転生者がTS魔法少女になって頑張る話。   作:メルヘン侍

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長くなりました。

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第四話 太陽は誰かに触れられない

 翌朝

 

「ノクスちゃーん!!朝ですよー!!」

 

 ばんばんばん、と景気よく扉が叩かれる。

 

 あなたは布団へ顔を埋めたまま、低く唸った。

 

「……うるさい……」

 

「起きてくださーい!」

 

「なんで毎朝そんな元気なんだよ……」

 

「太陽なので!」

 

「意味がわからん……」

 

 一方、ベッド横ではプリンが静かに告げる。

 

「現在時刻、午前六時十五分、ノクスの睡眠時間は不足傾向です。追加睡眠を推奨します」

 

「プリンだけが味方……」

 

「ですが、ステラは扉前待機を継続しています」

 

「裏切ったな?」

 

「事実共有です」

 

 容赦がない。

 

 仕方なく起きてステラのもとへと向かう。

 

「…………」

 

 あなたは、昨夜のベランダを思い出す。

 

 古い写真、イグニス。

 

 そして。

 

『……絶対に見つけるから』

 

 夜の中で呟いた、あの声。

 

「ノクスちゃん?」

 

「……ん?」

 

「ぼーっとしてる!」

 

「してない」

 

「してるよー!」

 

 ステラは笑いながら、あなたの肩を軽く叩いた。

 

「ほら!朝ごはん!」

 

「今日は焦がすなよ」

 

「今日は大丈夫ですー!」

 

「その言い方が一番不安なんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 結局。

 

「だから火力が強いって!」

 

「だって早く焼けるし!」

 

「炭になるんだよ!」

 

 朝食は半分以上あなたが作ることになった。

 

 キッチンで騒ぐステラ、横で冷静に分析するプリン。

 

「ステラの調理技能、依然として改善傾向なし」

 

「プリンちゃん厳しい!」

 

「事実です」

 

 あなたはため息を吐きながら味噌汁をよそう。

 

「なんでお前、戦闘はあんな上手いのに料理壊滅してるんだよ」

 

「戦闘と料理って別じゃない?」

 

「お前の料理、爆発するから近いだろ」

 

「ひどい!?」

 

 朝から騒がしいが、不思議と嫌じゃなかった。

 

 食卓につくと、ステラは嬉しそうに目を輝かせた。

 

「いただきます!」

 

「……いただきます」

 

 朝日が窓から差し込む。

 

 その光が、橙金の髪をきらきら照らしていた。

 

 ステラは本当に太陽みたいだった。

 

 笑っているだけで、周囲まで明るくなる。

 

 だからこそ。

 

「…………」

 

 昨夜の静かな横顔が、妙に頭から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を終えた後、あなたたちは再び育成機関へ向かっていた。

 

 街はまだ朝の空気が残っていて、人通りも少ない。

 

 その横を、ステラが楽しそうに歩いている。

 

「今日は絶対盛り上がるよー!」

 

「模擬戦?」

 

「うん!」

 

 ステラは笑う。

 

「候補生たち、ノクスちゃんのことかなり気に入ってるし!」

 

「なんでだよ……」

 

「だってかっこよかったもん。この前の大規模戦闘」

 

「…………」

 

 あの戦いを思い出し、あなたは少しだけ顔をしかめる。

 

 腕を失って、血まみれで、それでも殴り続けた戦い。

 

 正直、あまり思い出したいものではない。

 

 だが、ステラは軽く肩をすくめた。

 

「でも、ああいうの好きなんだよね」

 

「候補生たち」

 

「強くて、前へ出る魔法少女」

 

「……そうか」

 

「うん!かっこいいからね!」

 

 ステラは空を見上げる。

 

「憧れは、頑張る原動力になるからね!」

 

 その言葉は自然だった。

 

 誰かへ希望を向けることが、当たり前みたいに。

 

「……お前ってほんと人気者なんだな」

 

「ん?」

 

「候補生、皆お前のこと好きだろ」

 

「そりゃ先輩ですから!」

 

 ステラは胸を張る。

 

「あと、みんな可愛いから!全員名前覚えてるよ!」

 

「そこがすごいんだよ……」

 

 あなたが呆れると、ステラはけらけら笑った。

 

「忘れたら悲しいじゃん!」

 

 本当に、それだけなのだろう。

 

 打算も計算もなく、この子は誰かへ笑いかける。

 

 その自然さが、多分すごい。

 

 ……でも。

 

「…………」

 

 あなたはまた思い出す。

 

 夜風の中で、静かに写真を見つめていた姿を。

 

 笑いながら、照らしながら、その奥で何かを燃やし続けているみたいだった。

 

「ノクスちゃん?」

 

「……なんでもない」

 

「変なのー」

 

 ステラは首を傾げながらも、また笑った。

 

育成機関へ到着した瞬間。

 

「――ステラさん!!」

 

 今日も空気が爆発した。

 

「ノクスさんもいる!!」

 

「今日は模擬戦の日だー!!」

 

「絶対最前列取る!!」

 

 候補生たちが一斉に駆け寄ってくる。

 

 まだ幼い顔だけど、その目は真っ直ぐだった。

 

 憧れを見る目。

 

「おはよー!」

 

 ステラは満面の笑みで手を振る。

 

「今日も元気ー?」

 

「元気です!!」

 

「よしえらい!」

 

 その瞬間、場が明るくなる。

 

 候補生たちの表情が、一気に柔らかくなる。

 

 やっぱりステラがいるだけで、空気が変わる。

 

 一方。

 

「ノクスさん!」

 

「今日は腕千切れないですか!?」

 

「模擬戦で千切れたら問題だろ」

 

「ですよね!」

 

「でもノクスさんならやりそうって昨日みんなで話してました!」

 

「どういう評価だよ……」

 

 候補生たちがきゃっきゃと笑う。

 

 どうやら、前回の大規模戦闘の印象がだいぶ強く残っているらしい。

 

「ノクスさん、今日はちゃんと加減してくださいね!」

 

「施設壊したら怒られるから!」

 

「お前ら俺をなんだと思ってるんだ」

 

「暴れる人!」

 

「ピンクのゴリラ!」

 

「誰がだ!?」

 

 周囲がどっと笑った。

 

 横でステラが腹を抱えている。

 

「っ、あははは!!ピンクのゴリラは酷いって!!」

 

「笑うな」

 

「だってノクスちゃん、戦闘になるとちょっと野生なんだもん!」

 

「お前にだけは言われたくない」

 

「えー!?」

 

 候補生たちはそんな二人を見ながら楽しそうに盛り上がっている。

 

 前回より距離が近い。

 

 もう“有名な魔法少女”を見る空気だけじゃない。

 

 知っている相手へ話しかけるような、親しさがあった。

 

「ステラさん!」

 

 小さな候補生が裾を引っ張る。

 

「今日はどっちが勝つと思いますか!?」

 

「んー?」

 

 ステラは少し考えるふりをしてから、にっと笑った。

 

「もちろん私!」

 

「えー!!」

 

「ノクスさん負ける!?」

 

「でもノクスさんも強いよ!?」

 

