独自設定・オリジナル展開あり。
よろしくお願いします。
ギルドが破壊された、その夜。
ルーシィの部屋には重い空気が流れていた。
テーブルを囲んでいるのは、ナツ、グレイ、エルザ、そしてハッピー。
誰も普段みたいに騒がない。
ナツは椅子へ深く座り込み、苛立ったように舌打ちする。
ナツ「クソッ……」
グレイ「落ち着け」
ナツ「落ち着いてられるかよ!!」
ナツの拳が机へ叩き付けられる。
ガタッ、とカップが揺れた。
ルーシィ「ちょ、ちょっと!」
だがナツは止まらない。
ナツ「なんなんだよアイツら!!」
ハッピー「あい……」
いつも元気なハッピーでさえ、今日は静かだった。
そんな中。
エルザが静かに口を開く。
エルザ「相手は幽鬼の支配者だ。簡単な相手ではない」
ルーシィ「そんなに有名なの?」
グレイ「あぁ。Fairy Tailと並ぶ大規模ギルドだ」
グレイ「前から張り合ってたんだよ。依頼数も、規模もな」
エルザ「そしてマスターのジョゼは聖十大魔道」
ルーシィ「聖十大魔道!?」
ルーシィが目を見開く。
その反応へ、グレイが小さく頷いた。
グレイ「この国で最も優秀な魔導士に与えられる称号だ」
ルーシィ「じゃ、ジョゼって人はマスターと同じくらい……?」
エルザ「実力だけなら並んでいると言われている」
ルーシィ「そんな相手と喧嘩してるの!?」
ナツ「喧嘩じゃねぇ!!」
ナツが顔を上げる。
ナツ「向こうが先に手ぇ出したんだろ!!」
炎が小さく揺れる。
怒りを抑え切れていない。
グレイ「だからって今突っ込めば向こうの思う壺だ」
ナツ「でもよォ……!」
エルザ「気持ちは分かる。だが、今のFairy Tailは感情任せに動くべきではない」
ナツ「だったら黙ってろってのかよ!!」
エルザ「そうは言っていない」
静かな声だった。
だが、その目にははっきりと怒りが宿っている。
エルザもまた、冷静なだけで怒っているのだ。
ルーシィはそんな皆を見回しながら、小さく息を吐いた。
ルーシィ(本当に怒ってるんだ……)
今日初めて知った。
Fairy Tailの皆は、ギルドを何より大事にしている。
壊された建物に怒っているんじゃない。
“居場所”を傷付けられたことへ怒っているのだ。
その時。
ルーシィ「……そういえば」
ふと思い出したように口を開く。
ルーシィ「ゼノさん、全然喋らなかったわね」
その瞬間。
部屋の空気が少し変わった。
グレイ「……まぁな」
エルザ「ああいう時ほど静かになる」
ルーシィ「やっぱり怒ってたのよね?」
ナツ「そりゃ怒るだろ」
ナツは即答した。
ナツ「ゼノ、Fairy Tailめちゃくちゃ大事にしてるし」
ハッピー「あい。昔からずっといるしね」
ルーシィ「ゼノさんって、いつからFairy Tailにいるの?」
グレイ「さぁな。気付いた時にはいた」
ハッピー「あい」
エルザ「少なくとも、私が入る前からいたな」
ルーシィ「なにそれ怖いんだけど……」
だが。
誰も冗談を言っている顔ではなかった。
それだけ長く、ゼノはFairy Tailにいる。
ルーシィは改めて、あの静かな女性の異質さを感じていた。
ルーシィ「でも、なんか怖かった……」
ギルドで感じた空気を思い出す。
静かなのに熱かった。
まるで噴火寸前みたいだった。
すると。
グレイ「まぁ実際、昔のゼノは今よりもっと危なかったらしいけどな」
ルーシィ「え?」
エルザ「私も詳しくは知らない。だが、マスター達が止めていた時期があったらしい」
ルーシィ「止めるって……」
グレイ「昔は今より加減効かなかったって話だ」
ナツ「でも今のゼノはちゃんと抑えてるぞ?」
ナツは迷いなく言った。
そこに不安はない。
完全に信頼している顔だった。
ルーシィは少し驚く。
ナツはゼノを怖がっていない。
むしろ、“頼れる人”として見ている。
ハッピー「あい。ゼノは怖いけど優しいよ」
ルーシィ「その感想複雑なんだけど……」
少しだけ。
部屋の空気が緩む。
だが。
ナツの表情はまだ険しいままだった。
ナツ「……絶対許さねぇ」
小さく漏れた声。
ルーシィは窓の外を見る。
