あんな奴を好きだった自分、ホント馬鹿じゃねぇ? 百合カップル? クソだよクソ! 過去に戻れたら絶対に選ばんわ!   作:Yunoko

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第17話 私は亜紗と結ばれたい 中編

 

 12月に入ってからの私はとにかく慌ただしかった。

 亜紗との関係をきちんと整えるための準備(パートナーシップ宣誓関係等)、来年からのスケジューリング、フォトウェディングの予約や日程調整、亜紗とのペアリング購入の事前相談……。

 

 そんな中での懸念点の一つ。

 亜紗の精神状態だが、ピーク時より少しマシになった。

 

 私が近くにいないだけでオロオロとなって探し回ったりしないし、私が部屋で作業とかしていても「また財産なんとか作ってるの?」と問い詰められる事も少なくなった。

 私が誰かと通話してる時、無言で泣き続ける事も減ってきたし、私と過ごしてる時に突然ぎゅっと力強く抱きしめてくる事もやはり減ってきた。

 

 書いててなんだが、決して皆無になったわけじゃない。

 あくまでマシになったという点は強調しておきたい。

 それでも、私もようやく動きやすくなってきたのは確かだ。間違いなく。

 

 だって、亜紗がホントにひどい時の依存具合や拘束具合なんて、それこそ自宅にいたら24時間年中無休だったわけで。

 いくら好きだろうが愛してようが、キツイもんはキツイ。

 

「ほのちゃん……一緒にお風呂入っても大丈夫?」

「いいよ。一緒に入ろう」

「う、うん」

 

 お風呂はまだいい。

 亜紗と肌が密着しようが、私はいつでもウェルカムだ。

 亜紗の身体をどれだけ見ていても、私は飽きるところを知らない。

 まして触り放題。断る理由がない。

 

「ほのちゃん、今日も一緒に寝よ……」

「ああ、こっち来いよ。私もちょうどあったかいのが欲しかった」

「よ、良かったぁ」

 

 夜一緒に眠るのだって支障はない。

 まあ、亜紗と眠るようになってからロフトで休めなくなったのは寂しい気もするが……。

 私もたまに1人で寝たり、スマホいじってゴロゴロしたい時があんだよね。

 

「ほのちゃん……トイレ?」

「そう。でけぇ方だから出来ればリビングに行っててくれ」

「ご、ごめん……ほのちゃんいなくて心配になっちゃって」

 

 でもトイレの前で陣取られるのは厳しい。

 小さい方をする時はまだいいさ。

 でも大きい方をする時、近くに人の気配がするのは流石の私とて嫌じゃ。

 あえて目の前でトイレさせる羞恥プレイみたいな事も私は好きだけど、今の亜紗の表情や様子を見てたらそんな事を考える余裕もなかったしさぁ。

 

 まあこんな感じで私が何かしようとすると、その動向を必ず見張ってるから気が張るわけよ。

 仕事中の方が気楽だと思った時は、流石に私もちょっと滅入ってたと思う。

 

 そんなわけで、私は亜紗を少しでも安心させられるように、不安を和らげる事を第一とした。

 パートナーシップだの、フォトウェディングだって早めにしたいけど、優先度が違う。

 まず目の前の大事なやつを優先しなくてどうするってんだ。

 亜紗ファースト。

 それ以外はすべて二の次。

 

 ……こう言うとなんだかカッコいい気もしなくもないが、元を正せば私の浅慮な行動によって亜紗は不安定になったのだ。

 これで亜紗が落ち着いて私に感謝しても、それはとんだマッチポンプではなかろうか。

 と、とにかく。

 

 自宅で過ごす時は、とにかく亜紗の近くで過ごす。

 料理をしている時は亜紗から見えるとこで座ったり、作業はキッチンのテーブル席で行い、キッチンへ行っては味見役を買ってでたり、亜紗とスキンシップを図ったりもした。

 ホントは手伝ったりとかすりゃいいんだが、調理は亜紗の独壇場だ。

 私がキッチンに入ったら邪魔でしかない。

 

 ただ、特別な事はホントにしてない。

 私に何かあった時……みたいな話はせず、有事の際の準備もしなくなり、亜紗の傍で過ごすペースを増やしただけだ。

 

「あの時はさ、亜紗とパートナーになるって思って私も焦ってた」

「亜紗のためとか言って、私が安心したかったのもあるんよ」

「不安にさせてごめんな、私も色々心配になっちゃってさ」

 

