名探偵プリキュア、最終回妄想譚!   作:水漏れ老舗

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コナンコラボ良かった~


後編

 

 

 

 アンサーとミスティックのおかげで、大王は倒された。周りの暗黒は次第に晴れていき、町は元の輪郭を取り戻していった。もう二度と世界が嘘で覆われることはない。

 

 

 「アンサー…。これで終わったんだね」

 「うん…。ミスティックのおかげだよ」

 「ポチタンもポチ!」

 

 ポチタンが、間に入ってくる。

 

 「そうだね。ポチタンも、ううんアルカナもエクレールもジェット先輩も、みんなで掴んだ勝利だよね」

 

 ミスティックがポチタンを抱き寄せて、笑顔で言った。アンサーは、いつもと同じその笑顔がどこか眩しくて、少しだけ顔を背けた。

 

 「やったわね。名探偵さんたち」

 

 するとアルカナとエクレールが此方にやってくる。どうやら無事だったみたいだ。

 

 「流石ね二人とも。私は信じてたよ」

 

 エクレールはいつものフワフワとした調子で、にこりと微笑んだ。

 

 「これでゆっくりアイスが食べられる。エクレール、作ってね。頼んだ」

 「もー。アルカナは早速それなの?」

 「あははは」

 

 いつもの探偵事務所の光景に戻る。やっと平和が戻った証拠だ。

 

 「おーい! やったな、みんなー!!」

 

 ジェット先輩が、向こうから走ってくる。後ろには、ファントムのメンバーもいて、みんな勢揃いだった。

 

 「うん! ジェットせんぱ──え!?」

 

 ミスティックが横を向くと、アンサーの変身が解け、身体の周りから光の粒子のようなものが漂っている。普通ではない、不思議な光景に皆一様に驚いた。

 

 この中で、驚いていないのは、ただ一人だけ。

 

 「(そうか──もう)」

 

 あんなは分かっていた。もう時間が無いことを。

 

 大王に聞かされた言葉が嘘ではなかったことを。

 

 「あんな!」

 

 同じく変身の解けたみくるが、あんなの方へ駆け出す。

 

 「もう…お別れなんだね…」

 「みたいだね…」

 「あんなのおかげだよ。憧れの名探偵プリキュアになれて、困ってるみんなを助けられて、こうして平和になって、あんなと過ごした日々はずっと楽しくて………ぐすっ」

 

 喋っているとみくるはだんだんと涙が止まらなくなった。

 

 「ごめんね、あんな。最後くらい…泣いちゃ駄目だよね」

 「みくる…」

 「また未来で…2027年で会おうね。絶対に…」

 

 涙をぬぐいながら、そう言うみくる。その言葉はあんなの心に重くのし掛かった。でもそんな素振りを見せてはいけない。あんなは口を開く。

 

 

 「うん……未来で待ってる…」

 

 

 ──それは、あんなが吐いた最初で最後の嘘。

 

 

 「…みくる、私たちにも言わせて」

 「るるかさん」

 

 するとるるか達が、あんなの元へ集まる。

 

 「色々あったけど、また4人で名探偵プリキュアできて良かった。あんながいてくれたから、エクレールの謎も解決できた。あなたは最高の名探偵ね」

 「うん。そうだね。あんなちゃんが私たちを救ってくれた。最高の名探偵よ。先輩二人が言うんだから、間違いない」

 

 るるかとエクレール、二人が交互に言った。この二人とは色々あった。でも今では大事な仲間。そんな二人に褒められて、あんなは嬉しかった。

 

 「未来へ帰るんだね、ベイビー。まあ君たちには邪魔された思い出しかないけど、最後くらいは礼を言っておくよ」

 「はっはっはっ! ニジーは素直じゃねえな。そこは" ありがとう " でいいんだ! プリキュアよ、またどこかであいまみえよう!」

 「ま。私たちは敵同士だったし何も言うことはないけどー。でも、あんたたちのおかげで、ウソノワール様の敵はとれたし、まあチョベリグって感じねー」

 

 ファントムの幹部たちが、いかにも彼ららしい一礼を交わし、最後の言葉を伝えた。

 

 「あんな」

 

 そして、最後にジェット先輩がマシュタンとシュシュタンを抱きながら、此方にやってきた。

 