 わーっと盛り上がる候補生たちに、あなたは小さくため息を吐いた。

 

「……朝から元気すぎるだろ」

 

「若さだねー!」

 

「お前も十分元気だろ」

 

「えへへ!」

 

 ステラはまるで悪びれず笑う。

 

 その笑顔を見ながらあなたはまた、昨日の夜を少しだけ思い出す。

 

 ベランダ、古い写真、“絶対に見つけるから”という小さな声。

 

 今のステラは、いつも通り太陽みたいに笑っている。

 

 でも、その奥で何かが燃え続けていることを、あなたはもう知ってしまっていた。

 

 だからこそ、その笑顔を見ていると少しだけ目が離せなくなる。

 

「ノクスちゃん?」

 

「……ん?」

 

「ぼーっとしてる!」

 

 ステラが不思議そうに顔を覗き込んでくる。

 

 近い、あなたは小さく視線を逸らした。

 

「別に」

 

「ほんとー?」

 

 じーっと見つめてくる橙色の瞳。

 

 その時。

 

「ステラさん!!」

 

「早く闘技場行きましょー!!」

 

 候補生たちが二人の手を引っ張った。

 

「わっ」

 

「おっと」

 

「今日は最前列で見るんだから!」

 

「ノクスさんも早く!」

 

 半ば強引に連れていかれながら、ステラが楽しそうに笑う。

 

「人気者だねぇ、ノクスちゃん!」

 

「そっちは慣れてるだろ」

 

「ノクスちゃんもそのうち慣れるよ!」

 

「慣れたくない……」

 

 そんなやり取りをしながら、あなたたちは育成機関の模擬戦闘場へ向かっていった。

 

 訓練場、広い人工フィールド、周囲には候補生と教官たち。

 

 その中央で、あなたとステラが向かい合っていた。

 

「じゃ、よろしくね」

 

 ステラは笑い、橙金の髪が揺れる。

 

 その手には、星型のメイス。

 

 一方、あなたは肩を回しながら小さく息を吐いた。

 

「……加減しろよ」

 

「ノクスちゃんこそー!」

 

 次の瞬間、空気が爆ぜてステラが消える。

 

「っ!?」

 

 反応した瞬間には、もう目の前。

 

 橙色の魔力を纏ったメイスが、真正面から振り下ろされていた。

 

 轟音、あなたは咄嗟に魔力を腕へ集中。

 

 真正面から受け止め、衝撃で床が砕けた。

 

「うわっ……!?」

 

 候補生たちが悲鳴を上げる。

 

 まだ開始一秒も経っていない。

 

「っ、重っ……!!」

 

「いきなり止める!?」

 

 ステラが笑う。

 

「やっぱ強いねノクスちゃん!!」

 

 そのまま回転、再び横薙ぎ。

 

 あなたは身体を沈めて回避、そのまま懐へ飛び込む。

 

 拳を振りぬく。

 

「甘ーい!」

 

 ステラは真正面からメイスを叩き込んだ。

 

 爆発と衝撃波、訓練場の床が吹き飛ぶ。

 

「え、えぇぇ……」

 

「模擬戦……だよね?」

 

 候補生たちが完全に引いていた。

 

 だが中央では、二人とも止まらない。

 

 あなたは瓦礫を蹴り飛ばし、一気に加速。

 

 ピンクの残光、猛獣のような踏み込み。

 

「っ!!」

 

 拳を振るい、ステラが笑う。

 

「いいねぇ!!」

 

 真正面から迎撃。

 

 橙金とピンクの魔力が激突した瞬間、空気そのものが震える。

 

 衝撃波が模擬戦フィールド全体を揺らし、防壁術式の表面へ幾重もの波紋が走る。

 

「うわぁっ!?」

 

「すごっ……!」

 

「防壁術式あってもこんなに揺れるの!?」

 

 観覧席の候補生たちが悲鳴混じりの歓声を上げた。

 

 中央では、あなたとステラが真正面から鍔迫り合っている。

 

 星型メイス、ピンクの拳。

 

 橙とピンクの光がぶつかり合い、火花みたいに魔力が弾け飛ぶ。

 

「っ、ノクスちゃん、ほんと力強いね!!」

 

「お前が真正面から来るからだろ!!」

 

 次の瞬間、ステラがにっと笑った。

 

「じゃ、これはどうかなっ!!」

 

 魔力爆発、至近距離でピンクの光が炸裂した。

 

「っ!?」

 

 あなたは咄嗟に腕で庇いながら後方へ跳ぶが、その着地点へ既にステラがいた。

 

「近接だけだと思ったー?」

 

「お前……っ!」

 

 メイスが振り下ろされる。

 

 あなたは地面を蹴って回避したが、衝撃だけでフィールドが砕けた。

 

 コンクリート片が舞い、候補生たちから歓声。

 

「うわぁぁ!!」

 

「ステラさんすご!!」

 

「でもノクスさんも避けた!!」

 

 ステラは止まらない。

 

 笑いながら、さらに踏み込む。

 

 豪快、強引。

 

 あなたは拳を握り直した。

 

「――っ!」

 

 踏み込み、ピンクの魔力が炸裂する。

 

 一瞬でステラの懐へ潜り込む。

 

「うわ、速っ!?」

 

 そのまま拳を振り抜いたが。

 

「甘いっ!」

 

 ステラが笑い、メイスの柄を使って軌道を逸らしそのまま肘打ち。

 

「っぐ!」

 

 鈍い衝撃であなたは吹き飛びかけるが、無理やり踏み止まる。

 

 そこへ追撃、橙色の魔力弾が雨みたいに降り注ぐ。

 

「うわっ、数多っ!?」

 

「軽め軽め!」

 

「絶対嘘だろ!!」

 

 あなたは地面を蹴った。

 

 加速し、魔力弾の隙間を縫いながら一気に突っ込む。

 

 候補生たちが息を呑む。

 

「突っ込んだ!?」

 

「避けないの!?」

 

 あなたは真正面から突破した。

 

 ピンクの魔力で弾を弾き飛ばし、そのままステラへ肉薄する。

 

 ステラは楽しそうだった。

 

「それそれぇ!!」

 

 メイスと拳がぶつかり、空気が爆ぜる。

 

 二人とも笑っていた。

 

 アーク相手じゃないし、命を削る戦いじゃない。

 

 それなのに、全力でぶつかれる。

 

 それが妙に楽しかった。

 

「ノクスちゃん!!」

 

「なんだよ!!」

 

「やっぱ強いねぇ!!」

 

「そっちこそ!!」

 

 ステラが空中へ飛び上がり、橙色の魔力が尾を引く。

 

 上空でメイスを大きく振りかぶる。

 

「じゃあ次――これ!!」

 

 魔力の収束に空気が軋み、候補生たちがざわついた。

 

「えっ、あれやるの!?」

 

「まずくない!?」

 

「防壁大丈夫!?」

 

 管理庁職員が青ざめる一方、あなたは笑っていた。

 

「……上等」

 

 ピンクの魔力が右腕へ集中する。

 

 地面が軋み、ステラが振り下ろした。

 

「せぇぇぇいっ!!」

 

 巨大な橙色の衝撃波。

 

 真正面から叩き潰す超火力。

 

 あなたは避けない。

 

「うぉぉぉっ!!」

 

 真正面から拳を叩き込んだ。

 

 衝突、爆音、視界が真っ白に染まる次の瞬間。

 

 ――ドゴォォォン!!!

