真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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第八話

少女の無事を確認すると、私の傍にやってきた。

 

「怪我はないかい?」

 

はい。と私は答える。

 

「なぜあのようなことを?」

 

「人質を無視したことか?」

 

「そうです。助かったからよかったが、死んでいたかもしれない」

 

「連中の言う通りにしていても助からない。奴らに慈悲の心など無いのだからな。助ける機会も期待できない。君は処女かい?ああいい、その反応で十分だ。だったら尚更無理だ。君のような真面目な子は連中に蹂躙されて心も体も壊されて終わりだ」

 

彼の言うことはもっともだと思った。私はあの時、これから自分に起きるだろうことを予想し、怯えていた。

 

それにしても他の村人はどうしたのだろうか?

 

「村の者はいないのか。賊はもう去ったぞ」

 

私は大声をあげた。

 

裸の娘達は、その場でうずくまり、抱き合って泣いているだけだ。

 

男は裸の女達には関心が無いようで空を眺めている。

 

長老らしい男が、二人の若者に支えられて出てきた。

 

「感謝の言葉が聞きたいのなら期待しない方が良いぞ」

 

いつのまにか傍に来ていた男が小声で言ってきた。

 

私には意味が分からなかった。別に感謝の言葉が聞きたくてやった訳ではないが、期待するな?

 

「賊は去りましたよ。もう安心です」

 

「安心できません」

 

「なぜです?」

 

長老は、周囲を見回し、軽く首を横に振ってうなだれた。

 

「どちら様かは存じませんが、なんということをしてくださいました。賊徒を、これほど殺してしまうとは」

 

「何を言っているのですか。賊徒は追い払いました」

 

「また来ます。そして、この村を皆殺しにします。あのまま放っておけば、数十人を殺し、娘達と気に入った物だけを持って去りましたのに。次には、皆殺しのつもりで、賊徒はやってきます」

 

「近くの街の軍に訴えれば」

 

「訴えても来てくれないでしょう」

 

「来ないのが分かっていたから、君は一人で来たのではないのかな」

 

長老の言葉に続き、男が言う。確かにその通りだ。

 

「とにかく、あなた方は、この村を皆殺しにさせるようなことを」

 

「待ってください。それでは娘達がさらわれ、物が奪われても構わない、というわけですか?」

 

「皆殺しよりはましでございましょう。賊徒は、一度襲った村は、しばらくは襲いません。奪うものが無いのですから」

 

「そんな生活で、あなた達はよいのですか?」

 

「皆殺しよりは」

 

私は言葉に詰まり、その場にへたり込む。

 

私はこの村に害をなすことを、やってしまったのか……。

 

私の心はぐちゃぐちゃでもう何を考え、何をやったらいいのか分からなくなった。

 

「君のやったことは決して間違っていないよ」

 

男が肩に手を置き、優しく語りかけてくる。

 

「ただ、時期が悪かった。賊徒が大きくなるもう少し前に来ていたら、ここの村人も戦う意思が持てたかもしれない。

 

とにかく、このままここで座っていてもしょうがない。近くの街まで送ろう」

 

っ!?いきなり男が私の肩と膝に手をまわし抱え上げる。

 

「な、なっ!?」

 

私が混乱しているのも無視して、男は歩き続ける。

 

けもの道を歩いていると馬が一頭待っていた。

 

「俺の旅の相棒の黒雲だ。黒雲、この子も一緒に乗せてくれるか?」

 

男の問いに答えるように、馬が頭を下げた。まるで了承してくれたようだ。

 

私を前に乗せて後ろから支えるように男が乗っている。

 

……近くの街に行くには道も方角も違うような気がする。

 

「あの、近くの街に行くのでは無かったのですか?」

 

「あれは嘘。盗賊どもが後追ってこないように嘘を教えておいた」

 

盗賊共が私達に報復するために、村人から行き先を聞き出してくる可能性は高い。しかし、嘘の情報を教えたことにより、村人が殺されるのではないのか?

 

「行き先を聞き出した後、あの老人が言ったように皆殺しにされているさ。どっちにしろ生きることを放棄している連中の事など知らない。

もっといえば、俺は正義の味方になりたいわけじゃない。困っている奴全員なんて助けられないし、助ける気もない」

 

「ではなぜ私を助けたのですか?」

 

「さぁ。色々理由を上げようと思えばあげられるよ。戦闘をみて武の才能を感じた。村人を助けるために単身立ち向かった勇気、正義感。他にもいくつかあるだろうけど、一番の理由はそんな小難しいことじゃない

 

君が欲しくて堪らなくなったからさ」

 

っ!!な、なななな。行き成りそのようなことを言われても…

 

「ごく稀にいるんだ。見た瞬間にこれこそ英雄だと感じる者が」

 

「…えっと…つまり…それは、れ、恋愛とかそういうのではなく?」

 

私の質問が意外だったのか、彼はきょとんとした顔をした。

 

あ、何だか子供みたいで可愛い。

 

 

 

彼の名は曹進、字は麗というらしい。

 

彼の声は不思議と落ち着く。

 

なぜか彼と話していると安心できた。

 

そのようなことを彼に話すと、『人を簡単に信じるなよ。実は君を油断させておそうつもりなのかもしれないぞ』と笑いながら言った。

 

自分は善人ではないとも言っていた。それは本当だと思った。彼は綺麗事だけでは生きていけないことをよく知っていた。生きるため、目的のためにはあらゆる事をするであろう。

 

私は彼と一緒に旅をした。期間は二カ月間ほどだったが、とても楽しかった。

 

彼は私に色々な事を教えてくれた。武の訓練、軍学の重要性も教えてくれた。

 

彼は私の師であり、友であり、兄でもあった。

 

 

 

しかし、真名は教えてもらえなかった。

 

真名を預け合った者と、殺し合いなどしたくないと。

 

私は彼の傍にずっといたいと感じるようになっていた。しかし、彼はもっと自分以外のものと接してみろという。何人もの人間と接してそれでもなお、自分に仕える気があるのならばその時に。

 

『俺も君もまだまだ若い。ゆっくり時間を掛けて考えることだ』

 

それが彼の最後の教えだった。

 

 

 

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