 私に何かあった時のための公正証書関連について、こんな感じにありのままを吐露した。

 私の正直な気持ちや考えを聞いた亜紗だが、今の亜紗が私を責めるはずもなく、涙を流して「私もごめん……」と謝ってくるし、色々しんどい。

 でも、こうやって言葉にして実際に行動を中止したから、少しは安心してくれたのだろうか。

 そうだったら嬉しい。

 

 それと、あとは亜紗が内服してる精神薬の効果が大きいんだろうな。

 こないだ亜紗が受診日だったので、亜紗のお母さんにお願いしてちょっと調整してもらったのもあると思う。

(亜紗1人で受診できないので、いつも亜紗のお母さんが受診同行してくれているのだ。どっちも病んでるし、どっちも同じ病院に通ってるし)

 

 薬の名前を見て、ネットで調べたら抗不安薬や睡眠導入剤を内服しているらしい。

 その事を亜紗に聞いた時、あいつは「そうなんだ、知らなかった」と抜かす始末。なんなら自分の病名だって多分うつ病と答えるし。

 多分ってなんだ、多分て。

 

 なんで自分の飲んでる薬の種類も病名すらも把握してねぇんだよ。

 内服もしばしば忘れたりするから、ホントに1人にするのが心配しかないんだよコイツは。

 まあ、薬の飲み忘れは昔からあったけど。

 

 ピルだって時間守って飲まなきゃなのに、かなりの頻度で忘れてるし。

 生理だって基礎体温を把握してねぇし、普通の体温計で測ってるし、普通に動き回ってから測るし……ホントにコイツはもう……。

 ルナルナくらい使え。

 私らが子供の時からアプリであっただろが。

 

 ああ、関係ない事まで思い出してしまった。

 本当に世話のかかるやつだ。

 でも、私は亜紗の世話を焼くのが嫌いじゃないんだ……。

 

 

※ ※ ※

 

 

 さて、そんなこんなであっという間に12月も末頃。

 私と亜紗は帰省する事にした。

 

 実家へ帰省するに際し、私達はお互いの家族に報告とお願いをしてきた。

 私達が付き合ってる事、結婚はできないけど、パートナーシップ宣誓をするつもりという事。

 それと、今はまだ意味ないけど結婚届の証人欄にサインしてほしいという事。

 

「…………」

 

 最初は私の家族から伝えた。

 リビングでは私と亜紗が隣り合って座り、その向かいにテーブルを挟んで私の母と父、それとついでに弟が並んで座ってた。

 3人の反応はというと……。

 

「そこまで進んでたんだね。まぁ、おめでとう」

 

 まずは母。

 分かっちゃいたが、やはりドライ。

 まったく驚きもしないし、動揺もきっとしとらん。

 ホントにブレない。でも、否定的な気配はまったくなくて嬉しい。

 

「時代だな」

 

 次に父。

 何が時代だな……なのかは分からないが、こちらも母同様な反応。

 でも、このあとに「2人とも末永くお幸せに」と祝ってくれた。

 驚いてる感じはまったくなかったけど、後日の母いわく、ちゃんと驚いてたらしい。

 

 私が独身である事を気にしてはいたが、下手な男に嫁ぐくらいなら独身のままでもいいかと思ってた矢先、同性の彼女を連れてくるもんだからびっくりしたそうな。

 しかも相手は昔から知ってる近所の幼馴染みの娘さん。

 父は内心たまげていたが、2人が好き同士だったら何も言うまいとしたらしい。

 

 ……ごめんね、お母さん。お父さん。

 2人に色々と心配かけた挙句、私はこの家の血を残す事もしなくて。

 

「マジか……姉貴が亜紗さんと結婚……女同士で……え? 前から付き合ってた? マジか」

 

 さて、最後に私の弟である蓮(れん)だが。

 

 文字通り、頭を抱えていた。

 私はコイツとずっと仲が良くなかったが、家族で唯一まともな反応を示した事にちょっと共感してしまった。

 

 普通、こうなるよなぁ。

 弟の反応に思わず安心してしまうのは間違えているんだろうけど。

 

「……まあ、母さんも父さんも認めてるしさぁ、俺が文句言う事じゃないか」

 

 こんな感じで認めてもくれた。

 亜紗に頭を下げて、「おめでとうございます」と言ってくれたのはちょっと感謝してる。

 そのあと「こんな姉ですが、他に引き取ってくれる人もいないんでお願いですから見捨てないでやってください」と抜かしたので軽く叩いてやったが。

 

