あんな奴を好きだった自分、ホント馬鹿じゃねぇ? 百合カップル? クソだよクソ! 過去に戻れたら絶対に選ばんわ!   作:Yunoko

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第4話 憎きアイツをセフレにする

 

「いくら騙されてたって言ってさ、浮気してるってなったからって、なんで私に確認も相談も何もしないの?」

「ごめん……」

「素っ気なくなって、当たり強くなって、何もしなくなって、そのくせ金目の物は要求して、ひどい事するよねホント」

「ごめんなさい……」

「私の誕生日だとか記念日もおざなりで、あの時は彼氏君の家で遊んで夜までパコパコでしょ? そっちのがよっぽど浮気してんじゃん。カスじゃん」

「その通りだと思う……」

「別れて周りと一緒に私を悪者扱いして、挙句結婚式に呼ぶだぁ? どこまで舐めてんのって思ったよ」

「本当に最悪な事しました。ごめんなさいっ……」

 

 あーあ、とうとう泣き出しちゃった。鼻水も出てら。

 泣いてても可愛い顔が崩れないってさ、ずるいよね。

 「汚ぇから拭きなよ」とティッシュを箱ごと渡しておき、ゴミ箱も足元へ寄せてやる。なんて優しく慈悲深い私よ。

 

「あの時の私は、なんで嫌われたのか、冷たくされたかなんて分かんなかった」

「でも、アンタと別れたくなかったし、離れたくなかったから必死だったよ、マジで」

「私なりに色々考えて、アンタに尽くそうとして、一緒にいれるように努めたつもり」

「まあ、遅かれ早かれ別れてたんだろうし、早く済んで良かったんだろうけど」

 

 嗚咽を漏らしていようが、涙や鼻水を拭っていようが、私は構わず畳みかける。

 コイツが被害者側だったからと、じゃあ自分がされた事を許せるか? っていうと、答えはノーだ。積み上げてきた信頼や親愛を崩したのはコイツなんだ。私じゃない。

 

「わっ、私だって! 騙されてぇっ、え”っ、色々不安になっでぇ!! 裏切られたって思っだんだもん!」

 

 立て続けに責めてたら我慢できなかったのだろうか。

 キッとこちらを睨みつけ、涙をこぼしながらアイツは反論してきた。

 おいおい逆ギレか? あぁ、イライラさせんなよ、生理にゃまだ早いぜ。

 

「だからさ、話をしようってなんないの? そこで」

「しようと思ったよぉ!! でもさ、あの頃はほのちゃん、穂乃花だって仕事で忙しい時でぇっ! 私だって寂しかった! なのにっ、他の子と遊ぶ余裕はあるのかって! ムカついて!」

「なるほどね。でもね、私からも話をする時間が取れないかって何度も聞いたよね? それに対して、アンタはなんて返した?」

「…………」

「今無理、だとか友達と電話するだの、遊びに行くからあとでとか、そんな事言って話し合いにならなかったじゃん。それでも私が一方的に悪いってか、あぁ?」

「ごめんっ……なざい」

 

 あっという間に意気消沈。

 昔から喧嘩する事はあったけど、あの時の力関係は間違いなくコイツが上で、私は下だった。だから、いつも最後に謝るのは私で、仲直りをしてもらう立場だったんだけどな。

 浮気や離婚、その他諸々で傷心中だってのはあるんだろうけど、こんなにも弱くなったのかコイツ。

 

「最後だし、この際言っておくけど、私にもう連絡しようとしないでほしい。実家にも手紙だとか送らないでね」

「……」

「アンタがこの先再婚しようが子供作ろうがアンタの勝手だけど、私に連絡は不要だから」

「…………やだ」

「私はもう、アンタと関わらない。優しくなんてできない。仲直りなんて絶対お断り。それじゃ、もう行くから。バイバイ」

「やだっ!!」

 

 席を立つ私にドッと衝撃。そのまま横に倒れる。

 アイツが私にタックルしてきた、わけじゃなくて、抱き着いてきたようだ。

 あぶねぇ、ソファーだったからいいものの、床とか壁に頭ぶつけたらどうすんの。

 

「最後なんてやだ」

「そう言われても」

「捨てないでよ、ほのちゃん」

「前提が間違ってるよ。私を捨てたのは亜紗、アンタだから」

「お願い、許してよ。私、尽くすから。好きになってもらえるように頑張るから」

 

