あんな奴を好きだった自分、ホント馬鹿じゃねぇ? 百合カップル? クソだよクソ! 過去に戻れたら絶対に選ばんわ! 作:Yunoko
「いくら騙されてたって言ってさ、浮気してるってなったからって、なんで私に確認も相談も何もしないの?」
「ごめん……」
「素っ気なくなって、当たり強くなって、何もしなくなって、そのくせ金目の物は要求して、ひどい事するよねホント」
「ごめんなさい……」
「私の誕生日だとか記念日もおざなりで、あの時は彼氏君の家で遊んで夜までパコパコでしょ? そっちのがよっぽど浮気してんじゃん。カスじゃん」
「その通りだと思う……」
「別れて周りと一緒に私を悪者扱いして、挙句結婚式に呼ぶだぁ? どこまで舐めてんのって思ったよ」
「本当に最悪な事しました。ごめんなさいっ……」
あーあ、とうとう泣き出しちゃった。鼻水も出てら。
泣いてても可愛い顔が崩れないってさ、ずるいよね。
「汚ぇから拭きなよ」とティッシュを箱ごと渡しておき、ゴミ箱も足元へ寄せてやる。なんて優しく慈悲深い私よ。
「あの時の私は、なんで嫌われたのか、冷たくされたかなんて分かんなかった」
「でも、アンタと別れたくなかったし、離れたくなかったから必死だったよ、マジで」
「私なりに色々考えて、アンタに尽くそうとして、一緒にいれるように努めたつもり」
「まあ、遅かれ早かれ別れてたんだろうし、早く済んで良かったんだろうけど」
嗚咽を漏らしていようが、涙や鼻水を拭っていようが、私は構わず畳みかける。
コイツが被害者側だったからと、じゃあ自分がされた事を許せるか? っていうと、答えはノーだ。積み上げてきた信頼や親愛を崩したのはコイツなんだ。私じゃない。
「わっ、私だって! 騙されてぇっ、え”っ、色々不安になっでぇ!! 裏切られたって思っだんだもん!」
立て続けに責めてたら我慢できなかったのだろうか。
キッとこちらを睨みつけ、涙をこぼしながらアイツは反論してきた。
おいおい逆ギレか? あぁ、イライラさせんなよ、生理にゃまだ早いぜ。
「だからさ、話をしようってなんないの? そこで」
「しようと思ったよぉ!! でもさ、あの頃はほのちゃん、穂乃花だって仕事で忙しい時でぇっ! 私だって寂しかった! なのにっ、他の子と遊ぶ余裕はあるのかって! ムカついて!」
「なるほどね。でもね、私からも話をする時間が取れないかって何度も聞いたよね? それに対して、アンタはなんて返した?」
「…………」
「今無理、だとか友達と電話するだの、遊びに行くからあとでとか、そんな事言って話し合いにならなかったじゃん。それでも私が一方的に悪いってか、あぁ?」
「ごめんっ……なざい」
あっという間に意気消沈。
昔から喧嘩する事はあったけど、あの時の力関係は間違いなくコイツが上で、私は下だった。だから、いつも最後に謝るのは私で、仲直りをしてもらう立場だったんだけどな。
浮気や離婚、その他諸々で傷心中だってのはあるんだろうけど、こんなにも弱くなったのかコイツ。
「最後だし、この際言っておくけど、私にもう連絡しようとしないでほしい。実家にも手紙だとか送らないでね」
「……」
「アンタがこの先再婚しようが子供作ろうがアンタの勝手だけど、私に連絡は不要だから」
「…………やだ」
「私はもう、アンタと関わらない。優しくなんてできない。仲直りなんて絶対お断り。それじゃ、もう行くから。バイバイ」
「やだっ!!」
席を立つ私にドッと衝撃。そのまま横に倒れる。
アイツが私にタックルしてきた、わけじゃなくて、抱き着いてきたようだ。
あぶねぇ、ソファーだったからいいものの、床とか壁に頭ぶつけたらどうすんの。
「最後なんてやだ」
「そう言われても」
「捨てないでよ、ほのちゃん」
「前提が間違ってるよ。私を捨てたのは亜紗、アンタだから」