 でも、本当に感謝はしてる。

 

 蓮だって亜紗の事をずっと慕ってて「亜紗ねえちゃん」って好意を寄せてたんだ。

 それが亜紗とくれば、すぐに彼氏ができるし、彼氏の不在期間がほっとんどないし、気付けば結婚はしてるしで蓮には付け入る隙がまったくなかった。

 そして離婚してチャンスも巡ってきたところで、よりにもよって日頃から不仲の姉がかっさらっていく始末。

 そら脳も破壊されてしまうわ。

 

 当初の予定だと、さらに脳破壊をしてやろうと目論んでいた最低最悪な姉である私だが、せっかく内心の思いを秘めて祝福してくれたのだ。

 「亜紗って名前だけどな、夜の方が強いんだぜ。何が強いってお前、この身体を見て分からんのか」だとか、これ以上の追い打ちはあんまりな行為だと思い、やめておいた。

 

「2人は結婚式とか考えてんの?」

 

 母に尋ねられ、結婚式は考えてないと告げた。

 だって、お互いに呼べる人間なんてほとんどいないし。

 

 それに同性同士での結婚ともなれば、親族や知人だって誘い辛いし、そのことで家族に迷惑がかかっても嫌だしさぁ。

 まあ、仮に行うとしても亜紗がおそらく耐えられないはずだ。

 どのみち実現が現実的ではないんだ、私達の結婚式なんてのは。

 

 

※ ※ ※

 

 

 無事に私の家族に報告したところで、次は亜紗のお母さんへ挨拶に行った。

 その際にちょっとしたお土産も渡し、亜紗との関係を進めていきたい事、パートナーシップについての話もしてきた。

 

「そっか……亜紗と穂乃花ちゃんが……うん、よかった」

 

 よかった、とは言ってくれた。

 笑みも浮かべてくれた。

 でもその笑顔には疲労が滲みでてた。

 私と亜紗の事を心の底から祝福してくれたかっていえば、きっとそうじゃないと思う。

 

 根底には諦めの部分が大きいように思えた。

 旦那に裏切られ、義理の父親にも裏切られ、周囲の男達にも恐怖や不安を抱くようになった娘が好きになる対象を男から女に変えたのだと思っているのかもしれない。

 

 私の考えが穿ちすぎなのは分かってる、自覚もしてる。

 亜紗のお母さんだって心が病んでて、素直に笑うこともできないのかもしれない。

 近所の幼馴染みだった私がいつの間にか恋人になってて、今では結婚の真似事までしようとしてて、驚きで思考が追いつかないだけかもしれないし。

 

「私には女の子同士で好きになるのがよく分からないけど……今はトランスなんとかってテレビでやってるもんね。そういうのもあるんだね」

「トランスフォーマーだよお母さん」

 

 トランスジェンダーだよ……。

 それとトランスジェンダーは厳密には違う、LGBTの方が適切だろう。

 でもそんなのいちいち指摘しないし、わざわざ言う事でもない。

 

 このあと、私と亜紗の生活についてだとか、こないだの旅行話とか、亜紗の障害年金の話とか、これから行う予定のイベント(パートナーシップやフォトウェディング)について話し、最後に結婚届の証人欄に名前を書いてもらえた。

 もちろん、私の家族(というか母)にはとっくに話して記入済み。

 これで私と亜紗との間で記入した結婚届はほぼ完成となったわけだ。

 私は少なからぬ達成感を感じていた。

 

「これで……結婚届ができたね」

「うん」

 

 完成(厳密には大分違うけど)した結婚届を持ってきたハードケース? っていうのに入れて、それを大事に抱える亜紗。

 大切な物を手放すまいといった様子の亜紗を見て、お義母さん(もうめんどくさいからこれでいく)は何か思ったんだろう。

 私にぺこりと頭を下げて感謝の気持ちを伝えてくれる。

 

「……穂乃花ちゃんのおかげで亜紗が笑えてる。ありがとうね、穂乃花ちゃん。本当にありがとう」

「いえ」

 

 もっと気の利いた返事ができんのか、私。

 それから世間話をして、時間は過ぎていき。

 この日はそれぞれの家で年越しを過ごす事にした。

 来年帰ってこない可能性もあるんだし、今年くらいはお義母さんと過ごしてあげなと私も亜紗に伝えたのだ。

 

「…………うん」

 

 めちゃくちゃ不満そうだ。

 でも、亜紗も親の事は気にしてたから嫌だとは言わなかった。

 

