あんな奴を好きだった自分、ホント馬鹿じゃねぇ? 百合カップル? クソだよクソ! 過去に戻れたら絶対に選ばんわ! 作:Yunoko
あの手紙が届いた日から1週間。
私は地元へ向けて車を走らせていた。
目的はアイツに会いに行くため。
約束の時間は午後3時で今は午後1時過ぎ。
ちょっと早いんじゃないかって? まあ、私の現住所から地元までそれなりに距離があんのよ。
車で大体1時間弱くらい。
なので今から向かって早めに着くくらいでちょうどいいのだ。
なぜわざわざ離れた地元を選んだかといえば、アイツに私の現住所を知られたくないから。
だって、今日会って仲直りするってんならまだしも、私は傷心中のアイツに罵詈雑言浴びせてさらなる追い討ちかけんだぜ? 可能ならトドメも刺してやりたい心境よ。
恨まれ憎まれ、追い詰められた(追い詰めた)アイツに何されっか分からんでしょうが。
間違えても現住所を知らせる気はないし、連絡先だって教えねぇよ。
会うために仕方なくメッセージはやり取りしたけど、そんなもんすぐにブロック再開だっての。
早く目的地に向かうのだって、車をアイツに知られないように隅っこに停めておこうって魂胆だしな!
「はぁ……胃も腹もいてぇな。どっかの道の駅でトイレ済ましとくか」
地元が近づくにつれ、見覚えのある景色が視界に写る度に、私の胃と腹が痛くなってきた。
私はストレス性の腹痛持ちなので、不安や緊張が高まるとお腹が痛くなり、下痢になり、ついでに胃もやられるのだ。
原因は分かってる。アイツに会うからだ。
もう少し、日を遅らせるべきだったかもしれないなと私は後悔してる。
でも、アイツに連絡入れてからというものの……。
『連絡してくれて本当に嬉しい』
『最低な私に謝る機会をくれてありがとう』
『いつ会えますか。いつでもどこでも行きます』
『ほのちゃん(私のあだ名だ。気安く呼ぶんじゃねぇ)の声が聞きたい』
『悪口で責めてくれて構わないから電話できないかな』
『お仕事で忙しいのにごめんだけど、早めに会えたら嬉しいです』
『寂しい』
『ほんの数分でいいから声聞きたいです』
上記みたいなメッセージが延々と来るため、私の方が折れてしまったのがいけなかった。
こんな縋るような、執着するような事を言うやつじゃなかったんだけどな。
「ごっめ~ん!」みたいな軽いノリの、イラっとする喋りがしっくりと来るタイプだったのだが。
もちろん通話などしない。
アイツの声を聞いた時、アイツへの恨み憎しみが和らいだら嫌だし。
あと、なんかメンヘラっぽくなってるし、私の睡眠時間や自由な時間を奪われるのも嫌だったので。
そうしたら、電話が出来ないからメッセージを次々と送ってきやがったわけよ。
まず通知音がうるせぇ。かといって通知切って朝起きてみたらメッセージアイコンが+99とかになってんだもん。怖いよ。
時間も連打とかじゃなくて、数分おきの定時連絡みたいになってるし。
朝起きれない私の設定した5分おきアラームみたいになってんだよ。アイツいつ寝てんの? やっぱ怖いよ。
そんなわけで今日出会う事になったというわけ。
出会う場所は地元の寂れたカラオケ店、その名も《カラオケ王国》である。
あ? ださいネーミングだと? ざけんな、思い出の地だぞ。
大人になるにつれ、行動範囲や選択肢も増えた今となっては全然行かなくなったけどさ。
フリータイムだとか割引とか、ドリンクバーですら備わってねぇんだもん。
つい数年前まで番号本が残ってたというくらいだから、如何に時代に取り残されているか分かるというもの。
小学生の時から、アイツと一緒によく行ったっけな。
アイツは歌が上手くて、つーか声が綺麗だから聴いてるだけで、手拍子やってるだけで私は楽しかった。