 「もう帰るんだな…。どこか痛むところはないか?」

 

 光に包まれ消えいくあんなを、ジェット先輩は気にかけてくれた。まるでそれは父親のようで──。

 

 「ううん。大丈夫だよ」

 「そうか。まあ…色々と世話になったな。言い足りないことがまだまだあるが、とにかく、お前はキュアット探偵事務所が誇る名探偵だったよ。ありがとうな」

 

 そう言って、握手を求めるジェット先輩。

 あんなはそれに応じ、その手をギュッと握った。ぽかぽかとする、太陽のような温もりを手に受けながら。

 

 「…あ」

 

 あんなの周りを漂う光の粒子が、更に細かくなり、勢いを増す。もう消滅が間近だった。

 

 「あんな…」

 「もう...」

 

 顔を上げると、ジェット先輩とみくるが心配そうに此方を見ている。なんだかその光景が可笑しくて、微笑ましくて、口角が自然と上がった。

 

 「みくる、ジェット先輩、二人とも仲良くね…」

 

 それだけを伝えて、あんなは世界から消えた。

 

 

 

 

 

 ───

 

 

 

 

 

 …ここはどこだろう。

 

 目の前には闇が広がっている。大王と戦った場所よりも深くて、暗くて、まるで無のような空間。

 

 前へ進もうとしても、足がぬかるんでいるようで、これ以上先に進めない。もう私はここに囚われるしかないんだと、そう言われている気がした。

 

 たぶんこれが消滅する、ということなのだろう。

 

 覚悟していた。それが私の答えだと結論付けていた。

 

 その筈なのに、こんなにも孤独は寂しいなんて思いもしなかった。

 

 「みんなに会いたい………」

 

 私はその場にしゃがみこみ、低く呟いた。

 

 「……一人は…寒いよ……怖いよ……寂しいよ……」

 

 弱音を吐き続けた。

 

 ずっと抱え込んでいたものを、絞り出すように口から出た。弱音なんてみんなに聞かせたくなくて、普段は言わないようにしていたけれど。やっぱり、辛いものは辛い。苦しいものは苦しい。

 

 

 

 「みくる………お母…さん」

 

 

 

 

 その時

 

 

 

 「あんなー!!」

 

 

 私を呼ぶ声が何処からか聞こえた。

 すごく聞き慣れた、まるで幼さを残す、妖精の声だった。

 

 「ポチタン!?」

 「お待たせポチ!」

 

 なんでいるの、そう問い掛けようとした時、私の頬をポチタンの手が触れた。

 

 「泣かないで、あんな」

 「え?」

 

 知らず知らずのうちに、涙が頬を伝っていた。それをポチタンは拭ってくれた。

 

 「大丈夫だよ、あんな。君は消えない。消える必要なんかないんだ」

 「でも…」

 

 そんな訳にはいかない。

 歴史を変えてしまったんだ。もう私には未来がない。どうすることもできない。

 

 「大王の言っていることは真実だよ。でも、そんなことは関係ないんだ。ポチタンの力で、時間軸を収束させれば───もう全部解決だよ」

 

 ポチタンが淡々と言う。

 

 「だから、もう泣かないで。目が覚めたら、きっと元通りだから」

 

 そう言いながら、ポチタンは光り輝く。

 周りの暗闇が晴れていき、白く瞬く。

 でもそれは希望の光には思えず、どこか不穏な空気を帯びていた。

 

 「でも…ポチタンは?」

 

 私がそれを聞くと、ポチタンはにこりと微笑んで、何も言わなかった。嫌な予感がして、私はポチタンの方へ手を伸ばした。

 

 「待って……」

 「大丈夫だよ」

 

 ポチタンがだんだんと遠ざかる。私の元を離れて、光の奥へと消えていく。

 

 「待って……!」

 「またみんなと会えるから…」

 「ポチタンは! そこにポチタンはいるの!?」

 

 伸ばした手が空を切る。走り出そうと足を動かすが、前へ全く進まない。何も上手くいかない。

 

 「あんな、ごめんね。君一人を大変な目に合わせて。そしてありがとう。一緒に1999年に来てくれて」

 

