マクロスΔ 空飛ぶニワトリ   作:マルク

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YVFー22VG評価会議①

ゼネラルギャラクシー社・統合航空技術開発局。

 

 

巨大モニターに一機のVFが映っていた。

 

灰色。

 

可変後退翼。

 

YVF-22VG。

 

会議室には重苦しい沈黙が流れている。

映像の中でYVF-22VGが敵機編隊へ突入した。

 

急制動。

 

慣性を無視したような反転。

 

失速寸前の機首制御。

 

普通ならスピンする。

 

だが機体は墜ちない。

 

まるで風へ引っ掛かるように、あり得ない軌道で滑っていく。

 

技術主任が眉を顰めた。

 

「……今の何だ」

 

誰も答えられない。

 

別角度映像。

 

YVF-22VGがデブリ帯を抜ける。

 

回避軌道が異常だった。

 

コンピューター推奨ルートを完全無視。

 

なのに被弾ゼロ。

 

副主任が端末を確認する。

 

「姿勢制御補助、途中で切ってます」

 

「は?」

 

「マニュアル制御へ移行」

 

「戦闘中に?」

 

ざわめき。

 

映像内のセスはまるで機体を“滑らせて”いた。

 

推力だけじゃない。

 

空気流。

 

慣性。

 

微細振動。

 

全部を感覚で繋いでいる。

 

解析班が困惑した声を上げる。

 

「この機動、再現不能です」

 

「シミュレータ結果は?」

 

「再現率12%以下」

 

「低過ぎるだろ」

 

「というか普通は墜落します」

 

別の技術者が呻く。

 

「YVF-22VGにこんな挙動余裕ないぞ…」

 

そこへ、老技術顧問がぽつりと言った。

 

「いや」

 

全員が振り向く。

 

老人は映像を見つめたまま呟く。

 

「機体側が応えてる」

 

沈黙。

 

若手社員が怪訝そうに聞く。

 

「……どういう意味です?」

 

老人は腕を組む。

 

「22系は元々そうだ」

 

「?」

 

「乗り手を選ぶ」

 

モニター内。

 

YVF-22VGが限界旋回。

 

翼が悲鳴みたいに震える。

 

普通なら空中分解してもおかしくない。

 

しかし、その瞬間だけ機体が“粘る”。

 

副主任が唸った。

 

「機体特性限界値を越えてる…」

 

「違う」

 

老人が首を振る。

 

「越えてない」

 

「え?」

 

「限界の“使い方”を知ってる」

 

会議室が静まり返る。

 

再生。

 

停止。

 

再生。

 

技術者達は何度も映像を確認する。

 

だが分からない。

 

理論が見えない。

 

ある若手が苛立ったように言う。

 

「こんなの偶然ですよ」

 

間髪入れずに老人が低く返した。

 

「偶然で空戦は生き残れん」

 

再び空気が重くなる。

 

そこへ別モニターが起動。

 

セスのプロフィール。

 

元新統合軍中尉。

 

辺境勤務。

 

実戦回数多数。

 

現在フリー契約。

 

死亡率の高い宙域で異常な生還率。

 

若手社員が顔を引き攣らせた。

 

「…なんですかこの戦歴」

 

「生き残り過ぎだろ」

 

「しかも全部旧式機運用?」

 

老人は静かに笑った。

 

「“空に好かれてる”タイプだな」

 

誰かがぼそっと呟く。

 

「イサム系ですか?」

 

即座に別人が否定する。

 

「いや違う」

 

「もっと危うい」

 

モニターの中でYVF-22VGが敵機を撃墜する。

 

その飛び方はどこか綺麗だった。

 

でも同時に壊れそう(・・・・)でもある。

 

副主任が低く言った。

 

「……このパイロット」

 

「?」

 

「死ぬ事を怖がってないとか?」

 

会議室が静かになる。

 

老人だけが、じっと映像を見ていた。

 

やがてぽつりと呟く。

 

「少し違うな」

 

「え?」

 

「死に場所を探して飛んでるのだ」

 

その言葉に誰も反論できなかった。

 

数秒後。

 

開発局長が口を開く。

 

「確保しろ」

 

全員が顔を上げる。

 

局長は続けた。

 

「YVF-22VGは失敗作じゃない」

 

「……」

 

「“乗り手が居なかっただけ”だ。これなら勝てる。新星インダストリー社に勝てるぞ!!」

 

そしてモニターの中では、灰色のVFがまるで生き物みたいに空を裂いていた。

 

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