真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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第九話

Side:華琳

 

董卓軍の奇襲を受けた際にさんざんにおちょくられ、連合軍は怒りにまかせて無謀な攻撃を繰り返していた。

 

勿論私達は後方で指揮権を持っているので高みの見物中だ。

 

もっとも袁両家が前線で攻撃を繰り返していて、指揮ができる状態ではない。

 

攻撃が開始されてからもうすぐ半日といったところか。

 

連合軍、特に袁紹軍、袁術軍の被害はかなりの数になってきているだろう。

 

後のことを考えるとこの連合中で少しでも多くの被害を受けて貰った方が良いので、今の状況はこのましい。

 

とはいえ、この調子で被害が出るのも考えものね。

 

「華琳様。このままでは近いうちに袁紹、袁術の両者が戦意喪失してしまうのではないでそうか?」

 

「桂花の言う通りです。両者が戦意喪失してしまうとそのまま連合軍解散ということになる可能性が」

 

「桂花と秋蘭の意見も最もね。勿論何か策は用意してありますよね、兄さん?」

 

「確かに考えてはあるけど今回はこっちが動く必要はない。動けば動くほど隠密行動が取り難くなるからな」

 

「おっしゃる理由は分かりますが、だとすると誰が動くのですか?」

 

「簡単な話だ、桂花。このまま無謀な攻撃を続けて兵を無駄死にさせる。この行為を一番嫌がっているのは誰かってことだ」

 

一番兵の被害が多いのは麗羽だ。しかし麗羽が今の段階でそこまで考えているだろうか?

いや被害が出ていることより、虎牢関が攻略できないことに苛立っているはずだ。

 

次に多いのは袁術だがこちらも似たようなものだろう。

 

なるほど。袁術の先陣は孫策だったわね。奴らからすればこんなふざけたことで、自軍の精兵が死んでいくことなど我慢ならないはずだ。

 

周瑜が致死軍を使いすでに手をうっていると考えるのが妥当か。

 

「孫策軍の周瑜ね」

 

「華琳、正解。襲撃を受けたのが三日前。その時にはこの状況は予想できた。奴が手を討たないわけがない。そしてその方法はこっちと同じだろうしな」

 

「と言いますと?」

 

「十常侍を動かす」

 

兄さんは桂花の問いに笑みを浮かべながら答える。

 

 

 

 

 

Side:咲夜

 

連合軍は無謀な攻撃を続けている。すでに相当な被害が出ているはずだ。こちらの被害は軽微なものだった。

 

この状況が続けば我らの勝利は確実だろう。

 

しかし向こうも現状を打破したいと思い、なんらかの策を討ってくる奴もいるだろうがな。

 

……さっきからあいつの姿が見えないがまた余計なことをする気か?

 

他の連中は気が付いていないようだな。

 

……ちょうど良い。

 

 

「しかしあいつらもアホみたいに突っ込んで来るだけやな。まともにやってうちらが守ってる虎牢関が落とせるわけないやんか」

 

「こちらは被害を抑えられて勝てるのですから良いではないですか」

 

「まあ、真夜の言う通りやねんけど。もっとこー、張り合いがほしいっちゅうか」

 

「子供の遊びではないのですよ」

 

「分かっとるわ。ていうか真夜かて騎馬戦できんからやる気ないやんか」

 

「……そんなことあるわけないでしょう」

 

「今の間はなんや!!」

 

騎馬隊命ということもありこの二人は仲が良い。まさに馬が合う、という奴だな。

 

霞と真夜の漫才が一段落した時、兵士が駆けこんできた。

 

「申し上げます!」

 

「なんや?どこも押されとる風には見えんけど」

 

「はっ。あの……華雄殿が出撃されるようです」

 

「…………はぁっ!?なんやそれ!」

 

「だから華雄がまた馬鹿やるんだろう」

 

「咲夜のアホ!そないなことわかっとるわ!」

 

「そ、そんなの聞いてないのですっ!」

 

「独断の暴走だからな」

 

「なんであんたはそない冷静やねん!」

 

「お前はもう少し落着け」

 

「これが落着いていられるか!あのアホどないしてくれようか」

 

「見捨てる」

 

「ほっておきましょう」

 

「ねねはもう知らないのです!」

 

「……おのれらは鬼か!?」

 

私、真夜、音々音があっさり切り捨てたので霞が唖然とする。

 

流石に二度目は無いだろう。

 

「……出る」

 

「よう言うた、恋!うちと恋で出るからあんたらは関の守りを」

 

「関の守りは引き受けた。急いで準備しろ」

 

「何を無駄口を叩いているのです、霞。急いで出撃しますよ」

 

「恋殿。頼みましたぞ!」

 

「なんやそれ!!」

 

「あの馬鹿が暴走するのと総大将の恋がでるのとでは訳が違うだろうが」

 

「恋が出ると言っているのです。出るのは当然でしょう」

 

「恋殿万歳!!なのです!」

 

 

 

 

恋、真夜、霞がそれぞれの部隊を率いて出撃した。

 

馬鹿を連れ戻しに行くだけなので大した戦いにはならないだろ。

 

三人が出撃した直後、都から伝令が届いた。

 

……やはり十常侍どもを動かしてきたか。

 

兵に恋達に伝令を伝えさせにいかせた。

 

「音々音。直ぐに撤退の準備に取り掛かるぞ」

 

「わかっているのです!」

 

 

 


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