あとはまあ、一緒にポテト(アイツの好物。行くと必ず注文してた。注文すると店主っぽい人がレンジでチンして持ってくる)食べたり、スマホ……いやあの時ガラケーか。
携帯いじったり、プリ帳にプリクラ貼ったり書き込んだり、他愛もない雑談とかしてたっけか。
「…………昔はよかった、か」
戻れるなら、純粋だったあの頃に戻りてぇな。
そうすりゃ、アイツとは適度な距離で接して……いや、そもそも関わりを減らす事だってできるわけで。
そうなれば、まかり間違ってもアイツと恋人関係なんて選ばない。
ただの幼馴染みでいられたら、こんな思いをせずに済んだんだから。
踏み込まなければよかった。自分の恋心に向き合わずにいれば、なけなしの勇気をあの時に振り絞らなければ。
傷付いてるアイツをさらに痛めつけてやろうなんて、ひどい事もしなかっただろうに。
でも、ただの仲の良い友達を続けたとして。
そのあとアイツはモテるから、どこかしらで付き合っただの、結婚報告を聞かされる羽目になる。
そこで私は人知れず涙を流すわけよ。
恋心を内に秘めた悲劇のヒロイン面でな。あほらし。
「直にトドメが刺せる分、こっちの方がマシなんかな」
アイツとの縁にお別れを、私の完全に燃え尽きていない未練に終止符を打たないと。
二度とアイツが会いたいなんて思わないくらい、私の名前も聞きたくないくらい、顔も見たくないレベルに叩きのめす。
私もこれで今後はアイツと関わる資格もないくらい、クズを貫く。
心のどこかでアイツと友達からやり直すくらいだったらいいんじゃ、なんて思う部分があったが、そうなれば私はまたアイツに惚れてしまいかねない。だって私はチョロイから。
アイツの顔も身体もずっと好みだったし、付き合ってる時のアイツは本当に何でもしてくれた。
特に夜は凄かった。お互い性欲強いし、お互いにどこをどう触れば、弄れば気持ちいいのか知り尽くしてた。
性的な好奇心も旺盛で、ケツに棒状のチョコレート菓子を入れてみたり、乳首にクリームやら塗りたくって舐め回したり、24時間耐久エッチだの、書くのが憚られるような遊びはほぼやり尽くしている。
小さな頃からの幼馴染みでお互いレズの恋人同士でさ、マニアックプレイ大好きな変態部分まで共通するとか、そらもう、こんなの運命レベルの相手だと思った当時の私を馬鹿だと切り捨てられんわけよ。
「はぁ…………セフレになってくださいとか言われたら許しちゃいそうな自分が嫌だわ」
過去と未練を振り返りながらそうこうしつつ、到着したのは午後2時過ぎ。
いくらなんでも早すぎだ。会うのが待ちきれなくて早く来たとか思われたらどうすんだ。アホか、私は。
アイツはどうせギリギリかせいぜい5分前に来るだろうに。
カラオケ王国の駐車場……ではなく、そこから徒歩数分の公園側の駐車場で車を停める。
なぜなら、全然客がいなかったのだ。
そら平日昼間の廃れて寂れたカラオケ店なんて人いねぇわ。
むしろなんで今も経営続いてるんだ。
ま、まぁいい。
ここでちょっとカンペ(アイツに恨みつらみをぶつけるため、前もって用意した。最悪カンペを見ながらトドメを刺す羽目になる)でも読んで最終確認しつつ、10分前くらいになったら行けばいいでしょ。
しばらく会ってないし、駐車場の端に停めときゃ私だって分かんないでしょ。
そう考えてた。
「ひゃぅ」
だから、コンコンと助手席側の窓をノックされた時、私は尻を浮かせて飛び上がった。
ひゃぅ、なんて悲鳴初めて出したわ。発したのが私じゃなければ可愛いとか思ったかもしれん。私だからキモいとしか思わんが。
誰かと思えば、それは忘れたくても忘れられない相手で。
「久しぶり……ほのちゃん」
「あー……ご無沙汰です」
おいおい、お前どこから張ってたの? どこから見てたの?
そんなキャラじゃなかったじゃんか……怖っ。