プリンが“魔法少女プリン”としてこの家へ戻ってきてから、数日が経っていた。
最初こそ大騒ぎだった。
人型になったプリン。
以前と変わらない距離感。
そして、あなたがその度に真っ赤になって限界を迎えるせいで、家の空気は毎日のように騒がしかった。
けれど、不思議とその生活にはすぐ慣れていった。
朝になればプリンが隣にいて。
ソファへ座れば自然と肩が触れて。
夜になると、いつの間にか同じ空間にいる。
そんな日常が、当たり前みたいになり始めていた。
少なくとも今は、アーク側の大きな動きもない。
短い平穏。
だからこそ、家の中には少し穏やかな時間が流れていた。
朝の光が、リビングへゆっくり差し込んでいる。
静かな空気。
テーブルの上には朝食。
ルミナは紅茶を飲んでいて、ステラはまだ半分眠そうな顔でソファへ沈んでいる。
あなたはぼんやりとテレビを眺めていた。
その時。
「ノクス」
静かな声が落ちる。
あなたが顔を上げると、プリンがこちらを見ていた。
白い髪。
透き通るような肌。
人形みたいに整った顔。
相変わらず慣れない。
しかも最近、普通に距離が近い。
心臓に悪い。
「……何?」
あなたが聞くと、プリンは静かに口を開いた。
「外出したいです」
「外出?」
「はい」
小さく頷く。
プリンからそういうことを言い出すのは珍しい。
あなたが少し目を瞬かせていると、プリンは続けた。
「プリンを食べに行きたいです」
「…………は?」
一瞬、意味が分からなかった。
「プリン?」
「はい」
「お前を?」
「違います」
即答だった。
ステラが吹き出しかける。
「待って、ちょっと面白い」
「いやだって紛らわしいだろ……」
あなたが頭を抱えると、プリンは不思議そうに首を傾げた。
「じゃあ後で行くか?」
あなたが何気なく言う。
すると。
「はい」
プリンが小さく頷く。
それから。
「ノクスと二人で」
空気が止まった。
「…………え?」
ステラが固まる。
ルミナも静かに顔を上げた。
あなたは数秒遅れて理解する。
「二人?」
「はい」
プリンは静かに頷いた。
「今回は、ノクスと二人がいいです」
あまりにも自然な声だった。
そこに照れも、躊躇いもない。
だから余計に破壊力が高い。
「…………」
ステラが完全に止まっていた。
ルミナも珍しく無言だった。
プリンはそんな二人を見て、小さく首を傾げる。
「何か問題がありますか?」
「「ある」」
声が綺麗に重なった。
あなたは反射的に顔を覆う。
無理。
朝から心臓がもたない。
ステラが勢いよく立ち上がる。
「待って待って待って!!」
「なんで急に二人きりなの!?」
「必要だからです」
プリンが即答する。
「ノクスが必要です」
「っ————」
あなたの思考が止まる。
ルミナが静かに目を細めた。
「……最近のプリン、強い」
「強いよぉ……」
ステラが崩れ落ちる。
「急に恋愛強者になってる……」
「違います」
プリンは静かに否定した。
「?」
「二人の方が良い気がしただけです」
その言葉で。
逆に、ルミナとステラの顔が引き攣る。
理由を理解していない。
でも本能だけで、“ノクスを独占したい”を選んでいる。
それが分かってしまった。
「無自覚だこの子……!」
ステラが頭を抱える。
ルミナは静かな顔のまま、小さく息を吐いた。
「……強敵」
「やめろよその空気……」
あなたが真っ赤な顔のまま呻く。
すると、プリンが静かにこちらを見た。
「ノクス」
「……な、何」
「嫌ですか?」
ほんの少しだけ、不安そうな声だった。
「二人は」
「っ……」
その聞き方はずるい。
あなたは数秒言葉に詰まって。
それから、小さく視線を逸らした。
「……嫌じゃない」
その瞬間。
プリンが、ほんの少しだけ目を細めた。
嬉しそうに見えてしまって。
あなたの顔は、さらに赤くなるのだった。
*
休日の街は、人が多かった。
駅前へ出た瞬間、ざわついた音が一気に押し寄せてくる。
話し声。
車の音。
店から流れる音楽。
甘い匂い。
あなたはその中を歩きながら、小さく隣を見る。
「…………」
やっぱり、まだ慣れない。
プリンが普通に隣を歩いている。