 それは今生の別れのような、喪失と安堵を帯びた言葉。

 

 「最後に言いたいこと──────」

 

 それだけを伝えて、ポチタンは消えた。

 

 

 「ポチターーーーン!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 ───

 

 

 

 「──ッタン!!!!」

 

 

 気がつくと、私は天井へと手を伸ばしていた。視界に映るのは、見慣れた天井。

 

 はっとして身を起こす。

 そこは私の部屋だった。14年を共に過ごした、自分の部屋。

 

 ふとカレンダーを見る。2027年と書かれていた。その数字を見た瞬間、胸の奥に詰まっていたものが少しだけ緩くなった。

 

「……戻ってこれたんだ」

 

 ずっと願っていた。元の時代へ帰ることだけを目標にしてきた。ようやく叶ったはずなのに、胸は不思議なほど空っぽだった。

 

 嬉しいはずなのに。どこか、寂しかった。

 

 そのとき。廊下の向こうから、どたどたと慌ただしい足音が聞こえてくる。

 

 「あんな!!」

 

 勢いよく扉が開いた。

 

 そこにいたのは、お母さんだった。息を切らしながら、真っ直ぐこちらを見ている。

 一年ぶりに見るお母さんの顔。懐かしくて、愛おしくて、思わず涙が出そうになる。

 

 「お母さん……」

 

 名前を呼ぶ。すると、お母さんは大きく息を吸い込んだ。

 

 「……あなたは明智あんな。私の娘で、私の大事なパートナー。名探偵プリキュア!!」

 

 え…。

 

 どうして…。どうして覚えているの、お母さんが。

 

 「そして私は小林みくるだった。あんなとはずっと一緒だった。どうして今まで忘れていたんだろう…! こんな大事な記憶を」

 

 歴史が修正されている。

 

 私がタイムスリップしてきた時間軸と、元の時間軸が良い具合に繋がったんだ。

 

 「あんな……あんなぁ!」

 

 お母さんが駆け寄ってくる。ベッドの傍で膝をつくと、そのまま私を強く抱き寄せた。

 

 ぎゅっと。力いっぱいに。

 

 「会いたかったよ! 1999年から2027年……長かったけど、やっと会えたね……! もう離さないから……! 絶対に離さないから!」

 

 「お母……………みくる……みくるっ!!」

 

 私も抱き返した。服を掴む指に力が入る。

 

 次の瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出した。母の胸に顔を埋めると、温かくて懐かしかった。

 

 ずっと帰りたかった場所が、そこにあった。

 

 安心した途端、止まっていた時間を取り戻すように私は泣き続けた。

 

 「うわあああん!!」

 「うん…。いっぱい泣いていいからね……!」

 

 「──おい」

 

 「みくる…! みくるっみくるぅっ!!」

 「あんな…。いいんだよ、あんな…!」

 

 「───おいって!!!」

 

 再会の空気の中に、声が割って入った。

 声のした方を見ると、そこには、金髪に白衣を羽織っている大人の男が立っていた。

 

 「え……。お父さん……!?」

 「ジェットくん!」

 「おいおい、どうなってんだこれは……」

 

 

 

 

 

 ─── 

 

 

 

 

 

 

 「なるほど…。修正された歴史のおかげで、記憶が戻ったと」

 

 お父さん──ジェット先輩が、顎に手を置き、納得した様子で頷いた。

 

 「ジェットくんも記憶が?」

 

 隣にいるお母さん──みくるがジェット先輩に訊ねた。

 

 「ああ。あんなの誕生日プレゼントのスマホを買うために、赤レンガ倉庫(・・・・・・)前のショップまで行っていたんだが、その道中に急にフラッシュバックしたんだ。1999年の記憶が。どうして忘れていたのか分からんが…」

 「私も同じだ。名探偵プリキュアだったこと、あんなと一緒に戦ったこと、全部いつの間にか忘れていた」

 

 なんか変な感じだ…。

 

 「どうした、あんな?」

 

 もじもじしている私を不思議に思ったのか、ジェット先輩が聞いてきた。

 

 「ジェット先輩とみくるがこうして大人の姿で喋っているのが、なんだか不思議で…。私のお父さんとお母さんだったこともそうだし。というか、ジェット先輩ってそんな大人の姿になれたんだね。はなまるかっこよくて、びっくりしちゃった」

