あんな奴を好きだった自分、ホント馬鹿じゃねぇ? 百合カップル? クソだよクソ! 過去に戻れたら絶対に選ばんわ! 作:Yunoko
私は男が嫌いなわけじゃない。
好きになれないだけ。
馬鹿な事を言い合える男友達もいるけど、じゃあ付き合えるかって?
手を握るのも無理なのに、その先を望むわけない。
でも別に男が悪いわけじゃない。
私が受け入れられないだけ。
男はずるい。
女を好きになっても何も咎められない。
付き合う事はもちろん、結婚する事も許されてやがる。
女を抱いたって問題ないし、妊娠させる事もできる。
相手に何かを残してあげる事ができる。
男には生理がこない。
頭痛や腹痛、イライラや不快感、定期的な出費に悩むこともない。
友達と旅行に行く時とか、その日に生理来そうな子がピル飲んで調整だとかめんどくさいスケジューリングをしなくたっていい。
気を遣う必要もない。
男は化粧をしなくても何も言われない。
すっぴんで外出ても、女捨ててるとか非常識なんて陰口を言われない。
妊娠もしないし、出産の苦しみを味わうこともない。
まあ、妊娠云々は私も縁がないけど。
でも私が男に生まれていたら。
その時にも亜紗と幼馴染みだったとして。
私は亜紗と付き合えた? 結婚できた?
亜紗とエッチするとして、自分を抑えていられたか。
亜紗を満足させられたのか。
私は、亜紗の歴代彼氏達を勝手に見下してる。
男のくせに、自由に好きになれるのに、亜紗を満足させられなかった連中。
亜紗と法的にちゃんと認められた結婚だってできて、妊娠させて子供を産んでもらう事だって可能なのに、繋ぎとめる事ができなかった奴ら。
でも、それは私の逆恨みとか妬みつらみが混じった評価だ。
要するに羨ましかったんだ。
私が男に生まれてたら、どうだろう。
同じスタートラインに立てていたら、それだけで違う。
女だからと諦めなくて済む。
堂々となんのしがらみもなく、挑む権利がある。
女同士の結婚のやり方を調べ、落胆する事だってない。
パートナーシップ制度を調べ、まだまだ法整備が不十分だと沈む事もない。
養子縁組とか離れ業を使わないと、同じ苗字にすらなれないのだと嘆く事もない。
制度を利用する時に同居している恋人であるとか、生計を同一しているだとか、いちいち理解を求める煩わしさとも無縁でいられる。
私は男に生まれたかったのか、分からない。
女は不便だが、女だからできた事もあると思いたい。
でも男を羨ましい、妬ましいと思ってるのは確かだ。
※ ※ ※
私の家で亜紗が暮らすようになって、気付けば3カ月。
もう11月半ばで、季節はとっくに秋を迎え。
肌に触れる風の鋭さは、冬の到来を告げている。
服装のコーディネートは暖かさに重心を置くようになり、エアコンは暖房を点けるようになった。
っていうか、寒いなら長袖を着とけばいいのに、わざわざ暖房点けて部屋をあったかくしてからハーフパンツとか履いてる。シャツだって半袖だ。
飲み物もキンキンに冷やすし、アイスだって食べては腹を下す。
意味分かんないでしょ。電気代とか色々もったいない。
まあ、そんな事はどうでもいい。
亜紗がここで本格的に暮らすようになり、色々と私の生活も変わってきてる。
食生活の質が向上した。
私は自分の作るご飯が嫌いだ。
自分の好きな味付けで作ってたけど、なんか好かん。
金はあるから外食とか総菜ばっか食べてたけど、それがなくなった。
亜紗が作ってくれるからだ。
家にいて時間あるからと、栄養とか献立バランスを考え、色々作ってくれる。
だから家で食べる事が毎日になり、私は少し体重が増えた。
