当時(後半)からこの設定を持て余していたので無くすことに決めました。
今後は普通の仲の良い兄妹愛でいきたいと思います。
第零話
とある一室で一人の青年が気持ちよさそうな寝息を立てていた。
そこに一人の少女がやってきた。
「兄さん、もう朝ですよ。起きてください。」
少女の声に青年は無反応だった。少女はもう一度今度は声を少し大きくして呼び掛けた。
「兄さん、もう朝ですよ。起きてください。兄さん!!」
今度は青年の頭がピクリと反応したが起きることなく、もそもそと布団の中に消えていき、いかにも眠そうな声で少女に答えた。
「まだ朝じゃない。目の前が暗い、夜なんだよ……まだ寝てていいはずだ」
暗いのは布団の中だからであって、清々しい朝日が部屋の中に入り込んでいた。
青年のふざけた言い訳に少女はいらだち、今度は怒気を交えつつ言った。
「兄さん、もう朝ですよ。起きてください。……いい加減に起きろ!!!」
少女の機嫌がこれ以上悪くなるとまずいと思ったのか、青年はゆっくりと体を起こした。
「おはよう華琳。いつも起こしに来てくれてありがとうな」
いかにもだるそうな態度で本当に感謝しているのかわからない礼である。
この青年こそ本作品の主人公である。
性・曹 名・進 字・麗 真名・刹那
曹操こと華琳の腹違いの兄である。
Side:刹那
眠い…眠い…ああ眠い。あまりの眠たさに三回も繰り返してしまった。
しかしここでまた寝ると華琳の機嫌が悪化して怖いので寝むれない。
「まったく、兄さんは相変わらず朝は弱いわね。私が起こしてあげないといつまでも寝ているし」
溜息を吐きながら、しょうがないわねぇみたいに言う華琳に対して、
俺としては何時までも寝かしておいてもらって一向に構わないなどと思う。
「兄さんは刺史である私の補佐をしっかりしてもらわないと困るんだから、しっかりしてください!」
そんなに目くじら立てなくても分かっているさ。家督を放棄しお前を支え続けると決めたあの日から俺の気持ちは変わらない。
家督を華琳が継ぎ俺が補佐役になったのはそう難しい話でない。
俺は長子だが妾の子。華琳は長女だが本妻の子。
妾の子より本妻の子が継ぐほうがしっくりくるだろう。だが本妻に子ができても妾の子が継ぐことなんか珍しい話ではい。他にもちゃんと理由がある。こっちのほうが決定的である。
俺が家督を放棄したからである。本人の意思など関係なく決められることもあるが俺が華琳を押す理由に親をはじめ皆それなりに納得した。
理由は簡単だ。華琳の才能が俺よりあらゆる面で優れているからである。
俺は何やっても優秀だ。もちろん血の滲むような努力の賜物だが。自分で言うのもなんだが秀才といっていいだろう。万能といえば聞こえはいいが実際は器用貧乏だ。何をやっても優秀。しかし何をやっても一番には決してなれない半端ものである
対する華琳は非の打ち所が無い天才である。神童、麒麟児そのような言葉がすべて当てはまるといっても過言ではない。しかも容姿もかなり良い。…それはあまり関係ないか。
武芸に長け政にも秀でた文武両道。あらゆることにおいて類稀なる才能を持っている完璧美少女である。…美少女は余計だったか。
唯一俺が勝てるのは「武」のみである。
勿論何事についても反対するものはいる。華琳が気に入らない。華琳の自分に対する評価が低いとの不満。あげていったらきりが無い。
そんな奴らが考えることは簡単だ。家督を放棄したとはいえ二番手にいる俺に取り入り華琳から反旗をひるがえせということだ。まぁそんな連中は俺がなんとかしたのでしばらくは大丈夫だと思う。どうやったかはそのうち話そうと思う。
愛しの妹に起こされ軍議のため皆のいる場所へ移動中である。
感謝の言葉を述べつつ頭を撫でてやったところ、どうやら機嫌が戻ったようなので一安心だ。昔から頭を撫でてやると喜んだのでよく撫でてやっている。喜ぶ華琳を見るが俺は好きだ。だが他の女性にやると不機嫌になるが謎である。
変わらないと言えば何時まで俺のことを起こしに来る気なのだろうか。毎朝ご苦労なことだ。昔ならともかく今は自分も忙しく俺なんかを起こしに来るほど暇ではないはずなのだが。侍女にでもやらせればいいのに。
以前『他の人なんかに任せておけるものですか!!』などと決意する妹が不思議だった。俺って朝他人にみせられないぐらいだらしないのか…?。
Side:華琳
今朝も私は兄さんを起こしにいく。毎朝の習慣である。この役目だけは誰にも譲る気はない。兄さんは何事にも才能と本人の努力により必ず優秀な結果を残す人だ。
常に冷静沈着、困った時には必ず助けてくれる自慢の兄である。ただし弱点もある。
とにかく致命的に朝が弱いのである。苦労して起こしたと思っていても寝ぼけていて何をするのか分かったものではない。私がこの役目を譲らないのはあることがきっかけである
五年前のことだ。当時はまだ毎朝の習慣となっていなかった。忙しい時にはほおっておいたり、侍女などにいかせていた。
いつものように苦労しながら起こしたと思ったら、いきなり抱き締められ寝台に押し倒されたのだ。突然のことに私は混乱しながらも事態の把握に専念した。
やや冷静になって気がついたが兄さんは気持ちの良さそうな寝息を立てていた。
私を抱き枕にして二度寝していたのであった。しかも本人はそのことを全く覚えていないのでる。その時私は他の人には任せられないと決意したのである。
兄さんは才能は勿論だが容姿もかなり良い。好意を寄せる女性も少なくない。
しかし本人は全く自覚が無い。私がいくら説明してもいままでに告白されたことなんかないといって相手にしてくれない。
告白されないのは常に私が目を光らせ…って言うのは冗談。
家柄からして民にとっては軽々しく告白なんてできず、身近な人間も互いに牽制しあって手が出せないのからである。あの事件のせいで恐れられているところもあるだろうが。
そんな朝の兄さんのもとに女を近づけるなんて飢えた猛獣の前に餌を与えるようなものである。
ならば男であるなら問題ないのではと思い、男にいかせたところ新たな問題が明らかになった。行く男皆が男色に目覚めるのであった。
というのは流石にないが起こそうと近づくと組み伏せられ、どすを利かせた声で脅されるらしい。ちなみに親しくない女性でも同様なことが起きた。
どうやらある程度親しい関係でないとだめらしい。
一応暗殺などで寝込みを襲われる心配はないようだ。