独自設定・オリジナル展開あり。
よろしくお願いします。
ゼノ・ジーヴェルがFairy Tailへ帰還してから数日。
Fairy Tailのギルドは、今日も朝から騒がしかった。
ナツ「おらぁっ!!」
グレイ「ぶっ飛べ燃え猿!!」
ギルド中央でナツとグレイが机ごと吹き飛びながら喧嘩している。
バゴォン!!と派手な音を立てて机が真っ二つになった。
ルーシィ「だからなんで朝から戦ってんのよあんた達は!!」
ハッピー「あい、元気だねぇ」
ハッピーは焼き魚を齧りながら呑気に笑っている。
その横ではエルフマンが拳を振り上げていた。
エルフマン「男なら朝から全力だぁぁぁ!!」
ルーシィ「毎回思うけどそれ絶対関係ないわよね!?」
さらに奥ではカナが酒樽を抱えて大笑いしている。
カナ「がははっ!!今日も騒がしいねぇ!!」
レビィ「もう少し静かにしてほしいんだけど……」
マカオ「朝から元気だなぁお前ら……」
ワカバ「まぁFairy Tailらしいけどな」
ルーシィ「カオスすぎる……」
ルーシィは深くため息を吐きながらカウンター席へ座る。
その隣では、ゼノが静かにコーヒーを飲んでいた。
黒を基調とした長いコート。
裾には和装のような意匠が入っており、動く度に僅かに揺れる。
長い黒髪は背中へ流れ、暗赤色の瞳は静かにギルド内を見渡していた。
背はエルザより少し高い。
それなのに、不思議と威圧するような立ち方はしていない。
ただそこに座っているだけ。
それだけなのに、妙に目を引く。
相変わらず黒い手袋は外していない。
ルーシィはそっとゼノを見る。
第1印象は“怖い人”。
だが、数日見ていると少し印象が変わってきていた。
静かで、必要以上に喋らない。
けれど、ギルドの様子はちゃんと見ている。
ナツ達が騒いでも、本気で怒ることはない。
どちらかと言えば、“見守っている”に近かった。
ルーシィ(こうして見ると、普通に綺麗な人なのよね……)
その時。
マカロフ「ゼノ」
カウンター奥からマカロフが声を掛ける。
ゼノ「……なんだ」
マカロフ「帰ってきてから少しは休んどるのか?」
ゼノ「問題ない」
マカロフ「お主の“問題ない”は信用ならん」
カナ「がははっ、確かに!」
ギルド内に笑いが起こる。
ゼノは少しだけ眉を寄せた。
ゼノ「……善処はしている」
マカロフ「ならよい」
そのやり取りは、長年連れ添った家族のようだった。
だが。
その静かな空気をぶち壊すようにナツが突っ込んだ。
ナツ「ゼノォォォ!!」
ナツ「勝負しろぉぉぉ!!」
ルーシィ「またぁ!?」
炎を纏った拳を振り上げ、ナツが一直線に飛び込む。
しかし。
ゼノ「……朝から元気だな」
ゼノは座ったまま、片手でナツの顔面を止めた。
ナツ「ぬぉぉぉぉぉ!?」
拳が届く前に完全に止められている。
ナツはそのまま押し返され、床を転がった。
ハッピー「あーあ」
グレイ「学習しねぇなこいつ」
ルーシィ「座ったまま止めたんだけど!?」
ゼノは小さく息を吐き、再びコーヒーへ口をつける。
まるで何事もなかったような様子だった。
ノヴァ「懲りないな、お前達も」
ゼノの肩で、黒いエクシード――ノヴァが呆れたように呟く。
ルーシィ「ゼノさんって昔からあんな感じなの?」
グレイ「ああ。昔から静かなのに怖ぇ」
ナツ「でも強ぇぞ!!」
エルザ「ナツがあそこまで真正面から突っ込める相手も珍しいがな」
いつの間にか近くへ来ていたエルザが静かに言う。
ゼノ「……否定はしない」
エルザ「昔はもう少し容赦がなかった気もするが」
ゼノ「……気のせいだ」
カナ「いや絶対気のせいじゃないねぇ」
カナが笑いながら酒を煽る。
カナ「昔のゼノはもっと怖かったからねぇ」
ルーシィ「えっ、今より?」
グレイ「王都の闇ギルド連中が泣いて逃げるくらいには」
ルーシィ「怖っ」
ゼノ本人は何も言わない。
ただ静かにコーヒーを飲んでいる。
その時。
ハッピーがゼノのテーブルに着地した。
ハッピー「ゼノっていつ寝てるの?」
ルーシィ「ちょ、ハッピー」
ゼノ「……寝ている」
ハッピー「でも夜も起きてるよ?」
ノヴァ「こいつは昔から睡眠が浅い」
ルーシィ「昔から?」
ノヴァ「長いからな」
ルーシィ「その“長い”って結局なんなのよ……」
ノヴァは小さく笑うだけだった。
すると今度はカナが酒瓶を片手に近寄ってくる。
カナ「ゼノぉ、飲もうじゃないか」
ゼノ「……朝だぞ」
カナ「だから?」
ルーシィ「だから!?じゃないわよ!!」
カナ「昔は付き合ってくれたじゃないかぁ」
ゼノ「……お前が潰れるまで付き合わされただけだ」
カナ「がははっ!!違いない!!」
ギルド内に笑いが起こる。
ルーシィは少し驚いていた。
ゼノはもっと近寄り難い人だと思っていた。
だが実際は、ちゃんとギルドへ溶け込んでいる。
