夜だった。
雨が降っている。
窓硝子へ細かな水滴が流れ、街のネオンを淡く滲ませていた。
リビングには静かな暖色の灯りだけが落ちている。
ソファへ座るあなたの隣へ、当然みたいな顔で ルミナ が身体を寄せていた。
近い。
とにかく近い。
肩が触れている。
というか、ほぼ寄りかかられている。
「…………」
あなたはテレビを見ているふりをしていた。
でも内容はまるで頭へ入ってこない。
理由は隣だ。
ルミナは静かな顔のまま、あなたの腕へそっと指を絡めていた。
冷たい指先。
雨の魔力を扱う彼女らしい温度。
「……ルミナ」
「ん?」
「近い」
「そう?」
否定しない。
むしろ、少しだけさらに寄る。
柔らかな青髪が肩へ触れ、微かに甘い香りが漂った。
「今日、寒いから」
「いや絶対それだけじゃ——」
「ノクス」
ルミナが小さくこちらを見る。
静かな青い瞳。
少しだけ細められた目。
「……プリンとは、二人で出かけたんだよね」
「っ」
心臓が止まりかけた。
やっぱりそこか。
ここ数日、ルミナは妙に距離が近かった。
戦闘後も隣へ来るし、髪を乾かそうとするし、気付けば触れてくる。
その理由を、あなたは薄々理解していた。
「……別に、普通に出かけただけだろ」
「手、繋いでた」
「見られてたの!?」
「帰宅直後に」
「うっ……」
逃げ場がない。
ルミナは小さく息を吐く。
「……いいな」
「え」
「私も、そういうのしたい」
静かな声だった。
でも、その破壊力は高かった。
あなたの顔が熱くなる。
ルミナはそんな反応を見ると、少しだけ嬉しそうに目を細めた。
「ノクス、分かりやすい」
「お前らが強すぎるんだよ……」
「じゃあ、慣れて」
「無茶言うな……」
すると。
背後から勢いよく声が飛んだ。
「はいはいはい!! 何この空気!!」
扉が開く。
ステラ が乱入してきた。
ジャージ姿。
ポニーテール。
そして妙にニヤニヤしている。
「ルミナちゃん最近露骨じゃない!?」
「別に」
「いや別にじゃないでしょ絶対!!」
ステラはそのままソファへ飛び込み、あなたの逆側へ密着した。
「うわっ!?」
「ノクス補給〜」
「お前らほんと距離感どうなってんの……!」
左右から挟まれる。
逃げ場がない。
ステラは楽しそうにあなたの肩へ頬を擦り寄せた。
「でもさー、ルミナちゃん焦るのも仕方ないよねぇ」
「……何が?」
「だってプリンちゃん、完全にメインヒロインムーブだったし」
「やめろその言い方……!」
「手繋ぎデートとかさぁ〜」
「だからデートじゃ——」
その瞬間。
不意に、脳裏へ感触が蘇った。
柔らかい熱。
近い吐息。
触れた唇。
「っ————」
あなたの思考が止まる。
顔が一気に熱くなる。
ステラがそれを見逃さなかった。
「あっ」
「…………」
「ノクス今なんか思い出した」
「お、お前静かにしろ……!」
遅かった。
ルミナが静かにこちらを見る。
「……ノクス?」
「何でもない」
「顔、真っ赤」
「気のせい」
「気のせいじゃない」
静かな圧。
逃げられない。
ステラは数秒ニヤニヤしていたが、やがて「あ」と何かに気付いた顔をした。
そして。
「……あー」
言った。
「もしかして、キス思い出した?」
空気が止まった。
「…………は?」
ルミナの声が、少し低い。
あなたは完全に硬直した。
「ステラァ!!!!」
「いやだって今の反応絶対そうじゃん!」
「言うな!!」
「……キス?」
静かな声。
いつの間にか、プリン が立っていた。
音もなく。
白い髪を揺らしながら、じっとこちらを見ている。
「えっ」
「いつからいた!?」
「先程からです」
怖い。
プリンは小さく首を傾げた。
「キスとは、接吻行為ですね」
「うん今そのWikipediaやめようか」
ステラが引き攣る。
ルミナは静かだった。
静かすぎて逆に怖い。
「……ノクス」
「は、はい」
「説明して」
「いやその……事故というか……!」
「事故でキスすることある!?」
「あるんだよこの世界では!!」
「どこの世界!?」
ステラがツッコむ。
プリンは数秒だけ考え込んでいた。
それから。
「質問があります」
「……何」
「キスは、どのような感覚ですか?」
沈黙。
ルミナが視線を逸らす。
ステラが急に赤くなる。