幸せ太りとは認めたくない心境。
外に出る事が増えた。
今までは仕事の帰りにあちこちと寄って、食材とか趣味の物を買うスタイルだった。
土日祝日は人が多くなるから出たくない人間だった。
でも亜紗が一人で外に出れないと分かってから、一緒に出掛ける事が増えた。
食材の買い出しや服を買いに行ったり、目的もなくドライブに出かけたり、時には気分転換でラブホへ出向いたり。
「……ほのちゃん」
「あぁ、こっち来てろ」
「……うん」
お出かけといえば。
亜紗は人のたくさんいる空間が苦手になっていた。
土日のショッピングモールなんて、とてもじゃないが連れていけない。
今までのセフレ関係では、夜中で人もいない状況だから気付きもしなかった。
狭い通路や階段で、人とすれ違うのも苦手。
エレベーターみたいな密室空間も当然無理。
その割に、ラブホのどちゃくそ狭いエレベーターは平気だったろうが。
あの時は私と二人きりなので大丈夫との事……そうすか。
亜紗は男が近くにいるのもダメだった。
男が近くを通る時、私の腕を組んで離さない。
その時のこいつは身体が震え、視線も絶対に合わせまいとしていて。
マジで男がダメになってしまってるらしい。
ほぼトラウマじゃねえか。
外へ出る時、亜紗は目立たないようにしていた。
マスクして伊達眼鏡をかけ、服も露出は少なくし、髪型もシンプルで帽子もかぶり、とにかく興味や視線を向けられないように。
私と同居する前、こいつの恰好は色々とやばかった。
夜中しか出ない事、移動が車である事、それと私しか会わないって事でノーブラノーパンの超攻撃特化の痴女スタイルだったのだ。
あれも今思えば危なっかしい事してたな。
何かの拍子で男に襲われたら一発アウトだ、あんな恰好。
そんな恰好して誘ってるんだろ、なんてエロのテンプレセリフがリアルで聞けそう。
今は地味を意識してる亜紗だけど、そこまでやってても残念ながら目立つ。
髪綺麗だしスタイルも良いため、後ろ姿だけでも興味を引いてしまうのだ。
隠してる分、余計に素顔とか気になってしまうのだろう。
一緒に歩いている時などよく分かる。
男が不躾に、あるいはこっそりと視線を亜紗に向けているのが分かる。
分厚いコートでも着てれば目立ちにくいが、それ脱いだら乳がでかいのも分かるし。
建物の中でコートを脱ぎ、その下のニット姿になったらあからさまに男の視線が集中してっからな。
亜紗と外歩いてる時、こっち側の道路を走ってる車のスピードがあからさまに遅くなる事だってあった。
運転席へ目を向けた時、男がこっちをじろじろと見ていて、はっきり言って気持ち悪かった。
どこ行っても、亜紗は男の視線や下心に晒されてんだなと分かってしまう。
その事を不憫に思う。
でも、亜紗が私以外を好きになるとしても、それが男である可能性は少なくなったと喜ぶ私は救いようのない人間だ。間違いなく。
だから……せめて一緒にいる間くらいは守ってやりたい。
「ほのちゃん、今日はどうする?」
「んー……」
仕事を終え、食事も終え、片付けや済ませた後。
ソファーで2人してくつろいでいたら、亜紗からの声。
亜紗の問いかけは短く、文面だけだと何の事だと思う。
でも、こいつの煽情的な恰好や表情、仕草を見れば、意図はあからさまだ。
脚がほとんど出てるショートパンツに、肩も鎖骨もよく見えるトップスで、屈んでからの上目遣いに媚びる声。
当たり前のようにブラもしてないから、まあ谷も頂点もよく見えますわな。
家で一緒に暮らすようになり、セフレ関係に変化があるかって?