 「まあ本来はこっちの姿が本当だからな。今までは子供の姿の方が便利だからそうしていただけで」

 「そうだね~。あの頃のジェットくんはちっちゃくて可愛かったな~」

 

 みくるが、ジェット先輩をツンツンとつついた。

 

 「からかうな!」 

 

 その手を払い、顔を赤らめながら言うジェット先輩。

 

 その光景は、1999年でも見たものと同じで、あんなはとても安心した。ずっとお母さんとお父さんは、傍にいてくれてたんだって思うと嬉しかった。

 

 「まあとにかく、るるかもマシュタンも、他のみんなも僕たちと同じように記憶が戻るだろうな」

 「そうだね。でもなんで急に記憶が戻ったんだろう…?」

 

 そうだ。

 それだけが分からない。

 

 なんで歴史は収束したのか。

 

 誰かがやってくれたような。そんな気がする。

 

 でも記憶を掘り起こそうとしてみるが、何故かは分からない。

 

 「…あんな、大丈夫?」

 

 私の肩にそっと手を触れて、みくるは私を気にかけてくれた。

 

 私は頬に冷たい感覚を覚えた。知らず知らずのうちに、涙を流していた。

 

 「あれ? あれれ? どうして涙が出ちゃうんだろう…」

 「あんな…」

 「大事なことを忘れている気がするの。みんな思い出して、全部解決した筈なのに、あと一つ大事な、あと一人、私たちには大事な仲間がいた気がするの…」

 

 そうだ。

 あと一人。

 大事な人が確かに存在していた。

 でも何も思い出せない。

 

 「──じゃあ、探しにいこう」

 

 みくるが私に言った。

 

 「記憶だよ。見つかるはずない。無理だよ……」

 「決めつけちゃ駄目! 諦めないで探せば、きっと見つかるよ。だって──」

 

 そう言って、私の手をそっと握る。

 

 「私たちがいるじゃない」

 「みくる……」

 「そうだな!」

 

 ジェット先輩が勢いよく立ち上がる。白衣の裾が、ふわりと翻った。

 

 「2027年……キュアット探偵事務所、再結成だ!!」

 「ええ! 名探偵プリキュア復活ね!」

 

 みくるも同じく立ち上がった。

 

 私は二人を見上げると、二人は何も言わず、ただ当たり前のように私へ手を差し伸べた。

 その手を見つめていると、張り詰めていた心が少しずつほどけていくのを感じた。

 胸の奥に、じんわりと温かなものが広がる。

 

 私は小さく息を吐き、二人の手を取った。

 そして、ゆっくりと立ち上がった。

 

 「あともう一つ。あんなに言い忘れていたことが」

 「お。そうだな!」

 

 ジェット先輩とみくるが顔を見合わせる。

 どちらも、いたずらを企む子供みたいな顔をしていた。

 

 

 「「せーの……」」

 

 

 二人が息を合わせる。

 

 

 「「あんな、誕生日おめでとう!!」」

 

 

 そうだ…。今日は私の誕生日だった!

 

 そのときだった。

 失われていた記憶の欠片が、ふいに胸の奥から浮かび上がる。

 

 あのとき。

 本当に最後の最後に、私へ向けてくれた言葉。

 

 『最後に言いたいこと───あんな、誕生日おめでとう!』

 

 少しだけ思い出した。

 

 その一言を。その声を。その笑顔を。

 気付けば、また涙が滲んでいた。

 だけど今度は、悲しいだけの涙じゃない。

 私は袖で目元を拭い、大きく頷く。

 

 「うん……うん……!」

 

 そして、二人の顔を見た。

 

 「探しにいこう。ジェット先輩、みくる!」

 

 待っていてね。

 

 私は絶対に見つけ出してみせる。

 どんな難事件だろうと。

 どんなに手掛かりのない探し物だろうと。

 

 必ず。

 

 だって

 

 私は、名探偵プリキュアだから!

 

 

 

 そうして私たちは、元の時代で、また新たな一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ありがとうございました。
ただの妄想を見ていただき。

最終回が早く見たいけど、終わって欲しくないジレンマ…。
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