あなたは死にそうだった。
「えっ、いや、その」
「柔らかい……とか?」
ステラが小声で言う。
「…………」
ルミナが黙っている。
プリンは真剣だった。
「内部温度上昇は発生しますか?」
「する……」
あなたが死んだ目で答える。
「心拍数増加は?」
「する」
「呼吸異常は?」
「する……」
プリンは数秒沈黙した。
そして、小さく頷く。
「なるほど」
それから。
じっとあなたを見る。
「……ノクス」
「な、何」
「私も、したいです」
「ぶっ————」
あなたが盛大に咳き込む。
ステラが崩れ落ちた。
ルミナが完全に固まる。
「待って」
ステラが真顔になる。
「プリンちゃん、それどういう意味で言ってる?」
「確認行動です」
「一番危ないタイプ!!」
プリンは本気で不思議そうだった。
「ノクスと行えば、理解が深まる可能性があります」
「研究みたいに言うな……!」
「ですが」
プリンが一歩近付く。
白い髪が揺れる。
淡い瞳が真っ直ぐこちらを見る。
「私は以前から、ノクスへ触れられると内部処理が不安定になります」
「手を繋いだ時も」
「抱き上げられた時も」
「隣にいる時も」
「だから」
ほんの少しだけ、首を傾げる。
「キスをすると、もっと理解できる気がします」
「っ————」
駄目だ。
無理。
その顔で言うな。
ルミナが静かに口を開く。
「……プリン」
「はい」
「それ、多分もう好きってこと」
プリンが止まった。
「好き」
単語を繰り返す。
考えるみたいに。
確かめるみたいに。
それから。
「……そうかもしれません」
あまりにも静かな肯定だった。
あなたの思考が止まる。
ステラが顔を覆う。
ルミナは小さく息を吐いた。
「……強敵」
「またそれ言うの!?」
空気が、止まっていた。
「……ずるいです」
静かな声だった。
けれど、その一言だけで部屋の温度が変わる。
あなたは反射的にプリンを見る。
プリン は、じっとこちらを見ていた。
白い髪。
淡い瞳。
感情表現はまだ薄い。
それなのに今だけは、ほんの少しだけ唇が不満そうに尖っている。
「……何が」
「ルミナとステラはしました」
「うっ」
「私は、していません」
静かな追撃だった。
ステラが頭を抱える。
「うわぁ重い!」
「お前が暴露したんだろ!?」
「いやでも隠し通せる空気じゃなかったし!」
その横で、ルミナ は静かだった。
静かすぎて逆に怖い。
プリンは続ける。
「二人は経験済みです」
「私は未経験です」
「公平ではありません」
「経験値システムみたいに言うな……!」
あなたが顔を覆う。
だが、プリンは本気だった。
「ノクス」
「……な、何」
「私にもしてください」
「っ————」
真っ直ぐだった。
照れも、駆け引きもない。
ただ純粋に“欲しい”と思っている声。
だから破壊力が高い。
「……いや、でも」
「嫌ですか?」
少しだけ、不安そうな響き。
それが駄目だった。
あなたは数秒固まって。
それから観念したみたいに息を吐く。
「…………ルミナ」
「ん」
「ステラ」
「はい」
「ちょっと席外してくれ」
沈黙。
「断る」
「即答!?」
「いや見るでしょこんなの!」
ステラが前のめりになる。
ルミナも静かな顔のまま頷いた。
「私も気になる」
「お前らなぁ……!」
あなたは真っ赤な顔のまま呻く。
「む、無理なんだって!!」
「何が?」
「見られてるの恥ずかしい!!」
叫んだ瞬間。
ルミナとステラが止まる。
「…………」
「…………」
それから。
妙に冷ややかな目を向けてきた。
「……ノクスって、変なところで乙女」
「うるさい!」
ステラがニヤニヤする。
ルミナは小さく息を吐いた。
「……分かった」
「でも後で詳細聞く」
「聞かないで!?」
最悪だった。
数分後。
扉が閉まり、部屋には静寂だけが残る。
「…………」
「…………」
二人きり。
急に空気が変わった。
さっきまで騒がしかったはずなのに、今は時計の音まで聞こえる。
あなたは妙に落ち着かないまま視線を逸らす。
そして、気付いた。
(……あれ)
今まで。
ルミナの時も。
ステラの時も。
向こうからだった。
ステラの奴は治療だから例外として、自分からしたことがない。
「っ…………」
急に心臓がうるさくなる。
どうすればいい。
距離は?