関係自体は継続してるけど、なにせ待ち合わせの必要がなくなった挙句、自宅にドスケベ家庭的痴女の亜紗が常時滞在してんだぞ。
私のムラムラは収まる術を持たなかった。
たまには大人しくしようと思っても、向こうから迫ってきやがる。
大体さぁ。
北半球が水平線を超えてよぉ、手の届くところにあんだぞ。
そら触るだろうが。
性的好奇心の赴くままに手だって伸びるわ。
女にだって冒険心や開拓精神はあんだよ。
性欲と重力には逆らえないって、あのニュートンだって言ってたろ。
ニュートンが乳頭好きだなんて、小学生だって知ってる常識だ。
「この流れで手を出さない女がいるか?」
「ほのちゃん」
だから私は自然の摂理に抗わず、目の前の乳を掴む。
甘い香りを漂わせる首筋を甘噛みし、そこから先は流れるように身体を重ねる。
※ ※ ※
ただ、真面目な話。
セフレとしての関係は相変わらずだが、最近のこいつの求め方は湿度が高めだ。
なんだか粘っこいというか、ねちっこいとでもいうのか。
言っとくけど、体液の放出量が増えたとかそういう話じゃないぞ。
コイツは放っておいてもスプリンクラーだからな。
「今日電話してた人って誰か聞いてもいい? 女の人?」
例えばだが、その日に私が誰かと連絡を取った時なんか分かりやすい。
私の身体に擦り寄りながら、亜紗は問いかける。
視線を私から外さず、捕食者みたいだ。
でも、表情はどこか怯えている。
「電話ぁ? あぁ、女だよ」
相手が女だと答えて顔つきが強張るっていうのも、おかしな話だ。
私に抱きつく力が強まってら。
「言っとくけど相手はあいつだぞ。にーな。亜紗だって覚えてんだろ」
「にーな……? にーな……」
「マジか。ほら、もう畳んでるけど宝石店してて、なぜかヤクルトも配達してた店。中学まで一緒だったハーフみてぇな顔したやつ」
ここまで説明して、なんとなく思い出したのか「いたかも」とぼやく亜紗。
結構インパクトあったんだけどな、あいつ。
「もしかして、新川(あらかさ)さん? 合ってる?」
「そう、そいつ。今も名字同じか知らん。結婚してんのか、仕事も何してんのか、どこに住んでんのかも知らん」
新川仁衣奈(あらかわにいな)。
通称にーな。
住所不定職業不詳の女。
ハーフっぽい顔してて、間違いなく美人系の女。
でも喋ったら何もかもが台無しになる女。
地元の市役所前で、税金未払いと住所不定の件で名指しで貼り紙されてたのにはウケた。
母さんが写真撮って「これにーなちゃんの事じゃね?」って送ってきたものな。
思い出して鼻で笑った時、亜紗の接触がさらに激しくなった。
こいつの柔らかな身体と、さらりとした体液の感触が私の性欲を刺激してきやがる。
明日は仕事だからやめろ。
「たまに会ったりするの?」
「1年に1回出会うかレベル。電話もすっげぇ久しぶり」
「ほのちゃん友達いるんだ……私のせいで誰もいないと思ってた」
「つっても……にーな、たーぼ、冬馬と千早に真美くらいしかいねぇよ」
言ってから、こいつは今じゃ交友関係が全滅してんだったと思い出した。
失言には違いないが、私だって交友関係はほとんど無に等しいんだ。許せ。
住所不定職業不詳、喋ればポンコツのにーな。
寺生まれのくせに女大好き破戒僧のたーぼ。
メスガキ気取りの町コントリックスターの真美。
超絶無口なゲーム仲間の冬馬。
見た目はともかく、中身は唯一まともな千早。
片手の指でちょうどの友人関係。
しかもいずれも年1、2回しか遭遇しない程度の。
下手すりゃ、向こうは私を友達にカウントしていない可能性すらある。
「時々は会ってるんだ……」
「マジでたまにな。っていうかお前、ヤキモチしてるとかいわねぇだろうな」
「…………」
急に黙るな。
抱きつくな。見られたくないからって顔埋めんな。
あんた乳もケツもでかいしさ、私より背も高いから単純に重い。
あと、全裸のあんたに絡まれるとマジでムラムラするからやめろ。
こんな感じで、亜紗は私の交友関係に過敏になった。
私が電話してると、相手が会社の人だろうが関係なく気にしてくる。
電話中にくっつき、私の傍から離れない。
視線は逸らさず、顔は強張り、何かに耐えている表情を浮かべてさ。
捨てられるとでも思ってんのか、こいつ。
捨てられないよう繋ぎとめようとして、分かりやすく身体を使いやがって。