 

 模擬戦場全体が揺れた。

 

「きゃああっ!?」

 

「防壁が!?」

 

「耐えてる耐えてる!!」

 

 土煙と爆風、その中心で。

 

「っはは!!」

 

「はっ……!」

 

 あなたとステラは、ほぼ同時に笑っていた。

 

 楽しいと、純粋にそう思う。

 

 するとステラが、少し嬉しそうに口を開く。

 

「なんかさ」

 

「ん?」

 

「こうやって本気で人と殴り合えるの、久しぶりかも」

 

「…………」

 

 あなたは少しだけ目を細めた。

 

 その言葉の奥に、ほんの少しだけ寂しさが混じった気がしたからだ。

 

 でも、ステラはすぐにいつもの笑顔へ戻る。

 

「だから嬉しい!」

 

 そう言って、再び踏み込んできた。

 

 眩しいくらいの笑顔で、ステラが一直線に突っ込んでくる。

 

 橙金の魔力を撒き散らしながら、星型メイスを片手で振り回すその姿は、本当に太陽みたいだった。

 

「まだまだいくよー!!」

 

「っ、元気すぎだろ!!」

 

 あなたは迎え撃つ。

 

 ピンクの魔力が爆ぜ、真正面から踏み込んだ。

 

 メイスと拳がぶつかるたびに、衝撃波が観覧席まで届く。

 

「うわぁ……」

 

「すごい……」

 

 候補生たちは完全に目を奪われていた。

 

 第三世代最強に、一気に名前が広がり始めた未登録の新鋭。

 

 その戦いは、彼女たちにとって“憧れ”そのものだった。

 

 一方フィールド中央、あなたはステラの猛攻を捌きながら少しずつ違和感を覚え始めていた。

 

 強い。

 

 やっぱり、かなり強いけど。

 

「――っ!」

 

 メイスが振り下ろされる。

 

 あなたは紙一重で回避したが、避けた先へもうステラがいる。

 

「捕まえたっ!」

 

「うおっ!?」

 

 肩を掴まれ、そのまま投げ飛ばされる。

 

 視界が反転し、あなたは空中で無理やり体勢を立て直し地面へ着地した。

 

 その瞬間、さっきまで自分がいた場所へメイスが叩き込まれる。

 

 地面が砕けた。

 

「危なっ!?」

 

「避けるねぇ!」

 

 ステラは楽しそうに笑っている。

 

 でも、その笑顔の奥にほんの少しだけ“熱”が見えた気がした。

 

 ベランダで見た横顔、イグニスの写真。

 

 胸の奥に、小さな違和感が残る。

 

 その明るい笑顔は、太陽みたいだ。

 

 でも、その奥でこの子はずっと何かを燃やし続けている。

 

「ノクスちゃん?」

 

「……っ」

 

 気づけば、少し反応が遅れていた。

 

 そこへ、ステラが一気に距離を詰める。

 

「よそ見だめー!!」

 

「しまっ――」

 

 メイスの柄が腹部へ突き刺さり、あなたは後方へ吹き飛ばされた。

 

「ぐっ……!!」

 

 地面を滑り、候補生たちが悲鳴を上げた。

 

「ノクスさん!?」

 

「っ、今の入った……!?」

 

 あなたは咳き込みながらも、口元を拭って立ち上がる。

 

 一方ステラは、少しだけ困った顔をした。

 

「あ、ごめん!ちょっと強かった!?」

 

「……いや」

 

 あなたは息を吐く。

 

 にやりと笑う。

 

「今のは良かった」

 

「え?」

 

「ちょっとムカついたから、本気で返す」

 

「――っ!」

 

 ステラの目が輝いた。

 

 次の瞬間、ピンクの魔力が爆発する。

 

 地面が砕けた。

 

「速――!?」

 

 ステラが反応する前に、あなたはもう目の前へいた。

 

 ステラが咄嗟にメイスで防御する。

 

 だが。

 

「っ、重――!?」

 

 そのまま押し切り、橙金の身体が吹き飛ぶ。

 

「ステラさん!?」

 

「うわぁっ!?」

 

 候補生たちが立ち上がる。

 

 しかしステラは、空中でくるりと回転し、綺麗に着地した。

 

 そして。

 

「――あはっ」

 

 楽しそうに笑う。

 

 その顔を見た瞬間、あなたもつられて笑ってしまった。

 

「なんだよそれ」

 

「いやぁ!」

 

 ステラはメイスを担ぎ直しながら笑う。

 

「やっぱノクスちゃん、最高!」

 

「急だな」

 

「だって、楽しいんだもん!大好き!」

 

 その声は、少しだけ嬉しそうだった。

 

 強すぎるから、眩しすぎるから。

 

 周囲はみんな、“魔法少女ステラ”を見る。

 

 でも今、あなたは真正面から殴り返してくる。

 

 遠慮なく、容赦なく。

 

 だからこそ、ステラは笑っていた。

 

「じゃあ――」

 

 橙色の魔力が渦を巻き、空気が熱を帯びる。

 

「次で最後ね!」

 

「っ、来い!」

 

 あなたも魔力を解放し、光が弾けた。

 

 二人が、同時に地面を蹴る。

 

 真正面から激突する、その瞬間だった。

 

「――へぇ」

 

 不意に、静かな声が響いた。

 

 ぞくり、と。

 

 空気が変わる。

 

 候補生たちが一斉に振り返った。

 

「……え?」

 

「うそ……」

 

 入口側、そこに立っていたのは。

 

 青い髪を揺らす、一人の魔法少女。

 

 静かな微笑。

 

 でも、その目だけは笑っていない。

 

「随分楽しそうですね」

 

 雨みたいに静かな声に、あなたは目を丸くした。

 

「……ルミナ?」

 

 ステラは数秒固まり、次の瞬間。

 

「あっ」

 

 なぜか、少しだけ冷や汗を流した。

 

 一方。

 

「……?」

 

 あなたは状況がよくわかっていなかった。

 

 ただ、候補生たちの空気が一瞬で変わったのだけは理解できる。

 

「ルミナさんだ……」

 

「関東の……」

 

「本物……」

 

 ざわめいて、空気が張る。

 

 ルミナは静かにフィールドへ視線を向けていた。

 

 その視線の先には、あなたとステラ。

 

 正確には、かなり近い距離で向かい合っているあなたたち。

 

 さっきまで全力で殴り合っていたせいで、距離感が近い。

 

 そして、二人とも少し笑っている。

 

「…………」

 

 ルミナの微笑みが深くなって、怖い。

 

 何故か少し怖かった。

 

「ル、ルミナちゃん!」

 

 先に声を上げたのはステラだった。

 

「お、おはよー!」

 

「はい、おはようございます」

 

 にこやかだが、笑顔が静かすぎる。

 

 ルミナはそのままゆっくり歩いてくる。

 