 私はすっごく久しぶりに実家で過ごした。

 母さんの作る年越しそばを食べて、なんとなくリビングに皆で集まってテレビをぼんやり見てて、亜紗からのメッセージに返事を返したりして。

 

 その夜、私は久しぶりに実家の自室で過ごした。

 すっかり使わなくなった部屋だが、内装はそのままだった。

 床に埃やゴミもなく、きっと母さんが掃除してくれてたんだろう。

 

 私はベッドで寝転がりながら、亜紗と通話してた。

 時刻が日を跨いだ時、新年の挨拶を交わし、そのあとも喋り続けていた。

 そしていつの間にか、どちらともなく力尽きて寝てた。

 今年最後の日はこんな感じで締めくくられた。

 

 

※ ※ ※

 

 

 新年を迎えた私は正月の挨拶などもそこそこに、昼前には亜紗と一緒に自宅へ帰っていった。

 そのあとはちょっと休憩して、亜紗と一緒に夕飯も済ませ、風呂にも入って髪とか乾かして。

 リビングのソファーで私がくつろいでいたら、おもむろに現れた亜紗が一言。

 

「ほのちゃん……新年初エッチしよ」

 

 なんとお馬鹿な提案なんだろう。

 パートナーである亜紗からの誘いとはいえ、新年のめでたさも冷めやらぬ内だぜ。

 せめて三が日くらい、のんびり穏やかに過ごそうという発想はないのか。

 この色ボケ女めが。

 我々はアラサーだぞ、少しは慎みをだな────。

 

「新しい年だからな。派手にやろうぜ」

「うんっ」

 

 無論、私に断る理由はなかった。

 だって、亜紗がスケベなのがいけない。

 その時の亜紗は私にしか見せないという事で、パジャマ用のフリル付きで可愛いミニスカートを履いていた。

 それを捲り上げて挑発してきながらのお誘いだぞ。

 

 当たり前のように下は履いてないし、なんか色々と準備万端に粘っこいし、私はそれを見て誘いに乗ってやったにすぎない。

 私は悪くねぇ。

 

 新年から早々、私は亜紗と共に運動に励んだ。

 汗もかき、身体中の悪い物質だってあらゆる体液と一緒に放出……したのかは知らんが、1日の夜から始めたそれは2日の昼まで続いた。

 

「ほのちゃんはいつまでお休みなの?」

「7日までだったかな……多分だけど」

「そっかぁ……あと4日はエッチできるって事かぁ」

 

 爽やかな笑顔で言う事じゃねぇ。

 お前の計算だとなんだ、私が休むのは6日あたりか? そら、やれなくもねぇけどさ。

 なんだろうなぁ、不安で泣いてるよりはよっぽど安心だし、私自身も最近は抑えてたから望むところではあるんだけどさ……。

 

 まだ、亜紗は私との関係を繋ぐ一番の手段を性行為だと考えているのかもしれない。

 そう思う事がある。

 

 パートナーシップの宣誓をしたところで、婚姻関係とは認められない。

 たとえば私が他の男や女を好きになってさ、そいつと肉体関係になったとしよう。

 

 亜紗にそれがバレて揉めたとしても、不倫で慰謝料請求が必ずできるとは限らないのだ。

 同性カップルでの不倫を扱った裁判例自体が少ないのもあるが、法的効力を持たない関係であるため、普通の結婚であれば課せられるはずの貞操義務の範囲外なわけよ。

 まあ、事前に合意契約(婚前契約みてぇなもん)……をしてさ、浮気とかしないって取り決めをしておけば、多少は拘束力も持たせられるらしい。

 

 あと、私達は厳密にいえば結婚してるわけじゃないから、離婚の必要だってない。

 パートナーシップの解消を行う必要はあるけど、その程度だ。

 きちんと準備をしていなければ、財産分与だとか死後の遺産相続にも絡めない。

 あまりにも脆く儚い関係性なのだ。

 

 だからこそ、私を身体で繋ぎとめようとしてくるっていうのか……?

 ここまで準備してて、パートナーシップだって結ぼうとしてんのに、私が亜紗を嫌いになって離れていくと本気で思っているのだろうか?

 

 普通ここまで決まってさ、自分のためにあれこれと考えてくれて安心に繋がんねぇのか?

