真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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第十五話

Side:関羽

 

楽進の言葉がこたえたのか、北郷殿も桃香様も意気消沈といった感じだ。

 

「うちの子が色々言って申し訳なかったね。だが彼女は俺達のことを思って言ってくれたんだ。許してやってくれ」

 

「……はい」

 

桃香様お気持ちは分かりますが、交渉はまだ続いています。しっかりしてください。

 

「凪が言ったことも間違ってはいない。これからもっと厳しい時代がやってくるだろ。華琳や俺達の理想の為にも、今は力を蓄えておかなければならない。この遠征だって、民を救い曹操の名を広め、名声を上げるためだ」

 

その通りだ。我々は勿論、他の諸侯たちも皆同じだろう。

 

「兵糧や武器を買う金は何処から来ているか。大半は民から集めた税だ。血税だな。北郷君、ではなぜ彼らは税を払うと思う?」

 

「税を払うことを義務付けているからだろ」

 

「その通り。多くの民は自分達が払う税が自分達を守り、暮らしをより良くしてくれるために使われると信じている。

だから我々には、彼らの気持ちに応る責任がある。だから気軽に分けてやることはできない」

 

北郷殿はそのようことを考えたことがあっただろうか。

 

「せっかく凪がああ言ってくれたんだ。悪いが君達の申し出は却下させてもらう」

 

致し方が無いな。

 

「そこで今度はこちらから提案があるのだが、聞く気はあるかい?」

 

「……言ってくれ」

 

「君達義勇軍を傭兵として雇いたい。報酬は兵糧だ。勿論、うちの兵一人が食べる量と同じ分だ。期間は次の渠帥を倒すまで」

 

「なぜわざわざ傭兵として雇うのですか?先程こちらが出した案で兵糧だけにしたら良いのではないのでしょうか?」

 

私は疑問に思ったので聞いてみた。

 

「そちらの案にはおかしなところがあるんだ」

 

おかしなところ?

 

「劉備君は『一緒に行動しよう』と言った。これは共闘しようってことだ。そして北郷君は『兵と将を提供する』と言った。対するこちらは兵糧を出すとしよう。おかしいだろ?」

 

「何がおかしいんだ?俺達が兵糧分の戦いもできないとでもいうのか?」

 

「違う、違う。関羽や張飛の実力は評価しているさ。だからこちらが傭兵として雇う時の報酬は兵糧だ」

 

「じゃぁ何なんですか?」

 

桃香様も分からず問う。

 

「共闘ならお互いに命を掛けて戦うのなんて至極当然のことだ。あの条件ならこちらが一方的にそちらに援助しているだけになってしまう。無償で援助している余裕なんてないんでね。断らさせてもらうことにした」

 

そこで傭兵として雇うという訳か。

 

「にゃぁ~。一体どういうことなのだ?一緒に戦ってご飯貰うんだから、同じことなんじゃないのか?」

 

「いえ、全然違います。先程の戦は共闘。軍としての差は大きいですが、曹進さんは同格として扱ってくれました。さきの功績は曹操軍、劉備軍によるものです。

 

しかし傭兵として雇われるとなると、私達は完全に彼らの下に位置付けられます。その場合勝ったとしても、功績は全て曹操軍のものになります」

 

朱里の説明で皆理解できたようだ。

 

先程の戦で、我らを同格として扱ってくれた曹進殿には感謝するべきだ。

 

彼らと戦えば我らなど一瞬で敗れるほどの力の差がある。

 

「それでどうする?俺としてはどちらでも構わない。俺達だけでも勝つ自信はある。だが君達が加わってくれるなら、被害が少ないので助かる」

 

 

曹進殿の申し出を受けることになった。

 

兵糧の残りは僅かだったので正直助かった。

 

武器も先程の戦の分は勿論、これからの戦で手に入った分も平等に分けてくるらしい。

 

曹進殿の勧めで兵糧調達のために大きな街を二つ寄ったときに義勇兵の募集を行い増強できた。

 

今までより多く集まったのは、この前の勝利が理由だろう。

 

一緒に戦いたくても正規軍には入りづらく、義勇軍なら入りやすい。曹進殿が同格として扱ってくれた影響は少なくない。

 

気がつけば我軍は五千近くまで膨れ上がっていた。

 

これだけの人数の兵糧となると相当なものだろう。報酬とは言え全て出してもらっているんだ生半可な戦はできない。

 

流石に厳しくなって来たようで、朝食分はこちらで出してほしいと曹進殿自ら頭を下げに来た。

 

戦闘は小規模なものが二回ほどあったが、兵の調練になったし、兵糧、武器、防具も平等に分けて貰っている。

 

自分達の分の朝食ぐらいこちらで用意しないと逆に申し訳ない。

 

それに、曹進殿自ら来てくれたことも私達も含め兵達の間でも好感をもたれている。

 

そしてこの糧食美味しいのだ。別に贅沢なものが入っているわけではない。もちろん街の料理屋で食べるものとは比べられないが、糧食にして美味しい。

 

正規軍のものは公孫賛殿のところでしか食べたことはない。当然あそこのより美味い。

 

兵達の間でも好評だ。

 

あちらの兵の話によると、糧食の件は曹進殿が発案したらしい。

少しでも美味い物を食べたほうが行軍の負担も減る。

何より、何時死ぬかも分からない戦場に出るのだ。最後に食べた者がまずいものなのは寂しすぎる。

 

そのような理由により、曹進殿を中心に色々改良しているらしい。

 

 

 

 


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