真・恋姫無双 華琳の兄は死神   作:八神刹那24

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第七話

今回は刹那と華琳の過去編です。

かなりオリジナル設定になっていますのでご了承ください。

 

 

 

 

Side:刹那

 

俺は陳留の街で刺史をしている男の妾の子として生を受ける。

 

本妻との間に子供はまだ出来ていなかった。

 

父は俺と母をそれなりに愛し、大切にしてくれていた。

 

本妻とはうまくいっていなかった。

俺の母は平民であり、父に見初められて結ばれたらしい。対する本妻はどこかの名家の出らしく、誇りが高く平民であった母を常に見下さしていた。

 

周囲の人間も多くは本妻側についていた。平民出の母の身は狭いものだった。母は俺と一緒に暮らせてたまに、父が会いに来てくれるだけで幸せだと言っていた。争いなんて言葉とは程遠い温和な人だった。

 

母と俺がなんとか居場所を保てていたのは子供が俺一人だったからである。

 

しかし俺が五歳になったとき、本妻が子供を産んだ。

女の子である。そう、その子こそが華琳である。

 

 

よくある話だ。新しい子供が生まれればその子ばかり構って、上の子はほったらかし。父も華琳のところには毎日のように通っていたが、俺達のところには全く来なくなった。

外見の差もあったかもしれない。俺は母と同じ黒髪、黒目で顔立ちも母に似ていた。父に似ているところは皆無だった。

華琳は父と同じ金髪、青目。顔立ちは流石に似なかったが。舞い上がっている父にはあちこち似ているように見えたらしい。

 

どんどん屋敷内での俺達の立場は狭くなっていった。俺は幼いながら自分達の立場を感じ取った。これ以上母に惨めな思いをさせたくない。

 

そんな俺が出した答えは自分こそが家督を継ぐのに相応しいことを証明することだった。

当時八歳のことである。

 

才能と努力により俺の力は段々と周囲に認められるようになっていった。

 

しかし華琳が五歳になったあたりから、天才たる才能を発揮し始め俺は焦った。

 

勿論、年齢差があるのでいきなり追い付かれるなんてことにはならない。しかし当時の自分と比べると明らかに華琳が勝っていた。

 

誤解が無いように言っておくが俺は華琳のことを嫌いではなかった。敵とも思っていない。

 

たまに会うと俺のことを『お兄ちゃん』と呼び、遊んでと言う。遊んでやると楽しいそうに笑いその笑顔が好きだった。

‘たまに’というのは本妻が華琳が俺達親子と会うことを嫌い、遠ざけていたからである。

 

 

その後も俺は努力を惜しまなかった。だがいくらやっても華琳との差は広がるところか縮まっていった。

 

俺が十五、華琳が十。この頃になると周りもどちらに才能があるのか理解していた。

俺自身が一番分かっていた。華琳は俺なんか足元にも及ばない天才だ。どう足掻こうと勝ち目なんてないことを。

 

華琳はその当時ですら、俺を兄として慕ってくれていた。

華琳は賢い子だ。俺達の状況を理解できていないわけがない。俺の気持ちも分かっているはずだ。だが俺への接し方は一向に変わらなかった。

 

俺にとって華琳は大切な妹だ。母と同じくらい掛替えのない存在だった。

 

だが、まったく恨んでいないかといえば嘘になる。

 

なんで神は俺でなく、華琳にあれほどの才能を与えたのか。

華琳さえ生まれてこなければ俺達はこんな惨めな思いはしなかったのではないか。

 

華琳には何の罪もない。そんなことは分かっている。たが思わずにはいられなかった。

 

答えの出ない自問自答を繰り返せば繰り返すほど、自分が汚れた存在だと思った。

 

 

 

 

 

 

…別れは突然訪れた

 

母が倒れた

 

意識が戻らない

 

翌日、目が覚めると母が息をしていなかった

 

母は二度々目を覚ますことは無かった

 

 

 

 

本当に悲しんでいるのか、ただの形式的なものか分からないが葬式は行われた。

 

地元の有力な豪族が母と俺をけなし始めた。この男はたいした理由もなく俺達のことをさなしていた。俺達は死んでもなおけなされるのか。この男に手を出せば父は俺達を許さないだろう。俺は耐え続けた。

 

しかし母が死んだ今、耐える必要なんかない。守りたい人はもういないのだから。

我慢する必要なんかもうないじゃないか。例え殺されたとしても、こんな惨めな思いに耐えて生きていくよりはましだろう。

 

俺は最早どうでもよくなった。ただただ感情のままにこの男を殺してしまおう。

 

俺が男の首を刎ねようと剣に手を伸ばした瞬間、男の顔を誰かが殴った。

 

華琳だった。

 

その晩、華琳が俺の部屋にやってきた。泣きながら謝り続けた。

 

気がつけば泣き続ける華琳を俺は抱きしめていた。小さな肩だ。俺はこんな少女に重荷を背負わせてきたのだな。華琳も辛かったのだ。華琳の母親は自分の地位を守るために華琳を利用していただけだ。ただの道具だった。俺は気付いていながら気付かない振りをしていたのだ。

 

泣かないでくれ、華琳。笑ってくれ。お前の笑顔で俺は何度救われたことだろうか。お前がいなければ俺はとっくに壊れていたはずだ。

 

守りたい人はもういない?…違う。華琳を守らなければ。今まで俺を救ってくれたんだ、今度は俺が守ってやる番だ。

 

 

 

この世のあらゆるものからお前を守ろう

 

例えどんな卑劣な手段を使おうとも

 

お前が俺を必要なくなるその日まで

 

 

 

華琳  愛しているよ  俺の大切な妹よ

 

 

この時俺達は真の兄弟になったのだ。

 


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