真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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第十七話

Side:関羽

 

~ 回想 ~

 

私が曹進殿に助けて貰い、二人で旅を始めもう一月だ。

 

今日は快晴だったので夜空に星がちりばめられ綺麗だ。

 

こういった夜は二人で夜空を眺めながら話しをするのが私は好きだ。

 

曹進殿とは色々なことを話した。

 

家族のこと、生い立ちのこと。思い返せばたわいない話ばかりだ。

 

曹進殿は底の知れない男だ。優しいようで厳しく、慎重なようで、大胆だ。こちらが心の中を読もうとしても、なかなかできない。そのくせ、黙っていても、自然に心の中が伝わってくることが、何度かあった。

 

 

「曹進殿は何を目指して力をつけているのですか?」

 

「俺のっていうか、俺と華琳の二人の夢がある。この国を‘平等’な国にしたい。勿論、貧富の差をなくすとかじゃない。

 

俺の母が平民の出だという理由で辛い思いをしたのは話したな。

 

今のこの国では生まれた瞬間、半分以上は人生が決まったようなものだ。

役人の子は役人。農民の子は農民。役人の子は親の権力や金で簡単に役人、支配する側に回れる。農民の子は読み書きや計算ができないのがほとんどだ。

彼らには持って生まれた才能を開花させる機会すら与えられていない。

 

もはやこの国は腐りきっている。だから俺はこの国を変えたいんだ」

 

 

 

 

 

Side:早苗

 

目標の渠帥率いる部隊との戦を完勝した。

 

これで取りあえず今回の遠征は終わりだよね。良かった、良かった。早く帰って美味しいものいっぱい食べて、お風呂入って、ふかふかの布団に包まれて寝たいよ。

 

…ってそんなこと考えてる場合じゃないでしょ私!!

 

この前、この遠征が終わって落ち着いたら、私のこと話そうって決めたじゃない。なんて話したら良いのかな?ストレートにいくか、変化球で攻めるか…。

 

…敬遠しちゃおうかな。

 

いやいや駄目だろ!しっかりしろ私。

 

逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…。

 

ネタに逃げていたら刹那様を発見。

 

…あれ?戦いは見事に勝ったのに難しそうな顔をしている。まだ何かあるのかな?

 

「煉華、早苗、凪。劉備のところに行くぞ、ついてこい。桂花、陣を張れ。今日はここで夜営し、明日昼頃出る」

 

……あれ?傭兵として雇ってからは、ちゃんと向こうから来ていたのに今回はこっちから行くんだ。それにしてもなんかやっぱり難しそうな顔をしている。

 

それにしても今回劉備軍を傭兵として雇った意味ってどれくらいあったのかな?

 

一回目と二回目の戦闘は敵軍五千程度で雑魚だった。劉備軍を中心に戦い、私達が奇襲をかけて壊滅させた。確かに楽だったけど、劉備達がいなくてもほとんど被害を出さずに勝てと思う。

三回目、つまりさっきの戦では私達が主に戦った。劉備軍は潰走した敵の殲滅ぐらいしかやっていない。関羽を貸してもらったのは大きいだろうけど。

 

それにしても約兵五千分の兵糧数日分と比べると赤字な気がするな。

 

兵糧といえばどうして途中から朝食分を出さなくなったのだろうか?確かに桂花ちゃんは嘆いていたけど、出せないって程じゃなかった。

 

う~ん。相変わらず何考えているのか良く分からない人だ。

 

 

 

Side:関羽

 

戦いが終わり、被害報告を受けていると兵が曹進殿の来訪を告げた。

 

「少し慌ただしいようだな……」

 

「こっちは今被害報告を受けている最中なんだよ。そっちは良いのか?」

 

はぁ…北郷殿、その質問は恥の上塗りですよ。

 

「とっくに終わっているさ。被害報告ね。潰走した敵の殲滅しかしていないんだからそれほどかからないと思ったのだがね」

 

「こっちは正規の軍人のあんた達と違って、素人なんだからしょうがないだろう」

 

「義勇軍ということも踏まえたつもりだったのだがね。まぁいい、終わるまで待たせてもらうよ」

 

北郷殿は苦虫を噛み潰したような顔をしたが、何も言わず作業を再開した。

 

曹進殿の態度は今までと違い、少し挑発的な感じがした。

 

 

 

報告が終了し、曹進殿の話し合いが始まった。

 

「さて、劉備君。先程の戦いで君達との契約は終了した訳だが、これからどうするんだい?」

 

「私達は以前の活動を再開するしかないと思います。幸い人が増えたので大きな戦いもできるかなって」

 

「しかし人が増えた分、兵糧の問題も深刻になったのでは?」

 

「あぅ。確かにその通りです」

 

「そこで俺から君達に提案がある」

 

「何ですか?」

 

「俺は君達に五日分の兵糧を渡そう。その代わり、俺に義勇兵達に演説させてほしい」

 

「え、それって…」

 

なるほど。これは一種の勝負と言っていいだろう。

 

兵達に曹進殿と桃香様の器の大きさを比べられるものだ。

 

「そ、そんなふざけたこと認めるわけがないだろうが!」

 

北郷殿が曹進殿にくってかかる。

 

「なぜだ?君達にとって五日分の兵糧は大歓迎のはずだろ?こっちはただ兵に向かって話をさせてくれって言っているだけだ。

ああそうか、兵が皆いなくなるのが怖いのか?

俺と君達とでは器が違いすぎるしな」

 

曹進殿が分かりやすい挑発をする。

 

北郷殿は容易くその挑発に乗り、曹進殿にくってかかっている。

 

「俺としては断られたら、それでも良かったのだが、今となっては君達に選択の余地はないな」

 

「どういうことだ?あんたが勝手に言っているだけなんだから断ることだってできるはずだ」

 

確かに曹進殿が提案した時に断ることも可能だっただろう。しかしあなたの反応がそれを許さなくした。

 

「いえ、私達はもう曹進さんの提案を受けるしかありません」

 

朱里が進言する。

 

「どういうことだ?」

 

「曹進さんが提案された直後なら、『話にならない』と断ることも出来たでしょう。しかし兵がご主人様のあの反応を見た後に断るとなると、勝負する前から自らの敗北を認めたことになってしまいます。兵士の皆さんに不信感を抱かせてしまいます」

 

今のところ完全に曹進殿の手の上で踊らされている。

 

「だけど、俺達の兵糧問題を突かれると勝負にすらならないじゃないか」

 

「君は俺を侮辱しているのか?この俺がそんなくだらないまねをすると?ただ食糧を求めてくる兵など、我軍には一兵たりとも必要ない」

 

流石に曹進殿も看過できる事ではない。曹進殿の声には怒気が含まれていた。

 

曹進殿の怒りも最もだ。……いや、曹進殿がこの程度で怒りを覚えるとは考えづらい。もしかして演義か?

 

 

 

桃香様はやむなく曹進殿の演説を認めた。

 

よその兵に対する勧誘など、本来ならもってのほかだ。しかし、劉備軍は義勇軍。

 

誰に付いていくかは兵が決めることだ。

 

陣地に約束の兵糧が運び込まれ曹進殿が兵の前に出た。

 


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