 こつ、こつ、と靴音が響くたびに、何故か候補生たちが道を開けていった。

 

 あなたは首を傾げる。

 

「なんで来たんだ?」

 

「ノクスに会いに来ました」

 

 即答だった。

 

「……いや、関東担当だろお前」

 

「休暇を取りました」

 

「行動力が怖い」

 

「あと」

 

 ルミナが、ちらりとステラを見る。

 

「プリンから、色々報告を受けていましたので」

 

「――っ」

 

 ステラの肩がびくっと跳ねる一方、プリンは平然としている。

 

「事実共有です」

 

「プリンちゃん!?!?」

 

 ステラが悲鳴を上げた。

 

 あなたは嫌な予感がした。

 

「……何を報告したんだ?」

 

「ステラへ膝枕を実施した件」

 

「公園で頭を撫で続けた件」

 

「耳元で褒め続けた件」

 

「待て待て待て」

 

 候補生たちがざわつく。

 

「膝枕!?」

 

「えっ!?」

 

「なにそれ!?」

 

 あなたは慌てて否定した。

 

「いや違っ、あれはそういうんじゃ――」

 

「へぇ」

 

 ルミナが微笑む。

 

 静かな笑顔、でも圧がある。

 

「ノクス」

 

「はい」

 

「随分と、楽しそうなことをしていますね?」

 

「なんで尋問みたいなんだよ……」

 

 一方ステラは、完全に気まずそうだった。

 

「いやー……あはは……」

 

「ステラ」

 

「はい!?」

 

 ルミナがにこりと笑う。

 

「後で詳しく聞かせてくださいね?」

 

「ひぇっ」

 

 候補生たちが完全に面白がっていた。

 

「なんか修羅場っぽい……」

 

「でもルミナさん綺麗……」

 

「静かなのに怖い……」

 

 あなたは深くため息を吐く。

 

「お前ら、変な勘違いするなよ」

 

「勘違いではありません」

 

 プリンが即答した。

 

「お前ほんと容赦ないな!?」

 

 一方、ルミナはフィールド中央へ視線を向ける。

 

 そして。

 

「なるほど」

 

 静かに呟いた。

 

「模擬戦だったんですね」

 

「ああ」

 

「候補生たちへ見せるための」

 

「そうですか」

 

 ルミナは数秒黙り、その後ふわりと青い魔力が足元へ広がった。

 

「でしたら」

 

 空気が冷え、湿度が上がる。

 

 まるで雨が降る直前みたいな感覚に、候補生たちが息を呑んだ。

 

「私も参加しても問題ありませんよね?」

 

「…………は?」

 

 あなたが固まる。

 

 一方ステラは、何故かちょっと楽しそうだった。

 

「あー……始まった」

 

「始まった?」

 

「ルミナちゃん、ノクスちゃん絡むと勢いすごいから!」

 

「純粋に、ノクスと手合わせしたいだけです」

 

「絶対嘘だ!」

 

「嘘ではありません」

 

 静かな声だが、青い魔力は既にかなり濃い。

 

 候補生たちがざわつく。

 

「えっ」

 

「ルミナさんもやるの!?」

 

「やば……」

 

「今日すごくない!?」

 

 管理庁職員たちも慌て始めていた。

 

「防壁術式足りるか!?」

 

「出力上げろ!!」

 

「なんで今日はこんな濃いメンバー集まってるんだ!?」

 

 一方、あなたは頭を抱えた。

 

「いや待て」

 

「なんです?」

 

「お前、絶対本気出すだろ」

 

「そんなことありません」

 

「顔が怖い」

 

 ルミナは微笑む。

 

「安心してください」

 

「ちゃんと“加減”はします」

 

 その“加減”が信用できない。

 

 一方ステラは、横でけらけら笑っていた。

 

「いやー、でも見たいかも!」

 

「ルミナちゃん対ノクスちゃん!」

 

「絶対派手だよねー!」

 

「他人事だと思って……」

 

 あなたが呆れていると、不意にルミナがあなたのすぐ近くまで歩いてきた。

 

「……ノクス」

 

「ん?」

 

 距離が近い。

 

 候補生たちがざわつく。

 

 そしてルミナは、あなたの右肩へそっと触れた。

 

「怪我」

 

「もう痛くないですか?」

 

「え?」

 

 静かな声だった。

 

 さっきまでの圧が、少しだけ薄い。

 

 あなたは瞬きをする。

 

「……ああ」

 

「プリンのおかげで」

 

「そうですか」

 

 ルミナは小さく息を吐く。

 

 安心したみたいに、その横顔を見た瞬間。

 

 あなたはふと思い出した。

 

 昨日、ステラを見て感じたこと。

 

 自分を雑に扱う戦い方を見て、胸がざわついた感覚。

 

 そして、いつも自分へ向けられていたルミナの言葉。

 

『無茶しないでください』

 

『ちゃんと帰ってきてください』

 

『寂しいです』

 

「…………」

 

 ああ、やっぱりこの子はずっと見ててくれたんだな。

 

 そんなことを考えていると、ルミナがふとあなたを見上げた。

 

「……何を考えているんです?」

 

「いや」

 

 あなたは少しだけ苦笑する。

 

「お前、やっぱり過保護なんだなって」

 

「――っ」

 

 一瞬だけ、ルミナの表情が止まった。

 

 ほんの少しだけ目を丸くして、次の瞬間すぅ、と目を細める。

 

「……今更ですか?」

 

「なんか、改めて実感してきた」

 

「遅いです」

 

 小さな呆れ声。

 

 でも、その口元は少しだけ嬉しそうだった。

 

 一方、後ろでは。

 

「うわぁ……」

 

「なんか空気違う……」

 

「距離近くない……?」

 

 候補生たちがざわざわしていた。

 

 そしてステラがぽつりと呟く。

 

「……これが正妻感」

 

「ステラ?」

 

「なんでもないでーす!」

 

 ステラはぶんぶん手を振って誤魔化した。

 

 一方、ルミナはじっとステラを見ている。

 

 静かに、にこやかに、でも何故か少し圧がある。

 

「……ステラ」

 

「はい?」

 

「ノクスへ変なことしていませんよね?」

 

「えっ」

 

 ステラが固まった。

 

「えっ、なんで私だけ!?」

 

「プリンからの報告内容的に、ノクスだけが原因とは思えなかったので」

 

「プリンちゃんんん!!」

 

 ステラが頭を抱える。

 

 一方プリンは平然としていた。

 

「事実共有です」

 

「もうやだこの子ぉ!!」

 

 候補生たちは完全に面白がっていた。

 

「仲良いなぁ……」

 

「なんか家族みたい」

 

「でもルミナさんちょっと怖い……」

 

 あなたは深いため息を吐く。

 

「お前ら、ほんと変な方向へ話進めるなよ……」

 

「では」

 

 ルミナが静かにフィールド中央へ歩き出し、青い髪が揺れる。

 

「模擬戦の続きをしましょう」

 

「……マジでやるのか」

 

「はい」

 

 即答、候補生たちから歓声が上がった。

 

「うわぁぁ!!」

 

「ルミナさんの戦闘見れるの!?」

 

「関東最強クラスだよ!?」

 

