まことみらいタウンを襲った、恐怖の大王。
あの嘘みたいに強いウソノワールすら打ち倒した存在に、名探偵プリキュアである私たちも、まるで歯が立たなかった。
そしてその敗北の後、町は大王の力によって嘘に覆われてしまった。
「どうだった、エクレール?」
森亜るるかの声が、静かな隠れ家に響く。
町の様子を見に行っていたエクレールは、ふぅ…と少しため息をついた。
「……駄目みたいね。住民はみんな、魂を抜かれたみたいに棒立ちのまま。どこもかしこも……店長も同じ」
「エクレール、大丈夫?」
「ええ……ありがとう、るるか」
そう言って、エクレールはるるかの頬に優しく触れた。
雪見大福みたいにやわらかいその感触が、疲弊した心をゆっくりと溶かしていく。
「くすぐったい」
「ふふ……」
その心持ちを理解しているのか、るるかも拒まず、そのまま触れさせていた。
「……よくこんな状況でイチャつけるね、君たちは」
呆れた声が暗がりの奥から聞こえてきた。
「ニジー……」
影の中から現れたのは、三人の男女。快盗団ファントムの幹部たちだ。
「もー、ホントチョベリバって感じ」
「二人とも、店から食糧をちょいと拝借してきてやったぞ! 疲れた時は腹いっぱい食うに限るからな!」
かつてはウソノワールの配下だった彼らも、今は恐怖の大王に対抗するため、プリキュアと行動を共にしている。
「ほら新人、アイスもあるぞ!」
「ゴウエモン、私はもうファントムの一員じゃない」
「はっはっは、そうだったな! キュアアルカナ・シャドウ!」
「それも、もう違う」
「ほんとテキトーね」
マシュタンが、ゴウエモンに冷ややかな視線を送る。
「で、これからどうするんだい? プリキュア諸君」
ニジーは薔薇の香りを一嗅ぎしながら、問いかけた。
「アンサーたちが探偵事務所から戻るまで待機よ」
るるかが答える。
「もう一週間だぞ? その間、何をしてるんだ」
「ジェットの発明を待ってるの。パワーアップには、彼の装置が必要だから」
「あのベイビーか……」
ニジーが手袋越しに爪を噛む。それを見たエクレールは行儀が悪いと軽く注意した。
「でもさ……本当に勝てるの? ウソノワール様を倒したあいつに」
アゲセーヌが瓦礫に腰かけ、ぽつりと呟く。その言葉は、全員の胸に重く沈んだ。
ウソノワールにすら苦戦していたプリキュアたち。ファントムの力を借りて全員で挑んだとしても、希望ある未来は全く見えなかった。
そもそも大王に対して五分に持ち込めるかどうかすら──。
「できるよ!」
その沈黙を打ち破るように、高らかな声が響いた。
キュアアンサーだった。
「恐怖の大王を倒して、必ず嘘を終わらせる!」
そしてその背後から、ミスティックとジェットも姿を現す。ジェットの手には、四つの発明品が握られていた。
「これはプリキットミラールーペver.3! これでプリキュアたちの基礎能力の向上が期待できるぞ!」
「……え?」
「ちょ、それだけ!?」
アゲセーヌが思わず瓦礫から足を滑らせる。
「いや、たぶんまだ隠された力もあるが……」
「でももっとこう、激つよな必殺技とか繰り出せてさあ!」
「仕方ないだろ。今ある材料で急造したんだ」
「もう無理だってー!」
アゲセーヌはついに泣き出した。
だが、アンサーはいつも通り自信満々に言い放つ。
「無理じゃない!! みんなの力があれば、どんな難事件だって解決できる! 私、絶対に嘘は吐かないから!」
その肩に、ミスティックがそっと手を置く。
「……そうよ。アンサーがこう言ってるの。絶対に、恐怖の大王なんかに負けないんだから」
アゲセーヌは納得のいっていない様子で、頬を膨らませた。
「じゃあ行こう!」
「うん!」
「ポチー!」
────
「シン・ハンニンダー!」
嘘で覆われた町に、強化されたハンニンダーが現れていた。嘘の力でより増したパワーで、破壊の限りを尽くしていた。
「アルカナの言う通りね。やっぱり、ハンニンダーはあの黒いモヤモヤから出てきている」
「つまりあの奥に、大王がいる」
「じゃあ、さっさといくっしょ!」
意気揚々と前に飛び出そうとするアゲセーヌを、アルカナが止めた。
「待って。ハンニンダーを倒すのも大事」
「そんなの関係ないっしょ! 私たちは大王を倒すだけだし! あんたらの味方じゃないし!」
「……そういうわけにはいかない」
「なによー!」
「これだからプリキュアってやつは……」
「いきましょう」
言い捨てると同時に、先陣を切ったアルカナはハンニンダーのもとへと飛び立った。
だがその瞬間。どこからともなく、複数のハンニンダーが現れる。
「……っ!」
囲まれた。油断だった。
やられる!
そう思った刹那。横から、一撃。
ハンニンダーの一体が吹き飛んだ。
「待て待てい! 多勢に無勢とは卑怯ではないか!」
ゴウエモンだった。そのまま前に出て、堂々と見栄を切る。
「この勝負、このゴウエモンが預かった!」
「ゴウエモン……」
「新人……いや、キュアアルカナ! ここは俺たちに任せておけ」
その背に、かつての敵とは思えない頼もしさが宿っていた。その様子を見て、ニジーとアゲセーヌが肩をすくめながら降り立った。
「まったく、君ってやつは」
「ほんと面倒くさい男って感じ」
「というわけで、ここは僕たちが請け負うから」
ニジーが振り返り、静かに告げる。
「大丈夫なの?」
「言うじゃないか、キュアアルカナ。ハンニンダーのことは、僕たちが一番よく知っているし、それにウソノワール様が最後に遺してくれた力もある。容易く片付けてみせるよ」
「不本意だけど、大王を倒す役目はあんたらに譲るって感じ!」
アゲセーヌが一歩前に出る。
「負けたらマジで許さないから! 元仲間だからって容赦しないし!」
アゲセーヌの怒気を含んだその声は、どこか期待をも含んでいて、嬉々とした調子を帯びていた。
アルカナは、ふっと笑う。かつて敵だった彼らを、こんなふうに愛おしいと思えるなんて。あの時はまるで想像もしていなかった。
「……みんなこそ、負けないでね」
「「「ライライサー!!」」」
力強い返事を背にしながら、プリキュアたちは駆け出した。暗黒の奥へと。
的なストーリーになったら、、
今作、魅力的なキャラしかいないよ…。
ウソノワール様でさえ好きになったもん。
インタビューとか見る限り、たぶん計算してキャラ作ってるから余計に凄い。