 セフレならいつでも解消だって可能だけどさ、恋人や夫婦は簡単に……いや、一度切れた縁もある。

 私が幾らかの不安を抱いたように、亜紗も不安を消しきれないって事なんだろうか。

 

 馬鹿だなぁ、ホントに。

 でも、私から捨てられまいと必死な亜紗を見て、愛おしく思ってしまう私も大概馬鹿だ。

 

 

※ ※ ※

 

 

 さて、正月休みだって瞬く間に過ぎていき。

 私は仕事も再開し、それと並行しながらパートナーシップ宣誓の準備を進めていった。

 

 まずは日程だけど。

 2月25日でパートナーシップ宣誓の予約が取れた。

 そのあと、いくつかの確認事項を聞かれる。

 

 当日の同席する人の有無……つまり亜紗の参加はどうするかだが、亜紗は頑張ると言ってくれた。

 予約時間は午前10時。

 当日の流れの説明を受けて、場所は市役所近くの文化センターとなった。

 

 プライバシー保護のためだろうか。

 宣誓は建物の中の個室で行い、市役所側のダイバーシティ人権政策課とかいうよく分からんとこから2人来てくれるらしい。

 書類は一通り揃えてとっくに提出済みだし、ここまでの流れは特に問題なし。

 

 亜紗と一緒に購入する指輪についても、すでに店の目星はつけてある。

 いくつか電話で確認していった中、一番人当たりの良さそうなお店に予約を入れておいたのだ。

 私が「同性同士のカップルで……」と答えにくい前置きから伝えていった中、本当に唯一好意的な反応を示してくれたお姉さんがいた。

 その人の勤務している日で予約をお願いし、亜紗にも事情を説明も済ませた。

 

 フォトウェディングも比較的小さなフォトスタジオで予約を確保した。

 最短で4月以降であったため、ここで4月9日……つまり亜紗の誕生日にお願いした。

 

 まあ順序的にはパートナーシップ宣誓、ペアリング購入、フォトウェディングといった流れになる。

 すっげぇダイジェストに予定は決まっていった。

 決してスムーズとはいわないが、まあ見通しも立ってきたといっていい。

 

 いよいよ、私と亜紗がパートナーとしての関係を本格的に築いていき、形として残していける。

 私達の関係を公的な書類として残し、指には関係を示すためのリングを残し、写真でも私達の関係を残す。

 

「2月25日……楽しみだねえ」

「そうだね」

 

 色んな日程が決まっていき、亜紗と食事を摂っている時やお風呂に入っている時、一緒のベッドで休んでいるタイミングでの会話も弾んだ。

 亜紗にとってポジティブな言葉や会話が増えていくのは、私にとっても望ましい流れでしかない。

 

 この調子だ。

 このまま少しずつ、でも確実に進めていく。

 私と亜紗は正式なパートナーになるんだ。

 

 

※ ※ ※

 

 

 そんな中。

 仕事も終わり、自宅へ帰ろうかというタイミングだった。

 一本の着信履歴に気付き、その電話相手を確認する。

 

「お、珍しい。千早だ」

 

 そういえば、亜紗との関係について報告とか全然してなかった。

 千早は、私が亜紗に裏切られボロボロになった時、一番親身になって慰めてくれて相談にも乗ってくれた親友。

 その千早に経過報告や諸々と伝えてないのは、なかなかに薄情というか、不義理な事をしてしまった……。

 ただ、言い辛かったのには理由がある。

 言い訳ともいうが。

 

 千早は亜紗と元々仲が良くなかった。

 私と亜紗が別れてからなんて、亜紗の事を完全に毛嫌いしている。

 私が亜紗と復讐がてらセフレになるって時ですら、何度も「やめとけ」と忠告してくれていたのだ。

 

 それが今じゃ友達や恋人の垣根を超えて、パートナーシップ宣誓まで結ぼうとしている。

 千早になんて思われるだろう。

 なんとチョロイ奴だと笑ってくれるぐらいなら、まだマシだ。

 本気で軽蔑されたら、結構悲しい。

 

「あー……なんて電話しよ。すっげぇ気まずっ……」

 

 この時の私は、決して気楽に考えてなかった。

 でも、そこまで深刻にも考えてなかったと思う。

 なんだかんだで千早は呆れはしても、私の決めた事だと肯定してくれると思ったから。

 アラサー女の考えと思えないくらい、甘えた考え。

 

 しかし。

 ここで私が千早に連絡をする事が、私にとって大きな分岐点となる。

 

 私と亜紗、そればかりか千早まで巻き込んでしまうような出来事が起きるか、起きないか、それを左右する機会がここだった。

 もちろん、この時の私がそんな事を知る由もなかったけれど。

 

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