 管理庁側は悲鳴を上げていた。

 

「術式班急げ!!」

 

「出力もっと上げろ!!」

 

「防壁割れたら洒落にならん!!」

 

 一方、ステラはけらけら笑いながら観覧席側へ下がっていく。

 

「がんばれーノクスちゃーん!」

 

「完全に他人事だな……」

 

「いやぁ、楽しみだし!」

 

 そして、小さく付け加える。

 

「ルミナちゃん、絶対手加減しないから」

 

「やっぱりじゃねえか」

 

 ルミナは否定しなかった。

 

 ただ静かに、あなたへ視線を向ける。

 

「ノクス」

 

「ん?」

 

「準備は?」

 

「……いつでも」

 

 答えた瞬間だった。

 

 ぞわりと、空気が変わる。

 

 青い魔力が、静かに広がっていく。

 

 雨みたいだった。

 

 冷たく、静かで、でも圧倒的。

 

 候補生たちが息を呑む。

 

「綺麗……」

 

「すご……」

 

 ルミナは派手じゃない。

 

 ノクスやステラみたいに爆発的でもない。

 

 でも、空間そのものを支配するような魔力だった。

 

「始めます」

 

 次の瞬間、消えた。

 

「――っ!?」

 

 あなたは反射的に身体を捻る。

 

 直後、青い斬撃が頬を掠めた。

 

「速――!」

 

 後方、いつの間にかルミナが立っている。

 

 青い魔力で形成された細剣を片手に、静かに微笑んでいた。

 

「避けましたか」

 

「今の、開幕で撃つ速度じゃないだろ……!」

 

「ノクスなら避けると思っていましたので」

 

 さらっと言う。

 

 あなたは地面を蹴り、ピンクの魔力が爆発する。

 

 一気に加速し、一直線に距離を詰める。

 

 だが。

 

「遅いです」

 

 雨粒みたいな魔力弾が展開された。

 

「うわっ!?」

 

 数が多く、一発一発の軌道が妙に正確だ。

 

 あなたは無理やり拳で弾き飛ばしながら突破する。

 

 その隙に、ルミナが横へ流れる。

 

 滑るみたいな動き。

 

 静かで、綺麗で、無駄がない。

 

 ステラとは真逆だった。

 

「っ!」

 

 あなたは踏み込み、そのまま拳を振り抜く。

 

 ルミナは細剣で受け流し、衝撃。

 

 青い魔力が霧みたいに広がるが、その瞬間にはもうルミナが消えている。

 

「またっ!?」

 

「後ろです」

 

 直後、背中へ衝撃。

 

「ぐっ……!」

 

 あなたは吹き飛ばされ、候補生たちが歓声を上げた。

 

「すごっ!?」

 

「見えなかった!!」

 

「ルミナさん速すぎる!!」

 

 あなたは着地しながら舌打ちする。

 

「めちゃくちゃやりづらいなお前……!」

 

「真正面から殴り合うステラがおかしいんです」

 

「それはそう」

 

 観覧席でステラが元気よく頷いていた。

 

「えへへ!」

 

「褒めてねえよ」

 

 一方、ルミナは静かにあなたを見つめる。

 

「……ですが」

 

「ん?」

 

「ノクスは、そちらの方が好きですよね」

 

「……は?」

 

「単純で、真っ直ぐな戦い」

 

 静かな声だが、その視線は妙に鋭かった。

 

 あなたは少しだけ言葉に詰まる。

 

 すると観覧席から、ステラが笑いながら叫んだ。

 

「ルミナちゃん嫉妬してるー?」

 

 一瞬、空気が止まった。

 

「…………」

 

 ルミナが、ゆっくりステラを見る。

 

 静かに微笑む。

 

 怖い。

 

「していません」

 

「えーほんとー?」

 

「はい」

 

 即答。

 

 青い魔力の密度が、ほんの少しだけ上がった。

 

 管理庁職員が青ざめる。

 

「ちょ、出力上がってない!?」

 

「防壁術式また揺れてる!!」

 

 あなたは頭を抱えた。

 

「ステラ、お前煽るな」

 

「だって面白くて!」

 

「後で覚えていてくださいね、ステラ」

 

「ひぇっ」

 

 ステラが引きつる。

 

 その瞬間、ルミナが再び消えた。

 

「っ!」

 

 今度は真正面から、青い閃光。

 

 あなたは咄嗟に拳で迎撃。

 

 しかしルミナは止まらない。

 

 細剣による高速連撃、雨みたいに静かででも容赦がない。

 

「っ、速……!」

 

「ノクス」

 

 ルミナの声が近い。

 

「最近、また少し無茶が増えています」

 

「戦いながら説教すんな!」

 

「ステラへ膝枕している場合ではありません」

 

「なんでそこ引っ張るんだよ!?」

 

 候補生たちが爆笑した。

 

「膝枕めっちゃ擦られてる!」

 

「ノクスさんかわいそう!」

 

 一方、ルミナは真顔だった。

 

「あと」

 

「まだあるのかよ」

 

「怪我したまま無理をする癖、直してください」

 

「…………」

 

 あなたは一瞬だけ黙る。

 

 そして、少しだけ笑った。

 

「……お前ほんと、そういうとこだよな」

 

「?」

 

「いや」

 

 拳を握り直す。

 

 ピンクの魔力が弾けた。

 

「ちゃんと心配してくれてんだなって、嬉しい」

 

 一瞬だけ、ルミナの目が丸くなる。

 

 ほんの少しだけ、動きが止まった。

 

 その隙を、あなたは見逃さなかった。

 

「っ!」

 

 踏み込み、一撃入れる。

 

「――っ!?」

 

 今度はルミナが吹き飛ばされる番だった。

 

「――っ!?」

 

 今度はルミナが吹き飛ばされる番だった。

 

 青い魔力が霧みたいに散り、候補生たちがどよめいた。

 

「入った!?」

 

「ノクスさん当てた!!」

 

「うそ、ルミナさんに!?」

 

 だが、ルミナは空中で静かに体勢を立て直した。

 

 ふわりと、雨粒が落ちるみたいに着地する。

 

「……今のは、少し驚きました」

 

 ルミナが静かに言う。

 

 その頬には、うっすら赤い線が入っていた。

 

 あなたの拳が掠めた痕。

 

 候補生たちがざわつく。

 

「ルミナさんに傷……!?」

 

「え、すご……」

 

 一方、あなたは肩を回しながら息を吐く。

 

「お前、一瞬止まっただろ」

 

「…………」

 

「図星か」

 

 すると、ルミナが小さく目を細めた。

 

「……ノクス」

 

「なんだよ」

 

「そういうことを戦闘中に言うの、ずるいです」

 

「は?」

 

 意味がわからない。

 

 一方、観覧席のステラは何故か「あー……」みたいな顔をしていた。

 

「ノクスちゃん、それ多分無自覚だよねぇ……」

 

「なんの話だ?」

 

「うわぁ、この人ほんと無自覚……」

 

 プリンが静かに補足する。

 

「ノクスは好意的言動を無意識に高火力化する傾向があります」

 

「お前最近ほんとなんなんだ」

 

 候補生たちは完全に盛り上がっていた。

 

「なんか模擬戦なのに恋愛漫画みたい!」

 

「でも次来る!!」

 

 その瞬間、空気が変わった。

 

 ルミナの周囲に、青い霧が広がる。

 

 温度が下がる、湿度が上がる。

 

 候補生たちが息を呑んだ。

 

「わ……」

 

「綺麗……」

 

 雨だった。

 

 静かな魔力が、フィールド全体を覆っていく。

 

 あなたは眉をひそめる。

 

「……広域制圧か」

 

「はい」

 

 ルミナは細剣を構える。

 

「少し、本気を出します」

 

「絶対“少し”じゃないだろ」

 

 返した瞬間、視界が霞む。

 

「っ!?」

 

 青い霧。

 

 視認阻害で、気配が消える。

 

 どこだ。

 

 右。

 

 違う。

 

 後ろ――!