どうせ私にあんた以外で好きなやつも、性行為できるやつもいないのに。
「言っておくけどな、あんた以外にこういう事する女とかいねぇよ」
「ホント?」
「信じるかどうかはアンタに任す。でも私を離したくないっていうんなら、しっかり捕まえてろ」
「…………うん、頑張る」
あほだよ、本当に。
もう私の方はあんたを諦める事も、憎んだり恨む事だって出来なくなってんのに。
※ ※ ※
亜紗がこっちに暮らす前。
当たり前だが、私は亜紗のお母さんに挨拶に出向いた。
いきなり説明もせずにこっちで暮らしますじゃ、向こうだって混乱すっからね。
私は同性愛者ですとか、前は付き合ってましただとか、そんなヘビーな事はもちろん言わん。
そう思っていたのに、話の途中で亜紗が全部バラしてしまった。
お前、お母さんが心労で倒れたらどうすんだ馬鹿。病んでんだろが。
くそ、コイツも病んでんだった。
「そうだったんだぁ……ごめんね、穂乃花ちゃん。うちの娘、本当に迷惑掛けちゃってたんだね」
「い、いえ」
亜紗のお母さんは一瞬驚いたように見えたけど、それは本当に一瞬だった。
嫌悪感だとか戸惑いをみせず、娘のやらかしについて心から申し訳なさそうに頭を下げてくる。
それどころか、娘のやらかしに対するお詫びだとか、同居にあたっての礼金を払おうとしてきた。
もちろん丁重に断る。
「穂乃花ちゃんが一緒にいてくれるなら……」
「男はもう信用できなくて……」
「この子、本当に迷惑かけるだろうから無理だと思ったら言ってね。すぐに引き取りに行くから」
男は信用できない、か。
亜紗が不倫された挙句、離婚に至った事。
友人からの裏切りもあって、心を病んだ事。
亜紗の父であり、自分の旦那が性犯罪で逮捕された事や、そのあとの娘への盗撮など含め、男への不信感が母娘揃ってどうにもならない状況となっている。
それゆえにというべきか。
幸か不幸か、あまりにもあっさりと私と亜紗の同居は許可が得られた。
私のお母さんにも簡単に説明した。
まあ、想像通りというか「まあ、いいんじゃない」で片付いた。
いずれ、お父さんと蓮にもカミングアウトはしなくちゃいけない。
でも、私がレズビアン云々もそうなんだけど、弟の蓮は亜紗に憧れてた時期もあるし、なんなら今も未練がましく気にしてやがる。
私が亜紗と元恋人で、今も昔も爛れた関係だと教えたら、私は弟の脳を破壊する事になる。
弟の慟哭や絶望を愉悦だと感じてしまう私は、間違いなく最低最悪の姉だ。
あいつの誕生日あたりにでも教えてやろう。
「マジ? これで全部?」
「う、うん……私、そんなに荷物ない」
挨拶とか諸々済ませ、亜紗が引っ越してきた日。
亜紗の私物はほとんどなかった。
最低限の衣服や化粧品、精神科の処方薬やお薬手帳(マイナンバーで紐づけしてねぇのか)、それと財布や銀行通帳、身分証明の類を除けば、あとはボロボロになったアルバムとか、私が買ってやったバッグとかアクセサリーくらい。
でかいダンボール数箱で収まるくらいの荷物が、亜紗の全部だった。
ブランド関係はほぼ売り払ったらしい。
そのお金を母親に渡したり、私とのラブホ関係の費用に充てていたようだ。
昔はあんなにトレンドにこだわり、色んなブランドに目移りしてた亜紗が、今では全然執着しなくなった事に驚いた。
そのくせ、私の買ったバッグを擦り切れてボロボロになっても捨てず、安物のペンダントを首から下げているのを見ると、私はなんともいえない気持ちになる。
時々、私が予定よりも早く帰った時。
ソファーで休んでいる亜紗が、ボロボロのアルバムを抱えているのを見た時、私の心が締め付けられ、苦しくなってしまう。
無職で収入もないってのに、この期に及んで身銭を切ろうとする。
やめろ、お前くらい養う甲斐性あんだわ、こっちも。
尽くす自分に酔ってんじゃねぇよ……なんて言えない。
亜紗が精神科でお世話になってるのは事実で、きっとこいつは心を病んでいて、私に依存して尽くす事で耐えているのだから。
「頓服のお薬ね、前より飲む事減ったんだよ。ほのちゃんのおかげなんだよ」
「そうか。私に感謝しな」
「うん。ありがとね、ほのちゃん」
「ん」
「大好き」
「そうか」
私も……絶対に言わんけど。
私は怖がりだから、この関係が壊れるのが怖いから、我慢できる内は言わないようにする。でも、きっといつか我慢できなくなる日が来るかもしんない。
