真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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第十九話

Side:咲夜

 

連合軍による攻撃が開始された。

 

すぐにも公孫賛、袁紹軍がなだれこんで来るはずだ。

 

私は二十人の部下と共に月と詠の二人を連れて、刹那様と外からの増援との合流地点に向かっていた。

 

二人の足では遅すぎるので部下達に背負わせて走っている。

 

妨害してくる敵は今のところ現れていない。

 

姉上達がうまくやってくれているのだろう。

 

ッ!

 

突如、私は言葉に表せない感じを覚えた。

 

なんだ、何だこの感じは。

 

「ぬっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

何かが近づいて来る!

 

「ぬっふぅぅぅぅ」

 

目の前に半裸の大男が降ってきた。

 

こいつか、こいつがこの妙な感じの原因か。

 

しかしなんなのだこいつは。

 

そこ知れない圧倒的な強さ。威圧感。

 

唯の変態ではない。

 

私は武器を構え、臨戦態勢に入ろうとしたが、すでに武器を構えていることに気がついた。

 

構えようとする前、奴を一目見た瞬間から身体がとっさにとった行動だった。

 

私の身体が、本能が警告する。

 

私ではどうあがいても、こいつには勝てない。

 

逃げろ!逃げるんだ!

 

「見つけたわぁん……。賈詡ちゃんたちぃ」

 

「…………ひ…………っ!」

 

月があまりの衝撃に気を失った。

 

無理もない。

 

気弱な月には衝撃が強すぎる。

 

しかし今こいつは賈詡を見つけたと言った。

 

詠も月程ではないが表に出ることはほとんどない。

 

外の人間で知っているものなどそうはいないはずだ。

 

「ゆ、月……っ!?な、なんなのよあんた達!どこから逃げてきた化け物なの!?」

 

「安心なさい~。私達は味方よん。あなた達二人、ここからだしてあ・げ・る」

 

「え…………?」

 

なん……だと。

 

「ちょっと待て。二人とはこの少女達、二人のことか?」

 

「ええそうよん」

 

ちぃ!やはり目的は二人か。

 

だが味方?助ける?

 

言葉通りに受け取っていいのか?

 

どうする?どうする?どうすればいい?

 

「さ、咲夜……」

 

詠のかすれる声が聞こえ、振り向くと不安そうな顔がそこにあった。

 

……私は自分の未熟を恥じた。

 

関係ない。

 

こいつが何ものなのか、何が目的かなど関係ない。

 

私は友の命を守り、刹那様からの命を果たすのみ。

 

逃げる選択肢はない。

 

なら答えは一つしかあるまい。

 

私は双鞭を一振りする。

 

部下達が私の意思を読み、武器を構える。

 

我、精兵達は例え相手がだれであろうと、一度戦うと決まれば臆することはない。

 

この場で求められる最良の選択。

 

我々が命に代えてこの化け物の足止めをし、なんとしてでも二人を逃がすことだ。

 

 

 

「ちょっと待ってくれ。こっちの話を聞いて欲しい」

 

化け物の後ろから男が出てきた。

 

見慣れない服を着た若い男だった。

 

男は北郷と名乗った。

 

……こいつか。

 

姉上からの報告で話には聞いていた。

 

身の程知らずに刹那様に対抗心を抱いているとか。

 

北郷は月と詠の二人を本気で救いたいと言いだしてきた。

 

北郷はこちらの事情などおかまいなしに理由を喋りはじめた。

 

こっちはそんなことに興味もなければ聞く気もない。

 

しかしあの化け物がいるせいで迂闊な行動も出来ない。

 

北郷もそれが分かっているようで、無警戒だった。

 

虎の威を借る狐と言うところか。

 

北郷の独りよがりの演説が終わった。

 

なんていうことはない。結局は唯の自己満足か。

 

戦略的目的がある訳でもない。

 

思いにより行動するのを否定はしない。

 

しかし、その程度の思いなど通用しない。

 

我が友への思い。刹那様への忠義。

 

貴様のそれでは到底、足元にも及ばん。

 

「くだらんな、そんな話など信用できるか」

 

「まってくれ、俺は本気なんだ!本気で彼女達を助けたいんだ!」

 

「くどいぞ。それに助けたいという思いは我らも同じ。貴様のような計画性のない案などに乗れるか。無理やりにでも通させてもらうぞ」

 

「あらぁ、私に勝てるのかしら?」

 

「私を愚弄する気か?我身惜しさに友を見捨てるようなまね死んでも出来るか」

 

「なら、仕方がないわね」

 

「ちょ、ちょっと、二人とも落着けよ!」

 

最早問答無用。

 

これ以上足止めをくらえば計画が失敗する可能が出てくる。

 

私は武器を構える。

 

背後の部下達も武器を構えた。

 

「すまんな、お前達。このようなことに巻き込んで」

 

「何言っているんですか、隊長。俺達は何処までも隊長について行きますよ。

残念なことと言えば、天下を掛けた大戦じゃないってことですかね」

 

「ふふ、そうか。私にお前達の命をくれ!いくぞ!」

 

「「「「応ッ!!」」」」

 

私が踏み込もうした瞬間、声がした。

 

「そこまでだ、咲夜。お前の命を掛けるところはこんなところではない」

 

その声の主は刹那様だった。

 

 

 

 


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