白い髪。
華奢な身体。
淡い色のワンピース。
魔法少女姿ほど幻想的ではないけれど、それでも十分目立つ。
というか、普通に可愛い。
しかも本人に自覚がない。
「ノクス」
「っ、な、何」
急に名前を呼ばれて肩が跳ねる。
プリンは静かな顔のままこちらを見ていた。
「先程から三回、こちらを見ています」
「見てない」
「見ています」
即答だった。
あなたは思わず視線を逸らす。
だって無理だ。
隣を歩いているだけで心臓がうるさい。
しかも今日は、二人きりだ。
それを意識すると余計に駄目だった。
「……人、多いな」
誤魔化すみたいに呟く。
プリンは周囲を見渡した。
「はい」
「以前より、音が近く感じます」
「音?」
「人間の声です」
プリンは静かに続ける。
「匂いも」
「温度も」
「以前より鮮明です」
その声は落ち着いていた。
でも、どこか少しだけ不思議そうにも聞こえる。
人型になってから、プリンは時々こういうことを言う。
以前より、世界を近く感じる、と。
「……疲れてないか?」
あなたが聞く。
プリンは小さく首を横へ振った。
「問題ありません」
それから。
ほんの少しだけ、こちらへ近づく。
「むしろ」
「ノクスが隣にいるので、落ち着いています」
「っ……」
またそれだ。
本人に自覚がないから余計に危険だった。
あなたが赤くなって視線を逸らしていると。
「あれ、可愛くない?」
近くを歩いていた女の子たちの声が聞こえた。
「やば、二人ともめっちゃ綺麗」
「仲良さそう〜」
「え、ああいう感じ好き……」
「っ————」
あなたの思考が止まる。
プリンは静かにそちらを見る。
「?」
本当に意味が分かっていない顔だった。
「ノクス」
「な、何」
「何を評価されたのでしょう」
「聞くな……!」
あなたが顔を覆う。
プリンは少しだけ考えるみたいに黙った。
「容姿でしょうか」
「たぶん……」
「ノクスも綺麗と言われていました」
「そこ拾わなくていいから……!」
プリンは小さく首を傾げる。
その仕草すら可愛いのが、本当にずるい。
あなたが限界になりかけていると、不意に。
プリンの指先が、そっとあなたの袖へ触れた。
「……プリン?」
「人が多いので」
静かな声。
「はぐれないようにします」
そう言いながら、プリンは当然みたいにあなたの服を掴む。
距離が近い。
しかも人混みのせいで、自然と肩まで触れる。
あなたの顔がまた熱くなる。
「ノクス」
「……だから何」
「心拍数が上がっています」
「お前のせいだよ……!」
プリンは数秒だけ黙った。
それから、小さく瞬きをする。
「……そうですか」
その声が少しだけ柔らかく聞こえて。
あなたは余計に困るのだった。
*
駅前から少し離れた場所に、その店はあった。
ガラス張りの、小さな喫茶店。
落ち着いた音楽。
甘い匂い。
休日の昼下がりらしい、静かな空気。
店員に案内され、窓際の席へ座る。
向かい側にはプリン。
白い髪が、柔らかな光を受けて淡く透けている。
やっぱり、綺麗だった。
あなたはメニューを開きながら、小さく息を吐く。
「……で、目的のプリンは?」
プリンは静かにメニューを見る。
それから、小さく指を止めた。
「これです」
そこに載っていたのは、昔ながらの固めプリンだった。
ガラス皿。
カラメル。
生クリーム。
どこか懐かしい見た目。
「へぇ」
「案外普通なんだな」
「普通?」
「もっとすごいの選ぶかと思った」
あなたが言うと、プリンは少しだけ首を傾げた。
「これは重要です」
「重要?」
「はい」
静かな返答。
その声はいつも通り落ち着いていた。
でも、何故か少しだけ大切そうだった。
やがて注文したものが運ばれてくる。
プリンが、テーブルへ置かれる。
その瞬間、プリンの視線が静かに止まった。
「…………」
あなたは少しだけ、その横顔を見る。
綺麗な顔。
いつも通り無表情に近い。
でも今は、ほんの少しだけ。
何かを見つめているみたいだった。
「……そんなに好きなのか?」
あなたが小さく聞く。
プリンは数秒だけ黙った。
それから、小さく首を横へ振る。
「好き、とは少し違います」