手は?
顔近いっていうか無理近い。
プリンはそんなあなたをじっと見ていた。
「ノクス」
「……な、何」
「まだですか?」
「いや心の準備が……!」
「準備が必要なのですか」
「必要なんだよ普通は……!」
プリンは数秒考える。
それから、小さくこちらへ近づいた。
ソファが沈む。
白い髪が肩へ触れる。
甘い匂い。
「私は、もう準備できています」
「うっ……」
「ノクス」
静かな声。
「早く」
その言い方はずるい。
あなたが固まったままでいると、プリンの睫毛が少し伏せられた。
「……したく、ないですか」
寂しそうだった。
本当に少しだけ。
でも、プリンがそんな顔をするのは珍しくて。
胸の奥が痛くなる。
「…………っ」
あなたは観念した。
逃げる方が無理だった。
ゆっくり、プリンへ向き直る。
近い。
呼吸が触れそうな距離。
プリンは静かにあなたを見ていた。
逃げない。
ただ、待っている。
「…………いくぞ」
「はい」
返事が妙に素直で、余計に緊張する。
あなたは震える指で、そっとプリンの頬へ触れた。
少し冷たい。
でも柔らかい。
プリンの睫毛が小さく揺れる。
それから。
あなたは意を決して、唇を重ねた。
「……っ」
柔らかかった。
驚くほど。
熱はまだ浅いのに、触れた瞬間だけ妙に鮮明で。
呼吸が止まる。
プリンの身体が、ぴくりと小さく震えた。
そのまま数秒。
静かな接触。
けれど、離れた瞬間。
「…………」
プリンが止まっていた。
ぼんやりした顔。
焦点の合わない瞳。
唇へ触れたまま、小さく息を漏らしている。
「ぷ、プリン……?」
返事がない。
ただ。
白い頬が、じわじわ赤く染まり始めていた。
耳まで。
首筋まで。
まるで熱が遅れて全身へ回っていくみたいに。
「っ……ぁ……」
小さな吐息。
その声に、あなたの心臓が跳ねる。
プリンは数秒遅れて、自分の唇へ指先を触れた。
「…………すごい」
「え」
「内部処理が、正常ではありません」
顔が真っ赤だった。
普段の無表情が崩れている。
熱に浮かされたみたいに、目が少し潤んでいた。
「ノクス」
「な、何」
「もう一回、したいです」
「っ————」
駄目だ。
心臓がもたない。
でも、プリンは本当に気持ちよさそうだった。
初めて知った幸福へ触れてしまった子供みたいに。
蕩けるみたいな顔で、あなたを見上げていた。
「……もう一回」
熱に浮かされたみたいな声だった。
プリン は、まだ赤い顔のままこちらを見ている。
淡い瞳が少し潤んでいた。
呼吸も、さっきより浅い。
あなたは完全に限界だった。
「ぷ、プリン……落ち着け」
「落ち着いています」
「いや絶対落ち着いてない」
「内部温度は上昇しています」
「それ落ち着いてないんだよ……!」
あなたが呻く。
でも、プリンは納得していない顔だった。
唇へ触れた指先を、そっと自分の胸元へ下ろす。
「……不思議です」
小さな声。
「触れただけなのに、ここが苦しい」
「っ……」
「でも、嫌ではありません」
その言葉だけで、心臓が跳ねる。
プリンはゆっくりこちらへ近づいた。
膝が触れる。
距離が、また近くなる。
「ノクス」
「……な、何」
「これは、もっとしたくなるものですか」
「…………」
答えに困る。
困るのに、プリンは真剣だった。
実験でも観測でもなく。
ちゃんと、自分の感情として聞いている。
あなたは視線を逸らしたまま、小さく息を吐く。
