真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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拠点フェイズ
第一話


Sid:早苗

 

反董卓連合が終わり、一時の平和な時間が過ぎていた。

 

しかし朝廷には諸侯を抑える力などあるはずもなく、群雄割拠の時代を訪れる。

 

今は各勢力とも力を蓄え、戦いに備えている。

 

我軍も同じである。

 

高順、徐晃、張遼といった猛将達が配下に加わり、将の質でいうのならどこにも負けないのではないかと、私などは思う。

 

彼女達の配下の兵も合わせて三千程は我軍に加わった。この者達は我軍の戦い方さえ学べば即戦力を期待できる。

 

また、今回の連合で立てた功績により、各地より人が集まってきた。

 

勿論、人口の増加によっておこることは良いことばかりではない、問題も出てきていた。

 

文官の皆さんは対処に大忙しだ。

 

しかし新しい領地を得た訳ではないので、むしろ武官の方が忙しい。

 

投降した将や兵に加え、新兵の増加により調練が繰り返された。

 

有能な将が増えたことにより、大規模な編成変えの案もでてきているようだ。

 

軍部の頂点の刹那様は多忙を極めた。

 

こないだ用事がったので部屋に行ったら、書類の量に圧倒された。

 

武官なんてものはほとんどが、肉体派だ。

 

難しい書類仕事なんかできないものが多い。

 

下級将校でさえ字をほとんど読めないもの珍しくない。

 

書類仕事が手伝えるのは秋蘭様と愛紗さんぐらいのものだ。

 

しかし刹那様は現場での仕事は完全に諦め、書類仕事に専念しているが、二人はそうはいかない。

 

自分の隊の調練もしなくてはならず、付きっきりと言う訳にはいかなかった。

 

そこで白羽の矢が立ったのが詠ちゃんだ。

 

投降してきて間もないものに重要な仕事を任せるのは危険だと言うものもいたが、華琳様が黙らせた。

 

詠ちゃんの実力は相当なものらしい。

 

物凄い早さで仕事を処理しているとのことだ。

 

月ちゃんは詠ちゃんの専属の侍女となり、今は二人のお世話をしている。

 

お茶を入れたり、書類を運んだりなどだ。

 

呂布と陳宮は例の孤児院で丁原と赤兎と暮らしているらしい。

 

曹操軍は確実に勢力を増して来ている。

 

しかしそれ以上に力を付けているところがある。そう袁紹だ。

 

当然と言えば当然であろう。

 

反董卓連合の総大将を見事に務め、董卓の首を取ったのだ。

 

華琳様達の考えでは先に公孫賛のところに攻め込む読み、その間にどれだけ力を付けられるかが勝負だという事だ。

 

 

私は今、凪ちゃんと共に刹那様の部屋に向かっている。

 

今日は朝早くから軍議がある為、刹那様を起こしに行くのだ。

 

普段は焔か瑠璃ちゃんが起こしているのだが、今日は二人とも公孫真さんの手伝いでいない。

 

何をやっているのかは知らない。

 

おそらく知っているのは刹那様だけではないだろうか。

 

部屋につき、外から声をかけるが当然反応はない。

 

扉を開けて中に入る。

 

机の上には大量の書類がつまれていた。

 

刹那様は布団に倒れるようにして眠っていた。

 

なんだか起こすのが可哀想な気もするが、起こさないとまずい。

 

「刹那様―、朝ですよー、軍議ですよー、起きてくださ~い」

 

身体を揺するも反応なし。

 

さらに続けると、突然刹那様が素早く動いた。

 

そしてなぜか私は布団に寝て、天井を見上げていた。

 

私は刹那様に覆いかぶさるようにして抱きしめていた。

 

私を抱き枕にして寝ないでくださいよ!

 

この状態はまずい!とにかくまずい!

 

刹那様の吐息が首筋に当たり、くすぐったい。

 

私は凪ちゃんに助けを求め、視線を向けるが、彼女は真っ赤な顔をして硬直していた。

 

純情な子だから仕方がないとはいえ、助けてよ!

 

私は自力での脱出を試みた。

 

しかし自分より体格も力もある男性から逃れられるはずもなく、多少位置がずれただけだった。

 

そしてその行動が事態を悪化させた。

 

気がつけば刹那様の顔が私の胸に!

 

いやいやいやいや!これはまずい!!

 

誰だ!今、お前に胸なんかないだろうって思った奴!!

 

ちゃんとあるわ!年相応だ!

 

これは殴って良いはずだ。

 

別に尊敬している刹那様なので、気持ち悪くも、嫌でもないのだが恥ずかしい。

 

私の拳が殺意を纏い、刹那様の頭に襲いかかる。

 

そしてまたしても世界が反転した。

 

気がつけば私は刹那様に殴りかかった腕をきめられ、うつぶせに抑え込まれていた。

 

「……なんだ貴様。刺客か?殺すぞ」

 

刹那様が耳元でどすの利いた声で囁く。

 

ぎゃーー!この人完全に寝ぼけているよ!!

 

助けてーーーー!!

 

「お、落着いてください、刹那様!早苗です!」

 

硬直していた凪ちゃんが叫ぶ。

 

「あ?…………何やっているんだ、お前?」

 

何やっているか?あなたに殺されそうになっていましたよ。

 

なるほど、なんで秋蘭様が『二人で行け』と言ったか意味が分かった。

 

一人だとどうなっていたのか考えたくない。

 

詳しくは知らないが刹那様のこれは、幼少のころ寝込みを襲われたことが原因らしい。

 

 

Side:凪

 

なんとか起こしたシギ様と移動中だ。

 

歩いていると突然、刹那様が立ち止まった。

 

何かあったのかと顔を見ていみと、眼を閉じ、ゆっくりと深呼吸をしていた。

 

深呼吸を何度か繰り返したのち、何事もなかったように歩きはじめた。

 

何も言ってこないという事は触れてはいけないことなのか?

 

 

 


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