 

「そこっ!!」

 

 あなたは反射的に拳を振るう。

 

 だが、空振り。

 

「惜しいです」

 

 耳元。

 

「っ!?」

 

 斬撃。

 

 あなたは咄嗟に身体を逸らした。

 

 頬が切れる。

 

 浅い、でも速い。

 

「うわぁ……」

 

「ルミナさん見えない……」

 

「怖……」

 

 観覧席がざわつく。

 

 一方ステラは、妙に楽しそうだった。

 

「おー、ルミナちゃん本気だ!」

 

「他人事だと思って……!」

 

 あなたは舌打ちしながら地面を蹴る。

 

 だが、霧が邪魔だ。

 

 視界も感覚も鈍る。

 

 その中で、ルミナだけが自由に動いている。

 

 静かに、滑るように。

 

 まるで雨そのものみたいに。

 

「ノクス」

 

 声。

 

 左。

 

「うおっ!?」

 

 しかし次の瞬間には、もう別方向。

 

 速くて厄介だ。

 

 真正面から叩き潰してくるステラとは真逆。

 

 でも。

 

「……っ」

 

 あなたは笑った。

 

 やっぱり強い相手との戦いは、純粋に楽しかった。

 

「ノクス?」

 

 ルミナが一瞬だけ目を細める。

 

「なんで笑ってるんですか」

 

「いや」

 

 あなたは拳を握る。

 

 ピンクの魔力が弾けた。

 

「お前、ほんと強くなったなって」

 

「――っ」

 

 一瞬、またルミナの呼吸が乱れた。

 

 候補生たちがざわつく。

 

「えっ」

 

「今ルミナさん止まった?」

 

 ステラが頭を抱えた。

 

「あーもう!ノクスちゃんそれだって!!」

 

「だからなんだよ!?」

 

 あなたは本気でわかっていない。

 

 一方ルミナは。

 

「…………」

 

 数秒黙ったあと、静かに顔を逸らした。

 

「……本当に、ずるいです」

 

「???」

 

 意味がわからない。

 

 だが次の瞬間、ルミナの魔力がさらに膨れ上がった。

 

「ちょっと待て」

 

「知りません」

 

「絶対怒ってるだろ!?」

 

「怒っていません」

 

 即答、青い霧はどんどん濃くなっていく。

 

 管理庁職員が半泣きだった。

 

「防壁術式限界近いです!!」

 

「なんで模擬戦でここまでなるんだよ!!」

 

 候補生たちは逆に大興奮していた。

 

「すごいすごい!!」

 

「これ無料で見ていいの!?」

 

「勉強になる!!」

 

「ならないだろこれ!?」

 

 あなたがツッコんだ瞬間、ルミナが消えた。

 

「――っ!」

 

 今度は真上、雨みたいな斬撃が降る。

 

 あなたは拳を振り上げ、ピンクの魔力が爆発する。

 

 二つの光が激突した。

 

 防壁術式が悲鳴を上げる。

 

 その中心で、あなたとルミナは真正面から視線をぶつけ合っていた。

 

 静かな青、荒々しい桃、正反対の色。

 

 でも、不思議と噛み合っていた。

 

 そして、観覧席のステラはその光景を見ながら。

 

「…………」

 

 ほんの少しだけ、静かな顔をしていた。

 

 ピンクと青の魔力が、訓練場の中央で激突する。

 

 ノクスの拳を、ルミナの霧刃が受け流す。

 

 青い霧が視界を奪い、次の瞬間には桃色の閃光がそれを真正面から吹き飛ばした。

 

「っ……!」

 

 候補生たちが息を呑む。

 

 凄まじい。

 

 さっきの自分との模擬戦ですら十分に激しかった。

 

 でも、今のノクスは違う。

 

 明らかに出力が上がっている。

 

 ルミナも同じだった。

 

 静かで、冷静で、それでも一歩も引かない。

 

 お互いを知り尽くしているみたいな勝負。

 

 呼吸、間合い、視線、何も言わなくても成立してしまう演武のような戦闘。

 

 それを見ながら、ステラは小さく息を吐いた。

 

「……強いなぁ」

 

 ぽつりと漏れる。

 

 隣では候補生たちが大騒ぎだった。

 

「速すぎて見えない!」

 

「今どっち勝ってるの!?」

 

「ルミナさん怖いけど綺麗……」

 

「ノクスさん真正面から行きすぎじゃない!?」

 

 でもステラは、その声を少し遠くに感じていた。

 

 視線はずっと、訓練場の中央へ向いている。

 

 ピンクの魔力、真正面から叩き壊して進む戦い方。

 

 傷つくことを恐れない踏み込み。

 

 それなのに。

 

『お前、もうちょい自分大事にしろよ』

 

 昨日の声が、ふと蘇る。

 

『女の子なんだから、肌は大事にしろ』

 

「…………」

 

 ステラは、少しだけ眉を寄せた。

 

 おかしい、何度考えてもおかしい。

 

 普通、魔法少女相手にはそんなこと言わない。

 

 傷だらけで戦うのが当たり前の世界で。

 

 身体を壊しても笑うのが“正しい”世界で。

 

 あんな風に、本気で怒る人なんて。

 

「…………」

 

 訓練場で、ルミナの霧槍にノクスが吹き飛ばされる。

 

 しかし次の瞬間には、魔力を爆発させながら再突撃していた。

 

 その姿に、ステラは少しだけ目を細める。

 

 ――似てる。

 

 また、そう思った。

 

 イグニスに。

 

 真正面から突っ込んでいくところ、笑いながら無茶をするところ、誰かを放っておけないところ。

 

 素で、自分より誰かを優先するところ。

 

 だから最初は、懐かしかっただけなのだ。

 

 イグニスの面影を重ねていた。

 

 もう消えた炎を、失った光を、ノクスの中に、少し見つけてしまっただけ。

 

 ……そう思っていた。

 

 でも。

 

「――っ!」

 

 訓練場で、ルミナの霧刃がノクスの頬を掠める。

 

 赤い線から、血が染み出る。

 

 その瞬間、ステラの心臓がどくりと鳴った。

 

「…………え」

 

 今、なんで。

 

 胸が、嫌な感じにざわついた?

