大筒木一族の襲撃は一度に留まらなかった。
ナルトの持つ大きな力は、いわば争いを呼ぶ火種。自分のために里を巻き込むわけにはいかないと、七代目火影・ナルトはシカマルに里を託し、大筒木と対峙するべく里を出た。その傍らには、隻腕の戦友の姿もあったという。
大筒木一族の侵略者は風の国との国境付近でナルトとサスケにより敗北した。
その時、二人を道連れにすべく最後の術が発動した。
チャクラは激しい戦闘により欠乏している。その衝撃から身を守るには輪廻眼による時空間移動の他にすべはなかった。
「ナルト!」
「ぐっ……」
巨大な重力に逆らい、ナルトはサスケの手を掴む。
視界が白み、意識が遠退いてゆく。
湿った土と草の上。ナルトは目を覚まし飛び起きると、すぐにサスケの姿を探した。
「サスケェェ!」
叫んだが返事はない。サスケも同様にチャクラが欠乏しているはずであり、倒れているかもしれないと、ナルトは仙人モードで感知しようと目を閉じた。そして、自身に流れ込む自然エネルギーの異変に気がつく。
「……なんかいつもと違うってばよ。空気が、違う……?」
一体何が違うというのか。木々が生い茂り、空は青く澄んでいる。見慣れた自然風景しかない。しかし、ここは元いた世界ではないと、不思議なことに察することができた。
しばらくするとこの空気にも慣れてきたのか、サスケのチャクラを感知できるようになった。チャクラも術を使える程度には回復し、ナルトは印を結ぶ。
ーーー影分身の術
五人のナルトの影分身はそれぞれ別の方角に姿を消した。
思っていたよりも離れてはいなかったようで、少し歩いたところに彼は横たわっていた。
その場に膝を折り、両眼から滴る赤い血を指で拭うと、なんとなく違和感がして顔を覗き込む。
「ん……?なんかちょっと若ぇ気が……」
そんなはずはない。気のせいだろうと、サスケの頬をペシペシと叩いたり肩を揺すったりするが、目を覚ます気配はない。
目立った外傷は無く、おそらくチャクラ切れと瞳力切れだろうと思い至る。こうなったら休んで自然にチャクラが回復するのを待つしかない。ナルトは九尾チャクラをサスケに与え、肩に担いだ。
周囲を探らせている影分身から情報を得るため、解術すると同時に影分身の得た情報が頭に流れ込んでくる。
ここはナルトが生きていた時代よりも昔のようであった。だが、先程ナルトが直感したようにここはどこか別の場所だ。過去ではない。額あてをしている者はおらず、忍がいない世界なのだろう。
影分身から得た情報をもとに森を駆け、通りに出る。
太陽の位置からすると、この一本道は北へと向かっている。その先に町のようなものが見えていた。
「とりあえず、宿でも探さねぇと……」
元の場所に戻るにはサスケの瞳力の回復を待つ必要があった。
朱塗りの壊れかけた大きな門の前には、食うに困ったような者たちが屯していたが、彼らはナルトの姿を見るなり顔色を変えて逃げたり、物陰に隠れたりした。
「鬼だ……!」
その者たちは口々にそう言う。
「鬼って、オレのことを言ってんのか?」
ナルトはわけが分からないまま、その門の敷居を跨いだ。
幼いあの頃、九尾の妖狐と後ろ指刺されていた日々を彷彿とする。ああ、またか。似たような感じだと、久々の感覚に顔に影が落ちた。
その後もすれ違い様にナルトを見る人の反応は変わらない。気づいた者は道の端に避け、憶測にすぎない言葉が行き交っていた。
「人を拐って一体どうするんだ……?」
「あの人、生きているんだよな?」
「殺されたのか……?」
あまりいい気分はしない。どうやら肩に担いでいるサスケを見て、ナルトが人を拐っていると思ったらしい。
「勘違いすんな!こいつはオレの友達で、疲れてっから休むとこ探してるだけだってばよ!」
散々な言われようで段々腹が立ってきたナルトは、そう喚き立てると人々は押し黙って後ずさる。
「なんなんだよ。ったく……。オレが悪モンみてーじゃねえか……」
地面を伝い、蹄の音を感じた。その数は三十程度。
「くそ……っ」
逃げることは簡単だ。この場に忍はいない。だが、話のわかる人間を見つけなければ休むことのできる場所を探すこともできない。
ここの人々の身なりとナルトの橙色の上着とを比較すると、明らかに浮いている。お尋ね者になるのは目に見えていた。
そうこうしているうちに馬に乗った武装した者が現れた。
「動くな!」
槍や刀を向ける者たちは、どこか侍に似ているとナルトは思った。
「オレが何したってんだよ。こいつはオレの友達で……」
「何をしたかだと?とぼけるな!この都が穢れを撒き散らしたのはお前たちだろう!」
「けがれ……?」
聞き慣れない言葉にナルトは首を傾げた。
「とぼけるな!」
槍や刀を持った男たちは更に距離を詰める。
そのとき、少女の声が響いた。
「やめてください!武器を下ろして。私が話します!」
人が多すぎてナルトの場所からはその姿は見えない。しかし、ナルトを取り囲んでいた円陣が割れると彼女の姿が見えた。まだ成人もしていないであろう少女であった。従者らしい者を数人従えている。
従者の一人の長身の男と、派手な格好をした美丈夫は、ナルトを取り囲んでいた者たちの責任者らしい男になにか話していた。
少女はナルトに近づいて声をかけようとしたが、もう一人の従者がそれを遮った。作られた人形のような外見からは男性か女性か判断に迷うが、その声から男性であることがわかる。
「場所を変える。両手を出せ。念のため縛っておく」
念のためというあたり、ナルトが彼らに危害を加える気がないことを知っているようだが容赦はない。
「けどよ、こいつまだ気ぃ失ってて……」
「私が代わりに抱えましょう」
長身の男が手を差し出した。
「敵か味方かもわかんねえヤツに、渡せるわけねえだろ」
そのやりとりを見ていた青年は、考える素振りをみせると何か別の方法を思いついたらしく再びナルトを見上げる。
「……ならば、私の手を握れ」
「おう」
ナルトは迷わずその手を掴んだ。すると、同時に二人の手首を黒い鎖が縛った。長さがあり、サスケを担いだままでいても問題はない。忍術ではないようで、ナルトは驚きつつも今はこの状況に身を任せるしかないと考えていた。
髪の色を隠すためか、ナルトの頭部には衣が被せられた。
(犯罪者みてーだな。髪が目立つのはわかったけど)