ。

だが、現在は発動中の状態なので、攻撃はできない。

 

攻撃ができなければ、それはもうどうしようもない。

攻撃さえ封じられれば、言ってしまえば勝ち確だ。理由は単純、相手の攻撃が終わるまではダイマックスは解除できないから。

 

ダイマックスエネルギーが攻撃に反応するからという説が出ているが、あまり詳しいことは分かっていない。ただ、今回はそれがいいように働いてくれるというのだ。使うしかないだろう。

 

「ほげた、そのまま押し切れーーッ!」

 

 

ドッシャァァァァッ!

 

 

宝石の餌食となり宝石にむしろ吞み込まれたカキュウを呆然と見ながら、攻撃どころか移動すらできないまま攻撃を食らうフレア。

無防備な状態で食らう攻撃ほど痛いものはなく、フレアの顔もそれ相応に苦しそうなものだった。

 

そして───

 

 

ドガァンッ!ズズズォォォッ!

 

 

爆発と同時に、キョダイマックスが解除された。

 

「フレア!」

 

朦々と立ち込める深い爆煙を前に、ユウリは声をかける。

 

『これは、勝負あったでしょうか⁉』

 

煙を前にした沈黙。

 

それを破ったのは、ほかでもない……

 

 

「エバァ…ス……!」

 

 

『煙から、ボロボロの状態のエースバーンが……!』

 

ふらふらしながらも、なんとか意識を保ち、立っている。

 

「フレア、頑張って……!」

 

「エバァ…ァ…ァ……ッ。」

 

影が揺れる。

大地に音が響く。

 

 

「エバァァァァァァァス‼」

 

 

復活の音が。

 

 

『エースバーン、復活!活動を再開しましたッ!』

 

『HP的にはホゲータのほうが有利ですが、まだ勝負の行く末はわからないですね。』

 

立ち上がったフレアは、よくもやってくれたなと言わんばかりの恐ろしい覇気を放ち、僕らを威圧する。

 

「……そうだ、そう来なくっちゃだよなぁ、ポケモンバトルというものは‼」

 

「ほうげぇぇっ!」

 

うちの相棒も気合い十分!

おそらく相手はあと一撃でもダメージが入れば倒せるはず……!

 

「ほげた、かえんほうしゃ!」

 

「ほおおおお……」

 

「回避するよ!とびはねる!」

 

「バァス!」

 

脚力を利用して大ジャンプし、スタジアム上空まで飛び上がる。

ダイジェットを見ていたので、つばめがえしかこのワザのどちらかかと思っていたが、予想は当たっていたようだ。

 

『ここでエースバーンがとびはねるを使用!スタジアム上空には、ホゲータからの攻撃も届かないです!』

 

とびはねるというワザは、知っての通り回避にも使える。

現在はスタジアムの上のほうまで飛んで行っているため、僕らから攻撃はあてられない。

 

だが、それに備えることならできる!

 

「ほげた、テラバースト・紅玉を地面に撃つんだ!」

 

「ほげぇっ!」

 

大地にエネルギーを送り込み、温度を上昇させる。

熱を吸収したスタジアムの大地の熱気に少し汗をかく僕だったが、このぐらいでちょうどいい。

 

「ほげた、降りてきたらかみなりのキバだ!」

 

「ほげっ!」

 

正直、丁度ほげたのところに降りてきてくれたらいいのだが……

もちろんそんなことをしてくれるほど相手は優しくない。

 

「フレア、そろそろ降りてきていいよ!」

 

「バァァァァァス!」

 

 

ズドォン!

 

 

『エースバーン、準備を整え終えたのか、ホゲータの近くに落ちてきました!』

 

フレアが着地した地点は、ちょうどほげたの背後。

背後から翻弄しながら攻撃するつもりだろうか。

 

「いっけぇっ、かえんボール!」

 

「バッ、バッ……バァス!」

 

軽くリフティングをし、すぐにボールを着火させてほげたにぶつけようとする。

 

「ほげた、ジャンプ!」

 

「げっ!」

 

ぴょいんと大ジャンプし、攻撃を軽やかに回避。

するとそこに合わせて───

 

「ふいうちッ!」

 

「バス!」

 

ドシャァ!

 

「げええっ……⁉」

 

フレアの先回りによるふいうちが直撃、ほげたは地面にたたきつけられる。

だが、僕は冷静に判断をする。

 

()()()()()()から、最低引き分けは保証できるからだ。

 

「ほげた、テラバースト・紅玉!」

 

「げぇぇぇぇぇっ!」

 

ジャラジャラ音を立ててフレアに接近する宝石たちだったが、限界を超えたフレアには当たらず、ジャンプで避けられてしまう。

 

「フレア、かえんボール!」

 

「ババッ……バァス!バァス!バァス!」

 

ドォンドォンドォン!

 

かえんボールで距離を置きつつ牽制されるほげた。

しかし、その炎のサッカーボールは、大地をさらに()()()()()()させた。

 

『……ところでカールさん。』

 

『なんでしょう?』

 

『先ほどから、地面から少し湯気が出ているような気がするのですが……気のせいでしょうか?』

 

僕からも見える。

大地からは湯気が立ち上り、熱気はどんどん増していく。

 

「どうするつもり?こんなに湯気を増やして?」

 

「……フフッ。それはね……」

 

ほげたに指で指示を出す。

僕の指による指示をみたほげたは……

 

「ほおおおおげぇぇっ!」

 

大地にまたもやテラバーストを撃つ。

テラバーストによって、大地の温度はさらに上昇する。

 

「そろそろ頃合いだな?」

 

「?」

 

大地から出てくる湯煙(ゆけむり)の量がさらに増えてくると……

 

 

ドッパァァァァァン!