 

 別に大した傷じゃない。

 

 ノクスなら、あれくらい問題ない。

 

 実際、本人も気にせず笑っている。

 

 なのに、なんで自分は。

 

 今、安心したのだろう?

 

 次の瞬間、ノクスが地面を蹴る。

 

 桃色の魔力が爆発し、真正面からルミナへ突っ込んでいく。

 

 まるで、光みたいに真っ直ぐで、迷いがない。

 

 その姿を見た瞬間、ステラの胸の奥が熱を持った。

 

「…………」

 

 理解してしまう。

 

 ああ、これは違う。

 

 イグニスを見てるだけじゃない。

 

 だって今、自分は“ノクス”を見ていた。

 

 桃色の光を。

 

 ぶっきらぼうなくせに優しいところを。

 

 変な距離感で踏み込んでくるところを。

 

 怒るところを。

 

 褒めるところを。

 

 撫でるところを。

 

 膝枕をするところを。

 

「~~~~っ」

 

 ステラは思わず顔を押さえた。

 

 熱い、なんか熱い。

 

「ステラさん?」

 

 隣の候補生が不思議そうに見上げてくる。

 

「顔赤いですけど大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫!!」

 

 反射で返す。

 

 だが声が少し裏返った。

 

 候補生はきょとんとしていた。

 

 一方、ステラの頭の中は大混乱だった。

 

 いや待って待って待って、おかしいよ!

 

 だって相手ノクスちゃんだよ?

 

 距離感バグってるし。

 

 急に膝枕するし。

 

 女の子扱いしてくるし。

 

 無自覚で人を赤くさせるし。

 

 しかも本人全然わかってないし。

 

 危険人物では?

 

「…………」

 

 でも。

 

 昨日“ちゃんと治療受けろよ”って言われた時。

 

 嬉しいなって思った。

 

 今日、戦ってる姿を見た時。

 

 格好いいって思った。

 

 さっき傷ついた瞬間。

 

 怖いなって思った。

 

「…………っ」

 

 そこまで考えて、ステラは完全に理解してしまった。

 

「うそでしょ……」

 

 小さく漏れた声に、候補生たちは試合に夢中で気づかない。

 

 ステラだけが、一人で頭を抱えていた。

 

 ステラはノクスに、惹かれている。

 

 しかも結構、本気で。

 

「えっ、いや、なんで!?」

 

 思わず小声で漏れる。

 

 だって、この前会ったばっかりみたいなものだ。

 

 なのに、もう視線を追っている。

 

 笑うと安心する。

 

 怪我すると嫌だ。

 

 ルミナと並んでると、少しだけもやっとする。

 

「…………」

 

 そこで、不意に脳裏へ昨日のプリンの声が蘇った。

 

『ルミナが危機感を抱く理由を理解しました』

 

「…………あっ」

 

 ステラの顔が、一気に赤くなる。

 

「そ、そういうこと!?」

 

 理解してしまった。

 

 あれ、ただの冗談じゃなかった。

 

 ルミナ、たぶん本気で警戒してる。

 

 この娘は、無自覚で距離を詰めてくる。

 

 しかも優しいし、危険だ。

 

 かなり危険だ。

 

「ステラさんほんと大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫だよ!?」

 

 全然大丈夫じゃなかった。

 

 その時だった、訓練場でピンクの魔力が大きく爆発する。

 

 ノクスとルミナが、真正面から衝突した。

 

 閃光が空を裂く。

 

 その中心で、ノクスが笑っていた。

 

 楽しそうに、本気で、心の底から。

 

 その顔を見た瞬間、ステラの胸が強く鳴った。

 

「…………っ」

 

 駄目だ。

 

 これ、もう誤魔化せない。

 

 イグニスの代わりなんかじゃない。

 

 懐かしさだけじゃない。

 

 ちゃんと、ノクス自身に惹かれ始めている。

 

 それを理解してしまった瞬間、ステラはほんの少しだけ困ったみたいに笑った。

 

「……参ったなぁ」

 

 太陽みたいな少女が、誰にも見えない場所で小さく頬を赤く染めていた。

 

 胸がうるさい。

 

 模擬戦場では、まだ二人の魔力がぶつかっている。

 

 候補生たちの歓声、衝撃波、熱気。

 

 でも、ステラの意識は少しだけ上滑りしていた。

 

 視線が勝手にノクスを追う。

 

 ぼろぼろなのに、真正面からルミナへ突っ込んで、楽しそうに笑ってる。

 

「…………」

 

 あー、もう、これ、かなりまずいかも。

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

『――模擬戦終了!!』

 

 管理官の声が響く。

 

 結界出力が限界らしく、候補生たちが一斉に歓声を上げた。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「すごかった!!」

 

「最後見えなかった!!」

 

「ノクスさんやばい!!」

 

「ルミナさん綺麗だった!!」

 

 訓練場が一気に騒がしくなる。

 

 一方、中央では。

 

「っはぁ……」

 

「……少し熱くなりましたね」

 

 ノクスとルミナが肩で息をしていた。

 

 ぼろぼろなのに、どこか満足そう。

 

 その姿を見て。

 

「…………」

 

 また胸が鳴る。

 

 すると。

 

「ステラさん!!」

 

「どっちが勝ったんですか!?」

 

 候補生たちが一斉に集まってきた。

 

「えぇー?」

 

 ステラは慌てていつもの笑顔へ戻る。

 

「難しいなぁ!」

 

「ほぼ引き分けじゃない?」

 

「えー!」

 

「でも最後ルミナさん押してませんでした!?」

 

「いやノクスさん火力やばかった!」

 

 きゃあきゃあ騒ぐ候補生たちに、ステラは困ったように笑いながらちら、と模擬戦場を見る。

 

 並んで立つ二人。

 

「…………」

 

 なんか、距離近いな。

 

 胸が苦しくなって少し俯く。

 

 その時。

 

「ステラ」

 

 静かな声に振り向くと、ルミナがこちらへ歩いてきていた。

 

 汗で少し乱れた青髪。

 

 でも相変わらず綺麗で、候補生たちがざわつく。

 

「ルミナさんだ……」

 

「近くで見るとすごい……」

 

 ルミナは軽く候補生たちへ会釈してから、ステラの隣へ立った。

 

「お疲れ様です」

 

「おつかれー!」

 

 ステラは笑う。

 

 だが次の瞬間、ルミナが、ふっと目を細めた。

 

「……随分、熱心に見ていましたね」

 

「へ?」

 

「ノクスを」

 

「ぶっ」

 

 ステラが盛大にむせた。

 

「な、なに急に!?」

 

 候補生たちがざわつく。

 

「えっ!?」

 

「ステラさん!?」

 

「違う違う!!」

 

 ステラが慌てる。

 

 一方ルミナは、どこか楽しそうだった。

 

「戦闘中、ずっと視線で追っていたでしょう?」

 

「そ、そんなこと……!」

 

「ありました」

 

 即答。

 

「特にノクスが笑った時」

 

「っ!!」

 

 図星だった。

 

 ステラの顔が一気に熱くなる。

 

 ルミナはそれを見ながら、小さく笑う。

 

「わかりやすいですね」

 

「うぅぅ……」

 

 ステラが顔を押さえる。

 