「お願い、許してよ。私、尽くすから。好きになってもらえるように頑張るから」
マジでコイツは……いい加減にしてほしい。
気安く触れるな、私の恋心に。燻らせるなよ、私の未練を。
「友達に、戻ってください」
「嫌です」
「私の事、好きにしていいから。また色々しようよ。こんな事言うのアレだけど、私とほのちゃんって身体の相性絶対良かったよ」
「…………」
咄嗟に反論も拒否もできなかった。
セフレか、セフレ……。
「私、いつ求められてもオッケーだよ?」
「もし、私が他の人とエッチしたの気にしてるなら、ほらテリーヌの船、だっけ? 人の細胞は時間と一緒に入れ替わっていくとかいう……私の細胞もほとんど別物だからセーフだよ?」
テリーヌじゃなくて、テセウスの船だろ。馬鹿がよぉ……。
そりゃ、一カ月半もすれば皮膚や粘膜は入れ替わるだろうけど、そういう問題じゃないっていうか……。
クソみたいな独占欲なんだろうけど、私以外の、それも男で使用済みの身体を触りたくないって思ってしまう。
この思考回路は男寄りだって友人に言われたっけな。
「アンタと友達になるのも嫌だけど」
「……っ」
「私の都合の良い時にセフレになるんだったら、相手してやってもいい」
「えっ?」
「アンタの顔と身体と性癖は捨てがたいから……私が溜まってる時に呼ばれたらすぐに来て、私が満足するまで相手して、飽きたらとっとと帰ってもらう。それでもいいなら、相手してやってもいいよ」
なんてクズな提案なんだ。
まあ、こんなん言われて受け入れるわけないから、これで話も終わりだろ。
コイツにどんだけ嫌われても今となっては問題もない。
「……ホントに? 相手してくれるの?」
「はぁっ? アンタ、ちゃんと聞いてた? セフレだよ? しかも完全に私都合。性欲処理の道具扱いだって言ってんだよ、内容分かってんの?」
「わ、分かってるよ。でも、それ受け入れたら、捨てないでくれるんでしょ? また、話したりしてくれるんでしょ? だったら、なるよ! なる!」
「ば、馬鹿じゃないの」
どんだけ追い詰められてたんだろう。
こんなふざけた提案、乗ってくるほどに精神がやられちまったのか。
一瞬、私の嗜虐心が萎んでしまったように思う。
なんで、今更私に縋る。そこまでしがみつく。嫌いなままでいさせてくれ、私にとっての敵であってくれ。
「アンタ、友達なんていくらでもいんじゃん。他のやつを頼ったらいいだろ」
「いない。全部いない。誰も信じらんない。ほのちゃんだけ」
「そのほのちゃんが、こんなクソみてぇな提案してんだろ」
「クソじゃない! 全然、クソじゃない!」
元から馬鹿だったけど、ここまで、まともな判断もできなくなっちまったのか。
やけっぱちのメンヘラ尻軽ビッチに成り下がっちまったのか?
「真剣な話、私は昔みたいに優しくなんてできない」
「いいよ」
「ひどい事とかいっぱい言うと思うけど?」
「されて当然だから」
「ばっかじゃないの、マジでアンタ」
「馬鹿だよ。ずっと馬鹿だった。ほのちゃんの事、信じる事もできない馬鹿だったよ」
「…………」
もういいや。
どうせ嫌われるつもりだったんだ。
コイツが二度と私の顔も見たくなくなるまで、徹底的に絞りつくして、散々に弄んでから捨ててやる。
私もお前も、いい加減お互いに解放されよう。
幼馴染みで元恋人同士だったという呪縛からさ。
「最後にもう一度確認だけど、私とアンタは今日からセフレでいいんだね?」
「うん、もちろん」
「私の言う事は絶対だし、逆らったらすぐに関係終了だから。それでもいいの?」
「いい。絶対言う事聞く。聞くよ、逆らわない」
「分かった。今日から私とアンタはセフレだから」
「うん……だったら、名前で呼んでほしい」
「はぁ……亜紗」
「うんっ! 穂乃花ちゃん!」
だから、そんな目で私を見ないで。