スカウトのためのメールを出してすぐ、僕は祈るような気持ちで椅子に座った。心臓が体の中で跳ね回る、全身が沸騰する。
あぁ、この段階で断られたらどうしたものだろうか。ダメだ、不安で不安で泣いてしまいそうだ。
プルルルルルル……
急いで電話を取る。いきなり鳴ると心臓に悪い…… 誰だろうか。そんな電話がかかってくるような事はなかった気がするのだけれど。
「はい、河合と申します」
「あなたが私をスカウトしたいって人?」
突然の声が脳の中に届き、反響する。何も考えが浮かばない。真っ白だ。
「えっと……あっ……すみません。賀陽さんで合っていますでしょうか?」
もう分かりきっているはずなのに、間違いなく彼女であると認識しているはずなのに、口からは当たり障りのない言葉が出てくる。
どうしたらよいのだろう、急なことで戸惑ってしまう。
「はぁ、あなたがメールを送ってきたんでしょう……まぁいいわ」
「スカウトの件なのだけれど、諦めなさい。私、もうアイドル活動はやってないの」
まずい。このままでは会って話もできないまま終わってしまう。どうにかしないと。
そんなことで頭が一杯になっている内に、彼女は話を続けてしまう。
「手っ取り早く断りたかったから電話しただけよ。それじゃ」
「待って下さい!!!せめてお会いしてお話させていただけないでしょうか。あなたを、あなたこそをプロデュースしたいんです!お願いします!」
「…………ごめんなさい、あなたの希望には添えないわ」
本当にこれで終わってしまうのか?自分の想いも伝えられず、彼女に何も出来ないままで?
何か彼女を引き止める事を言わなくてはならない。あんなに考えたじゃないか。それを思い出すだけだ。やれるはず。
「もういいかしら」
「ふぅ…………待って下さい。賀陽さん、貴女はちゃんと終われていないだけなんですよね?」
「僕としてもそこは理解しています。それでも、それでも!僕はあなたをプロデュースしたいんです!」
「あなたにアイドルでいて欲しい……」
「失意の中終わって欲しくないんです」
どうだろうか。正直彼女のことはずっと考えてきた。ただ、いざ言葉に出すとこんな言葉しか出てこない。もっと上手く想いを伝えられたらいいのに。
祈るような気持ちで彼女の答えを待つ。心臓に針が刺さっているみたいだ。胸が痛い。
「……………………」
「あなた、この後は空いている?」
「…………はい!ありがとうございます!」
よかった……もう終わりかと思った。次が本番だ。頑張らないと。
「場所はあなたのプロデューサー室でいいわよね?」
「大丈夫です。よろしくお願いします」
「そう、分かったわ。今から向かうから待ってなさい」
そう言って、彼女は電話を切った。
あぁ。少し放心してしまう。心の準備をしていたつもりだったが、想定外の事態だ。
とはいえ、会うことはできるのだ。やるしかない。まずは落ち着いて頭を整理しよう。こんな状態じゃまともに喋れない。