「?」
「私の最初の記憶に近いものです」
あなたが少し目を瞬かせる。
プリンは静かな声で続けた。
「私の意識が発生した直後」
「目の前に、ノクスと似た色の髪をした女性がいました」
「……俺と?」
あなたが少し首を傾げる。
プリンは小さく頷いた。
「はい」
「その女性は、私へこれを渡しました」
白い指先が、目の前のプリンを示す。
「そして、“プリン”と呼称していました」
静かな説明。
まるで観測記録を読み上げるみたいに。
でも、その瞳だけは少し柔らかい。
「だから私は、自分をプリンと名付けました」
「…………」
あなたは少し黙る。
不思議だった。
プリンの“始まり”を聞いているのに。
何故か、胸の奥が少し温かい。
プリンはそんなあなたを静かに見ていた。
それから、ほんの少しだけ目を細める。
「今思えば」
「こうしてノクスと一緒にプリンを食べているのは」
「運命だったのかもしれません」
「っ!?」
あなたの手が止まる。
顔が一気に熱くなる。
「お、お前な……っ」
「はい?」
プリンは本当に分かっていない顔だった。
あなたは思わず顔を逸らす。
心臓がうるさい。
運命とか、そんな言葉をその顔で言うな。
プリンは不思議そうにこちらを見ていたけれど、やがて小さく視線を落とした。
そして、静かにスプーンを取る。
白いプリンを、小さく掬う。
口へ運ぶ。
「…………」
止まった。
プリンは静かに瞬きをする。
それから。
「……甘い」
小さな声だった。
でもその声音は、どこか少しだけ柔らかかった。
あなたは静かにプリンを見る。
プリンはもう一度、スプーンでプリンを掬った。
ゆっくり味わうみたいに口へ運ぶ。
「……どうだ?」
あなたが小さく聞く。
プリンは数秒だけ考えて。
「美味しいです」
静かな返答。
「ですが」
「?」
「想定していたより、少し違います」
「違う?」
プリンは小さく頷いた。
「記録上は、もっと単純な味覚情報でした」
「甘い」
「柔らかい」
「それだけのはずでした」
その声は落ち着いていた。
でも、ほんの少しだけ自分でも不思議そうだった。
「……今は違うのか?」
あなたが聞く。
プリンは静かにこちらを見る。
淡い瞳。
その奥で、何かを考えている。
「はい」
「以前より、内部反応が大きいです」
「……何それ」
「よく分かりません」
プリンは素直に言った。
「ですが」
「ノクスと一緒だからかもしれません」
「っ————」
あなたが咳き込む。
「お、お前ほんとそういうの……!」
「?」
本気で分かっていない顔だった。
あなたは額を押さえる。
心臓がもたない。
すると、プリンがじっとこちらを見た。
「ノクス」
「……何」
「ノクスも食べますか?」
そう言いながら。
プリンは、自分のスプーンをこちらへ向ける。
「…………は?」
一瞬、理解が止まった。
銀色のスプーン。
そこに乗った、小さなプリン。
つまり。
これ。
あーんだ。
「っっっ!?」
あなたの顔が一気に熱くなる。
「な、なんでそうなるんだよ!?」
「共有です」
プリンは静かに答える。
「これは、私の最初の記憶に近いものです」
「だから」
「ノクスとも共有したいと思いました」
あまりにも真っ直ぐだった。
嘘も、照れも、駆け引きもない。
ただ純粋に、そう思っている声。
だから余計にずるい。
「っ……」
あなたは数秒固まって。
それから観念したみたいに、小さく口を開けた。
プリンが静かにスプーンを運ぶ。
甘い味。
冷たい感触。
カラメルの少し苦い香り。
「…………」
あなたが飲み込む。
すると、プリンが少しだけこちらへ近づいた。
「どうですか?」
「……甘い」
「はい」
プリンが、小さく頷く。
ほんの少しだけ。
本当に少しだけ。
嬉しそうに目を細めた。
「……良かったです」
その声は静かだった。
でも、以前のプリンならきっとこんな風には言わなかった。
あなたは小さく息を吐く。
目の前のプリンを見る。
白い髪。
淡い瞳。
静かな表情。
見た目は綺麗なままなのに。
少しずつ、表情が柔らかくなっている。
そんな気がした。
「……お前、変わったよな」