 マジでコイツは……いい加減にしてほしい。

 気安く触れるな、私の恋心に。燻らせるなよ、私の未練を。

 

「友達に、戻ってください」

「嫌です」

「私の事、好きにしていいから。また色々しようよ。こんな事言うのアレだけど、私とほのちゃんって身体の相性絶対良かったよ」

「…………」

 

 咄嗟に反論も拒否もできなかった。

 セフレか、セフレ……。

 

「私、いつ求められてもオッケーだよ?」

「もし、私が他の人とエッチしたの気にしてるなら、ほらテリーヌの船、だっけ? 人の細胞は時間と一緒に入れ替わっていくとかいう……私の細胞もほとんど別物だからセーフだよ?」

 

 テリーヌじゃなくて、テセウスの船だろ。馬鹿がよぉ……。

 そりゃ、一カ月半もすれば皮膚や粘膜は入れ替わるだろうけど、そういう問題じゃないっていうか……。

 クソみたいな独占欲なんだろうけど、私以外の、それも男で使用済みの身体を触りたくないって思ってしまう。

 この思考回路は男寄りだって友人に言われたっけな。

 

「アンタと友達になるのも嫌だけど」

「……っ」

「私の都合の良い時にセフレになるんだったら、相手してやってもいい」

「えっ?」

「アンタの顔と身体と性癖は捨てがたいから……私が溜まってる時に呼ばれたらすぐに来て、私が満足するまで相手して、飽きたらとっとと帰ってもらう。それでもいいなら、相手してやってもいいよ」

 

 なんてクズな提案なんだ。

 まあ、こんなん言われて受け入れるわけないから、これで話も終わりだろ。

 コイツにどんだけ嫌われても今となっては問題もない。

 

「……ホントに? 相手してくれるの?」

「はぁっ? アンタ、ちゃんと聞いてた? セフレだよ? しかも完全に私都合。性欲処理の道具扱いだって言ってんだよ、内容分かってんの?」

「わ、分かってるよ。でも、それ受け入れたら、捨てないでくれるんでしょ? また、話したりしてくれるんでしょ? だったら、なるよ! なる!」

「ば、馬鹿じゃないの」

 

 どんだけ追い詰められてたんだろう。

 こんなふざけた提案、乗ってくるほどに精神がやられちまったのか。

 一瞬、私の嗜虐心が萎んでしまったように思う。

 なんで、今更私に縋る。そこまでしがみつく。嫌いなままでいさせてくれ、私にとっての敵であってくれ。

 

「アンタ、友達なんていくらでもいんじゃん。他のやつを頼ったらいいだろ」

「いない。全部いない。誰も信じらんない。ほのちゃんだけ」

「そのほのちゃんが、こんなクソみてぇな提案してんだろ」

「クソじゃない! 全然、クソじゃない!」

 

 元から馬鹿だったけど、ここまで、まともな判断もできなくなっちまったのか。

 やけっぱちのメンヘラ尻軽ビッチに成り下がっちまったのか?

 

「真剣な話、私は昔みたいに優しくなんてできない」

「いいよ」

「ひどい事とかいっぱい言うと思うけど?」

「されて当然だから」

「ばっかじゃないの、マジでアンタ」

「馬鹿だよ。ずっと馬鹿だった。ほのちゃんの事、信じる事もできない馬鹿だったよ」

「…………」

 

 もういいや。

 どうせ嫌われるつもりだったんだ。

 コイツが二度と私の顔も見たくなくなるまで、徹底的に絞りつくして、散々に弄んでから捨ててやる。

 私もお前も、いい加減お互いに解放されよう。

 幼馴染みで元恋人同士だったという呪縛からさ。

 

「最後にもう一度確認だけど、私とアンタは今日からセフレでいいんだね?」

「うん、もちろん」

「私の言う事は絶対だし、逆らったらすぐに関係終了だから。それでもいいの?」

「いい。絶対言う事聞く。聞くよ、逆らわない」

「分かった。今日から私とアンタはセフレだから」

「うん……だったら、名前で呼んでほしい」

「はぁ……亜紗」

「うんっ! 穂乃花ちゃん!」

 

 だから、そんな目で私を見ないで。

 

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