マグノリアの夜は静かだった。
けれど。
その静けさの奥で、何かが確実に軋み始めている気がした。
翌朝。
Fairy Tailの空気は完全に変わっていた。
怒り。
殺気。
昨日までとは比べ物にならないほど重い。
崩れたギルド跡地では、朝から修復作業が続いている。
だが誰も笑わない。
誰も騒がない。
木材を運ぶ音だけが静かに響いていた。
ミラも笑顔を作ってはいる。
けれど、その笑顔はどこか硬かった。
ミラ「そこ、もう少し右お願い」
マカオ「おう」
ワカバ「ったく、派手にやりやがって……」
少し離れた場所では、カナが酒瓶を持ったまま無言で座っている。
いつものように騒ぐこともない。
ギルド全体へ、重苦しい空気が漂っていた。
その片隅で。
ゼノは崩れた柱を一人で持ち上げていた。
何人かで運ぶような太い柱。
それを片腕だけで静かに動かしていく。
その姿を見たルーシィは思わず目を丸くした。
ルーシィ(やっぱり普通じゃない……)
だが。
周囲のメンバー達は誰も驚いていない。
それが“当たり前”のようだった。
その時。
マカロフ「……珍しく静かじゃな」
視線の先。
ゼノは崩れた柱を見つめたまま答える。
ゼノ「いつも静かだ」
マカロフ「そういう意味ではないわい」
短い沈黙。
ゼノは何も言わない。
ただ静かに、壊れたギルドを見ている。
マカロフ「抑えろ」
低い声だった。
だがそこに警戒はない。
長年連れ添った家族へ言い聞かせるような声だった。
ゼノ「……分かっている」
マカロフ「お主は昔から極端なんじゃ」
ゼノ「終わるなら早い方がいい」
マカロフ「阿呆」
即答だった。
マカロフ「Fairy Tailはお主一人のギルドではない」
少しの沈黙。
その後。
ゼノ「……分かっている」
今度の返事は、先ほどより静かだった。
その時だった。
ギルドの扉が勢いよく開かれる。
アルザック「大変だ!!」
血相を変えたアルザックが飛び込んできた。
アルザック「レビィ達が……!!」
その場所へ辿り着いた瞬間。
ルーシィは息を呑んだ。
ルーシィ「……っ!」
壁。
そこへ磔にされていたレビィ達。
全身傷だらけだった。
周囲には大量の血痕。
そして。
壁へ刻まれた、幽鬼の紋章。
ルーシィの背筋が凍る。
今まで見たこともない光景だった。
ギルド同士の喧嘩。
そんな軽いものじゃない。
これは明確な悪意だ。
敵意だ。
ナツ「……」
ナツの顔から表情が消える。
グレイ「ふざけんなよ……」
エルザ「……下劣だな」
周囲の空気が変わる。
怒り。
殺気。
それが一気に膨れ上がる。
ルーシィの身体が震えた。
その中で。
ゼノだけは何も言わなかった。
静かにレビィ達を下ろし、地面へ横たえる。
その動きだけは驚くほど丁寧だった。
だが。
その暗赤色の瞳だけが、妙に冷たい。
ルーシィ(怖い……)
昨日よりも。
ずっと。
空気が重い。
ふと。
ゼノの足元の石畳へ、小さな亀裂が走った。
ジリ、と熱が伝わる。
ルーシィは思わず息を呑む。
ノヴァ「……ゼノ」
小さな声。
制止するような響き。
だがゼノは動かない。
静かなまま。
その時。
前へ出たマカロフが、レビィ達を見て。
その小さな背中から、凄まじい怒気が溢れていた。
マカロフ「……ボロ酒場までなら我慢できたんだがな……」
低い声だった。
だが、その場の誰もが息を呑む。
マカロフ「……ガキの血を見て黙ってる親はいねぇんだよ……」
――バキッ!!
マカロフの杖が握り潰される。
その瞬間。
空気が震えた。
マカロフ「戦争じゃ」
静かな一言。
だが。
その言葉だけで、Fairy Tail全体の空気が変わった。
ゼノは静かに手袋を見下ろしていた。
ギリ、と革が軋む。
ルーシィ「ゼノさん……」
ゼノは小さく目を閉じる。
そして。
ゼノ「……行くぞ」
その一言だけだった。
だが。
その声に含まれた熱量に、ルーシィは背筋が震えた。
静かな声。
なのに。
まるで噴火寸前の火山みたいだった。
読んでいただきありがとうごさいます。
次回から幽鬼との全面戦争ですね。
感想などありましたらよろしくおねがいします。