あんな奴を好きだった自分、ホント馬鹿じゃねぇ? 百合カップル? クソだよクソ! 過去に戻れたら絶対に選ばんわ!   作:Yunoko

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第6話 憎きコイツに心許してなるものか

 

「花咲さん、最近良い事あった?」

「えっ、どうして?」

 

 それは仕事している時の事。

 同僚の子から、突然尋ねられる。急になんだ。

 

「最近花咲さん機嫌良いっていうかさ、嬉しそうな顔してんなーって」

「そうなんだ」

「そうなんだ……って他人事~。あはは、なんかあった? 彼氏できた?」

「はは、そんなんいないよ」

 

 彼氏でも彼女でもなく、セフレだったらいるけど。

 そんな事言ったら、この人はどんな顔するんだろう。やっぱり引くかな。

 ましてや同性のセフレなんて分かったら、今後警戒されたり、噂を流されたりするかもしれない。

 

「時間ある時に身体動かしてるからかな。疲れてよく眠れるようになったし」

「へぇ~、ジムとか行ってるの? 私も行けるなら行きたくてさぁ」

「全然そんなんじゃないよ。ジムとか続けれる気しないし~」

 

 そんな健全とは程遠い事だよ。

 

 あの日、アイツとラブホへ行ってから、早くも3カ月が経過していた。

 現在では週に2、3回のペースでアイツと身体を交えている。

 全力で気持ち良さを追求してるせいか、まあ体力の消費が激しいものの、家に帰ったらよく休めているのは確かかもしんない。

 

 なんだったら、今夜も私はアイツに会いに行く。

 認めたくないけど、私はそれを待ち遠しく思っているらしい。

 

 あくまでセフレ。

 私とアイツの関係は、お互い……いや私がシたいと思った時、暇な時に会って性欲を発散させるだけの爛れた関係だ。それ以上にはなりえない。でも。

 

 退勤時間はあと数十分にもかかわらず、どこか心が浮ついてしまっているのだ。

 最初は久しぶりの行為にムラムラが抑えられないからだと思ってた。でも、それだけじゃない事を自覚させられつつある。

 絶対、そんな事をアイツには言わないけれど。

 

 

※ ※ ※

 

 

「……やっぱり、ほのちゃんとする時が一番気持ちいいなぁ」

「アンタ別れる時、男の方が気持ちいいって言ってただろ」

「あれはその、あの時はそんな気分だったけど、結局すぐ飽きて……単調だし、こっちが気持ちいいとかなんにも分かってないし……演技にすぐ騙されてるし、すぐ疲れて寝ちゃうし……」

 

 事後。

 ベッドで休む私に、コイツは舐めた事を抜かす。

 まったく、嫌な事をされた側ってのは結構覚えてんだぞ。迂闊な発言をすんじゃねぇ。

 あと歴代彼氏と私を比較すんな。もやっとするだろが。

 

 もっとも……今回も私は狂ったようにコイツを貪ってしまった。

 今コイツは全裸だが、上から下に至るまで私の跡でいっぱいだ。

 首回りとか目立つ箇所は避けるようにしたが、昂ってしまったらそんなん考えてらんない。

 

「アンタ、明日は外に出る用事とか大丈夫なん?」

「私は大丈夫だよ。ほのちゃんこそお仕事休みって言ってたけど、用事とかないの?」

「私もない。家に帰ったら寝るだけ」

「ふうん」

 

 何か言いたげだ。でもそれ以上は聞いてこない。

 

「どうする? ほのちゃんが良かったらだけど、私まだまだできるよ?」

「…………いや、いい。ちょっと疲れたわ」

「ほのちゃんも歳取ったねぇ。前はいつも朝までオールだったのに。私の方がダウンしてたのにぃ」

「うっさい」

 

 その気になれば、朝まで一晩中だって続けていられる。

 でも、コイツを求めれば求めるほど、私の中で満足感というのかな……昔付き合っていた頃のような胸が満たされるような気持ちになるのが怖い。

 

 恨みを晴らすより、性欲を満たす事を選ぶ私が何言っても説得力皆無だけど、コイツと昔のような関係に戻りたいと思うようになったら潮時だと思ってる。

 仲良くなって友達になったり、あるいは復縁して恋人になったとしたら。

 またどこかで裏切られるかもしれない。そうなったら、今度は耐えられない。

 だから、いつでも切って捨てれる今がベストの関係なんだ。

 そうすれば突然関係が終わったとしても、ただのセフレだったからと諦めもつくから。

 

「……アンタにしょんべんかけられすぎて身体が冷えたんだよ。風邪引いたらどうしてくれんだ、このお漏らし女がよぉ。だらしねぇ。膀胱鍛えとけ」

「しょ、しょんべんじゃねーし! ほのちゃん馬鹿だね! 潮っていうのはね、スチール腺だっけ? から出てくる女の愛液なんだよ! 男でいうところの精液みたいなもんだから! おしっこ違うし! ばーか、ばーか!」