※ ※ ※
「準備できた?」
「うん、多分大丈夫……ほのちゃん、チェックしてもらっていい?」
「あぁ」
11月下旬。
この日、私は有給を取得していた。
正確には今日から3日間、私は休みだ。
目的は、こいつと……亜紗と旅行に行くため。
といってもあまり遠くまで行かない。
行先は県内の温泉地。
目的は温泉でゆっくり浸かり、旅館でくつろぎ、人の少ない観光スポットを巡って楽しんでくるだけのぷち旅行。
亜紗の様子を見つつだけど、無理のない範囲で楽しめたらいいなと思う。
荷物関係はまぁ、亜紗が多少忘れようがカバーできる。
精神薬とか身分証明関係を忘れなきゃ大丈夫だろう。
体調面でいえば、絶対に気を付けなきゃいけないのが生理だ。
女限定のマンスリー型デバフイベント。
しかも半強制型のクソイベな。
私は頭と腹に症状が来る。
特に頭痛がひどい。
マジでしんどい。痛み止めは必須。
それは亜紗だって同じく。
症状は軽めだけど、こっちはとにかく出血がひどい。
いくら余裕があっても、いつ血が出てくるか分かんない状態で温泉に浸かるわけにもいかない。
タンポン入れてりゃ大丈夫だ? ざけんな、ぶっ飛ばすぞ。
水圧で血は出てこないみたいな話あるけど、そういう問題じゃねーんだよ。
股から紐ぶら下げた状態で歩いてくんな、同じ風呂に入ってくるんじゃねぇってんだよ。
ともかく。
旅行する時期と月経タイミングが合わないようにずらすのは必須。
生理を早くするか、それとも遅くするか。
亜紗のタイミングも確認した……つーか私の手帳でおおまかに把握してる。
だってこいつ、自分の前の生理がいつだったかすら覚えてねぇんだぞ。
いくら働いてなくて予定とかないからって、自分に関心なさすぎだろ。
まあ、亜紗の方は旅行が終わったあたりだ。
1、2日ずれたとしても、旅行中には被らないから問題ない。
となれば、先に来るであろう私の方をずらす事にした。
ピルの飲み忘れと時間さえ気をつけりゃ、私も旅行が終わったあたりで生理が来る。
時期的に私と亜紗で同時期に生理となるわけだが、正直その方が色々と都合が良い。
特にレズ同士にはとても都合が良い。
だって生理のタイミングがずれてたらさ、下手すりゃ1カ月の半分近くはエッチ不可になるわけよ。
生理になったら免疫落ちるし、そもそもしんどいからそれどころじゃないし。
今回の旅行は少なくとも私にとって色々と都合が良かったって事。
まあ……同居前は生理中でもソフトな範囲で交わってたけど。
やってやれなくもないけど、無理はしちゃダメだ。うん。
「ん、問題ない」
「うん、ありがと……あとね、私の服とか大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。あんた何着たって似合うし」
「あう。そんな、そんな事ないよ」
あんた、今日は何時から起きてんのか知らんけど、ずっと洗面所に行き来してはメイクやコーデの出来を確認してたろ。
朝食の準備もちゃんとしてくれてるし、マジでいつから起きてんだ。
私なんか見てみろよ。
メイク時間はわずか5分足らず、着替えも入れて10分だぞ。
どうせ気合い入れたところで私なんか誰も……いや、こいつは見てくれるか。
こいつだけ見てくれればそれでいい。
「あんたは可愛いからいいけどさ。私は? もう少し頑張ったほうがいいか?」
「えっと……ちょっとだけ、ホントにちょっとだけいじってもいい? でも、ほのちゃんの事を他の人に見せたくないなぁ」
いつもは私を全肯定なこいつも黙っていられないくらい、私のメイクはよろしくなかったようだ。
まあ、前のこいつだったら『ありえなっ! せっかくの遠出なんだから、気合い入れないともったいない!』とか言って小一時間は捕まってた。
大体、荷物の準備だって絶対何か忘れるくせに自信満々だったし、生理だって『まぁ大丈夫! 多分っ!』つって、旅行中に生理になって寝込んだりしてたからなコイツ。
あの頃、無駄に自信だけはあったアイツが懐かしい。
この先、あの頃のアイツみたいにはならないんだろうな。
私だってあの頃みたいにはなれないし。
上下関係でいえば、すっかり逆転してるし。
時々懐かしくなる。
あの馬鹿でとにかくうるさくて、でも無邪気に笑って甘えてきてたアイツが恋しい。
そんな事、絶対に言えないけれど。