真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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第十六話

Side:関羽

 

目標敵部隊との戦の時がついに来た。

 

作戦の説明があるので、北郷殿、桃香様、私、鈴々、朱里が曹進殿の陣営に赴く。

 

曹進軍八千、劉備軍五千。敵は二万五千。

 

曹進殿が作戦の説明を始める。

 

「まず、張飛が歩兵三千で敵陣の近くまで前進させる」

 

「それだと相手の騎馬隊に蹴散らされるだけなのだ」

 

「騎馬隊を正面に引き出すために、これをやるのだ。歩兵は、蹴散らされたら真直ぐに逃げてくればいい。こちらの騎馬隊が、両側から絞り上げるように攻める」

 

「正面が抜けているのではありませんか?敵の騎馬が、そのままこちらの歩兵の中に突っ込んで来るのでは?」

 

「正面には煉華がいる。歩兵を追ってきた騎馬隊とは、煉華と直属の五百騎でぶつかる。両側から絞りあげられ、正面からぶつかられれば、敵は馬首をめぐらして自軍へ逃げるしかなくなる。自軍の歩兵を踏み潰してしまうのだ。当然敵は混乱する。そこを我軍の歩兵隊が追撃するので、劉備軍は後に続いてくれ」

 

「たった五百騎でですか?相手の騎馬隊は二千騎ですよ」

 

「十分だ。流石は曹操軍の戦と、人の口の端にのぼるような戦をしてみせよう」

 

「作戦に付いて以上だ。ここまでで何か質問はあるかな?

無いようなので話しを進める。今回の作戦において劉備君に一つお願いがあるのだが」

 

「なんですか?」

 

「俺と早苗は敵を絞り上げるために騎馬隊の指揮をするし、煉華は正面で騎馬隊の指揮をする。となる、本隊の指揮官が凪一人になってしまう。流石に凪には荷が重い。

 

そこで君の所から関羽を貸してくれないか?関羽を指揮官、補佐に凪をつける」

 

「……それだったら私達の軍が最初に攻撃するから、曹進さん達が後ろから」

 

「残念だがそれは無理だ。心意気は買うがもう少し自軍の状況を理解するべきだな。君達の軍は急な増強によりまとまり切れていない。そんな状態で前線など無理だ」

 

確かに曹進殿言う通りだ。我軍は調練不足の兵が多く前線で戦うのは無理だ。

 

「桃香様、私は構いません。曹進殿の軍を指揮しきれるかどうか自信はありませんがやってみます」

 

「ん~~愛紗ちゃんがそういうだったら分かりました」

 

「よし。劉備君達は陣に戻って準備を進めてきてくれ。関羽はこのまま残ってくれ」

 

 

 

 

作戦が開始された。

 

歩兵が前に出た。敵とは、もう二里である。さらに進もうとすると、騎馬隊が一斉に押しだしてきた。

 

両側からこちらの騎馬隊が押し出していった。

 

それでも、逃げる歩兵を捨て切れず、騎馬隊は迫ってくる。

 

曹仁殿は五百騎を小さくまとめ、駆けはじめた。逃げる歩兵とすれ違う。

 

曹仁殿の騎馬隊が一瞬にして広がった。

 

ぶつかる。ぶつかった者は、もう馬上にはいない。

 

横一線で、押していく。

 

両側からも絞りあげられた敵は、次々に馬首をめぐらし、自陣にむかって駆けた。

 

自陣に飛び込んだのは千ほどだった。

 

そのまま曹仁殿も突っ込んだ。

 

敵の渠帥らしき男が曹仁殿の槍で胸を貫かれた。

 

私は突撃の号令を出した。

 

敵の陣は、既に自軍の騎馬隊に踏み荒らされていた。

 

こちらの怒涛の攻撃により、敵は抵抗らしい抵抗もできないまま潰走した。

 

騎馬隊が追撃し殲滅させた。

 

 

 

私は身も心も震えていた。

 

なんと精強な軍なのだ。はたから見ているのと実際に指揮するのでは大違いだ。

 

私の指示に瞬時に反応し、まるで自分の手足のように動く。

 

今日初めて率いるこの軍の戦いぶりに酔っている。

 

率いる将を酔わせる軍があろうとは!

 

これだ!私はこういった軍を率いて戦いたかったのだ!!

 

 

 

曹進殿が傍に来て問う。

 

「どうだ、関羽。我軍を率いてみた感想は?」

 

「我ながら驚くほどに、さらに多くの兵を率い、さらに精強な敵と戦うことを望んでおります」

 

 

曹進殿とはあの旅で十分に語り合った。

 

人となりはお互いに認識している。

 

これが曹進殿なりの私に対する勧誘なのだろう。

 

どんな言葉を並べられるよりも私の心を惹き付けた。

 

……曹進殿。やはり私が生涯、命を掛けて仕えるのはあなたしかいない。

 

 

 


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