「うわ精液かよ、ますますきったねぇ。んなもんばしゃばしゃかけんな変態が」

「ひっどぉ! 出させたのそっちなのに! このっ!」

 

 怒ったコイツに絡みつかれる。うっとうしい。べたべたする。

 あと、スチール腺じゃなくてスキーン腺だろ、馬鹿めが。私よりよっぽど経験豊富なんだから、お前の方が詳しくあるべきだろ。

 

「水分摂れや」

 

 買ってきた水を渡し、促す。

 あちこちから液体が出てるからな。脱水されても困る……っておいやめろ、口移しするな。

 昔はこういうのに喜んだ私だが、歳取って落ち着いた私には効かない。無駄だ。

 ちょ、おいっ。

 

「ぷはっ、はぁっ、ごほ……咽せるかと思った。お前、バカがよぉ」

「飲んじゃったねぇ、へへへぇ。ほのちゃんが脱水しないように助けてあげたんだぁ。やっさしぃー」

「おう、悪いのはこの陥没乳首かぁ? あぁん?」

「やん」

 

 でけぇ乳は健在で、乳輪はとても綺麗な色をしてる。羨ましい事だ。

 乳首が埋もれているのを本人は気にしているが、私などからすればエロさが増すので良い事でしかない。

 新しくできたホクロも良いっすね。

 とりあえず摘む。弄る。

 

「んん……やっぱりもう一回しとく?」

「しない。マジで冷えてきたからシャワーする」

「そっか、シャワーしながらするんだね」

「ちげぇよ」

 

 私を性欲モンスターか何かと間違えてんじゃねーのか? おぉ?

 まあ……一緒にシャワーしている内にまたまた小一時間ほどやってしまうのだが。

 私の中に自制心という言葉はないらしい。

 

「髪梳いて」

「うん。そこ座って」

 

 シャワーして髪の手入れなど諸々済ませ、私はベッドに腰掛けた。

 コイツは櫛を手に後ろに座る。

 

「触るね?」

「うん。触って」

 

 私は髪を触られるのが好きだ。

 撫でてもらうのはもちろん、櫛で梳いてもらったり、編んでもらうのも好きだ。

 もちろん誰でもいいわけじゃない。

 一部の人だけ。認めたくないけど、コイツの触り方がやっぱり一番ぞくぞくとする。

 ぶっちゃけ、触ってもらっているだけで私は気持ちよく眠れてしまう。

 

「あっ……ちょ、耳は触んな」

「えぇ~なんで?」

「噛む……なぁっ」

 

 慌ててコイツをベッドに引っ張り倒す。

 くそ、昔の調子を取り戻してんじゃねぇ。

 お前はセフレ、都合の良い時に使うための性処理の道具。

 恋人どころか友達未満なんだからな。

 

「ごめん、あんまりほのちゃんが可愛いから調子に乗っちゃって……」

「私、アンタに髪触ってもらってたら気持ちいいから、他は触らないで」

「気持ちいいの? じゃあ、ずっと触ってていい?」

「うん」

「じゃあ、髪梳くね。綺麗にしてるなぁ、ほのちゃん」

「…………」

 

 髪綺麗だねって、嫌味かコラ。

 アンタの方がずっとキューティクルじゃん、サッラサラじゃん、つやつやじゃんかよ。昔から明るい地毛でさ、長く伸ばしてて綺麗で憧れだった。

 私だってケアしてっからパサパサしてはないけど、それでもアンタには程遠い。

 なんだったら手入れ疲れるし、ドライヤーで乾かすにも時間掛かるから肩くらいまでカットしちまう有様。

 腹立つ。悔しい。寄越せ。やっぱいらん。

 

「ん!? おいっ」

「どひたの、おいひいよ?」

 

 コイツ、すぐ調子に乗って人の耳を舐めやがって。

 中まで舐めようとすんな。そんなところ綺麗な自信はないぞ。

 

「調子乗んな。おらっ、乳出せ。乳」

「はーいっ」

 

 差し出される乳を揉む。

 下乳持ち上げる。新しくできたホクロを眺めつつ弄ぶ。

 あらゆる液体がすぐ出てくるコイツは、汗だってよくかく。

 当然のように乳の下は汗ばんでて、谷間は汗の滴がよく見える。

 

「ばっちぃ。シャワーしたばっかなのによぉ」

「ひどい。ほのちゃん、もっと優しく触ってよ」

「黙れ陥没。隠れてないで表出てこいやオラ」

「ん……」

 