ぽつり、と思わず口から漏れる。
プリンが小さく瞬きをした。
「変化していますか?」
「してる」
即答だった。
「前のお前、もっと機械みたいだったし」
「機械ではありません」
「例えだよ」
あなたが苦笑する。
プリンは少しだけ黙った。
それから静かに、窓の外を見る。
人の流れ。
笑い声。
午後の光。
その全部を眺めながら、小さく呟く。
「以前は、理解できませんでした」
「?」
「人間が、何故こういう時間を必要とするのか」
プリンはゆっくり言葉を選ぶ。
「食事」
「会話」
「一緒に出かけること」
「非効率な行動が多い」
「まぁ否定はできないな……」
あなたが苦笑すると、プリンは小さくこちらを見る。
「ですが」
「今は、少し分かる気がします」
「…………」
あなたは静かにその言葉を聞く。
プリンは、もう一度プリンを見る。
「これは、甘いだけではありません」
「ノクスと共有しているから、意味があります」
「っ……」
またそれだ。
心臓がうるさい。
あなたが赤くなって視線を逸らすと、プリンはほんの少しだけ首を傾げた。
「ノクス」
「……何」
「やはり心拍数が上がっています」
「分かってるなら言うなよ……!」
「何故ですか?」
「恥ずかしいから!」
あなたが勢いよく言う。
するとプリンは、小さく止まった。
「……恥ずかしい」
その単語を、確かめるみたいに呟く。
「はい」
「これは、恥ずかしいという感情ですか」
「そうだよ……」
「なるほど」
プリンは静かに頷く。
それから。
ほんの少しだけ、あなたへ近づいた。
「では」
「私も、少し恥ずかしいのかもしれません」
「————っ」
あなたの思考が完全に止まる。
プリンはそんなあなたを見ながら、静かに目を細めた。
窓の外から、柔らかな光が差し込む。
甘い匂い。
穏やかな空気。
そして、初めて“幸福”を理解し始めた少女みたいに。
プリンは、静かに笑っていた。
それは本当に小さな変化だった。
口元が少し緩むだけ。
でも、以前のプリンを知っているからこそ分かる。
今、目の前にいるこの子は。
ちゃんと“楽しい”を知り始めている。
「…………」
あなたは何となく視線を逸らす。
胸の奥が少し落ち着かない。
嬉しい。
でも、それ以上に。
プリンが笑っているのを見ると、妙に心臓が苦しくなる。
「ノクス」
「……何」
「顔が赤いです」
「お前のせいだよ……」
あなたが呻くと、プリンは小さく瞬きをした。
それからほんの少しだけ、また目を細める。
その反応がずるい。
結局、あなたは最後までまともにプリンの顔を見れなかった。
*
店を出る頃には、空は少しだけ橙色へ変わり始めていた。
夕方の街。
人通りはまだ多い。
あなたは店の扉を押さえながら、後ろを振り返る。
「大丈夫か?」
「はい」
プリンが小さく頷く。
それから、少しだけ空を見る。
「今日は、良い日です」
「……大げさだな」
「事実です」
静かな返答だった。
でもその声は、どこか柔らかい。
あなたが少し照れながら歩き出すと。
不意に指先へ、小さな感触が触れた。
「っ」
あなたが肩を跳ねさせる。
プリンの手だった。
白くて、小さな指。
そのまま当然みたいに、あなたの手へ重なっている。
「…………え?」
思考が止まる。
プリンは静かな顔のまま答えた。
「人が多いので」
「はぐれ防止です」
「いやそれ今日二回目……!」
「効果的です」
真顔だった。
あなたは顔を覆いたくなる。
でも、振り払う気にはなれなかった。
プリンの手は少し冷たい。
でも、繋いでいるうちに少しずつ熱が混ざっていく。
プリンはその感触を確かめるみたいに、小さく指を動かした。
「……温かいです」
ぽつり、と小さな声。
あなたは少しだけ視線を落とす。
繋がった手。
離れていない指先。
胸の奥が、また少しだけうるさくなる。
「ノクス」
「……何」
プリンは少しだけ考えるみたいに黙った。
それから、静かな声で言った。
「私は」
「今日を、長く記録したいと思っています」
「…………」
あなたは言葉を失う。
プリンは続ける。
「プリンは甘かったです」
「街は騒がしかったです」