それも、“昔からそこにいた人”のように。
その時。
ミラが依頼書を持って近付いてきた。
ミラ「ナツ、ちょうどいい依頼あるわよ?」
ナツ「おっ、マジか!?」
ミラ「近くの村で魔獣討伐。そこまで危険じゃないみたい」
ナツ「行くぞルーシィ!!」
ルーシィ「え、ちょっ、強引!!」
ハッピー「あい!」
グレイ「ったく、しゃーねぇな」
エルザ「私も同行しよう」
ルーシィ「エルザさんも!?」
騒がしく飛び出していくナツ達を見送りながら、ゼノが小さく呟く。
ゼノ「……相変わらず慌ただしい連中だ」
エルザ「だが、それがFairy Tailだろう」
エルザが静かに言う。
ゼノは少しだけ目を細めた。
ゼノ「……否定はしない」
そのやり取りを見ながら、ルーシィは思う。
ルーシィ(なんかこの人、思ってたよりちゃんとFairy Tailなんだ……)
⸻
依頼自体は順調だった。
ナツが魔獣を吹き飛ばし、グレイが凍らせ、エルザが一刀のもとに叩き伏せる。
ルーシィも少しずつ連携へ慣れ始めていた。
ナツ「燃えてきたぁぁ!!」
グレイ「無駄に建物壊すな!!」
ルーシィ「ちょっと!周り見なさいよ!!」
エルザ「ナツ」
ナツ「はい」
エルザに睨まれ、ナツが一瞬で大人しくなる。
ルーシィ(エルザさん相手だけは本当に素直なのよね……)
魔獣討伐を終え、一行はマグノリアへ戻っていく。
ナツ「よっしゃぁ!!飯食い行こうぜ!!」
ハッピー「あい!魚ぁ!」
グレイ「騒がしいなお前ら……」
そんな、いつも通りの帰り道。
だが。
街へ近付いた瞬間。
ルーシィは違和感に気付いた。
ルーシィ「……え?」
人が集まっている。
ざわついている。
妙な空気だった。
そして。
見えた。
Fairy Tailのギルドが。
――半壊していた。
ルーシィ「なっ……!?」
ナツ「……は?」
いつも騒がしいギルド。
皆が笑っていた場所。
その建物が、無惨に破壊されている。
窓は砕け、壁は崩れ、看板は地面へ落ちていた。
煙まで上がっている。
ルーシィ「うそ……」
言葉が出ない。
周囲では街の人々もざわついている。
「あれ、Fairy Tailだろ……」
「誰がこんなこと……」
「魔導士ギルド同士の抗争か……?」
ナツの拳が震える。
ナツ「誰だ……」
低い声だった。
怒りを押し殺したような声。
エルザもまた、静かにギルドを見上げていた。
エルザ「……許し難いな」
その声には、はっきりと怒気が混じっていた。
グレイも表情を消している。
グレイ「冗談じゃねぇぞ……」
その時。
崩れたギルドの中から、マカロフ達が姿を見せた。
ミラも、カナもいる。
そして。
ゼノもいた。
崩れた木材の横で、静かに立っている。
長いコートには木屑が付いていた。
暗赤色の瞳だけが、妙に冷えて見える。
周囲の空気まで静まり返るような感覚。
ルーシィ「みんな無事なの!?」
ミラ「ええ、怪我人はいないわ」
ナツ「誰がやった!!」
ナツが怒鳴る。
空気が震えるほどの怒声。
だが。
マカロフは静かに答えた。
マカロフ「……幽鬼の支配者(ファントムロード)じゃ」
ギルド内がざわつく。
ルーシィ「ファントムロード……」
グレイ「なんでいきなり……」
エルザ「以前から小競り合いはあった」
カナ「ま、ついにやったかって感じだねぇ……」
だがナツは納得していなかった。
ナツ「ふざけんな……!!」
炎が噴き上がる。
ナツ「今からぶっ飛ばしに行くぞ!!」
グレイ「あぁ!!」
ルーシィ「ちょ、ちょっと!?」
今にも飛び出しそうになるナツ達。
しかし。
マカロフ「やめんか」
低い声が響いた。
その一言だけで、場の空気が止まる。
マカロフ「ボロ酒場を夜中に壊すような連中に構う必要はない」
ナツ「でもよォ!!」
マカロフ「今ここで感情任せに動けば、連中の思う壺じゃ」
ナツは悔しそうに歯を食いしばる。
その横で。
ゼノは何も言わない。
ただ静かに、壊れたギルドを見ていた。
マカロフ「……ゼノ」
低い声。
その一言だけで、ルーシィは空気が変わったのを感じた。
ゼノはゆっくりと目を向ける。
ゼノ「……分かっている」
短い返答。
だが。
そのやり取りだけで理解できた。
マカロフは、ゼノが本気で怒っていることを理解している。
そしてゼノもまた、マカロフが何を止めようとしているのか分かっていた。
ふと。
ゼノの足元の地面へ、小さな亀裂が走った。
誰も気付いていない。
だがルーシィだけは見た。
ゼノの周囲だけ、空気が妙に熱い。
ノヴァ「……やめておけ」
小さく呟く。
ゼノはゆっくり目を閉じた。
そして。
ゼノ「……分かっている」
今度の声は、先ほどよりもずっと静かだった。
読んでいただきありがとうございます。
感想などがありましたらよろしくお願いします。