 候補生たちは完全に「?」である。

 

「どういうこと……?」

 

「わかんない……」

 

 一方ルミナは、静かにステラへ近づいた。

 

「ちなみに」

 

「ノクス、ステラと戦った後の方が動きが良かったですよ」

 

「……え?」

 

「荒さは増えていましたが、踏み込みが鋭くなっていました」

 

 ルミナは淡々と続ける。

 

「多分、かなり影響を受けています」

 

「っ」

 

 ステラの胸がまた跳ねた。

 

 ノクスが、自分の影響を受けている。

 

 その事実が、妙に嬉しい。

 

 そして同時に、ルミナはそれをちゃんと見抜いている。

 

「……ルミナちゃんってさぁ」

 

「はい?」

 

「意外とそういうの言ってくるんだ……」

 

 ステラがじとっと見ると、ルミナは小さく首を傾げた。

 

「事実ですが?」

 

「そういうところー!」

 

 ステラがわーっと騒ぐ。

 

 一方ルミナは、少しだけ楽しそうだった。

 

 すると。

 

「おーい、ステラ」

 

 向こうからノクスが歩いてくる。

 

 ぼろぼろだけど、本人はあまり気にしていない顔。

 

「ん?」

 

 ステラが反射的に振り向く。

 

 その瞬間、ルミナが小さく笑った。

 

「ほら」

 

「またすぐ反応する」

 

「っ!!」

 

 ステラが固まる。

 

「る、ルミナちゃん!?」

 

 完全に遊ばれていた。

 

 一方ノクスは何も知らず近づいてくる。

 

「なんか騒がしいな」

 

「な、なんでもない!!」

 

 ステラが勢いよく否定する。

 

 顔が赤い。

 

 ノクスは不思議そうに首を傾げた。

 

「……熱でもあるのか?」

 

「ないよ!?」

 

 即答。

 

 その横で、ルミナは静かに微笑んでいた。

 

 雨みたいに穏やかな顔で。

 

 でもその青い瞳は、少しだけ楽しそうに細められていた。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 その日の帰り道

 

 夕焼けが街を橙色に染めていた。

 

 管理庁中部支部を出た候補生たちは、最後まで「また来てください!」「次も模擬戦してください!」と騒いでいて。

 

 ステラはいつものように、全部へ笑って手を振っていた。

 

「はーい!またねー!」

 

「宿題ちゃんとやるんだよー!」

 

「はーい!!」

 

 元気な返事。

 

 小さな背中たちが遠ざかっていく。

 

 その光景を見送りながら、ステラはふぅ、と小さく息を吐いた。

 

「……人気者だな、お前」

 

 隣から、ノクスがぽつりと呟く。

 

「んー?」

 

 ステラは振り返って、けらけら笑った。

 

「でしょー?」

 

「自分で言うか普通」

 

「言う言う!」

 

 明るい声の、いつものステラ。

 

 でも。

 

「…………」

 

 胸の奥だけが、まだ少し落ち着かなかった。

 

 模擬戦の最後。

 

 ピンクの魔力を纏って、真正面からルミナとぶつかっていったノクス。

 

 ボロボロなのに、危なっかしいのに、誰より真っ直ぐ前へ出る姿。

 

 ――イグニスに似てる。

 

 最初は、本当にそれだけだと思っていた。

 

 懐かしくて、眩しくて、だから気になっていたのだと。

 

 でも。

 

「…………はぁ」

 

 もう、違う。

 

 ちゃんと気づいてしまった。

 

 ノクスだから、気になっている。

 

 ノクスだから、目で追ってしまう。

 

 ノクスだから。

 

 笑ってほしいとか、怪我してほしくないとか。

 

 そういうことを、思い始めている。

 

「ステラ?」

 

 不意に、隣から声。

 

「どうした?」

 

「へ?」

 

 顔を上げると、ノクスが少し不思議そうにこちらを見ていた。

 

「ぼーっとしてたぞ」

 

「え、あー!」

 

 ステラは慌てて笑顔を作る。

 

「なんでもないなんでもない!」

 

「疲れた?」

 

「それはちょっとあるかもー!」

 

「お前、途中からめちゃくちゃ笑ってただろ」

 

「営業スマイルです!」

 

「最低だな」

 

 ノクスが呆れた顔をする。

 

 その反応がなんだかおかしくて、ステラはまた笑ってしまった。

 

 一方、その少し後ろでルミナは静かに二人を見ていた。

 

「…………」

 

 無表情だが、プリンが小さく告げる。

 

「ルミナ、機嫌悪化傾向です」

 

「言わなくていいです」

 

「事実共有です」

 

 即答、ルミナは小さくため息を吐いてから前を歩くノクスを見る。

 

 そして。

 

「ノクス」

 

「ん?」

 

「今日の模擬戦、無茶しすぎです」

 

「えぇ……」

 

「最後、完全に被弾前提でしたよね?」

 

「いや、あれは流れで……」

 

「流れで命を投げないでください」

 

 静かな声でも、圧が強い。

 

 ノクスが少し視線を逸らす。

 

 一方、ステラはそれを見ながら楽しそうに笑っていた。

 

「ルミナちゃん、お母さんみたいー」

 

「……ステラ」

 

「はい?」

 

「あなたもです」

 

「えっ」

 

 ルミナが静かに微笑む。

 

「熱線へ真正面から突っ込むの、やめてくださいね?」

 

「うっ」

 

「ノクスがかなり心配していましたので」

 

「っ!?」

 

 ステラが固まった。

 

 数秒遅れて、じわじわ顔が赤くなる。

 

「えっ、いや、あれはその……」

 

 横でノクスが首を傾げる。

 

「いや普通に危なかっただろ」

 

「うわぁぁもう!!」

 

 ステラが顔を押さえた。

 

 ルミナはそれを見ながら、ふっと小さく笑う。

 

 ――なるほど。

 

 少しだけ、理解した。

 

 この太陽みたいな少女も、どうしてノクスへ惹かれてしまうのか。

 

 この子は、誰に対しても本当に真っ直ぐだから。

 

 魔法少女を、“普通の女の子”みたいに扱ってしまう。

 

 傷を心配して、無茶を怒って、平気で距離を詰めてくる。

 

 この世界では、おかしいくらいに。

 

「…………」

 

 ルミナは小さく息を吐いた。

 

 正直困る、かなり困る。

 

 ただでさえ無自覚で危険なのに、本人にその気がないのがもっと危険だ。

 

 しかも。

 

「ノクス」

 

「ん?」

 

「距離感は覚えてください」

 

「なんで?」

 

「なんでもです」

 

「???」

 

 本当にわかっていない顔。

 

 ルミナは頭を抱えたくなった。

 

 一方、ステラはそんな二人を見ながらまた少しだけ笑ってしまう。

 

 ――参ったなぁ。

 

 胸の奥が、やけにうるさい。

 

 夕焼けの空は、まるで自分の髪みたいな色をしていた。

 

 太陽は沈みかけている。

 

 でも。

 

 その熱は、まだ消えそうになかった。

誰が好き?

  • ノクス
  • ルミナ
  • ステラ
  • プリン
  • 秋葉
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