「ノクスは、ずっと赤かったです」
「最後いらないだろ……!」
「ですが」
プリンが小さくこちらを見る。
「一番強く残っているのは」
「ノクスと一緒だったことです」
「っ————」
駄目だ。
本当に心臓がもたない。
あなたが真っ赤なまま固まっていると、プリンは少しだけ首を傾げる。
「ノクス」
「……何」
「また来ましょう」
静かな声だった。
でも、その言葉は以前よりずっと温かく聞こえた。
「……ああ」
あなたが小さく頷く。
するとプリンは、ほんの少しだけ嬉しそうに目を細めた。
繋いだ手は、最後まで離れなかった。
夕焼けの色が薄くなる頃。
あなたたちは家へ戻ってきていた。
玄関の扉を開ける。
「ただいま……」
すると、リビングの方からものすごい勢いで足音がした。
「おかえり!!!」
ステラだった。
勢いよく飛び出してきたそのままの速度で、ぴたりと止まる。
「…………」
視線が落ちる。
あなたとプリンの手。
まだ、繋がったままだった。
「…………」
空気が止まる。
あなたは数秒遅れて気付いた。
「っ!?」
慌てて手を離そうとする。
でも。
プリンが自然に握り直した。
「待って」
ステラが真顔になる。
「今離そうとしたよね?」
「違っ……!」
「ノクスは逃げようとしました」
プリンが静かに補足する。
「プリンちゃん!!?」
ステラが崩れ落ちる。
そのまま床へ膝をついた。
「終わったぁ……」
「何が!?」
「デートイベントが強すぎるよぉ!!」
あなたの顔がまた赤くなる。
無理だ。
今日ずっとこれだ。
リビングの奥から、ルミナが静かに出てきた。
「おかえり」
「……ただいま」
ルミナの視線も、すぐに二人の手へ落ちる。
静かな沈黙。
「…………そう」
小さな声だった。
でも、ほんの少しだけダメージを受けているのが分かる。
あなたは妙に罪悪感を覚えた。
「いやこれ、その……!」
「はぐれ防止です」
プリンが即答する。
「帰り道も人が多かったので」
「便利ワードみたいに使うなよそれ……!」
あなたが呻く。
ルミナは静かな顔のまま、プリンを見る。
「……楽しかった?」
小さな問い。
プリンは少しだけ考えて。
それから、静かに頷いた。
「はい」
短い返事。
その声は、以前よりずっと柔らかい。
ルミナが小さく目を細める。
ルミナも気付いた。
プリンが変わってきていることに。
ステラが床から顔だけ上げる。
「……で?」
「プリンちゃん、どうだったの?」
プリンは小さく瞬きをする。
「プリンは、美味しかったです」
「それは知ってる!」
ステラが即座にツッコむ。
プリンは少しだけ考えるみたいに黙った。
「ですが」
「一番強く記録へ残っているのは」
プリンの視線が、そっとあなたへ向く。
「ノクスと一緒だったことです」
「っ————」
あなたが固まる。
ステラが完全に崩れ落ちた。
「重いぃぃぃぃ!!!」
ルミナも静かに視線を逸らす。
「……強い」
「だから何なんだよその評価……!」
あなたが真っ赤なまま叫ぶ。
でも、プリンはそんな反応を見ても不思議そうに首を傾げるだけだった。
「?」
本当に、自覚がない。
それが一番ひどい。
そして、プリンは自然な動作であなたの隣へ座った。
肩が触れ、近い。
あなたの顔がまた熱くなる。
プリンは静かにこちらを見上げた。
それから、ほんの少しだけ目を細める。
「……今日は、良い日でした」
その響きは、温かかった。
あなたは数秒だけ黙って、小さく笑う。
「……そっか」
プリンは、静かにあなたの肩へ寄りかかった。
まるでそこが当然みたいに。
ステラが後ろで頭を抱える。
「もう完全にメインヒロインなんだけどこの子……」
ルミナも小さく息を吐いた。
「……強敵」
「だから何なんだよその評価……!」
あなたの叫び声が響く。
プリンは静かな顔のまま、あなたの隣へ寄り添っていた。
その表情は、満ち足りていた。
評価・感想よろしくお願いいたします。
誰が好き?
-
ノクス
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ルミナ
-
ステラ
-
プリン
-
秋葉