 ムカつく。

 付き合っていて、一番近かった私よりも時々会う友達を信じたコイツが。

 あんな裏切りをして、とことん私を追い詰めてきたコイツが。

 ひどい目に遭ったからと、頼れる先がいなくなってからのこのこと縋ってくるコイツが。

 仲直りが難しいからと、それでも誰かと繋がりたいからとセフレを提示してくるコイツが。

 

 何より、ここまで舐め腐った真似をされ、絶対に苦しめてやろうとまで思っていたのに絆されつつある私がムカついて仕方ない。

 

 こんなチョロイのか、私って。

 こんな簡単に許していけるものなのか、風化してしまうものなのか。

 こんな事ならあの時に手紙なんて無視して、コイツと出会わなければよかったのかもしれないと思ったり……まあ、もう遅いけれど。

 

「はぁ、本当に髪だけ触ってくれると助かる……」

「……ごめん、髪だけだね。なんかね、うなじとか耳とか見てたら舐めたくなっちゃって」

「アンタはホントに変態だな」

「ほのちゃんも大概だよ」

 

 言いながら私の髪を撫でて弄っている。

 あぁ、すっげぇ気持ちがいい。良い感じに眠くなってくる。このままずっと触っていてほしい。

 

「そうだ、ほのちゃん」

「あん?」

「今日誕生日……でしょ? 8月12日」

「あー……そういやそうだったっけ。そんな日もあったな」

 

 覚えてたのか、私の誕生日。

 まあ、私も私でコイツの誕生日が4月9日なのを忘れてなかったりする。

 別れるまでずっとお互いに祝ってきたんだ。簡単に忘れてやることもできない。

 

「これ、誕生日のプレゼントのつもり……」

 

 おずおずとバッグを持ってきて小箱を取り出し、私の手元に載せてくる。

 それはしっかりと包装され、可愛らしいリボンで結ばれていた。

 

「誕生日祝いを貰うような歳でもねぇし、関係でもないだろ」

「……そうかなぁ。いくつになっても、めでたい日だよ。ほのちゃんが産まれてきた記念日なんだし」

「頼んでもねぇのに1年に1回必ず来るし、そのたびに1歳ずつカウントされる嫌な日に決まってんだろ」

「またそんな事言って」

 

 そう言って呆れるコイツを尻目に、私は包装を開き、箱の中身を確認する。

 中にはさらに小箱が入ってて、形からアクセサリーボックスだと分かる。

 

「……これ、絶対安くないだろ。貰っていいのか?」

 

 それも開ければ、中には桃色の宝石が添えられたペンダント。

 なんて宝石だ。あんま詳しくないから分からん。

 

「もちろん。だってほのちゃんの誕生日祝いなんだもん。むしろ貰ってよ」

「…………ありがとさん。返してって言っても返さないよ」

「その方が嬉しいかな」

 

 くそ、殊勝な事言いやがって。

 簡単に絆されると思うなよ。そんなちょろい女じゃねぇぞ。

 でも、誕生日を覚えていてくれた事や、その日に合わせてプレゼントを用意してくれてた事を嬉しく思ってる自分がいてしまう。

 私が受け取るのを見て、あからさまにホッとするコイツを見て可愛く思ってしまった自分が憎らしい。

 ラブホへ行き帰りするだけの関係だっていうのに。

 

 

※ ※ ※

 

 

「…………たまには飯でも食べに行くか?」

「えっ」

「あ、嫌だったらいい。私がお腹空いたからってだけ」

「ちがっ、行くよ。行く! 行こう行こう! どこ行こうかっ!?」

 

 いつもだったら、やる事が済んだら私はコイツを地元まで送り届け、そこから自宅まで帰っていた。

 それがいつもの流れだった。

 

 でもこの日は、コイツと再会してから初めて、一緒に飯を食いに行った。

 全然知らん居酒屋に行き、適当にあれこれ注文して食べた。

 これまでまったく触れなかった近況を話し合った。

 お腹もいっぱいになり、眠くなってきたところで会計を済ませ……いや、それすらもコイツが、亜紗が支払うといって譲らず、払ってもらった。

 

「ほのちゃんが良ければだけど、今日はほのちゃんのところに行けたら嬉しいなぁ」

 

 車に乗り込み、いよいよ送り届けるかってところで亜紗がこんな事を言い出した。

 

「…………私の家か。こっから1時間くらい掛かるし、いっとくけど何にもないぞ?」

「ほのちゃんが住んでるところ見たいだけ……ううん、嘘。ほのちゃんともっと一緒にいたいだけ」

「今日はいつも以上にアンタ……亜紗に金使わせたしな……今日だけな」

「うん……ありがとう」

 

 しおらしい態度しやがって。絶対絆されんぞ。心なんて許すと思うなよ。

 どうせ道中は暗いし、道順なんて亜紗に覚えられっこないだろうと高を括り、私は自宅までコイツを乗せて帰るのであった。

 あぁ、私はなんてちょろくて、馬鹿な女なんだろう……。

 

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