「……人によるだろ」
「ノクスは?」
「っ」
逃げ場がなかった。
プリンはじっとこちらを見ている。
待っている。
その顔があまりにも真っ直ぐで。
あなたは観念したみたいに、小さく呟く。
「……なる」
「もっとしたくなる」
その瞬間。
プリンの睫毛が、小さく震えた。
「…………そうですか」
声が少しだけ甘い。
以前のプリンなら絶対に出さなかった響きだった。
プリンは、そっとあなたの服の裾を掴む。
逃がさないみたいに。
「なら」
静かな声。
「もう一回してください」
「っ……」
無理だ。
理性が保たない。
でも。
拒否できる空気でもなかった。
あなたはゆっくりプリンを見る。
白い髪。
赤く染まった頬。
少し熱を帯びた瞳。
そして、期待するみたいに微かに開かれた唇。
その姿があまりにも綺麗で。
胸の奥が、苦しくなる。
「…………後悔しても知らないからな」
「後悔?」
プリンが小さく首を傾げる。
「何故ですか」
「いや、その……」
説明できない。
これ以上したら、絶対に冷静ではいられない。
でも、プリンはそんなあなたの迷いを知らないまま、小さく目を細めた。
「私は、ノクスなら大丈夫です」
その信頼はずるかった。
あなたはとうとう諦める。
ゆっくり、プリンの頬へ手を添える。
今度はさっきより近かった。
呼吸が混ざる。
熱が近い。
プリンは逃げない。
ただ、あなただけを見ていた。
そして。
もう一度、唇が重なる。
「……っ」
今度は、少し長かった。
柔らかな熱が触れ合う。
浅い呼吸。
触れるたび、プリンの身体が小さく震える。
指先が、きゅっとあなたの服を掴んだ。
「……ぁ」
微かな吐息が漏れる。
その声が近すぎて、頭がくらくらする。
プリンは、まるで快感へ溺れ始めたみたいだった。
目元が熱っぽく緩み、頬はさらに赤く染まっていく。
触れ合うだけで、蕩けそうな顔をする。
あなたは耐え切れず、少しだけ唇を離した。
「……っ、は……」
呼吸が乱れる。
あなた自身もかなり危なかった。
でも。
プリンの方が、もっと酷かった。
ぼんやりした顔。
熱を持った瞳。
唇を小さく開いたまま、浅く息を繰り返している。
「…………ノクス」
「な、何」
「これ、危険です」
「今更!?」
「力が抜けます」
真っ赤な顔のまま、プリンが小さくあなたへ寄りかかる。
身体が熱い。
触れた場所から熱が移るみたいだった。
プリンはあなたの肩へ額を預けながら、小さく呟く。
「……好きかもしれません」
「っ————」
完全に止まった。
あなたの思考が。
プリンはまだ熱に浮かされたみたいな顔のまま続ける。
「ノクスへ触れられると、嬉しいです」
「苦しいのに、もっと欲しくなります」
「離れたくないです」
その声は静かだった。
でも、初めて感情を覚えてしまった子供みたいに、真っ直ぐだった。
あなたは言葉を失う。
すると、プリンはほんの少しだけ不安そうにこちらを見る。
「……駄目ですか」
「…………」
駄目なわけがなかった。
そんな顔をされて、拒否できるはずがない。
あなたは観念したみたいに息を吐く。
それから、そっとプリンの頭を撫でた。
「……反則だろ、お前」
「?」
「そういう顔」
プリンは意味が分からないみたいに小さく瞬きをする。
でも、撫でられると少し安心したみたいに目を細めた。
その顔がまた可愛くて。
あなたはもう、まともにプリンを見られなかった。
――バンッ!!