 

 

「「『!!?』」」

 

 

突如として、熱線が噴き出す。

 

『おおっと、これは一体⁉』

 

「テラスタルは、タイプの耐性は変わらなくとも、それぞれのタイプの性質をさらに強化するんだ。例えばそう……みずタイプのポケモンがみずタイプにテラスタルすれば、水泳速度がさらに向上する。そして、ほのおテラスタルはと言うと……」

 

 

ドッパァァァァ!

 

 

ほげたのもとからも熱線が噴き出す。

 

『ホムラ選手のホゲータのもとからも熱線が噴き出しましたが……これは大丈夫なのでしょうか⁉』

 

だが、ほげたはというと……

 

「ほんげっ!」

 

元気だった。

 

 

「……そう、このように、熱に対する耐性が増すんだ。」

 

 

「なるほどね……!」

 

熱線はフレアに対して一方的に効くもの。

正直、ユウリは手詰まりだろう。

この盤面を押し付けられれば、僕も負けを覚悟する。

 

だからといって、そう簡単に諦めてくれるような相手ではないが……。

 

「ここでチェックメイトとさせてもらうよ!」

 

「やれるものならやってみなよっ!」

 

「とびひざげり!」

「テラバースト・紅玉!」

 

「エエエエエッ……」

「ほおおおおっ……」

 

 

「バァァァァァス!」

「げぇぇぇぇぇっ!」

 

 

 

ドガァンッ!

 

 

 

爆音が響き、煙も両者のトレーナーサークルまで迫る。

極限の緊迫感の中、ユウリはそのプレッシャーを振り切るかのように、フレアに次の攻撃を指示する。

 

「フレア、かえんボール!」

 

「エエエエエッ───」

 

 

カッ──────

 

 

刹那、大地は光り、一本の柱を立てる。

それは、僕らの勝利への一筋だった。

 

「今だッ!ほげた、かえんほうしゃ‼」

 

熱気をも吸い込むことでさらに火力を強化。

強化された炎は、相手の体を骨の髄まで焼き切る……!

 

 

「ほげぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

爆炎が周囲を覆い、フレアの体をも巻き込む。

苛烈な火炎は、確かに相手の体力をそぎ取った。

 

 

ドタッ……

 

 

巻きあがる炎の中から聞こえた、乾いた音。

その音が、答えだった。

 

「フレア……!」

 

パチパチと燃え盛る炎はやがて消え失せ、焼けたスタジアムの大地がこの戦いの激しさを表す。

うつ伏せになって倒れているフレアに、AIが判定を下す。

 

『……エースバーン、戦闘不能!よってこのバトル、勝者はパルデアチャンピオンランク ホムラ選手!』

 

ワァァァァァと歓声が聞こえてくる。

その声は温かく、どちらの選手も称えるような、優しい歓声だった。

 

『いやぁ、どうだったでしょうか、カールさん?』

 

『先ほどの勝負に関しては、ホムラ選手の作戦勝ちですね。しっかり相手のスキを突き、的確な判断を下し、最高のコンディションで、そして最大級のパフォーマンスが発揮できる状態で臨んだのは両者そうでしたが、判断力や対応力は、ホムラ選手の方が上手だったと思います。ただ、もう一度バトルすれば勝つのはどちらかわからないほど白熱した、そして拮抗したバトルだったので、私としては非常に満足しました。』

 

『ありがとうございます!それでは皆さん、激闘を繰り広げた二人の選手に、盛大な拍手を!』

 

スタジアム中に響く、拍手の嵐。

そんな中、僕らは観客席に手を振りながら、近づいていく。

 

「いやぁ、惜しかった~!さっすがホムラ、強いね!」

 

「まぁね。ただ、そっちもさすがだったよ。危うく負けるところだった……。」

 

ららるんとひらひらが倒されたときは、正直焦った。

ここまで火力が高いとは、夢にも思わなかったからだ。

 

「いやぁ、いのちのたまを持たせてたのが失敗だったかなぁ?」

 

「あ、いのちのたま持たせてたんだ?」

 

「うん、実はね~。」

 

ユウリはそう言うと、手を差し伸べてきた。

 

「はい、握手しよ?」

 

「ああ、そうだったね。」

 

試合後の握手は、相手への礼儀。スポーツマンシップそのものなのだ。

 

パシッ、と乾いた音がすると、カメラがそのシーンを捉え、会場内はまたも拍手の音で埋め尽くされる。

 

パチパチ~……!

 

こうして、温かい拍手に見送られながら、僕らの最初の試合は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

着替えてスタジアムから出ると、よっしいが待っていた。

 

「よぉ~す、お疲れさん!いい試合だったぜ!」

 

「「ありがとう!」」

 

確かに、よっしいは試合は観るって言ってたっけか。

 

「…ところで、お前ら応用ワザって知ってるか?」

 

「「応用ワザ?」」

 

『応用ワザ』……。

聞いたこともないな?なんだそれ?

 

僕とユウリが顔を見合わせて疑問に思っていると……

 

「やっぱ知らなかったか。……しゃーねぇなァ、教えてやんよ、応用ワザ!」

 

よっしいはそう高らかに宣言したのであった。

 

 

To be continued……




テラバースト・紅玉(こうぎょく)  ほのお 特殊  威力 100
使用可能ポケモン ホムラのほげた(ホゲータ)
ルビーのような紅い宝石をいくつも相手にぶつけて攻撃する。
当たった相手のHP以外の一番高い能力を1段階下げ、自分の特攻を1段階上げる。


次回  第三話『デルタの帝王』
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