Side:刹那
連合軍により都は完全に制圧された。
十常侍達は袁紹軍により皆殺しにされ、董卓もまた月詠達の用意した偽の死体を本物と信じ、袁紹軍が始末したことになった。
煉華や春蘭達が美味くやってくれたおかげで、高順、張遼という優れた将とその配下の兵を獲得することができた。
これで我軍はかなり増強できるはずだ。
だが、不測の事態も起きた。
張遼との一騎打ちの際に春蘭に流れが当たり、眼を片方失ってしまった。
本人はそのことをいたく気にしていたが、華琳が直接話をしたことで解決できた。
荒れ果てた都を再建することにより風評を得ることができる。
直ぐに再建の準備に取り掛かった。
昨夜から一晩中、殺し合いをしてきたので疲労が限界に来ていた。
後のことは俺がいなくても問題ないはずだ。
俺は華琳の許可を取り、時間までわずかな睡眠をとることにした。
幕舎に入ると傍にいるのは、月詠、焔、瑠璃の三人だけになった。
張りつめていた糸が緩み、前に倒れる。
倒れる俺を月詠が支え、布団に寝かしてくれた。
Side:――――
「お疲れ様です、刹那様」
「ああ、そうだな。……本当に疲れたな」
刹那は横になり、眼をつぶり、そっと呟いた。
「月詠、……どうだった?」
「十常侍の軍は全滅。致死軍も八割は始末できたと思われます。
我軍は死者、再起不能を含めおよそ半数の被害です」
「そうか、それほどの同士を死なせてしまったか」
「はい。やはり致死軍は相当な実力を要していました」
一勢力の二番目に力を持つ曹進の軍と客将の配下の周瑜の軍では、つぎ込める金も人員も違う。
差があって当然である。
これから孫策が力を付け、周瑜が自由に使える金や人員が増えれば恐ろしい敵になるだろう。
その証拠に刹那が欲しかったもう一方、台帳と地図は致死軍が獲得していた。
月詠からの報告を聞き終えると刹那は眠りに落ちた。
今回の刹那は明らかに無理をし過ぎた。月詠達従者から見れば一目瞭然だった。
能力で言えば知力では華琳、桂花。武力では春蘭、煉華などが勝っているが、皆心では刹那を頼っていた。曹操軍にとって刹那は精神的支えなのだ。
刹那もそれを理解しているため、決して表では疲れや弱気を見せないように努めていた。
それは最愛の妹である華琳も例外ではなかった。
刹那が本当の意味で素の自分をさらけ出すことができるのは伯父である王江と従者である月詠、咲夜、焔、瑠璃の五人だけであった。
刹那は今回の作戦が自分が立てる、最後の大掛かりな作戦だと思っていた。
刹那は決して天才ではない。
彼が今まで華琳達と同じ所にいられたのは、月詠がもたらす数多の情報のおかげだった。
過去の手痛い過ちにより、彼は情報の大切さを知っていた。
しかしそれも限界に近付いていた。
同じ結論に達したとしても刹那は華琳達の数倍の時間を要する。
華琳に対抗できるのは桂花ぐらいだった。しかし彼女は華琳に従順すぎる。
華琳の好みそうな策ばかり考えてしまうだろう。
それも悪くないかもしれないが、考えが偏ってしまうかもしれない。
そこでどうしても賈詡が欲しかった。
彼女は狡猾であり、華琳とは違った方向から物事を見ることができるかもしれない。
賈詡が加わることで桂花も身近に競う相手ができ、互いに良い刺激になるだろう。
これからの自分の役目は華琳を裏から支えていくことだった。
<補足>
本作品において皇帝は出てきません。
理由はいつかあります。
原作でも出てきていないので出す必要はないか。
史実では皇帝の扱いで荀彧と揉めたが、桂花が華琳に立て付くとは考えづらい。
そして最大の理由は劉備が漢王朝の復活を目指しでいないことです。
董卓や曹操の皇帝の扱いに悲しみ、自分の力の無さを嘆く劉備の姿があってこその皇帝の存在だと思っています。