勢いよく扉が開いた。
「もう無理!!!」
「……限界」
ステラ と ルミナ が乱入してくる。
「っ!?」
あなたが飛び上がる。
プリンはまだあなたへ寄りかかったまま、小さく瞬きをした。
「何故戻ってきたのですか」
「何故じゃないから!!」
ステラの声は半分叫びだった。
けれど前みたいな軽さはない。
顔が赤い。
目も少し潤んでいる。
感情が整理できていないみたいに、呼吸まで乱れていた。
「空気甘すぎて死ぬかと思ったんだけど……!」
あなたは顔を覆う。
死にたい。
ルミナは静かだった。
静かだが、目が怖い。
「……ノクス」
「は、はい」
「したの?」
「いやその……!」
誤魔化せない。
プリンの顔がまだ熱っぽく赤い。
しかもあなたの服を掴んだまま離していない。
完全に現場だった。
ステラが数秒固まる。
それから、ぽつりと呟いた。
「……ほんとに、したんだ」
「っ」
その声で、あなたは少し止まる。
笑っていなかった。
いつもの冗談っぽさもない。
ただ、ショックを受けている声だった。
ステラは視線を逸らしたまま、小さく息を吐く。
「……なんか、思ったよりダメかも」
「ステラ……」
「だってさ」
無理やり笑おうとして、失敗する。
「プリンちゃん、めちゃくちゃ可愛い顔してるし」
あなたの心臓が止まりそうになる。
プリンはまだぼんやりした顔のまま、小さくこちらへ寄りかかっていた。
熱っぽい瞳。
赤い頬。
少し乱れた呼吸。
確かに、かなり危ない顔をしている。
ルミナが静かにあなたを見る。
「……ノクスから?」
「っ」
あなたの反応で全部伝わった。
空気が変わる。
ルミナの目が少し見開かれる。
ステラも、ゆっくりこちらを見た。
「……え」
「…………」
「ノクスが、自分からしたの?」
「う、うるさい……!」
あなたが真っ赤な顔で呻く。
ステラは言葉を失っていた。
それから数秒遅れて、じわじわ顔を赤くする。
「……ずる」
「え」
「私には、あんな適当な感じだったのに」
「っ」
刺さる。
かなり刺さる。
ステラは唇を噛むみたいにしながら続けた。
「プリンちゃんには、ちゃんと自分からしたんだ」
「いや、その……!」
「しかもこんな顔になるまで……」
あなたは完全に黙る。
言い返せない。
ルミナも静かにこちらを見ていた。
「……意外」
「お前まで!?」
「ノクス、自分から行くタイプじゃないと思ってた」
「うっ……」
勢い余って、本音が漏れる。
「だ、だって自分からするの恥ずかしすぎるんだよ……!!」
沈黙。
「…………」
「…………」
二人の空気が変わった。
「……へぇ」
ステラが笑う。
でも目が笑っていない。
「自分からは恥ずかしいんだ?」
「うっ」
「じゃあ私の時は?」
「いやだから! ステラにもしただろ!」
半ばやけくそだった。
でも。
ステラは即座に返す。
「あれ治療行為じゃん」
「っ」
止まる。
「魔力循環安定のための接触でした〜」
「うぐっ……」
「ノーカンなんだけど」
反論できない。
というか、自分でも。
あの時のことを、“ちゃんとしたキス”として認識していなかった。
勢いだった。
命がけだった。
だから、さっきみたいに緊張しなかった。
それを自覚した瞬間、余計に顔が熱くなる。
ステラはそんなあなたを見て、小さく目を伏せた。
「……そっか」
声が少し寂しい。
「プリンちゃんが、“初めて”なんだ」
「っ————」
やめろ。
言語化するな。
あなたが崩れ落ちると、隣でプリンが小さく瞬きをした。
「初めて」
その単語を反復する。
数秒。
それから。
じわ、と。
また顔が赤くなっていった。
「…………」
耳まで真っ赤だった。
プリンはゆっくりこちらを見る。
「ノクス」
「……な、何」
「嬉しいです」
「っ————」
完全に致命傷だった。
ステラがその様子を見て、ぎゅっとクッションを抱き締める。
悔しそうだった。
でも、それ以上に。
羨ましそうだった。
「……いいなぁ」
小さな呟き。
ルミナも静かに目を伏せる。
「……ずるい」
「なんで俺が責められるんだよぉ!?」
この後、あなたは滅茶苦茶大変だった。
評価・感想よろしくお願いいたします。
誰が好き?
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ノクス
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ルミナ
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ステラ
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プリン
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秋葉